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5章
63.コレクター 04
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「君は、本当にあの人の友人だったのか!!」
突然に怒り出す鑑識の男の声に雫は逃げる……事無く、怯えたように腰に巻き付けていた腕を離し男の前に一歩踏み出す。
風も無いのに長い黒髪が揺れ動く。
「どうなのでしょう……ね。 それは、私が、聞きたいですよ」
それは、綺麗で……とても綺麗で寂しくて……。 まるで舞台を見ているかのような気分にさせ、鑑識の男は舞台に上がる事は無かった。
「加奈子の絵は、もっと抽象的だけど……抽象的なものを、人体で表現するのは難しいと思うの。 命を意味する血の流れ。 まさか血管以外を排除するのが無理だって、考えた結果、身体に模様を彫ったのだと思うの」
死体を躊躇なく触れようとするのを、慌てて晃は止める。
「現場は荒らすな」
声を荒げたつもりは晃にはなかった。
驚くほどに怯えている雫。
「ごめんなさい」
「別に怒っている訳じゃない……」
頭を撫でてやれば、またまとわりつくように抱き着いて来た。 歩きにくいが……まぁ、転ばれたり、迷子になられるよりはいいとか考えて許容した。
場違いな行為である。
だが、周囲からの声は、こんなところで何をしているんだ等の声は1つもなく、良く触れられて平気だと言う中傷が多い。
触れるぐらいなら颯太だってと思ったが、颯太の方から触れる様子は無い事を思い出した。
そんな会話の最中に、周辺を調査していた者達が戻ってきた。
ここは、第二次大戦時代、軍事施設として使われており、古い地図があった事からソレを取り寄せ探索を行ったらしい。
新見が視線を向けて手招きをし、ソレに応じて歩きだせば、
「死体の写真を撮って、外で絵と比較し、プリントアウト。 サイトの管理者に連絡、アクセス記録へのアクセス許可を取っておいてください。 それと、死体を運びだすための準備をお願いします」
新見が指示を出しその場から去らせた。
「他に何か?」
「もう鑑識に任せた方がいいだろう。 分かる事と言えば、自分の世界に陶酔しやすく、この行為に対して何の罪悪感も持っていない。 むしろ、崇高な行為だと思っているが、死者に敬意はなく、人として認識しておらず素材ぐらいに考えている。 雫、最初の犯行が何時ぐらいか分かるか?」
「そうですね……私が10歳くらいの時ね。 少なくともそれ以前と言う事はありません」
「なぜ?」
新見が不思議そうにすれば、雫が笑っていた。
「だって、加奈子がそのモデルとなった絵を描いた時期が8年前だもの」
「あぁ、なるほど……」
「8年の間にあらゆる技術が向上している。 制作順におかれているなら、アソコを境に急激に進化している」
晃は死体を指さした。
制作初期
・ほぼミイラ状態。
・防腐処理で防腐剤の匂いがする。
・顏部分には仮面が被せてある。
・彫りが途中放棄。
・装飾品は骨を加工したもの。
・全体的に加工技術は未熟。
中期以降
・生前の状態を残している。
・内臓は抜かれ香木が詰められている。
・顏部分は皮を剥ぎ、新しい顔が与えられている。
・彫りや繋ぎの上達。
・装飾品は金・銀・ガラス・宝石を使っている。
・骨で装飾を施すのは止め、骨そのものをオブジェとして使用。
・薄いプラスチックで表面を美しく維持している。
「加工の技術向上なら慣れで済むでしょうが、加工方法を変え、素材を変えている。 彫り自体には本人の才能があったとしても、まず……金がかかり過ぎ、どうやってこの状態を作り出す加工方法を知って実行したんだ?」
「今時何でも検索すれば出てくるからなぁ……。 外部の協力を除外した状態で、加工現場の品の割り出しを急がせろ」
新見が言えば、無茶だと周囲が騒いでいた。
「一般的に購入できるものであったとしても、機材や、素材の購入経路はあるだろう。 まぁ、本人が積極的に技術向上を望んで、あらゆる機材を購入したならいい。 ソレを足掛かりに犯人が分かる。 だが……もし、協力者がいたなら?」
「あぁ、犯人は偉大な芸術家として保護され、捜査中止が下されかねません。 いつものパターンですよ!!」
苛立ちが伝染する。
「捜索を急げ、個人の特定につながるものを早く確保しろ」
「死体を移動させるための車が到達しました」
外から慌てた様子で新見の部下が走ってきた。
「早いですね……」
誰かが、大声で叫んだ。
