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19.終わり
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ラナは、変わらない。
ブラッドリーに初めて会った時から何も……。
ブラッドリーと初めて会った時……彼は、血で赤く染まる湖で浮いていた。 ボンヤリと空を眺める様子は……数多転がる死体の一つに見えた。
当時、ラナの両親は戦場に荷物を運ぶ商売をし……ついでのように死体を漁る日々を送っていたのだ……ソレは危険を顧みず戦場をいく者達の特権のように扱われており……ラナの両親はブラッドリーを金になりそうな死体だと思ったのだ……。
死んだように生きている彼に、両親は名を与え……仕事を与えた。 奴隷として売る事も考えていたが、商売の知識がないものの、彼の持つ多くの知識は商売を広げるのに役立つと考えたから。
商売の拡大は、ブラッドリーと共にあったと言っていいだろう。
死んだように生きている青年の素性を、ラナの両親は直ぐに理解した。 彼の持つ膨大な知識は惜しいが……彼はいずれ戻るべき場所に戻るのだろう。 だから、それまでの間、ラナにその知識を分け与えて欲しいと、ラナの両親は願ったのだ。
「父さんと母さんは、勉強が嫌だっただけだと思うの」
そう不貞腐れたように言いながら、物凄い顔で教材を睨むラナを表情を緩めブラッドリーが見ていた事をラナは知らない……。
教師と生徒。
保護者と被保護者。
主と従者。
その関係を超えた翌々日から、ブラッドリーはたびたびラナの側を離れていた。
ブラッドリーには、父母を共にする弟がいた。
この国の第五王子とされる人物。
第五王子と言う立場は代替えにもならない序列。
欲を見せず、
力も無く、
何処までも善良なだけの第五王子。
王には向かない人。
だが、王位継承権に必要なのは助力する人間であり支持者である。
ブラッドリーは本来の彼として……ラナの従者として、第五王子の価値を高め、同時に……第二王子が生きている事を公然の秘密として広めていく……。
人々は血濡れ王子と嘗て言われた第二王子の生存に恐怖し、同時に安寧な未来の約定のように受け止めていた。
ただ愛すべき1人の女性のための行動。
自己中心的で身勝手な愛情。
「お帰りなさい……」
何時だって彼は愛すべきラナの元に戻る。
「ただいま戻りました。 お嬢様」
ラナは愛すべき人の生まれを聞かない。
聞きたくないから。
聞けば……独り占め出来ないから。
2人は偏狂的に執着的に貪欲にコダワリを持ち、2人と言う孤独を好む……自分達以外誰もいらないと言う約束を交わせば……心地よい2人の世界に身をゆだねる。
終わり
ブラッドリーに初めて会った時から何も……。
ブラッドリーと初めて会った時……彼は、血で赤く染まる湖で浮いていた。 ボンヤリと空を眺める様子は……数多転がる死体の一つに見えた。
当時、ラナの両親は戦場に荷物を運ぶ商売をし……ついでのように死体を漁る日々を送っていたのだ……ソレは危険を顧みず戦場をいく者達の特権のように扱われており……ラナの両親はブラッドリーを金になりそうな死体だと思ったのだ……。
死んだように生きている彼に、両親は名を与え……仕事を与えた。 奴隷として売る事も考えていたが、商売の知識がないものの、彼の持つ多くの知識は商売を広げるのに役立つと考えたから。
商売の拡大は、ブラッドリーと共にあったと言っていいだろう。
死んだように生きている青年の素性を、ラナの両親は直ぐに理解した。 彼の持つ膨大な知識は惜しいが……彼はいずれ戻るべき場所に戻るのだろう。 だから、それまでの間、ラナにその知識を分け与えて欲しいと、ラナの両親は願ったのだ。
「父さんと母さんは、勉強が嫌だっただけだと思うの」
そう不貞腐れたように言いながら、物凄い顔で教材を睨むラナを表情を緩めブラッドリーが見ていた事をラナは知らない……。
教師と生徒。
保護者と被保護者。
主と従者。
その関係を超えた翌々日から、ブラッドリーはたびたびラナの側を離れていた。
ブラッドリーには、父母を共にする弟がいた。
この国の第五王子とされる人物。
第五王子と言う立場は代替えにもならない序列。
欲を見せず、
力も無く、
何処までも善良なだけの第五王子。
王には向かない人。
だが、王位継承権に必要なのは助力する人間であり支持者である。
ブラッドリーは本来の彼として……ラナの従者として、第五王子の価値を高め、同時に……第二王子が生きている事を公然の秘密として広めていく……。
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「お帰りなさい……」
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「ただいま戻りました。 お嬢様」
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聞きたくないから。
聞けば……独り占め出来ないから。
2人は偏狂的に執着的に貪欲にコダワリを持ち、2人と言う孤独を好む……自分達以外誰もいらないと言う約束を交わせば……心地よい2人の世界に身をゆだねる。
終わり
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