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6章
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「調子の方は如何ですか?」
そう問いかけるのは、新見親良。
「5日前に来たばかりだろう」
晃が言えば新見は、愛想笑いを浮かべた。
「ボスが来週には戻るので、もう少しだけココで我慢してください」
「あぁ……」
恋人の敵討ちをしたと慕ってくる看護師、茨田杉子との交流によりココに居る事に苦痛は消えており、同時に頭痛からは解放されている。
だが、もっと……気安く……相手が正しければ殺しは称賛されるべきものだと思うようになってきている状況に危惧感を持ちつつも、何時までもこの療養施設のような場に留まっていてはいけないとも思っていた。
「余り良い返事ではありませんね。 誰か良い人でも?」
浮かべる笑みに確信的な何かを感じるのが不快だった。
「あり得る訳ないだろう」
その後に続く言葉はない事にホッとしていた。 もし、守るべき相手に助けられて自分はよろしくやっているのかと言われたならどうしようかと……そう思ってしまったから。
「そういえば……晃は、ココを出た後どうするつもりですか?」
「……それは、皎一さん次第になるのでは?」
彼女から聞いた話では、外的要因による仕方のない犯罪だったとしても、再発防止計画の提出と身元保証人が必要となる。 罪の重さによって身元保証人の責任度合が変化するため、人を殺した俺の場合は柑子市の幹部が身元保証人となるか、身元保証人に幹部が許可を降ろす必要があるらしい。
彼女はその機会を狙って、亡くなった恋人の一部でも返却してくれるよう頼んでみてくれないかと言っていたのだ。
「確かに、外に出るにはボスが許可をしなければいけませんが、ココに来る前の生活に戻りたいと思うなら、俺の方から話をつけましょう。 晃ならまだ平穏な生活に戻れるはずですから」
自分の内側の変化に罪悪感を覚えていた。
「雫は、どうなる?」
「一応、色々と考えていますから、心配はいりませんよ」
「新見は、どうすればいいと考えているんだ?」
「俺は……引き返せるうちに引き返せばいいと思っています。 ですが、ボスは雫ちゃんの護衛に戻らせたいと考えているようなので……、ボスが戻るまでどうしたいかを決めておいて欲しいんです」
「もし、皎一さんがどうしても任務に戻るようにと言い、了解しなければ外に出さないと言ったら?」
「そんな事を言わせませんよ。 ですが、万が一にもそういう事を言った時には、セラピーの必要性を訴えます。 藤原助教授であれば柑子市から出た方が良いと応援してくれるでしょうからね」
そして新見は帰って行った。
「今日も……何時もの人が晃に会いに来たのね。 どういう関係なの?」
不安そうに縋りついて来た。
「面会時に、調査はないのか?」
いつの間にか、2人で食事をするのが当たり前になっており、周囲もソレを咎める事は無い。
「調査はしているでしょうけど、看護師である私は知る必要のない情報だから」
「気になるのか?」
俺は利用されているだけだと言い聞かせながらも、俺を支えると言ってくれるこの女性の答えを試してしまう。
「そりゃぁ、まぁ、気になるわよ。 晃は私にとって大切な人だもの」
罪を知り、ソレでも支えると言ってくれる人が他にいるだろうか? そんな風に思ってしまうのだ……。
「アナタは、私の英雄だわ」
収まりかけた頭痛が……ソレは違うと訴えかけるかのように……再発した。
新見に伝えた翌日。
藤原助教授の元へと連れていかれた。
「手錠はないのか?」
「必要はないでしょう」
「俺を柑子市から追い出したい理由は何だ?」
「ここはまっとうな人間のいるべき場所じゃないからですよ」
新見は怒っているかのような口調で語る。
「人を殺した俺が真っ当な訳ないだろう!!」
「いえ、晃が動く前に俺が動くべきでした……」
そうするべきだった。
例え新見は自分でなくとも、他の者でもいい……。 外から来た晃ではなく、幼い頃から殺人衝動を持ち、コントロールする事、自分のルールを獲得したものであるべきだったと考えていた。 新見の後悔は、あの日から幾度となく繰り返されてきた。
「そんな言葉に、どんな意味がある」
「すみません……」
「謝ってもらう必要等ない……」
