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17.罪悪感
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どんなに美しい犬だろうとアルフレット様と理解してしまえば、好意等生まれるはずもない。 むしろ、嫌な思いをしないように、これ以上嫌わないように距離をとらなければと思うものだ。
でも、困っていれば『ざまぁみろ』と気分がハレバレする訳でもない……。
がっちりとした体格、長毛の大型犬(狼)の姿をしていては、幼児期に兄替わりだった魔犬を思い出し、助けてと視線を向ければ、少しだけ罪悪感を覚えてしまう。 少しだけですが……。 そう、少しだけなんだから……でも、その罪悪感が逃亡の足を止めてしまうのだ。
「頼む、助けてくれ」
祈るように必死に言われれば、ティナは自分の甘さに溜息をつき、伏せて王妃を背に乗せたままのアルフレットの眼前にしゃがみこみ問いかけた。
「その子たちではダメなのですか? 幼児期の成長と言うものは早いもの。 幼児だと気にする必要はないと思いますよ。 ほら、ソレに一応彼女達は婚姻可能年齢っぽく見えますし?」
明るく励ましてみた。
「それぐらい分かっている。 幼い頃からオマエを見てきたからな。 6年会わなかった間に、ズイブンと綺麗になったと驚いたものだ」
そう言われれば、ムカついて、イラっとして、目の前に差し出された頭に拳骨を落としてしまった。
「ぁ、ゴメンなさい。 つい」
「いや……いいんだが、俺、なんで殴られているんだ?」
イライラしながら内心は、過去の暴言が、そんな言葉で帳消しになるか!! と、思っていて……。
「その場限りの誤魔化しなど余計に腹が立つだけですから、辞めてください。 ならばいっそ田舎臭い娘で通してくれる方が、イラつかないだけマシですわ」
冷ややかな視線でピシャリと言えば、
「ぁ……えっと……すまん……。 だが、美しくなったとは本当に思っているし、その……ティナは昔から綺麗で可愛かった……」
「私は、今! アナタの周りにいる子供達の事をいっているんです」
そう言いながら、子供達を犠牲にするのか? と、自問自答し……。 幼くも色に溺れたようにアルフレット様を求める幼女達に恐怖も覚えていた。
「だが、オレはオマエがいい」
アルフレット様の声は、子供の頃と違い低く落ち着いたものとなり、早口でまくし立てることをしなければ、幼い頃……逃げなければ!!と何も聞こえなくなるかのような脅迫観念は失われていた。
心地よい声だと……思った。
私は、もう余計な事を考えたくは無くて立ち上がる。
幼女から必死に逃れるための言い逃れに、嫌な思いをするかもしれない……。 人間に戻った瞬間、騙してやったぞと嘲笑うかもしれない。
「待ってくれ……」
一切幼女たちに視線を向けず、狼はティナを見つめている。
だが、幼女たちは狼にまとわりつき、ねぇねぇと甘えた声でアピールする。
「どうして、私達ではダメなの?」
「お仕事を達成しないと困るの!」
「私達を助けてよ」
「ねぇ、ぺろぺろしようよワンちゃん」
ティナは背を向けたまま、冷えた声で言う。
「だそうよ」
「それでも、オマエがいいんだ」
「そんなババァより、ピチピチの私達の方がいいじゃない!」
「誰がババァよ!」
「オレが言ったんじゃないって……なぁ……頼むよ」
諦めない様子にティナは溜息をつくが「わかった、彼女達で済ませよう」と言って、幼女たちと戯れだせばより一層嫌いになるだろう事は想像できた。 だから、立ち去れないのだ。
どこまでも必死に幼女たちを回避し、ティナがいいのだと頼まれれば……、もう……
『許すしかないじゃないか……』
溜息交じりに言うのだ。
「顔をこっちに向けなさい」
「感謝する」
フワリと柔らかな銀色の毛並みが、ティナに寄り添う。 ティナはその首筋を抱きしめ毛並みに顔をうずめた。 大人気ないがババァと言った幼女へのイヤガラセだ。
スンスンと鼻を鳴らし、首筋の匂いをかいでくれば、その柔らかな毛並みはフワフワと揺れ、心地よくもくすぐったく、ペロリと舐められれば温かな粘着質の唾液が首筋につき、ゾワリとした感覚にとらわれた。
「ちょ……くすぐったいんだけど」
くすぐったさと慣れない感触に身をよじるが、狼は耳元で小さく囁く。
「感覚遮断はするなよ。 チビ達ですらそのまま挑んできたし。 昨日の様子から考えてもすぐ終わるだろうから……残念だけど」
言い終わると同時に、チュっと薄い唇でくわえるように首筋にキスをし、舐めてくる狼。 ティナは返事代わりにコクリと頷き。 かつて一緒に育った兄替わりだった犬にしていたように、鼻と鼻をコツンと合わせる幼い挨拶をし、チュっと触れるだけのキスをティナからする。 狼は、お返しとばかりに、軽く触れるだけのキスを返す。
恥ずかしそうにはにかみながら、少しずつ距離を寄せた。
でも、困っていれば『ざまぁみろ』と気分がハレバレする訳でもない……。
がっちりとした体格、長毛の大型犬(狼)の姿をしていては、幼児期に兄替わりだった魔犬を思い出し、助けてと視線を向ければ、少しだけ罪悪感を覚えてしまう。 少しだけですが……。 そう、少しだけなんだから……でも、その罪悪感が逃亡の足を止めてしまうのだ。
「頼む、助けてくれ」
祈るように必死に言われれば、ティナは自分の甘さに溜息をつき、伏せて王妃を背に乗せたままのアルフレットの眼前にしゃがみこみ問いかけた。
「その子たちではダメなのですか? 幼児期の成長と言うものは早いもの。 幼児だと気にする必要はないと思いますよ。 ほら、ソレに一応彼女達は婚姻可能年齢っぽく見えますし?」
明るく励ましてみた。
「それぐらい分かっている。 幼い頃からオマエを見てきたからな。 6年会わなかった間に、ズイブンと綺麗になったと驚いたものだ」
そう言われれば、ムカついて、イラっとして、目の前に差し出された頭に拳骨を落としてしまった。
「ぁ、ゴメンなさい。 つい」
「いや……いいんだが、俺、なんで殴られているんだ?」
イライラしながら内心は、過去の暴言が、そんな言葉で帳消しになるか!! と、思っていて……。
「その場限りの誤魔化しなど余計に腹が立つだけですから、辞めてください。 ならばいっそ田舎臭い娘で通してくれる方が、イラつかないだけマシですわ」
冷ややかな視線でピシャリと言えば、
「ぁ……えっと……すまん……。 だが、美しくなったとは本当に思っているし、その……ティナは昔から綺麗で可愛かった……」
「私は、今! アナタの周りにいる子供達の事をいっているんです」
そう言いながら、子供達を犠牲にするのか? と、自問自答し……。 幼くも色に溺れたようにアルフレット様を求める幼女達に恐怖も覚えていた。
「だが、オレはオマエがいい」
アルフレット様の声は、子供の頃と違い低く落ち着いたものとなり、早口でまくし立てることをしなければ、幼い頃……逃げなければ!!と何も聞こえなくなるかのような脅迫観念は失われていた。
心地よい声だと……思った。
私は、もう余計な事を考えたくは無くて立ち上がる。
幼女から必死に逃れるための言い逃れに、嫌な思いをするかもしれない……。 人間に戻った瞬間、騙してやったぞと嘲笑うかもしれない。
「待ってくれ……」
一切幼女たちに視線を向けず、狼はティナを見つめている。
だが、幼女たちは狼にまとわりつき、ねぇねぇと甘えた声でアピールする。
「どうして、私達ではダメなの?」
「お仕事を達成しないと困るの!」
「私達を助けてよ」
「ねぇ、ぺろぺろしようよワンちゃん」
ティナは背を向けたまま、冷えた声で言う。
「だそうよ」
「それでも、オマエがいいんだ」
「そんなババァより、ピチピチの私達の方がいいじゃない!」
「誰がババァよ!」
「オレが言ったんじゃないって……なぁ……頼むよ」
諦めない様子にティナは溜息をつくが「わかった、彼女達で済ませよう」と言って、幼女たちと戯れだせばより一層嫌いになるだろう事は想像できた。 だから、立ち去れないのだ。
どこまでも必死に幼女たちを回避し、ティナがいいのだと頼まれれば……、もう……
『許すしかないじゃないか……』
溜息交じりに言うのだ。
「顔をこっちに向けなさい」
「感謝する」
フワリと柔らかな銀色の毛並みが、ティナに寄り添う。 ティナはその首筋を抱きしめ毛並みに顔をうずめた。 大人気ないがババァと言った幼女へのイヤガラセだ。
スンスンと鼻を鳴らし、首筋の匂いをかいでくれば、その柔らかな毛並みはフワフワと揺れ、心地よくもくすぐったく、ペロリと舐められれば温かな粘着質の唾液が首筋につき、ゾワリとした感覚にとらわれた。
「ちょ……くすぐったいんだけど」
くすぐったさと慣れない感触に身をよじるが、狼は耳元で小さく囁く。
「感覚遮断はするなよ。 チビ達ですらそのまま挑んできたし。 昨日の様子から考えてもすぐ終わるだろうから……残念だけど」
言い終わると同時に、チュっと薄い唇でくわえるように首筋にキスをし、舐めてくる狼。 ティナは返事代わりにコクリと頷き。 かつて一緒に育った兄替わりだった犬にしていたように、鼻と鼻をコツンと合わせる幼い挨拶をし、チュっと触れるだけのキスをティナからする。 狼は、お返しとばかりに、軽く触れるだけのキスを返す。
恥ずかしそうにはにかみながら、少しずつ距離を寄せた。
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