6 / 129
1章
03.カラスが導く先 02
しおりを挟む
白い雪の上にポツポツと落ちる赤。
そして広がる赤の上に群がるカラスの黒。
赤い色だけが鮮明で、カラスの声が不気味に響く。
カラスの集う場所に人がいるのは確かだ。
だが、本庄に攻撃するなと言われていた事を思い出し、振り払おうと突撃するのを晃は一瞬躊躇い。 それでも、カラスに向かって手を振るった。
「退けっ!!」
晃の声に、カラスは啼き声を1度声高に上げて飛び去っていく。
だが、カラス達はどこかに行くのではなく、ジッと晃を見ていた。
カラスが見ている。
カラスが集っていた先には血の主がいた。
少年が1人。
少女が3人。
制服が赤に染まり、内臓がはみ出ていた。
ヒクヒクと手が痙攣しているが、もう生きてはいないだろう。
それよりも、晃はカラスの視線の先が気になった。
血と足跡が雪の上に残っている。
引き押せられるように歩き出す晃の背後で本庄エリィが叫んだ。
「あぁああああああああ、何故よ!!」
本庄が叫び倒れた人々に追いすがる。
「誰か、誰かなんとかしてよ!!」
そう晃に視線が向けられた。
「俺は、腹から内臓を出し、突かれながら生きていられる人間を知らない」
あーーー!!
カラスが、晃を急かすかのように声を上げた。
彼等が何処で何をしていたのか?
カラスは何を見ているのか?
カラスの鳴き声と、羽ばたきに急かされたように走りだせば、カラスが低く横を並走するように飛んでいた。 貯水槽の側に少女が倒れていた。
ぽたぽたと落ちる血は、先の3人に比べればないにも等しい。
むしろ気にするべきは、周囲に足跡を残さず少女がその場に倒れている事。 少女が落下したのは明らかだった。 高さは2mと少しと言うところだろうか? 雪がクッションとなっており死んでいると言う事はないだろう。 身体は冷えるだろうが……。
「大丈夫か?」
脈を確認しようとすれば、手が勢い良く振り払われた。 握りしめられた手のひらが赤く……そして振り返った女性は睨みつけ……るための瞳を持っていなかった。
「無事か?」
「……」
「何があった?」
「……」
「人が死んでいるんだぞ!!」
「ウルサイわねぇ!! どっか行きなさいよ!! 私は、私は……大切な時間を……大切な光景を目に焼き付けているのだから」
意味が分からない。
途中から酔ったように語りだしていたが、行けと言われて行けるはずもない。 だが、カラスはずっと不満を述べるように、叱りつけるように鳴いていた。
「邪魔しないでくれる?」
冷ややかな声。
眼球を失っているにも関わらず、彼女は晃の手を上手く払い退けていた。
せめて、着ていたコートを脱ぎ着せようとすれば、貯水槽の上でカラス達が叫ぶ。
ああーー!!
そして広がる赤の上に群がるカラスの黒。
赤い色だけが鮮明で、カラスの声が不気味に響く。
カラスの集う場所に人がいるのは確かだ。
だが、本庄に攻撃するなと言われていた事を思い出し、振り払おうと突撃するのを晃は一瞬躊躇い。 それでも、カラスに向かって手を振るった。
「退けっ!!」
晃の声に、カラスは啼き声を1度声高に上げて飛び去っていく。
だが、カラス達はどこかに行くのではなく、ジッと晃を見ていた。
カラスが見ている。
カラスが集っていた先には血の主がいた。
少年が1人。
少女が3人。
制服が赤に染まり、内臓がはみ出ていた。
ヒクヒクと手が痙攣しているが、もう生きてはいないだろう。
それよりも、晃はカラスの視線の先が気になった。
血と足跡が雪の上に残っている。
引き押せられるように歩き出す晃の背後で本庄エリィが叫んだ。
「あぁああああああああ、何故よ!!」
本庄が叫び倒れた人々に追いすがる。
「誰か、誰かなんとかしてよ!!」
そう晃に視線が向けられた。
「俺は、腹から内臓を出し、突かれながら生きていられる人間を知らない」
あーーー!!
カラスが、晃を急かすかのように声を上げた。
彼等が何処で何をしていたのか?
カラスは何を見ているのか?
