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2章
09.不死のための死 02
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白衣を着た研究員たちは、本庄を無視し実験の結果にソレゾレの思いを語りだしていた。
「ここまで体力を消耗するとは……改善が必要ですね」
「活性化させた人工羊水に入れた状態で、再生薬を使うのはどうでしょう」
「あぁ、彼等の血液を成分分析にかけてください。 数値次第では、既存の人工羊水以上の数値を叩きだすかもしれません」
「止めて、触らないで!! 彼等は、卒業後は警備部に所属する予定だったのよ。 彼等は私達の仲間なのよ」
「彼等の身体は、受け入れ先機関の所有となる。 そう言う契約となっている事をご存じありませんか?」
「はっ、貴方達は最初から彼等を助ける気なんて無かった。 人体実験の道具としか見ていなかった。 そう言う事なのね!!」
「いいえ、私達は現存する最善の治療を行いました。 ただ、最先端の医療と言うものは何時だってリスクが付きまとうものです」
「最善の治療?! 嘘よ!! 本気で治療する気があったなら、貴方達が所有している呪われた娘の血があったでしょう!! なぜ、ソレを使ってくれなかったの!!」
本庄の叫びに、白衣の男は馬鹿馬鹿しいと笑う。
「呪われた娘から提供される血は月200ml。 それの競争率がどれだけ厳しいか分かっているのか!! 彼女の回復能力があるからこそ、それほどの提供を可能としているが、その血を得るため私達がどれほどの苦労をしているのかご存じなのですか!! あれほどの傷を回復させるためには、譲り受けた血の殆どを使う事になる。 それで、実験が滞れば、来年からは提供を受ける事が出来なくなるのですよ!! それがどれほどの損失であるか分かっていない!! 私達は今できる私達の治療を、彼等には過分とも言える治療を施しました」
「彼等は優秀な子達だったわ」
「貴方にとってはそうかもしれません」
「未来ある子供達の命、貴方達より余程価値があるわ!!」
「ですから、ソレは貴方が感じている……肉体関係と情を絡めた価値でしょう」
「侮辱だわ!! 悪趣味な……実験体欲しさに救急の受け入れを提案したなんて……訴えてやるわ……」
治療室を眺める廊下。
柑子市と言う都市が、不老不死を目的として作られている以上、病院を行き来する者達の大半は、不老不死研究の関係者と言えるだろう。
中肉中背の30代に見えるスーツ姿の男が、看護師に車椅子を押される少女の横を歩いていたが、本庄エリィの姿を確認し看護師に軽く手を上げ、先に行くようにと伝える。
そして、スーツ姿の男は激高する本庄エリィの背後から声をかけた。
「お止めなさい。 そんな事をしても君が不利になるだけですよ」
「アナタが! なぜコンナ所にいるんですか!! 藤原教授!!」
「助教授ですよ。 まだね」
「……どうして私が不利だっておっしゃるの? 私は間違っていないわ……。 私を説き伏せようとしても無駄なんですから!! 誰に言われて私を丸め込みに来たのかしらないけど、」
勢いよく告げる本庄に藤原と呼ばれた男は、ボソボソと低い声で耳元に話しかけ続ける。
「本庄さん、君のために来た訳ではありません」
「なら、私に構わないで!!」
「ですが、彼等を責めるのは本末転倒と言うものです」
「勝手な事を言わないで、何も知らない癖に」
「いいえ……誰だって知っています。 彼等は、子供達は触れてはいけない者に触れました。 ここに居る者で知らない者はいません……。 そこにあえて触れると言うなら、彼等は自ら死を選んだと言う事なのですよ」
「あの子達は、うちに来る事が決まっていたのよ。 あり得ない!!」
「そう、だから……君が知るべきは、なぜ、彼等が助からなかったではなく、なぜ、彼等は死を望んだかではないかな?」
「……」
