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2章
24.救助 01
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雫が部屋に引き込まれ、晃は扉を開けようとガチャガチャと取っ手を手にし、そしてチャイムを鳴らし扉を叩く。 その程度で開かれる扉なら、ココまで強引な事はされなかっただろう。
「颯太!! 合鍵を持って来てください」
物見遊山で人が集まりだしている中、我関せずと言う様子の若い男……いや、どちらかと言えば少年と言う言葉が未だ通用するサラリとした茶髪の少年に親良は声をかけた。 両手に山ほど抱えた惣菜系のパンを持った颯太少年は、新見とパンを交互に眺めて、えーーと不満そうな顔を見せる。
「僕、仕事上がりなんですけど」
「今度奢る」
「食堂のご飯が美味しいし、おばちゃんが優しいから十分!」
「……褒美を差し上げます」
「褒美?!」
手招きする新見に耳を寄せる颯太少年。 ごちょごちょと今どういう状況かを軽く説明する。
「了解しました!! ぁ、でも、食べ物を部屋に置いてくるので待っていてください」
そう言って去っていく様子を見て、鍵をなんとか開けられないかと眺める晃が、新見を呼び寄せてこそこそと聞いた。
「もっと素直に動いてくれる奴に頼んだ方が早かったんじゃ無いのか?」
「いえ、信頼できる相手を選んだんですよ。 ボスの言っている通り、情報を売るような者もいるんで」
新見の言葉に晃が視線を扉へと向ければ、同じように新見も扉を見つめた。
「エリィは、平気だったんですけどね……。 情の深い人でしたし……」
新見が扉に背中を扉に預け、後ろ手にトンっと扉を叩く。
鍵の置き場は、そう遠い場所ではなかったらしく、晃が想像していたよりも早く颯太と呼ばれた少年は戻ってきた。
手を差し出す新見の手の平に、ノイズ音と女性の声が漏れる黒い機械を乗せながら、爽やかな笑みで颯太少年は言うのだ。
「合鍵、ありませんでした!」
「鍵が無いってどういう事ですか!!」
「僕に言われても困りますよ。 無いものは無いんです。 中に侵入する前に持って行ったんじゃないんですか?」
そんな会話が交わされる中、晃は身に覚えのある新見が手にした機械を奪い、イヤホンを耳に装着した。
ソレは盗聴器で、過去晃が出会った中でも、トップクラスで音声がクリアーに聞こえるものだった。
随分と性能が良いのか、災難に会い続ける美少女に感情移入したのか、会話の熱まで伝える盗聴器の音声を耳にした晃は頭に血が上っていた。
晃は部屋に戻り、先に送り届けておいた箱の中から1つの箱をもくもくと開封し、中身を取り出す。 手にしたソレは、見た目こそ子供のオモチャを連想される銃状をしたものだった。
バッテリーを取り付け、ドリル系のアタッチメントを取り付け、ハンマードリルのモードを選択。 隣の壁に向かって晃は躊躇なく穴をあけはじめる。
コンクリートで作られた壁が、ギューーンと軽い音を立てアッサリと壁に穴をあけ、そしてヒビが入り崩れていく。
雫の寝室に向かって幾つかの穴があけられ、コンクリート壁にヒビが入る。
晃はハンマードリルをケースに片付けケースごとベッドの下に滑りこませた。 万が一本庄が手にした場合を想定したのだ。 そして拘束用の結束バンドを数本準備し壁際に戻る。
崩れたコンクリの向こうからと、イヤホンの中から本庄の声が聞こえ晃は苛立ちに舌打ちをしていた。
『化け物の分際で、何、純情ぶっているのよ!! この変化を誰に知らせようかしら? ねぇ、どの教授がいい? それとも……私を殺す? アナタを可愛がってあげると言ってあげている私を殺すようにカラスに命じる? 殺しちゃう? 今度は、アナタの意志で殺す? 今度こそ、人殺しになる? 化け物が……』
この間、新見親良が何をしていたかと言えば、時塔皎一の持つマスターキーが必要だと連絡を入れた。 残念ながら学会へ向かうため、今はヘリコプターの中だと伝えられ困り切っている最中だった。
『上の階から、ロープで降下し窓を破りなさい』
「了解しました」
中の状況が分からず、本庄が何故背中を見せろと言ったのか疑問を感じていた新見は、人を使う事なく、彼自身が突入する事を決め、そして……。
「颯太、手伝って下さい」
「いえ、でも……。 えっと、鞍馬さんが何かしているようですよ?」
そう伝えられ、鍵を開けたままにされていた晃の部屋へと一応ノックをし入って行った。 物見遊山とばかりに群がりついて来ようとしていた部下達を、新見は散らし、晃の部屋に入り鍵を閉める。
ちゃっかりと側に居る颯太には突っ込みは無い。
「って、何をしているんですか!!」
新見が叫び、
そして、丁度、壁の向こうからは、化け物と罵る本庄の声が聞こえた。
