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2章
15.待つ人
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「連絡をしておいたので、大丈夫ですよ」
そう返した新見親良だが……、彼等を待っていた招待主は、退屈そうに1人ワインを傾けていた。
「よく、来たね」
男は気安く語りかけ、グラスを軽く持ち上げる。
少々演出過剰と思われる部屋は、部屋の主である時塔皎一の趣味部屋だと言う。
趣味と言うだけあって随分と拘りが強い。
高価そうな装丁を持つ本が並ぶ本棚。
重厚なデスク、身体を預けるのに良さそうな椅子。
部屋の内部にはレコードから流れるノイズ交じりのクラシック。
「良く、来てくれたね鞍馬晃君。 私は、時塔皎一。 親良に聞いたかな? ここの警備部の主任をしている」
「油断しない方がいいですよ。 彼は柑子市をまとめる13人の幹部の1人ですから」
軽薄なのに不機嫌な新見の言葉に、時塔は僅かに顔をしかめる。
「余計な事は言わなくていい親良。 晃君にとって重要なのは、晃君が護衛を引き受けてくれるだろう雫の保護者もしていると言うこと。 雫に対して対処不能の事があれば私に連絡してくれればいい」
そう言いながらスマホが新見を介して晃に渡されれば、既に時塔の個人アドレスらしいものが登録されていた。
「よければ一杯どうかね。 温かな食事を提供するまで、もう少し時間が必要になる。 いつ、君たちが来るか分からないから、仕上げは止めさせておいたんですよ」
時塔からグラスが差し出されれば、新見が手を伸ばす。
「お前に、言った訳じゃないよ」
妙に恰好付けた様子でいた時塔が僅かに崩れ、ソレが良い具合に緊張感から晃を解放しホッと息をついたのだ……そして側に立つ雫も同じだった。
「威嚇するのは、お勧めしませんよボス」
「そんなつもりはないよ。 だから、酒を勧めた。 コレはいい酒だ。 特に、晃君には良い影響を及ぼすだろう。 今、飲まないなら帰りに持たせてあげよう。 とても特別なものだから1人で飲むように。 何時まで立っている。 座ってはどうかね? あぁ、親良は座らず茶を」
「俺は警備部に所属で、秘書ではないんですよ?」
「横に立っているだけで、給料が発生すると思うんじゃないよ」
「警戒はしているんですけど」
「今、ここで警戒する事の必要性を述べなさい」
「そうですね……。 例えば、晃君が暴走するとか?」
「脅され連れてこられたのは俺だ。 暴走してどうする」
「行き場を奪われ恨みに思っているとか? 何しろ職を失ったんですから」
新見の皮肉めいた苛立った言い方に、晃は少しばかりピリピリとした感覚を覚え放り出すように言うのは拒絶の言葉。
「分かっているなら、そんな手段を取らないでくれ」
「未練を残して欲しくなかったのですよ。 申し訳ないが、私は君に他の選択肢を与えるつもりはない」
そう告げながら時塔は視線を伏せ、ワインに口をつける。
「ごめんなさい……」
晃の袖口を小さく指先で摘まんだ雫の声に振り向く事はせず、手を軽く数度握って離した。 柔らかで滑らかな手に熱が籠ったような気がした。
随分と拙い反応だと思えば、庇護欲が刺激されている事は確かで……、ソレを見ていたらしい時塔は薄く笑った。
「仲良くできそうですね」
「彼女は、アナタ達の行為とは関係がない」
「そう、ですね。 感謝します」
そして、響くノック音。
「食事の席が整いました」
そして彼等は移動する。
時塔 皎一(ときとう こういち)
そう返した新見親良だが……、彼等を待っていた招待主は、退屈そうに1人ワインを傾けていた。
「よく、来たね」
男は気安く語りかけ、グラスを軽く持ち上げる。
少々演出過剰と思われる部屋は、部屋の主である時塔皎一の趣味部屋だと言う。
趣味と言うだけあって随分と拘りが強い。
高価そうな装丁を持つ本が並ぶ本棚。
重厚なデスク、身体を預けるのに良さそうな椅子。
部屋の内部にはレコードから流れるノイズ交じりのクラシック。
「良く、来てくれたね鞍馬晃君。 私は、時塔皎一。 親良に聞いたかな? ここの警備部の主任をしている」
「油断しない方がいいですよ。 彼は柑子市をまとめる13人の幹部の1人ですから」
軽薄なのに不機嫌な新見の言葉に、時塔は僅かに顔をしかめる。
「余計な事は言わなくていい親良。 晃君にとって重要なのは、晃君が護衛を引き受けてくれるだろう雫の保護者もしていると言うこと。 雫に対して対処不能の事があれば私に連絡してくれればいい」
そう言いながらスマホが新見を介して晃に渡されれば、既に時塔の個人アドレスらしいものが登録されていた。
「よければ一杯どうかね。 温かな食事を提供するまで、もう少し時間が必要になる。 いつ、君たちが来るか分からないから、仕上げは止めさせておいたんですよ」
時塔からグラスが差し出されれば、新見が手を伸ばす。
「お前に、言った訳じゃないよ」
妙に恰好付けた様子でいた時塔が僅かに崩れ、ソレが良い具合に緊張感から晃を解放しホッと息をついたのだ……そして側に立つ雫も同じだった。
「威嚇するのは、お勧めしませんよボス」
「そんなつもりはないよ。 だから、酒を勧めた。 コレはいい酒だ。 特に、晃君には良い影響を及ぼすだろう。 今、飲まないなら帰りに持たせてあげよう。 とても特別なものだから1人で飲むように。 何時まで立っている。 座ってはどうかね? あぁ、親良は座らず茶を」
「俺は警備部に所属で、秘書ではないんですよ?」
「横に立っているだけで、給料が発生すると思うんじゃないよ」
「警戒はしているんですけど」
「今、ここで警戒する事の必要性を述べなさい」
「そうですね……。 例えば、晃君が暴走するとか?」
「脅され連れてこられたのは俺だ。 暴走してどうする」
「行き場を奪われ恨みに思っているとか? 何しろ職を失ったんですから」
新見の皮肉めいた苛立った言い方に、晃は少しばかりピリピリとした感覚を覚え放り出すように言うのは拒絶の言葉。
「分かっているなら、そんな手段を取らないでくれ」
「未練を残して欲しくなかったのですよ。 申し訳ないが、私は君に他の選択肢を与えるつもりはない」
そう告げながら時塔は視線を伏せ、ワインに口をつける。
「ごめんなさい……」
晃の袖口を小さく指先で摘まんだ雫の声に振り向く事はせず、手を軽く数度握って離した。 柔らかで滑らかな手に熱が籠ったような気がした。
随分と拙い反応だと思えば、庇護欲が刺激されている事は確かで……、ソレを見ていたらしい時塔は薄く笑った。
「仲良くできそうですね」
「彼女は、アナタ達の行為とは関係がない」
「そう、ですね。 感謝します」
そして、響くノック音。
「食事の席が整いました」
そして彼等は移動する。
時塔 皎一(ときとう こういち)
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