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2章

20.良い子の正体 02

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 雫を殺そうとした6人は、学生の中では大人しい部類だった。

 ただ、ここで言う大人しいは、

・拘りが少ない。
・主張が少ない。
・コレと言った特技も無い。
・学生の中では、特技も不得意もない平均的な存在。

 欠点と呼べるようなものではないが、それでもココでは特殊な部類に入る。

 平均的でありながら他と違う。

 彼等は異常だった。

 ただ、ココで言う彼等の異常は、共感性や社交性に優れ一般社会に紛れ込みやすい、異常を隠しやすいと言う意味を持つ。

 でも、柑子市では彼等の特技は意味をなさない。

 社会性、共感性、集団的思考や行動はをココでは無視する事が許されている。 ソレ等を放棄しても、自らの才能に花開かせれば、特殊生として支援者がつく。

 だが、そこに意味を見出そうとした彼等は、周囲に集団である事を求めた。 結果、異端とされたイジメの標的とされてしまったのだ。 それが、彼等が警備部の訓練生となった理由だ。

 だが、彼等は知恵が回った。

 彼等は、警備部と言う集団を利用し、訓練生として活動する事で警備部の保護を受け、イジメを回避し、自らの身の置き方を確定させ、時間をかけ自らの身が起きやすい集団をそれぞれが作り出した。

 訓練生となった者同士でつるめば楽ではあるが、大人の支援を得ているのは彼等だけではない。 それぞれが集団のトップとなる事で、学生達の世論めいたものを誘導していたのだ。



 それも才能だと言われればソレまでだが……。

 彼等は、結局は雫に手を出して死ぬ程度の人間だったのだと……新見は晃に語り終えた。



 そして時間は戻る。



「エリィ、彼等は君の推薦があった事。 そして、常に人材不足の警備部だから採用がなされた。 例え護衛や警備として力が足りなくても、使いどころはありますからね」

「その言い方、訂正して頂戴。 彼等の交渉力は、会話による魅力は特別なものだったわ。 今時戦うだけなら、相手より優位になれる武器、防具、アイテムを持てばいい!! 彼等のように気持ちを伝え、人を動かす事が出来る者の方が余程意味があるわ!!」

「本当に、会話による力を持っているのなら、なぜ、今回の事を君に相談しなかったのですか?」

「それは……きっと、追い詰められていたんだわ」

「追い詰められていた事すら、相談されないのかぁ~。 へぇ~」

 晃がニヤニヤと嫌味に笑いながら割って入れば、エリィはイライラと唇を噛んだ。

「彼等は、本当に人当りの良い子達だった。 だから、きっと、迷惑をかけられないと思ったんだわ」

「良い子は殺しを実行しない」

 晃の言葉にエリィは硬直した。

「だけど!! 私には、私にとっては大切な生徒だったのよ!! きっと、何か理由があるはずよ!! 私は、私は彼等を信じているのよ!!」

「彼等は殺人者だ。 それも集団で残酷な殺しを試みた。 理由があったとしても、きっと雫には関係ないんじゃないか? もう良いだろう。 雫、今日はユックリと休んだ方がいいだろう」

 言えば不安そうに服が引っ張られる。

「しばらく側にいるよ」

 晃はそう言いながら、雫に部屋の鍵を開くよう告げた。 雫だけを部屋に戻すつもりはなく、元々もう少し話をしようと考えていた。

 だが、雫の手首が掴まれた。

「待って、謝ってもいいから……一つ確かめさせて」

 本庄だ。

「な、んですか……」

「雫、断っても良いんだぞ」

「雫、アンタにとっても重要なはずよ」

「その、それで重要な事とはどういう事なのですか?」

「背中を見せてもらいたいの」

 晃と新見はそれぐらいと言う態度をしており、そして……雫は動揺していた。 ソレは、本庄の想像を超えるような態度で、本庄はニヤリと無意識に笑っていた。
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