【R18】愛していました。 ですが、それほどまで拒むと言うなら、新たな出会いを求めます【完結】

迷い人

文字の大きさ
上 下
19 / 19

19.終わり

しおりを挟む
 ラナは、変わらない。
 ブラッドリーに初めて会った時から何も……。



 ブラッドリーと初めて会った時……彼は、血で赤く染まる湖で浮いていた。 ボンヤリと空を眺める様子は……数多転がる死体の一つに見えた。

 当時、ラナの両親は戦場に荷物を運ぶ商売をし……ついでのように死体を漁る日々を送っていたのだ……ソレは危険を顧みず戦場をいく者達の特権のように扱われており……ラナの両親はブラッドリーを金になりそうな死体だと思ったのだ……。

 死んだように生きている彼に、両親は名を与え……仕事を与えた。 奴隷として売る事も考えていたが、商売の知識がないものの、彼の持つ多くの知識は商売を広げるのに役立つと考えたから。

 商売の拡大は、ブラッドリーと共にあったと言っていいだろう。

 死んだように生きている青年の素性を、ラナの両親は直ぐに理解した。 彼の持つ膨大な知識は惜しいが……彼はいずれ戻るべき場所に戻るのだろう。 だから、それまでの間、ラナにその知識を分け与えて欲しいと、ラナの両親は願ったのだ。

「父さんと母さんは、勉強が嫌だっただけだと思うの」

 そう不貞腐れたように言いながら、物凄い顔で教材を睨むラナを表情を緩めブラッドリーが見ていた事をラナは知らない……。





 教師と生徒。
 保護者と被保護者。
 主と従者。

 その関係を超えた翌々日から、ブラッドリーはたびたびラナの側を離れていた。



 ブラッドリーには、父母を共にする弟がいた。
 この国の第五王子とされる人物。
 第五王子と言う立場は代替えにもならない序列。

 欲を見せず、
 力も無く、
 何処までも善良なだけの第五王子。

 王には向かない人。

 だが、王位継承権に必要なのは助力する人間であり支持者である。

 ブラッドリーは本来の彼として……ラナの従者として、第五王子の価値を高め、同時に……第二王子が生きている事を公然の秘密として広めていく……。

 人々は血濡れ王子と嘗て言われた第二王子の生存に恐怖し、同時に安寧な未来の約定のように受け止めていた。



 ただ愛すべき1人の女性のための行動。
 自己中心的で身勝手な愛情。



「お帰りなさい……」

 何時だって彼は愛すべきラナの元に戻る。

「ただいま戻りました。 お嬢様」

 ラナは愛すべき人の生まれを聞かない。
 聞きたくないから。
 聞けば……独り占め出来ないから。



 2人は偏狂的に執着的に貪欲にコダワリを持ち、2人と言う孤独を好む……自分達以外誰もいらないと言う約束を交わせば……心地よい2人の世界に身をゆだねる。





 終わり
しおりを挟む
感想 26

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(26件)

黒猫シャノ
2023.09.03 黒猫シャノ
ネタバレ含む
2023.09.03 迷い人

黒いお方……動きがサーカスっぽい悪魔な方ですね(*´ω`*)

色々とチャレンジ回でした~!!

基本的に黒ければ黒いほど社会的に安定した風に書いてしまうのです。
だって……ほら、成功者ってさいこぱ……は言い過ぎでした。 はい(>_<)

身の程を知る秘書と護衛は、ミチミチに鍛え上げられるでしょう。
身の程を知らない侍女達は、お家の方がいじめられるのは確定。

個人的には、ヒッソリ要らない知識をつける原因となった侍女達には……聞き耳立てていたラナの責任もあるので情状酌量がある……はずと思っております(´▽`*)

こちらも、ありがとうございました~!

解除
ぱら
2023.09.02 ぱら
ネタバレ含む
2023.09.02 迷い人

わ~い、何時もありがとうございます。

まだまだ主人公は人生経験が浅く、詰めが甘い。
執事以外に心を寄せる人がいれば、侍女の交代を提言してくれるのでしょうが……。

今回は短編に拘ったために、色々と足りなかったようです(>_<)

そう!! 魔王様が好きな子を守るために執事しちゃうのを書きたかったのです!!
うわぁああああ、気づいて貰えた嬉しい( *´艸`)

もっと文章力をつけていきたいです。
例えば、調教系であっても綺麗な文章で、不快な思いを読者様にさせないとか!!

本当何時も、支えになっていただきありがとうございます!!

解除
HIRO
2023.09.01 HIRO
ネタバレ含む
2023.09.01 迷い人

調教系のプレイにチャレンジ!!
読みやすい文字数で終える!!

を、課題にしたのが問題だったようです。

せめて長文にすれば、興味ないの中にある好意を。
自分を絶対に嫌う事がない的なものを含める事が出来たかも(;´・ω・)

まぁ、調教系テーマに関しては性的趣向なので、受け入れられない方がいるのも当然と理解してます(´・ω・`)

次は、ハシビロコウ獣人女子、事件お留守番系、昔のリメイクとか考えてましたが……大人しい系……男子か、女子も考えてみたいと思います。

……悩むぅ(;'∀')

ありがとうございました~!

解除

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。