「死体を外に運びだせ!! 丁寧に扱え、どんな証拠が残っているかわからないからな!!」
突然に怒り出す鑑識の男の声に雫は逃げる……事無く、怯えたように腰に巻き付けていた腕を離し男の前に一歩踏み出す。
風も無いのに長い黒髪が揺れ動く。
「どうなのでしょう……ね。 それは、私が、聞きたいですよ」
それは、綺麗で……とても綺麗で寂しくて……。 まるで舞台を見ているかのような気分にさせ、鑑識の男は舞台に上がる事は無かった。
「加奈子の絵は、もっと抽象的だけど……抽象的なものを、人体で表現するのは難しいと思うの。 命を意味する血の流れ。 まさか血管以外を排除するのが無理だって、考えた結果、身体に模様を彫ったのだと思うの」
死体を躊躇なく触れようとするのを、慌てて晃は止める。
「現場は荒らすな」
声を荒げたつもりは晃にはなかった。
驚くほどに怯えている雫。
「ごめんなさい」
「別に怒っている訳じゃない……」
頭を撫でてやれば、またまとわりつくように抱き着いて来た。 歩きにくいが……まぁ、転ばれたり、迷子になられるよりはいいとか考えて許容した。
場違いな行為である。
だが、周囲からの声は、こんなところで何をしているんだ等の声は1つもなく、良く触れられて平気だと言う中傷が多い。
触れるぐらいなら颯太だってと思ったが、颯太の方から触れる様子は無い事を思い出した。
そんな会話の最中に、周辺を調査していた者達が戻ってきた。
ここは、第二次大戦時代、軍事施設として使われており、古い地図があった事からソレを取り寄せ探索を行ったらしい。
新見が視線を向けて手招きをし、ソレに応じて歩きだせば、
「死体の写真を撮って、外で絵と比較し、プリントアウト。 サイトの管理者に連絡、アクセス記録へのアクセス許可を取っておいてください。 それと、死体を運びだすための準備をお願いします」
新見が指示を出しその場から去らせた。
「他に何か?」
「もう鑑識に任せた方がいいだろう。 分かる事と言えば、自分の世界に陶酔しやすく、この行為に対して何の罪悪感も持っていない。 むしろ、崇高な行為だと思っているが、死者に敬意はなく、人として認識しておらず素材ぐらいに考えている。 雫、最初の犯行が何時ぐらいか分かるか?」
「そうですね……私が10歳くらいの時ね。 少なくともそれ以前と言う事はありません」
「なぜ?」
新見が不思議そうにすれば、雫が笑っていた。
「だって、加奈子がそのモデルとなった絵を描いた時期が8年前だもの」
「あぁ、なるほど……」
「8年の間にあらゆる技術が向上している。 制作順におかれているなら、アソコを境に急激に進化している」
晃は死体を指さした。
制作初期
・ほぼミイラ状態。
・防腐処理で防腐剤の匂いがする。
・顏部分には仮面が被せてある。
・彫りが途中放棄。
・装飾品は骨を加工したもの。
・全体的に加工技術は未熟。
中期以降
・生前の状態を残している。
・内臓は抜かれ香木が詰められている。
・顏部分は皮を剥ぎ、新しい顔が与えられている。
・彫りや繋ぎの上達。
・装飾品は金・銀・ガラス・宝石を使っている。
・骨で装飾を施すのは止め、骨そのものをオブジェとして使用。
・薄いプラスチックで表面を美しく維持している。
「加工の技術向上なら慣れで済むでしょうが、加工方法を変え、素材を変えている。 彫り自体には本人の才能があったとしても、まず……金がかかり過ぎ、どうやってこの状態を作り出す加工方法を知って実行したんだ?」
「今時何でも検索すれば出てくるからなぁ……。 外部の協力を除外した状態で、加工現場の品の割り出しを急がせろ」
新見が言えば、無茶だと周囲が騒いでいた。
「一般的に購入できるものであったとしても、機材や、素材の購入経路はあるだろう。 まぁ、本人が積極的に技術向上を望んで、あらゆる機材を購入したならいい。 ソレを足掛かりに犯人が分かる。 だが……もし、協力者がいたなら?」
「あぁ、犯人は偉大な芸術家として保護され、捜査中止が下されかねません。 いつものパターンですよ!!」
苛立ちが伝染する。
「捜索を急げ、個人の特定につながるものを早く確保しろ」
「死体を移動させるための車が到達しました」
外から慌てた様子で新見の部下が走ってきた。
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「死体を外に運びだせ!! 丁寧に扱え、どんな証拠が残っているかわからないからな!!」
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