カラスの鳴き声と、羽ばたきに急かされたように走りだせば、カラスが低く横を並走するように飛んでいた。 貯水槽の側に少女が倒れていた。
ぽたぽたと落ちる血は、先の3人に比べればないにも等しい。
むしろ気にするべきは、周囲に足跡を残さず少女がその場に倒れている事。 少女が落下したのは明らかだった。 高さは2mと少しと言うところだろうか? 雪がクッションとなっており死んでいると言う事はないだろう。 身体は冷えるだろうが……。
「大丈夫か?」
脈を確認しようとすれば、手が勢い良く振り払われた。 握りしめられた手のひらが赤く……そして振り返った女性は睨みつけ……るための瞳を持っていなかった。
「無事か?」
「……」
「何があった?」
「……」
「人が死んでいるんだぞ!!」
「ウルサイわねぇ!! どっか行きなさいよ!! 私は、私は……大切な時間を……大切な光景を目に焼き付けているのだから」
意味が分からない。
途中から酔ったように語りだしていたが、行けと言われて行けるはずもない。 だが、カラスはずっと不満を述べるように、叱りつけるように鳴いていた。
「邪魔しないでくれる?」
冷ややかな声。
眼球を失っているにも関わらず、彼女は晃の手を上手く払い退けていた。
せめて、着ていたコートを脱ぎ着せようとすれば、貯水槽の上でカラス達が叫ぶ。
ああーー!!
0
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
二人称・短編ホラー小説集 『あなた』
シルヴァ・レイシオン
ホラー
普通の小説に読み飽きたそこの『あなた』
そんな『あなた』にオススメします、二人称と言う「没入感」+ホラーの旋律にて、是非、戦慄してみて下さい・・・・・・
※このシリーズ、短編ホラー・二人称小説『あなた』は、色んな"視点"のホラーを書きます。
様々な「死」「痛み」「苦しみ」「悲しみ」「因果」などを描きますので本当に苦手な方、なんらかのトラウマ、偏見などがある人はご遠慮下さい。
小説としては珍しい「二人称」視点をベースにしていきますので、例えば洗脳されやすいような方もご観覧注意、願います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママが呼んでいる
杏樹まじゅ
ホラー
鐘が鳴る。夜が来る。──ママが彼らを呼んでいる。
京都の大学に通う九条マコト(くじょうまこと)と恋人の新田ヒナ(あらたひな)は或る日、所属するオカルトサークルの仲間と、島根にあるという小さな寒村、真理弥村(まりやむら)に向かう。隠れキリシタンの末裔が暮らすというその村には百年前まで、教会に人身御供を捧げていたという伝承があるのだった。その時、教会の鐘が大きな音を立てて鳴り響く。そして二人は目撃する。彼らを待ち受ける、村の「夜」の姿を──。
視える棺―この世とあの世の狭間で起こる12の奇譚
中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、「気づいてしまった者たち」 である。
誰もいないはずの部屋に届く手紙。
鏡の中で先に笑う「もうひとりの自分」。
数え間違えたはずの足音。
夜のバスで揺れる「灰色の手」。
撮ったはずのない「3枚目の写真」。
どの話にも共通するのは、「この世に残るべきでない存在」 の気配。
それは時に、死者の残した痕跡であり、時に、境界を越えてしまった者の行き場のない魂でもある。
だが、"それ"に気づいた者は、もう後戻りができない。
見てはいけないものを見た者は、見られる側に回るのだから。
そして、最終話「最期のページ」。
読み進めることで、読者は気づくことになる。
なぜ、この短編集のタイトルが『視える棺』なのか。
なぜ、彼らは"見えてしまった"のか。
そして、最後のページに書かれていたのは——
「そして、彼が振り返った瞬間——」
その瞬間、あなたは気づくだろう。
この物語の本当の意味に。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/3/11:『まぐかっぷ』の章を追加。2025/3/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/10:『ころがるゆび』の章を追加。2025/3/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/9:『かおのなるき』の章を追加。2025/3/16の朝8時頃より公開開始予定。
2025/3/8:『いま』の章を追加。2025/3/15の朝8時頃より公開開始予定。
2025/3/7:『しんれいしゃしん』の章を追加。2025/3/14の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/6:『よふかし』の章を追加。2025/3/13の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/5:『つくえのしたのて』の章を追加。2025/3/12の朝4時頃より公開開始予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる