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3章

33.お仕置き 06

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 気に入らなかった。

 私の家族となるはずだった子達が殺された。

 殺した雫は、被害者面をし、男達に甘え、そして守られている。
 姫等と彼女を呼ぶ者もいるのが気に入らなかった。

 なぜ、あんな化け物が特別なの?!

 そう考える本庄自身も、被害者意識を活用しようとしているのだが、その事実には全く気付かず雫にのみ不快感を募らせていく。

 痛みに対しヒステリックに声をあげれば、獣の唸りのような声が発せられた。

 クスクスと馬鹿にするかのような笑い声に苛立った。 苛立ちは筋肉の膨張につながり、痛みを伴う圧迫感を与えてくる。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 苦しい……。
 苦しい……。
 苦しい……。

 哀れな訴えは届かず、漏れ出る声はくぐもった獣のようだった。

「はぁ、ぁ、くっ……」

 身もだえすれば、頭が締め付けられる。
 逃げ場のない中、微かな圧迫が痛みとなっていた。

 首輪とストレスが、首を絞めつけるかのような感覚を覚え、呼吸が上手くできなくなってくる。 咳き込むがくつわが邪魔をして咳すらまともにできない。

「ぐっぁ、ああ」

 醜い獣の唸り声が幾度も漏れ出た。

 ソレを屈辱と感じる余裕すら失いそうになり、必死に動きを止めた……。



 一度、痛みから解放さえされれば、思考を可能とした。

 沸々と内臓が煮えくり返る。
 ソレを必死に抑え込んだ。



 冷静になるのよ……。



 感覚は誤認識でしかない。
 認識を変えればいい。

 そう本庄は、自分に言い聞かせる。

 動作を最小限にすれば、受ける感触は少しきつめに触れられている程度のもの。

 認識を変えろ……。

 壁に押し付けられ、嫉妬に首を絞められ、抱きしめられ……。 拘束され、必要とされ、愛される私と言うものへと変換すればいい。

 痛みを快楽へと調節し、誘惑すればいい。

「ぁ、はぁ、んっふぅ」

 ユックリと胸をつきだし、ゆるりと腰をゆすって見せた。 快楽に溺れるかのような姿を演じていた。

「んっ、ぁっ」

 甘い声を作り、はしたない獣のように飢えた姿を見せつける。 立場を逆転させるためのチャンスを狙って。

 抱きたくならない訳がないわ。
 食いつき、むちゃぶりつきたくなるに違いない。

 胸を強調するように、痛みを調整しながら胸をつきつけるように、姿勢を変えて見せつける。

 時計の音。
 本庄の甘い声。
 滴り落ちる、汗と蜜。

 塞がれた視界は妄想に容易くする。
 限定された音は、数秒先の自分を想像し興奮となる。

 轡をとり、唇を奪い、貪ればいい……。

「ふふぁあ」

 甘い呻きが脳裏を直接刺激し、快楽を促してくる。

 早く、早く、早く、早く、早く……。
 あぁああああああ頭がおかしくなりそう。

 痛みから逃れた本庄は、快楽に捕らえられた事に気づいてはいない。

 カタン。

 椅子が動く音に興奮した。

 とうとう。
 ようやく。

 あはっ!!

 足音を立て歩く颯太は近寄ってくる。
 だが、何かする様子がない。

 それでも熱い視線は感じていた……。

 そう、近寄ってきた時点で颯太の負けだ。

 一方的でありながら、コレは本庄にも勝利の可能性を残した勝負だと本庄は考える。 そう考えるあたり、本庄は怒りと欲望に支配され、彼女自身の本来の目的を忘れてしまっていると言って良いだろう。



 全ては、彼女が家族だと思っている子達の死の原因を、責任のあり何処を見つけるためだったはず……だが、既に彼女の頭から最初の目的は忘れ去られていた。

 本当に家族が欲しかったのか? そう問われれば嘘である。
 本当に家族が欲しいなら幾らでも方法はあった。

 恋人を作ればいい。
 夫を作ればいい。

 子供を作ればいい。
 養子を得るのもいいだろう。

 結局のところ、本庄は心地よく支配できる相手が欲しかったのだ。

 そして……異常性の低い彼等は、今までにない特別な子達だった。



 それが、間接的な自殺を迫られた6人が、本庄に相談を持ち掛ける事が出来なかった理由である。
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