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2章
14.なんでもない会話
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とは言え、友達になろうと言って友達になった経験等ないし、そもそも友達って宣言してなるものなのか?
他愛ない疑問に考えこめば、警察学校時代の同期を思い出した。 世話焼きで、お節介で、それが空回って暴走して、定期的に飲みに言っていた相手……連絡していなかったなぁ……。
「どうか、したんですか?」
「いや、友達と言うか同期だった奴に連絡していなかったなと」
「友達同士って、どんな風に遊ぶんですか?」
「遊ぶってか、同業だからなぁ……。 上手な制圧の仕方?」
遊びなのか? と、心の中で自問自答。
「制圧?」
「そう、えっと、俺が元刑事だったのは?」
「聞いています」
「例えばだ、酔って暴れる女性をどう制圧するか。 下手に触れば訴えられるし、向こうは酔っ払いな挙句、力の差を埋めようとするから全力で来る。 爪とかヒールとか、噛みついてくるとか、髪を掴んでくるとか」
他愛ない日常の会話なのに、興味深く聞いてくれれば、気分が良くなると言うもの。
「基本はこっちから手出しをできない。 で、どうすればいいか? って、話になる訳だ。 雫ならどうする?」
「そうねぇ……とうがらしスプレーとか?」
「とうがらしじゃなく催涙スプレーだな。 防護が必要、公務執行妨害への対処、犯人の逃亡、犯罪抑止時に催涙スプレーの使用が認められる。 通販でも購入できるが、一般人の場合、所持の事情を明確に説明できる状態でなければ凶器隠匿携帯罪に問われるから、何故持っているか説明できるようにしておいた方がいいぞ」
「そ、そうですね……。 私も、もっと身を守る努力をした方が、良いのかもしれません」
「これからは、俺が守るから心配するな」
雫の顔が急激に赤くなりモジモジした様子を見せてくる。
なぜ? と、晃が考え込んだのは数秒。 誤解を与えた事に気づき慌てつつ、言葉は平静を保ち晃は一言付け加えた。
「そのために呼ばれたんだからな」
「そ、そうでしたね!! お、お茶を入れ直してきます」
「いや、飲み過ぎると食事が出来なくなる」
「そうでしたね……」
「「……」」
「ところで、ココは山奥の割に雪が少ないんだな」
「地熱の関係でしょうか? お風呂の湯は温泉なんですよ」
ぎこちなくも、会話を戻す事が出来た事に晃も雫も安堵する。
「まだついて間もないんだが、山奥の割に贅沢だな……」
「山奥だからこその贅沢と言うべきでしょうか? 買い物とかは、少し不便ですけどね」
「そういえば買い物とかどうしているんだ? 中央まで出るのか?」
「そうですねぇ……飲食の類なら食堂に言えば、食材を分けてもらえます。 服とかそういうのは中央に出るか、通販。 制服、職務に関わるものなら申請すれば支給を受ける事ができますよ」
「雫が着ているそういう着物は?」
「皎一さんが出張の時に買って来てくれるんです。 あとモデル料としてそのまま貰う事もありますね……」
「良い友達だな」
「いえ……友達と言うか、利害の一致と言うか……」
「そういうのは友達とは違うのか?」
「違う、かなぁ……。 加奈子は……私を好きだって言ってくれたし。 他の人は、交換条件ですし……」
加奈子とは? 聞かずとも、あの画家なのは想像がついた。
再び沈黙が訪れ、奇妙な停滞が部屋を占める。
2人を助けたのはチャイムの音だった。
「すみません。 少し仕事がごたついてしまいました」
ヘラヘラとした様子で言う新見親良に、不機嫌そうな顔を晃は見せる。
「俺は構わないが……食事の約束ってのを、勝手に遅れていいのか?」
これでも、感謝はしているのだ。
伝わっているかどうかは知らないが……。
他愛ない疑問に考えこめば、警察学校時代の同期を思い出した。 世話焼きで、お節介で、それが空回って暴走して、定期的に飲みに言っていた相手……連絡していなかったなぁ……。
「どうか、したんですか?」
「いや、友達と言うか同期だった奴に連絡していなかったなと」
「友達同士って、どんな風に遊ぶんですか?」
「遊ぶってか、同業だからなぁ……。 上手な制圧の仕方?」
遊びなのか? と、心の中で自問自答。
「制圧?」
「そう、えっと、俺が元刑事だったのは?」
「聞いています」
「例えばだ、酔って暴れる女性をどう制圧するか。 下手に触れば訴えられるし、向こうは酔っ払いな挙句、力の差を埋めようとするから全力で来る。 爪とかヒールとか、噛みついてくるとか、髪を掴んでくるとか」
他愛ない日常の会話なのに、興味深く聞いてくれれば、気分が良くなると言うもの。
「基本はこっちから手出しをできない。 で、どうすればいいか? って、話になる訳だ。 雫ならどうする?」
「そうねぇ……とうがらしスプレーとか?」
「とうがらしじゃなく催涙スプレーだな。 防護が必要、公務執行妨害への対処、犯人の逃亡、犯罪抑止時に催涙スプレーの使用が認められる。 通販でも購入できるが、一般人の場合、所持の事情を明確に説明できる状態でなければ凶器隠匿携帯罪に問われるから、何故持っているか説明できるようにしておいた方がいいぞ」
「そ、そうですね……。 私も、もっと身を守る努力をした方が、良いのかもしれません」
「これからは、俺が守るから心配するな」
雫の顔が急激に赤くなりモジモジした様子を見せてくる。
なぜ? と、晃が考え込んだのは数秒。 誤解を与えた事に気づき慌てつつ、言葉は平静を保ち晃は一言付け加えた。
「そのために呼ばれたんだからな」
「そ、そうでしたね!! お、お茶を入れ直してきます」
「いや、飲み過ぎると食事が出来なくなる」
「そうでしたね……」
「「……」」
「ところで、ココは山奥の割に雪が少ないんだな」
「地熱の関係でしょうか? お風呂の湯は温泉なんですよ」
ぎこちなくも、会話を戻す事が出来た事に晃も雫も安堵する。
「まだついて間もないんだが、山奥の割に贅沢だな……」
「山奥だからこその贅沢と言うべきでしょうか? 買い物とかは、少し不便ですけどね」
「そういえば買い物とかどうしているんだ? 中央まで出るのか?」
「そうですねぇ……飲食の類なら食堂に言えば、食材を分けてもらえます。 服とかそういうのは中央に出るか、通販。 制服、職務に関わるものなら申請すれば支給を受ける事ができますよ」
「雫が着ているそういう着物は?」
「皎一さんが出張の時に買って来てくれるんです。 あとモデル料としてそのまま貰う事もありますね……」
「良い友達だな」
「いえ……友達と言うか、利害の一致と言うか……」
「そういうのは友達とは違うのか?」
「違う、かなぁ……。 加奈子は……私を好きだって言ってくれたし。 他の人は、交換条件ですし……」
加奈子とは? 聞かずとも、あの画家なのは想像がついた。
再び沈黙が訪れ、奇妙な停滞が部屋を占める。
2人を助けたのはチャイムの音だった。
「すみません。 少し仕事がごたついてしまいました」
ヘラヘラとした様子で言う新見親良に、不機嫌そうな顔を晃は見せる。
「俺は構わないが……食事の約束ってのを、勝手に遅れていいのか?」
これでも、感謝はしているのだ。
伝わっているかどうかは知らないが……。
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