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05.初めての社交界
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ラナが選んだ招待状は、グリーソン商会の常連客の物だった。
令嬢の1人が迎えるお披露目の場。
招待客は主役である令嬢と年の近い令嬢と令息のみ。
場所は、広大な庭園、屋敷、神殿等を抱える貴族の別荘地。
貴族の中には、パーティの準備に必要な全てを引き受ける、イベントコンサルタントを行う者が存在している。 経営者の中にはグリーソン商会のようなイベント商品と関係する商会や神殿と提携している事も少なくはない。 人との個人的な関わりを怖いと思っているラナだけど、仕事に関わる以上イベント自体に不信感は無かった。
だから選んだ。
アンディもカールも実家は没落寸前で、貴族令息ではあるけれど招待状を得る事は無かった。 怖がる私の付き人としてついて来てもらっていた。
ラナは、慣れない準備に少しだけ遅刻した。
「アンディ、カール……」
不安そうに横を歩く2人を交互に見れば、交互にラナを慰める。
「大丈夫ですよ」
「社交界程度、緊張する必要等ないさ」
「皆、お嬢様と年が近い、気楽に参加できますよ」
「強大で強引な派閥もないでしょうからね」
「そう、そうね……。 ねぇ、それより、この格好はやっぱり派手じゃないかしら?」
イベントコンサルタントと提携もしているのだから、社交の際に必要な商品の取引は分かっているし、不安にはならない……そう思っていたのだけど、実際には違っていた。
「ねぇ、このドレス、やり過ぎじゃなかったかしら?」
貴族と言っても、無限に金を使える訳ではない。 人々はグリーソン商会のような商会を使いドレスをレンタルする。 だから、商会ではドレスを貸し出すたびに、ドレスをリメイクし流行に合わせ手を加えて再び貸しだすと言う商売をラナが提案したのだから、ラナが不安に思う必要等本来は無いはずなのだ。
「とてもお似合いですよ」
「あぁ、華やかなのがいい」
「派手過ぎないよう、アクセサリを抑えたのも好感的だと思います」
「華やかな色合いですが、ラナ様の華やかな金色の髪に似合ってると俺は思うよ」
社交界が開かれているとなれば、ドレスは早い者勝ちだとでも言うようにレンタルが行われ、ラナが着ているのは残り物とも言えるものだった。
深紅のドレスは着る物を選ぶ。 同色の薄布がベースとなっているドレスの周囲を波を描くように、花びらのようにドレスを彩る華やかなもので、装飾は控えてはいるが、金色の髪は金糸のようだし、緑色の瞳はエメラルドのようだった。
「えぇ……本当にお似合いですよ。 お嬢様」
そう語るのは、距離を置き、ただラナだけを心配そうに見守るブラッドリーのもので、その声は誰にも聞こえて等居なかった。
「年若い者が集う夜会であれば、金銭、地位、権力による派閥も決して多く、因縁深い事もありません。 気楽に参加できるでしょう」
会場へ進んだのは、ラナだけだった。
不安が胸を覆う。
アンディもカールも貴族ではあるけれど、招待状を持っていないからと、同伴者を許せば参加者を限定する意味がないと、そんな理由から拒否されたのだ。
赤いドレスはラナに良く似合っていた。
実際、多くの男性に声がかけられた。
女性は、男性を誘う娼婦か? そんな娘が参加するなんて品格が劣るのでは? そんな風に語る者もいた。
身の置き場が……。
「ダンスでもいかがですか?」
誹謗中傷。
美辞麗句。
繰り返される相反する言葉にラナは混乱して、恋がしたいと来たはずなのに男性に興味を持つどころか、避けて回っていた。
値踏みするような女性の視線。
向けられる下心にまみれた視線。
最終目的が下心なのだから、男性を拒否すべきなのか? 断るべきなのか? あれ? でも下心が目的なのかしら??
