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01.婚約者ではなかったらしい……が、まぁ諦めるしかありませんよね

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 幼い頃、王子様……将来国王陛下になる方にあった。

「お初にお目にかかります」
「……」

 5歳としては十分な挨拶だと今でも思うけれど、2つ年上の王子様は私からプィッと視線を背け、そんな態度に腹が立った私は王子の頬を殴ってしまった。 王子は一瞬キョトンとして、そして泣き出してしまい、周囲が怒るよりも早く私は王子の殴った頬と、その反対の頬を両手ではさみ、涙を浮かべこうさけんだ。

「アナタは、ほっぺが痛かったでしょうけど。 私も無視をされていたかった!! いたかったのぉ!!」

 そうして私も泣き出した。

 何しろ私は可愛かったし、公爵家という高い地位に生まれ甘やかされていた訳だし? 感情的でも仕方がないわよね……と、大人になった今でも、そう自分に言い訳をさせてもらおう。

 叱られる事はなかったが、一緒にