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18.敵対派閥の反発

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 ランヴァルドの怒りを理解しきれなかった貴族は、声を上げた。 自分達が情も交わした事の無い少女の責任へとすり替えた。

「ヴィヴィ様の言動は、公平性にかけます」

「攻撃的なものと、好意的なもの。 同様に接しろと言うのが無理な話ではないか」

「ランヴァルド様が、悪意と捉えられる発言も、好意と捉えられる発言も、それら全ては意見であり、意見である以上は好き嫌い差し置いて公平に接するべきではありませんか? 1つの意見が気に入らないからと、不利益を与えられては、こちらは意見1つすらいえなくなってしまうではありませんか! それでも、我々はコチラから歩み寄ろうと努力をしたのですぞ!」

「努力?」

「ヴィヴィ様が、公平性を理解できないのは、周囲に甘やかす大人しかいないから。 同じような年ごろの者達と、お互い気遣いあって関係性を築いていくことが大切だと、我々は考えた訳です。 少々強引な行動をとりはじたものの、全てがヴィヴィ様のためを思っての行動なのです!! これらの歩み寄りを台無しにしされた挙句、我が子だけを悪者とされては、私共も大人しく引き下がる訳にはいきませんな」

「だれが、そんな身勝手な歩み寄りを求めた。 そして……」

 ランヴァルドは一度周囲へと視線を巡らせた。

「今、皇帝に対する反旗を耳にしたな?」

「なっ!! 陛下に対する不満など爪の先ほどにも持ってなどおりません。 そう、私が引き下がれないと言ったのは、ヴィヴィ様の交友関係についてです。 陛下までどうしてそのような、不公平な態度を取られると言うのですか!! それほどまで神に定められたツガイであるヴィヴィ様が恐ろしいのですか!」

 小さく、馬鹿にするようにランヴァルドは笑う。 目の前の者達に笑った後、自分に対しても笑った。

「確かにヴィヴィは恐ろしい。 アレに嫌われたらと思うと、仕事もろくに手につかなくなるからな。 だがヴィヴィにとって利益になるような人間であれば、人伝に紹介を受け、茶会の場に招待している。 ソレがないと言うのは、選別から除外されるような人格だと言うことだ」

「私の娘に問題があるとおっしゃるのですか!! そもそも、何をもって問題とされるのですか? その基準自体が差別的で、公平性に欠けるものであると、何故思われないのですか!!」

「そりゃぁ、昔から俺に対して敵対意識が強く、俺が皇帝になってからは俺への敵対心をヴィヴィに向けて……あぁ、さっきも言ったか……まったく、同じことを何度言わせれば気が済むんだ? 同じ事を繰り返すなら、話をする必要性などないと判断するが?」

 ランヴァルドが、イライラした様子を露わにすれば、

「個々の対人関係であれば、感情のままの好き嫌いをつくり距離感を取るのも許容しましょう! ですが!! 彼女は経済にまで口出しをしているではございませんか。 特に、ここ数か月は、懇意にしている貴族への介入が激しく、陛下も積極的に支援をなさっていると伺っております。 経済的なものを個人的感情に任せるような方が未来の皇妃となられることに、我々は不安を感じずにはいられないと言っておるのです!!」

 ザワザワとした騒めきが上がる。

「私も同様の不満を覚えておりました」

「私も」「私も!!」 と次々に声が上がりだす。

「あ~~~、だが、ヴィヴィのワガママに付き合っていられないと言ったのは、オマエ達だろう? あれらの商売の成功や可能性の示唆は、ヴィヴィのワガママにどれだけ応じるかから始まっている。 ようするに、ヴィヴィが何かをしているのではなく、彼等はヴィヴィの期待に応えただけだ」

「は、い?」

「同じ事を何度も言うほど、俺は暇ではない。 暇な時間があるなら、ヴィヴィとの時間に使う」

 馬鹿馬鹿しいと口にして、いらだちと共に玉座をたちその場を去ろうとした。

「お、お待ちください」

「あぁ?」

「ですが……国費まで使われるとあっては……」

 ランヴァルドは宰相へと視線を向ければ、宰相は頷いた。 常にヴィヴィが悪いと言う前提で物を語っている以上、ランヴァルドの理性もギリギリと言うところだろう。 二十数名にも及ぶ貴族当主を感情のまま血の海にされては、世間への通りも悪くなると言うものだ。

 宰相はランヴァルドに代わり貴族達を叱責しだした。

「お前達の言葉遊びに忙しい陛下をつき合わせるな!! そのように物事への理解力が低くて、他力本願で研鑽を惜しむからこそ、領地経営をダメにしているのだと何故気付かない!!」

 彼等の納税が極端に下がっている等と言うことはない。 だが、混乱の時代と長い安定の時代と同じ税しか払えない、それを問題にしないと言う事が問題なのだ。

「相応しい相手に当主の座を譲るべきではないのか? 今一度言う。 国が支援するのは、それが国にとって利益となる事が理解できたからだ。 例えばだ!! この夏、死亡者が減少した理由だが、それもヴィヴィ様の期待に応えようとしたものの働きがあってこそだ。 そして、死者が減少すると分かっていながら、公平性に欠けるからと金銭を出し惜しむと思うのだ。 これ以上の説明を必要とするほど、阿呆な訳ではあるまい? もし阿呆だと言うなら、この国の害悪として処分するための新法が必要だと陛下に提案させていただかなければなりませんがねぇ」

 商品開発に関しては、医療宮の研究成果があってこそであるが、数多の人間に頼られては迷惑なだけだろうと、医療宮の尽力は秘密とされた。

 結局のところ、ヴィヴィの贔屓となった貴族が、国から予算を得ていると言う不満から、ヴィヴィに近づこうとしたことが全ての始まりだったらしい。

 少し考えれば、そこに出資以上の利益があるからだと分かるはずなのだが、分からないと言うのが当主としての限界なのだろうと、彼等は貴族としての立場を落とし、否応なく当主の座から降りざる得ない状況へと追い込まれていくこととなる。

 それでも馬鹿げた行動を精力的に行う積極性があることを考え、ランヴァルドは少々乱暴とも言える勅命を自ら反ヴィヴィ派を名乗った貴族に命じた。

『当主交代が半年の内に行われない場合、その一族は健全な領地経営を行うと言う考えを持たぬものとして、爵位の取り消しを行う』

 これらの強硬政策に対して不満を口にする者はなかった。

 だが、

 当主達に罰を課し、新たな当主を立てた事で過去の失態はなかったことにしようとした貴族が現れ、同じ問題行動が行われた。 結局、ランヴァルドや宰相の言葉を理解できない一族なのだと、6つばかりの貴族が、爵位を取り消され領地を返還要求され、身柄を監視されることとなる。

 こうしてベントソン伯爵夫人を後押しする貴族達は地道に潰されていった。



 そして、ベントソン伯爵夫人は冬を迎える前に無事に子を産み落とし、新年の祝いの席、ヴィヴィの成人の祝いと共に、赤ん坊が紹介されるだろうと皇都の民は期待に胸を躍らせるのだった。

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