ラナは混乱していた。
恋愛経験がないと言えなくもないラナは壁際、花飾りの影になるように隠れながら考える。 あぁ違うわ……女性として大切にされたいのであって、男女の関係……その肉欲に耽ることが目的ではないのですから……。 隠れる理由を正当化した。
「お名前をお伺いしてよろしいでしょうか?」
問われてラナは答える。
「ラナ……ラナ・グリーソンですわ」
周囲が騒めいた。
でも騒めきの理由はグリーソン商会の跡取り娘としてではなく、同じ名を持つ本家……グリーソン公爵家と家名が同じだから。
「グリーソン公爵家にアナタのような美しいご令嬢がいたとは、いままでアナタに出会えなかった時間が惜しい……」
そう言って私の手をとり、その甲に口付けをしようとする。 邪魔をするのはワイングラスを手にした本物のグリーソン公爵家の令嬢。
「そこ子はうちの遠い親戚。 名前こそ同じだけど一緒にしないでいただけます?」
その瞬間に、取られていた手は払いのけられる。
「あぁ、若さを売りに男を手玉に取れると思った勘違い女か。 下品な傍流の娘がどうやって夜会に潜り込んだか知らないが、ここは紳士淑女の社交の場。 叩きだされないうちに帰るべきだな」
そう男は吐き捨てるように言った。
それに腹を立てる気にはなれなかった。 むしろ安堵したくらいである。 これは私には向かない場なのだと人目を避けてしまえば改めて声がかけられることになるのだった。
令嬢の1人が迎えるお披露目の場。
招待客は主役である令嬢と年の近い令嬢と令息のみ。
場所は、広大な庭園、屋敷、神殿等を抱える貴族の別荘地。
貴族の中には、パーティの準備に必要な全てを引き受ける、イベントコンサルタントを行う者が存在している。 経営者の中にはグリーソン商会のようなイベント商品と関係する商会や神殿と提携している事も少なくはない。 人との個人的な関わりを怖いと思っているラナだけど、仕事に関わる以上イベント自体に不信感は無かった。
だから選んだ。
アンディもカールも実家は没落寸前で、貴族令息ではあるけれど招待状を得る事は無かった。 怖がる私の付き人としてついて来てもらっていた。
ラナは、慣れない準備に少しだけ遅刻した。
「アンディ、カール……」
不安そうに横を歩く2人を交互に見れば、交互にラナを慰める。
「大丈夫ですよ」
「社交界程度、緊張する必要等ないさ」
「皆、お嬢様と年が近い、気楽に参加できますよ」
「強大で強引な派閥もないでしょうからね」
「そう、そうね……。 ねぇ、それより、この格好はやっぱり派手じゃないかしら?」
イベントコンサルタントと提携もしているのだから、社交の際に必要な商品の取引は分かっているし、不安にはならない……そう思っていたのだけど、実際には違っていた。
「ねぇ、このドレス、やり過ぎじゃなかったかしら?」
貴族と言っても、無限に金を使える訳ではない。 人々はグリーソン商会のような商会を使いドレスをレンタルする。 だから、商会ではドレスを貸し出すたびに、ドレスをリメイクし流行に合わせ手を加えて再び貸しだすと言う商売をラナが提案したのだから、ラナが不安に思う必要等本来は無いはずなのだ。
「とてもお似合いですよ」
「あぁ、華やかなのがいい」
「派手過ぎないよう、アクセサリを抑えたのも好感的だと思います」
「華やかな色合いですが、ラナ様の華やかな金色の髪に似合ってると俺は思うよ」
社交界が開かれているとなれば、ドレスは早い者勝ちだとでも言うようにレンタルが行われ、ラナが着ているのは残り物とも言えるものだった。
深紅のドレスは着る物を選ぶ。 同色の薄布がベースとなっているドレスの周囲を波を描くように、花びらのようにドレスを彩る華やかなもので、装飾は控えてはいるが、金色の髪は金糸のようだし、緑色の瞳はエメラルドのようだった。
「えぇ……本当にお似合いですよ。 お嬢様」
そう語るのは、距離を置き、ただラナだけを心配そうに見守るブラッドリーのもので、その声は誰にも聞こえて等居なかった。
「年若い者が集う夜会であれば、金銭、地位、権力による派閥も決して多く、因縁深い事もありません。 気楽に参加できるでしょう」
会場へ進んだのは、ラナだけだった。
不安が胸を覆う。
アンディもカールも貴族ではあるけれど、招待状を持っていないからと、同伴者を許せば参加者を限定する意味がないと、そんな理由から拒否されたのだ。
赤いドレスはラナに良く似合っていた。
実際、多くの男性に声がかけられた。
女性は、男性を誘う娼婦か? そんな娘が参加するなんて品格が劣るのでは? そんな風に語る者もいた。
身の置き場が……。
「ダンスでもいかがですか?」
誹謗中傷。
美辞麗句。
繰り返される相反する言葉にラナは混乱して、恋がしたいと来たはずなのに男性に興味を持つどころか、避けて回っていた。
値踏みするような女性の視線。
向けられる下心にまみれた視線。
最終目的が下心なのだから、男性を拒否すべきなのか? 断るべきなのか? あれ? でも下心が目的なのかしら??
ラナは混乱していた。
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「お名前をお伺いしてよろしいでしょうか?」
問われてラナは答える。
「ラナ……ラナ・グリーソンですわ」
周囲が騒めいた。
でも騒めきの理由はグリーソン商会の跡取り娘としてではなく、同じ名を持つ本家……グリーソン公爵家と家名が同じだから。
「グリーソン公爵家にアナタのような美しいご令嬢がいたとは、いままでアナタに出会えなかった時間が惜しい……」
そう言って私の手をとり、その甲に口付けをしようとする。 邪魔をするのはワイングラスを手にした本物のグリーソン公爵家の令嬢。
「そこ子はうちの遠い親戚。 名前こそ同じだけど一緒にしないでいただけます?」
その瞬間に、取られていた手は払いのけられる。
「あぁ、若さを売りに男を手玉に取れると思った勘違い女か。 下品な傍流の娘がどうやって夜会に潜り込んだか知らないが、ここは紳士淑女の社交の場。 叩きだされないうちに帰るべきだな」
そう男は吐き捨てるように言った。
それに腹を立てる気にはなれなかった。 むしろ安堵したくらいである。 これは私には向かない場なのだと人目を避けてしまえば改めて声がかけられることになるのだった。
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