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前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい
SS ヴィズとアズの日常 01
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ドロテアの乱と呼ばれた騒乱によって、ギルモア王城周辺地域を流浪する人獣達によって、ギルモアは変わった、違う、コレが国かとみられるようになりはじめた。
遠方の国とは、互いの国の賢者を通じて外交関係が深まった。 温かな地域特有の果物に砂糖は、どこの国も取引を求めており……水路を作り、荒野を耕す作業が進められている。
果物の乾燥。
濃縮果汁。
様々な方法を試し正解を導きだす。
シアの持つ賢者の知識は幅広くはあるけれど決して緻密でもなければ、奥が深い訳でもない。 本人曰く。
『だって、興味が無かったんだもの』
と言う事だ。 それでも、他の国の賢者に比べれば知識は多い方だし、魔力も多く、生活に役立つ魔法も多く持っている。 だけれど、人獣の多くは魔力を持ち合わせていないし、ソレを当たり前に考える訳にはいかない。
だから、アズは今日も農園に訪れ果物のより良い保存方法を、農園の女性達と共に考えているところだった。
地響きがなり、大地が揺れた。
火にかけた鍋が大きく揺れ、ぐつぐつ煮立った果汁が波を打つ。
「みんな火から離れるのよ!!」
アズが叫ぶ頃には、全員が安全を確保しており、アズは大きく息をついた。
「なにを……しているのよ……」
地響きの方向へ視線を向けアズはボソリと呟き、怒りと共に走り出した。 向かう先は開墾中の荒野で、奇妙な形に横幅3m長さ10mぐらいの範囲で土が盛り上がっているのが遠くからでもわかる。
ギルモア国第一王子ヴィズがやらかした事だ。 王族としては弱いとは言ってもこれぐらいの事はやってのける事は可能なのだ。
「あぁ、アズ。 コッチは順調に進んでいる」
「何が順調ですか!! 土を盛り上げただけでどうなると言うのですか!! こ、こ、から!! 土を柔らかくして、石灰と肥料を混ぜこんで水をまいて土を作らなければいけないんですよ!! もうぉ、本当にヴィズったらぁ」
「だが……隆起しているんだから、柔らかくはなっているだろう」
何処か拗ねた様子でヴィズが言えば、はぁ……とアズは溜息をつく。
「それに、使うように言われていた道具はどうしたんですか?」
「そこに」
「道具だって、コレから土地を広げるに相応しい改良を加えるには試験使用が必要なんです。 効率を上げれば良いと言うものではありません。 いえ、そういうとコレが効率的と言っているようですが、それも違いますからね」
「道具なんて何を使っても一緒だろう?」
「誰もが、アナタのように怪力ではないんですよ」
言われっぱなし状態のヴィズが不快そうに顔を歪めれば、少し間をおいてアズは言いなおした。
「もし道具が誰にでも効率よく利用できるなら、それは他国に対する商売となります。 それに力と繊細さと観察眼となれば、王族の中でアナタに勝るものはないでしょう。 だから……この仕事を王はアナタに任せたのですよ。 決して庶民となれ等と言って言る訳ではありませんの。 私達は、これから……彼等の作り出すものを他国に売りに出す事が仕事なんですから」
アズの言葉が徐々にキツクなるごとにヴィズの表情が曇っていった。 こういうところを見れば、双子とヴィズが兄弟なのだとよくわかると言うものだ。
「……」
「わかりまして?」
「……分かったよ……」
「本当に?」
「分かったって……!?」
庶民とされる人々の前で、婚約者であるアズに叱られる姿等、屈辱でしかなく……怒りのままに声を荒げようとしたところ……ヴィズはアズに抱き着かれ言葉を失い赤面をする。
「なっ、何をするんだ!!」
「ご褒美ですわ」
「な、何の……さっきまで怒っていた癖に」
「アナタへのご褒美ではなく、頑張った私へのご褒美ですの。 ダメですの?!」
「い、いや……人前でだなぁ……」
周囲の視線は優しく、ほほえましい物を見るかのように2人を見ていて、ヴィズは真っ赤になりながらも、アズの背に手を回し、大好きな赤い髪を撫でた。
アズの耳に聞こえるヴィズの鼓動は、安堵したように穏やかなものになっていた。 慣れない場所、慣れない人、そんな人達とヴィズとの間には見えない溝があって、元々必要のない劣等感に苛まれていたヴィズは馬鹿にされまいとして暴走したのだろう。
「落ち着きました?」
そう問えば、ヴィズは照れながら頷く。
「あぁ……悪かった……だが、人前でこういう事をするのはどうかと思うぞ……その、恥ずかしいし……」
「あら、王族でありながら土すら耕せないアナタの方が余程恥ずかしいわ。 でも、まぁ、アナタは緊張しいですものねぇ」
「そんな事は……」
「えぇ、少し緊張がほぐれれば、誰よりも優秀な人だと私は知っているわ。 だって、落ち着きさえすれば優秀な人ですもの。 ちゃんと道具の使い心地も含め、道具の使い心地、改良点などを報告書にまとめて下さいね」
