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1章

02.カラスの導く先 01

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 車を進めるほどに数を増すカラス。
 ソレは、空を覆うかのようだった。

 鳥害、ヒッチコック、そんなものを一瞬連想したが、すぐにソレを取り消した。

 あぁ、そうじゃないと晃は思った。

 違うのだと……。

 これは……人の世のカラスがざわついているのではなく、カラスの世で不当な行為をした人間が排斥されようとしているんだ。 晃は自然と考えていた。

 この世界では、俺達が悪である。

「なんだ?!」

 カラスの声に混ざり人の叫びが聞こえたような気がして、窓を開く。

「寒いんですけど!!」

 不満そうにしつつも、ギリギリまで速度を上げている本庄エリィが怒鳴りつけてきた。

「何か聞こえたような気がした」

「えぇ、私にもカラスの鳴き声は聞こえていますよ!!」

 本庄は、意地の悪い様子で正面をみたまま晃に聞き返す。 が、カラスの鳴き声の中に男女の悲鳴と助けを求める声が聞こえた。

 カラスで木々を黒く染めあげている場所は、鉄筋コンクリート作りの大きな建物を作っている最中で、工事中の現場に本庄は車を止め降り走り出す。 俺はソレに続いた。

「待っていてくれて良いんですよ」

 挑発めいた口調だが、瞳も口元も真剣で余計な会話を拒んでいた。 数日一緒に過ごしていたが、そんな本庄の様子は初めてだった。

「いや一緒に行こう。 で、何処に向かっているんだ?!」

「そんなもの、カラスに聞いて下さい!! アレの中心部に何かが起こっているんです」

 無数に飛び交うカラスは、無秩序に見え法則性があるらしい。 そして側に急降下してきたカラスが一羽。

「攻撃はやめてください。 コチラから仕掛けない限り攻撃はしてきませんから。 それよりも、道案内をしてくれているようですね。 珍しい……」

 なら、この先にはカラスに攻撃をした奴らがいるのだろうか?

 そう思えば、なんだソレだけの事か……と、安堵出来る訳等無い。 風に乗って血の匂いが流れてくる。

「警察と救急に連絡は?」

「カラスが集まり始めた時点で動いているはずよ。 柑子市は警察ではなく対応するのは警備員なんです」

 後に説明を受ける事になるのだが、柑子市、市と名称はついているが個人所有の敷地なため、治外法権と言う扱いがなされているのだと言う事だった。



 何時の間にか、カラスに先導され先を走っていた本庄を晃が追い越していた。

 カラスの騒めき。
 聞こえていた人の叫びは、今はもうない。

 白い雪の上に集まる黒い集団。
 そして、そこから広がる赤。
 そんな景色が、2人の目の前に広がる。

鞍馬 晃(くらま あきら)
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