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3章
28.お仕置き 01
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鼻歌交じりに車椅子を押す三輪颯太を、周囲が何を考え見送ったかと言えば、本庄エリィに対する同情等は存在していなかった。
本庄にとって、車椅子で運ばれているその状況が既に罰とも屈辱でもあると言うのにだ。
革製の分厚い目隠しをされ、金属製の轡で口を塞がれる。 足は、膝から下を2か所ベルトで拘束されていた。
身体は首輪をつけられ、首輪から背骨に沿って落ちるベルトを中心につけられた3本のベルトで、腕を2か所、手首を1か所止められている。 手自体は親指同士が繋がれ、革袋に入れられ、背筋と繋がったベルトに革袋の口は手首と共に拘束されていた。
「ひっひひひひ」
下卑た笑いが彼方此方から聞こえ、本庄の神経を逆なでする。
許さないんだから……。
見物人達の中には、上手く取り入って見学してみたいと思うが参加をしたいと考える者はいなかった。 拘束を解除された後に仕返しされる事を想像したからだ。
同じ職場の人間だ。
本庄の仕事は、新人教育でありその上下関係は後々まで影響する。
にも拘わらず、こうする事を新見は止めなかった。
何時の間にか、颯太に向けられる周囲からの視線は畏敬すら混ざっており……こうした派手に演出された痴態は、雫に関する事から意識を反らせる役割を十分に果たしていた。
颯太は鼻歌を続けながら車椅子を押す。
新見にいみから受け取った警備部の管理職にのみ許された特殊エレベーターのキーを使い地下懲罰房へと降りて行った先、エレベーターの扉が開かれれば煤けた匂いがした。
懲罰房入りになった者の恐怖を煽るための演出である。
ツマラナイ……。 ソレが颯太の感想だ。
拷問……そのように呼ばれる行為を好むのは、颯太ばかりではない。 過去どれほどの人間が、ココを出入りしたのだろうか? 数々の拷問器具が置かれた部屋が複数存在している。
だが、颯太が選んだのは最も簡素な部屋。
理由は、聞くまでもない、ただの趣味だ。
道具を使い、痛みばかりを与える事に面白味を感じて等いなかった。
そもそも、恐怖や痛みだけで、言う事を聞かせようとするのが間違いだと颯太は考えている。
重い金属の扉が開き、そして締まる。
冷えた空気は重く、本庄の肩にのしかかってきた。
「さぁ、準備をしましょうか?」
わざとらしく颯太は耳元で囁く。
颯太と本庄の背丈は、颯太の方が僅かだが低く、ヒールを履かれれば本庄から見下ろされ日頃からニヤリと威圧的な笑みを向けられていた。
それが、ほんの少し前までの2人の関係。
だからこそ、本庄は不快と不安をつのらせていた。
部屋には、壁に取り付けられた棚。
薄明りのランプ。
古びた木製テーブルと椅子。
そして、床と一体化しながら中央に設置された、骨組みのみの椅子。
車椅子から中央の椅子に移動させようと、颯太の手が姫抱っこをしようと本庄に触れれば、本庄は細かく生まれたての小鹿のように震えていた。
本庄にとって、車椅子で運ばれているその状況が既に罰とも屈辱でもあると言うのにだ。
革製の分厚い目隠しをされ、金属製の轡で口を塞がれる。 足は、膝から下を2か所ベルトで拘束されていた。
身体は首輪をつけられ、首輪から背骨に沿って落ちるベルトを中心につけられた3本のベルトで、腕を2か所、手首を1か所止められている。 手自体は親指同士が繋がれ、革袋に入れられ、背筋と繋がったベルトに革袋の口は手首と共に拘束されていた。
「ひっひひひひ」
下卑た笑いが彼方此方から聞こえ、本庄の神経を逆なでする。
許さないんだから……。
見物人達の中には、上手く取り入って見学してみたいと思うが参加をしたいと考える者はいなかった。 拘束を解除された後に仕返しされる事を想像したからだ。
同じ職場の人間だ。
本庄の仕事は、新人教育でありその上下関係は後々まで影響する。
にも拘わらず、こうする事を新見は止めなかった。
何時の間にか、颯太に向けられる周囲からの視線は畏敬すら混ざっており……こうした派手に演出された痴態は、雫に関する事から意識を反らせる役割を十分に果たしていた。
颯太は鼻歌を続けながら車椅子を押す。
新見にいみから受け取った警備部の管理職にのみ許された特殊エレベーターのキーを使い地下懲罰房へと降りて行った先、エレベーターの扉が開かれれば煤けた匂いがした。
懲罰房入りになった者の恐怖を煽るための演出である。
ツマラナイ……。 ソレが颯太の感想だ。
拷問……そのように呼ばれる行為を好むのは、颯太ばかりではない。 過去どれほどの人間が、ココを出入りしたのだろうか? 数々の拷問器具が置かれた部屋が複数存在している。
だが、颯太が選んだのは最も簡素な部屋。
理由は、聞くまでもない、ただの趣味だ。
道具を使い、痛みばかりを与える事に面白味を感じて等いなかった。
そもそも、恐怖や痛みだけで、言う事を聞かせようとするのが間違いだと颯太は考えている。
重い金属の扉が開き、そして締まる。
冷えた空気は重く、本庄の肩にのしかかってきた。
「さぁ、準備をしましょうか?」
わざとらしく颯太は耳元で囁く。
颯太と本庄の背丈は、颯太の方が僅かだが低く、ヒールを履かれれば本庄から見下ろされ日頃からニヤリと威圧的な笑みを向けられていた。
それが、ほんの少し前までの2人の関係。
だからこそ、本庄は不快と不安をつのらせていた。
部屋には、壁に取り付けられた棚。
薄明りのランプ。
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そして、床と一体化しながら中央に設置された、骨組みのみの椅子。
車椅子から中央の椅子に移動させようと、颯太の手が姫抱っこをしようと本庄に触れれば、本庄は細かく生まれたての小鹿のように震えていた。
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