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1章
07.新居
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鞍馬晃が、児珠雫そして新見親良の2人と共に訪れたのは柑子市において警察機構の代わりをする警備部の独身用マンション。 寮と言うが建物自体はホテル風の作りとなっている。
同じ建物に住まいしていると言う児珠雫は一人で部屋へと向かい、晃は新見親良の案内を受ける事になった。
「パンフレットです」
そう言って新見が晃に冊子を渡した。
「まさか、入居者募集なんてしてないよな?」
「していませんよ。 学生達が勉強ついでに作ったものです。 でも、新入りの案内には結構便利なんですよ」
個室は、1LDK~3LDK
「家族連れもいるのか?」
ささやかな疑問。
「家族での入居はありませんね。 家庭を持っている人達は、大抵一軒家を借りますから。 ここに居る者達は、学生の頃から一緒にいるんで妙な馴れ合いがあるんです。 だから家族になる者達は嫌がる。 広い部屋に住みたければ、出世すると良いですよ」
「広いと、掃除が面倒だ」
「食事は食堂で。 洗濯、清掃は事務局に依頼しておけばしてくれますよ」
「人に、自分の物を触らせたくない」
「そう言っていたらしいですね」
僅かな含みを感じた。
「そうしたら死人は出なかったか?」
嫌味たらしく言えば、新見は苦笑交じりに応じた。
「可能性としては無いとは言えません。 アナタは雫ちゃんの護衛として招かれたのですから。 生存者は3名。 事情聴取に同席しませんか?」
「なぜ、付き合わせたい?」
「別に付き合わせたい訳ではありませんが、理解するのに役立つのでは? そう思ったんですよ」
「もう事件の全貌が見えているのか?」
「いいえ……。 ただ、俺は、いえ、警備部の者達の大半があの子達を知っている。 状況を考えれば、雫ちゃんが殺されかけた事でカラスが逆襲をした。 それだけの話なのですが、俺達は知っているんです。 あの子達には雫ちゃんを殺す理由がありませんし、あの子達はルールを愛していた。 彼等は、正義的だった」
当たり前のように語るカラスの逆襲は、今は横に置いて置こうと思った。 今重点を置くのは人の行動で、鳥の行動ではないから。
「……なら、人を殺すと言う異常な行動に出る事に至った状況は何だ?」
「状況?」
「法を破ると言う行動に至る状況と言うものがある。 例えるなら平穏な日常を送る事に何の問題もない子供達である場合……」
1、年齢的な安全の確保
2、地位ある親への安心
3、特別な自分達への欲求
4、スリルを味わいたい
5、集団で行動する事の高揚感
6、承認欲求
「逆に、孤立感、ストレス、貧困等の状況も行動のための動機となるのでは?」
「ソレが動機となった場合、集団の性質が違い、行動も違ってくる。 例えば臆病で慎重になり、警戒心が強く、日常的にストレス行動がみられるようになる。 彼等にどんな状況の変化があった?」
「ソレは……、そうですね……何らかの心理的変化があったと言う事でしょうか? 生き残りが3名。 事情を聞けば確かになるはずです。 それで、聴取どうしますか?」
「そうだな……付き合おう」
「了解。 そのように手続きを取っておくから、明日は付き合って下さい。 では、部屋はコチラです」
鍵を渡し、新見がその場を去ろうとすれば、背後から晃が声をかける。
「そうだ。 食事は勝手に食堂を使って良いのか?」
「直ぐに警備部の証明書を発行しましょう。 あぁ、そうですね……しばらくは俺に同伴してもらい顔見せをするか、一気に新人歓迎会で済ませるか、朝礼で挨拶をするか、選んでください」
今の状況を考えれば、どの選択も面倒そうに思える。
「普段はどうしている?」
「さっきも言ったけれど、ここに来る者達は事前に顔見知りである事が殆どです。 多くは学生の段階で、警備部の者と訓練を一緒にするようになりますから、その時に挨拶をします」
「俺のココでの立場は?」
「かなり特殊な立場になるでしょうね。 上司の指示で外部からのスカウトと言うのもありますが、職務内容も雫ちゃんの警護と言う一般の警備部の者達と違います。 なので他の人達よりも少しばかり地位が高い。 だから、そうですね……嫉妬は覚悟しておいてください」
にこやかに言われれ晃は肩を竦めた。
「分かった。 なら、必要な人間だけ紹介してくれればいい」
「はいよ。 後、今日の夕食は上司と取ってもらいますから、小ぎれいな恰好をしていてください。 小汚い恰好は止めて下さいね」
濡れた足元を指さした。
「へいへい」
「時間には迎えに来ますから、それまで部屋の片付けをするなり、風呂に入るなり、ベッドに転がるなり、好きなようにしていてください。 後、部屋にはパソコンが準備されていますが、検索閲覧は出来ても、外部への情報発信に関わる行為は制限されていますのでご了承下さい」