晃は勢いをつけて、十分に亀裂を入れたコンクリートに向かい力任せに蹴りを入れる。
壁は、呆気なく粉塵をたて崩れ落ちた。
「颯太!! 合鍵を持って来てください」
物見遊山で人が集まりだしている中、我関せずと言う様子の若い男……いや、どちらかと言えば少年と言う言葉が未だ通用するサラリとした茶髪の少年に親良は声をかけた。 両手に山ほど抱えた惣菜系のパンを持った颯太少年は、新見とパンを交互に眺めて、えーーと不満そうな顔を見せる。
「僕、仕事上がりなんですけど」
「今度奢る」
「食堂のご飯が美味しいし、おばちゃんが優しいから十分!」
「……褒美を差し上げます」
「褒美?!」
手招きする新見に耳を寄せる颯太少年。 ごちょごちょと今どういう状況かを軽く説明する。
「了解しました!! ぁ、でも、食べ物を部屋に置いてくるので待っていてください」
そう言って去っていく様子を見て、鍵をなんとか開けられないかと眺める晃が、新見を呼び寄せてこそこそと聞いた。
「もっと素直に動いてくれる奴に頼んだ方が早かったんじゃ無いのか?」
「いえ、信頼できる相手を選んだんですよ。 ボスの言っている通り、情報を売るような者もいるんで」
新見の言葉に晃が視線を扉へと向ければ、同じように新見も扉を見つめた。
「エリィは、平気だったんですけどね……。 情の深い人でしたし……」
新見が扉に背中を扉に預け、後ろ手にトンっと扉を叩く。
鍵の置き場は、そう遠い場所ではなかったらしく、晃が想像していたよりも早く颯太と呼ばれた少年は戻ってきた。
手を差し出す新見の手の平に、ノイズ音と女性の声が漏れる黒い機械を乗せながら、爽やかな笑みで颯太少年は言うのだ。
「合鍵、ありませんでした!」
「鍵が無いってどういう事ですか!!」
「僕に言われても困りますよ。 無いものは無いんです。 中に侵入する前に持って行ったんじゃないんですか?」
そんな会話が交わされる中、晃は身に覚えのある新見が手にした機械を奪い、イヤホンを耳に装着した。
ソレは盗聴器で、過去晃が出会った中でも、トップクラスで音声がクリアーに聞こえるものだった。
随分と性能が良いのか、災難に会い続ける美少女に感情移入したのか、会話の熱まで伝える盗聴器の音声を耳にした晃は頭に血が上っていた。
晃は部屋に戻り、先に送り届けておいた箱の中から1つの箱をもくもくと開封し、中身を取り出す。 手にしたソレは、見た目こそ子供のオモチャを連想される銃状をしたものだった。
バッテリーを取り付け、ドリル系のアタッチメントを取り付け、ハンマードリルのモードを選択。 隣の壁に向かって晃は躊躇なく穴をあけはじめる。
コンクリートで作られた壁が、ギューーンと軽い音を立てアッサリと壁に穴をあけ、そしてヒビが入り崩れていく。
雫の寝室に向かって幾つかの穴があけられ、コンクリート壁にヒビが入る。
晃はハンマードリルをケースに片付けケースごとベッドの下に滑りこませた。 万が一本庄が手にした場合を想定したのだ。 そして拘束用の結束バンドを数本準備し壁際に戻る。
崩れたコンクリの向こうからと、イヤホンの中から本庄の声が聞こえ晃は苛立ちに舌打ちをしていた。
『化け物の分際で、何、純情ぶっているのよ!! この変化を誰に知らせようかしら? ねぇ、どの教授がいい? それとも……私を殺す? アナタを可愛がってあげると言ってあげている私を殺すようにカラスに命じる? 殺しちゃう? 今度は、アナタの意志で殺す? 今度こそ、人殺しになる? 化け物が……』
この間、新見親良が何をしていたかと言えば、時塔皎一の持つマスターキーが必要だと連絡を入れた。 残念ながら学会へ向かうため、今はヘリコプターの中だと伝えられ困り切っている最中だった。
『上の階から、ロープで降下し窓を破りなさい』
「了解しました」
中の状況が分からず、本庄が何故背中を見せろと言ったのか疑問を感じていた新見は、人を使う事なく、彼自身が突入する事を決め、そして……。
「颯太、手伝って下さい」
「いえ、でも……。 えっと、鞍馬さんが何かしているようですよ?」
そう伝えられ、鍵を開けたままにされていた晃の部屋へと一応ノックをし入って行った。 物見遊山とばかりに群がりついて来ようとしていた部下達を、新見は散らし、晃の部屋に入り鍵を閉める。
ちゃっかりと側に居る颯太には突っ込みは無い。
「って、何をしているんですか!!」
新見が叫び、
そして、丁度、壁の向こうからは、化け物と罵る本庄の声が聞こえた。
晃は勢いをつけて、十分に亀裂を入れたコンクリートに向かい力任せに蹴りを入れる。
壁は、呆気なく粉塵をたて崩れ落ちた。
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