「あぁ、分かったよ。 ソレは……まぁ、得意だ……」
拗ねたように言うヴィズに、アズは仕方ない人ねぇと微笑んで見せるのだった。
遠方の国とは、互いの国の賢者を通じて外交関係が深まった。 温かな地域特有の果物に砂糖は、どこの国も取引を求めており……水路を作り、荒野を耕す作業が進められている。
果物の乾燥。
濃縮果汁。
様々な方法を試し正解を導きだす。
シアの持つ賢者の知識は幅広くはあるけれど決して緻密でもなければ、奥が深い訳でもない。 本人曰く。
『だって、興味が無かったんだもの』
と言う事だ。 それでも、他の国の賢者に比べれば知識は多い方だし、魔力も多く、生活に役立つ魔法も多く持っている。 だけれど、人獣の多くは魔力を持ち合わせていないし、ソレを当たり前に考える訳にはいかない。
だから、アズは今日も農園に訪れ果物のより良い保存方法を、農園の女性達と共に考えているところだった。
地響きがなり、大地が揺れた。
火にかけた鍋が大きく揺れ、ぐつぐつ煮立った果汁が波を打つ。
「みんな火から離れるのよ!!」
アズが叫ぶ頃には、全員が安全を確保しており、アズは大きく息をついた。
「なにを……しているのよ……」
地響きの方向へ視線を向けアズはボソリと呟き、怒りと共に走り出した。 向かう先は開墾中の荒野で、奇妙な形に横幅3m長さ10mぐらいの範囲で土が盛り上がっているのが遠くからでもわかる。
ギルモア国第一王子ヴィズがやらかした事だ。 王族としては弱いとは言ってもこれぐらいの事はやってのける事は可能なのだ。
「あぁ、アズ。 コッチは順調に進んでいる」
「何が順調ですか!! 土を盛り上げただけでどうなると言うのですか!! こ、こ、から!! 土を柔らかくして、石灰と肥料を混ぜこんで水をまいて土を作らなければいけないんですよ!! もうぉ、本当にヴィズったらぁ」
「だが……隆起しているんだから、柔らかくはなっているだろう」
何処か拗ねた様子でヴィズが言えば、はぁ……とアズは溜息をつく。
「それに、使うように言われていた道具はどうしたんですか?」
「そこに」
「道具だって、コレから土地を広げるに相応しい改良を加えるには試験使用が必要なんです。 効率を上げれば良いと言うものではありません。 いえ、そういうとコレが効率的と言っているようですが、それも違いますからね」
「道具なんて何を使っても一緒だろう?」
「誰もが、アナタのように怪力ではないんですよ」
言われっぱなし状態のヴィズが不快そうに顔を歪めれば、少し間をおいてアズは言いなおした。
「もし道具が誰にでも効率よく利用できるなら、それは他国に対する商売となります。 それに力と繊細さと観察眼となれば、王族の中でアナタに勝るものはないでしょう。 だから……この仕事を王はアナタに任せたのですよ。 決して庶民となれ等と言って言る訳ではありませんの。 私達は、これから……彼等の作り出すものを他国に売りに出す事が仕事なんですから」
アズの言葉が徐々にキツクなるごとにヴィズの表情が曇っていった。 こういうところを見れば、双子とヴィズが兄弟なのだとよくわかると言うものだ。
「……」
「わかりまして?」
「……分かったよ……」
「本当に?」
「分かったって……!?」
庶民とされる人々の前で、婚約者であるアズに叱られる姿等、屈辱でしかなく……怒りのままに声を荒げようとしたところ……ヴィズはアズに抱き着かれ言葉を失い赤面をする。
「なっ、何をするんだ!!」
「ご褒美ですわ」
「な、何の……さっきまで怒っていた癖に」
「アナタへのご褒美ではなく、頑張った私へのご褒美ですの。 ダメですの?!」
「い、いや……人前でだなぁ……」
周囲の視線は優しく、ほほえましい物を見るかのように2人を見ていて、ヴィズは真っ赤になりながらも、アズの背に手を回し、大好きな赤い髪を撫でた。
アズの耳に聞こえるヴィズの鼓動は、安堵したように穏やかなものになっていた。 慣れない場所、慣れない人、そんな人達とヴィズとの間には見えない溝があって、元々必要のない劣等感に苛まれていたヴィズは馬鹿にされまいとして暴走したのだろう。
「落ち着きました?」
そう問えば、ヴィズは照れながら頷く。
「あぁ……悪かった……だが、人前でこういう事をするのはどうかと思うぞ……その、恥ずかしいし……」
「あら、王族でありながら土すら耕せないアナタの方が余程恥ずかしいわ。 でも、まぁ、アナタは緊張しいですものねぇ」
「そんな事は……」
「えぇ、少し緊張がほぐれれば、誰よりも優秀な人だと私は知っているわ。 だって、落ち着きさえすれば優秀な人ですもの。 ちゃんと道具の使い心地も含め、道具の使い心地、改良点などを報告書にまとめて下さいね」
「あぁ、分かったよ。 ソレは……まぁ、得意だ……」
拗ねたように言うヴィズに、アズは仕方ない人ねぇと微笑んで見せるのだった。
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