本庄エリィはキツク拳を握り、唇を噛みしめ、そして……小さな子供のように頷いた。
藤原 法一(ふじわら のりかず)
「ここまで体力を消耗するとは……改善が必要ですね」
「活性化させた人工羊水に入れた状態で、再生薬を使うのはどうでしょう」
「あぁ、彼等の血液を成分分析にかけてください。 数値次第では、既存の人工羊水以上の数値を叩きだすかもしれません」
「止めて、触らないで!! 彼等は、卒業後は警備部に所属する予定だったのよ。 彼等は私達の仲間なのよ」
「彼等の身体は、受け入れ先機関の所有となる。 そう言う契約となっている事をご存じありませんか?」
「はっ、貴方達は最初から彼等を助ける気なんて無かった。 人体実験の道具としか見ていなかった。 そう言う事なのね!!」
「いいえ、私達は現存する最善の治療を行いました。 ただ、最先端の医療と言うものは何時だってリスクが付きまとうものです」
「最善の治療?! 嘘よ!! 本気で治療する気があったなら、貴方達が所有している呪われた娘の血があったでしょう!! なぜ、ソレを使ってくれなかったの!!」
本庄の叫びに、白衣の男は馬鹿馬鹿しいと笑う。
「呪われた娘から提供される血は月200ml。 それの競争率がどれだけ厳しいか分かっているのか!! 彼女の回復能力があるからこそ、それほどの提供を可能としているが、その血を得るため私達がどれほどの苦労をしているのかご存じなのですか!! あれほどの傷を回復させるためには、譲り受けた血の殆どを使う事になる。 それで、実験が滞れば、来年からは提供を受ける事が出来なくなるのですよ!! それがどれほどの損失であるか分かっていない!! 私達は今できる私達の治療を、彼等には過分とも言える治療を施しました」
「彼等は優秀な子達だったわ」
「貴方にとってはそうかもしれません」
「未来ある子供達の命、貴方達より余程価値があるわ!!」
「ですから、ソレは貴方が感じている……肉体関係と情を絡めた価値でしょう」
「侮辱だわ!! 悪趣味な……実験体欲しさに救急の受け入れを提案したなんて……訴えてやるわ……」
治療室を眺める廊下。
柑子市と言う都市が、不老不死を目的として作られている以上、病院を行き来する者達の大半は、不老不死研究の関係者と言えるだろう。
中肉中背の30代に見えるスーツ姿の男が、看護師に車椅子を押される少女の横を歩いていたが、本庄エリィの姿を確認し看護師に軽く手を上げ、先に行くようにと伝える。
そして、スーツ姿の男は激高する本庄エリィの背後から声をかけた。
「お止めなさい。 そんな事をしても君が不利になるだけですよ」
「アナタが! なぜコンナ所にいるんですか!! 藤原教授!!」
「助教授ですよ。 まだね」
「……どうして私が不利だっておっしゃるの? 私は間違っていないわ……。 私を説き伏せようとしても無駄なんですから!! 誰に言われて私を丸め込みに来たのかしらないけど、」
勢いよく告げる本庄に藤原と呼ばれた男は、ボソボソと低い声で耳元に話しかけ続ける。
「本庄さん、君のために来た訳ではありません」
「なら、私に構わないで!!」
「ですが、彼等を責めるのは本末転倒と言うものです」
「勝手な事を言わないで、何も知らない癖に」
「いいえ……誰だって知っています。 彼等は、子供達は触れてはいけない者に触れました。 ここに居る者で知らない者はいません……。 そこにあえて触れると言うなら、彼等は自ら死を選んだと言う事なのですよ」
「あの子達は、うちに来る事が決まっていたのよ。 あり得ない!!」
「そう、だから……君が知るべきは、なぜ、彼等が助からなかったではなく、なぜ、彼等は死を望んだかではないかな?」
「……」
本庄エリィはキツク拳を握り、唇を噛みしめ、そして……小さな子供のように頷いた。
藤原 法一(ふじわら のりかず)
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