「ソレは、警備部の性質上か?」
「いいえ、都市全域です」
そう言って笑う新見の表情には、色々と含まれたものがあり、晃は表情を隠し視線を伏せた。
「なるほど、分かった」
同じ建物に住まいしていると言う児珠雫は一人で部屋へと向かい、晃は新見親良の案内を受ける事になった。
「パンフレットです」
そう言って新見が晃に冊子を渡した。
「まさか、入居者募集なんてしてないよな?」
「していませんよ。 学生達が勉強ついでに作ったものです。 でも、新入りの案内には結構便利なんですよ」
個室は、1LDK~3LDK
「家族連れもいるのか?」
ささやかな疑問。
「家族での入居はありませんね。 家庭を持っている人達は、大抵一軒家を借りますから。 ここに居る者達は、学生の頃から一緒にいるんで妙な馴れ合いがあるんです。 だから家族になる者達は嫌がる。 広い部屋に住みたければ、出世すると良いですよ」
「広いと、掃除が面倒だ」
「食事は食堂で。 洗濯、清掃は事務局に依頼しておけばしてくれますよ」
「人に、自分の物を触らせたくない」
「そう言っていたらしいですね」
僅かな含みを感じた。
「そうしたら死人は出なかったか?」
嫌味たらしく言えば、新見は苦笑交じりに応じた。
「可能性としては無いとは言えません。 アナタは雫ちゃんの護衛として招かれたのですから。 生存者は3名。 事情聴取に同席しませんか?」
「なぜ、付き合わせたい?」
「別に付き合わせたい訳ではありませんが、理解するのに役立つのでは? そう思ったんですよ」
「もう事件の全貌が見えているのか?」
「いいえ……。 ただ、俺は、いえ、警備部の者達の大半があの子達を知っている。 状況を考えれば、雫ちゃんが殺されかけた事でカラスが逆襲をした。 それだけの話なのですが、俺達は知っているんです。 あの子達には雫ちゃんを殺す理由がありませんし、あの子達はルールを愛していた。 彼等は、正義的だった」
当たり前のように語るカラスの逆襲は、今は横に置いて置こうと思った。 今重点を置くのは人の行動で、鳥の行動ではないから。
「……なら、人を殺すと言う異常な行動に出る事に至った状況は何だ?」
「状況?」
「法を破ると言う行動に至る状況と言うものがある。 例えるなら平穏な日常を送る事に何の問題もない子供達である場合……」
1、年齢的な安全の確保
2、地位ある親への安心
3、特別な自分達への欲求
4、スリルを味わいたい
5、集団で行動する事の高揚感
6、承認欲求
「逆に、孤立感、ストレス、貧困等の状況も行動のための動機となるのでは?」
「ソレが動機となった場合、集団の性質が違い、行動も違ってくる。 例えば臆病で慎重になり、警戒心が強く、日常的にストレス行動がみられるようになる。 彼等にどんな状況の変化があった?」
「ソレは……、そうですね……何らかの心理的変化があったと言う事でしょうか? 生き残りが3名。 事情を聞けば確かになるはずです。 それで、聴取どうしますか?」
「そうだな……付き合おう」
「了解。 そのように手続きを取っておくから、明日は付き合って下さい。 では、部屋はコチラです」
鍵を渡し、新見がその場を去ろうとすれば、背後から晃が声をかける。
「そうだ。 食事は勝手に食堂を使って良いのか?」
「直ぐに警備部の証明書を発行しましょう。 あぁ、そうですね……しばらくは俺に同伴してもらい顔見せをするか、一気に新人歓迎会で済ませるか、朝礼で挨拶をするか、選んでください」
今の状況を考えれば、どの選択も面倒そうに思える。
「普段はどうしている?」
「さっきも言ったけれど、ここに来る者達は事前に顔見知りである事が殆どです。 多くは学生の段階で、警備部の者と訓練を一緒にするようになりますから、その時に挨拶をします」
「俺のココでの立場は?」
「かなり特殊な立場になるでしょうね。 上司の指示で外部からのスカウトと言うのもありますが、職務内容も雫ちゃんの警護と言う一般の警備部の者達と違います。 なので他の人達よりも少しばかり地位が高い。 だから、そうですね……嫉妬は覚悟しておいてください」
にこやかに言われれ晃は肩を竦めた。
「分かった。 なら、必要な人間だけ紹介してくれればいい」
「はいよ。 後、今日の夕食は上司と取ってもらいますから、小ぎれいな恰好をしていてください。 小汚い恰好は止めて下さいね」
濡れた足元を指さした。
「へいへい」
「時間には迎えに来ますから、それまで部屋の片付けをするなり、風呂に入るなり、ベッドに転がるなり、好きなようにしていてください。 後、部屋にはパソコンが準備されていますが、検索閲覧は出来ても、外部への情報発信に関わる行為は制限されていますのでご了承下さい」
「ソレは、警備部の性質上か?」
「いいえ、都市全域です」
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