俺を英雄だと言ってくれる人がいるのだから、声に出さず晃は心の中で呟いた。
そう問いかけるのは、新見親良。
「5日前に来たばかりだろう」
晃が言えば新見は、愛想笑いを浮かべた。
「ボスが来週には戻るので、もう少しだけココで我慢してください」
「あぁ……」
恋人の敵討ちをしたと慕ってくる看護師、茨田杉子との交流によりココに居る事に苦痛は消えており、同時に頭痛からは解放されている。
だが、もっと……気安く……相手が正しければ殺しは称賛されるべきものだと思うようになってきている状況に危惧感を持ちつつも、何時までもこの療養施設のような場に留まっていてはいけないとも思っていた。
「余り良い返事ではありませんね。 誰か良い人でも?」
浮かべる笑みに確信的な何かを感じるのが不快だった。
「あり得る訳ないだろう」
その後に続く言葉はない事にホッとしていた。 もし、守るべき相手に助けられて自分はよろしくやっているのかと言われたならどうしようかと……そう思ってしまったから。
「そういえば……晃は、ココを出た後どうするつもりですか?」
「……それは、皎一さん次第になるのでは?」
彼女から聞いた話では、外的要因による仕方のない犯罪だったとしても、再発防止計画の提出と身元保証人が必要となる。 罪の重さによって身元保証人の責任度合が変化するため、人を殺した俺の場合は柑子市の幹部が身元保証人となるか、身元保証人に幹部が許可を降ろす必要があるらしい。
彼女はその機会を狙って、亡くなった恋人の一部でも返却してくれるよう頼んでみてくれないかと言っていたのだ。
「確かに、外に出るにはボスが許可をしなければいけませんが、ココに来る前の生活に戻りたいと思うなら、俺の方から話をつけましょう。 晃ならまだ平穏な生活に戻れるはずですから」
自分の内側の変化に罪悪感を覚えていた。
「雫は、どうなる?」
「一応、色々と考えていますから、心配はいりませんよ」
「新見は、どうすればいいと考えているんだ?」
「俺は……引き返せるうちに引き返せばいいと思っています。 ですが、ボスは雫ちゃんの護衛に戻らせたいと考えているようなので……、ボスが戻るまでどうしたいかを決めておいて欲しいんです」
「もし、皎一さんがどうしても任務に戻るようにと言い、了解しなければ外に出さないと言ったら?」
「そんな事を言わせませんよ。 ですが、万が一にもそういう事を言った時には、セラピーの必要性を訴えます。 藤原助教授であれば柑子市から出た方が良いと応援してくれるでしょうからね」
そして新見は帰って行った。
「今日も……何時もの人が晃に会いに来たのね。 どういう関係なの?」
不安そうに縋りついて来た。
「面会時に、調査はないのか?」
いつの間にか、2人で食事をするのが当たり前になっており、周囲もソレを咎める事は無い。
「調査はしているでしょうけど、看護師である私は知る必要のない情報だから」
「気になるのか?」
俺は利用されているだけだと言い聞かせながらも、俺を支えると言ってくれるこの女性の答えを試してしまう。
「そりゃぁ、まぁ、気になるわよ。 晃は私にとって大切な人だもの」
罪を知り、ソレでも支えると言ってくれる人が他にいるだろうか? そんな風に思ってしまうのだ……。
「アナタは、私の英雄だわ」
収まりかけた頭痛が……ソレは違うと訴えかけるかのように……再発した。
新見に伝えた翌日。
藤原助教授の元へと連れていかれた。
「手錠はないのか?」
「必要はないでしょう」
「俺を柑子市から追い出したい理由は何だ?」
「ここはまっとうな人間のいるべき場所じゃないからですよ」
新見は怒っているかのような口調で語る。
「人を殺した俺が真っ当な訳ないだろう!!」
「いえ、晃が動く前に俺が動くべきでした……」
そうするべきだった。
例え新見は自分でなくとも、他の者でもいい……。 外から来た晃ではなく、幼い頃から殺人衝動を持ち、コントロールする事、自分のルールを獲得したものであるべきだったと考えていた。 新見の後悔は、あの日から幾度となく繰り返されてきた。
「そんな言葉に、どんな意味がある」
「すみません……」
「謝ってもらう必要等ない……」
俺を英雄だと言ってくれる人がいるのだから、声に出さず晃は心の中で呟いた。
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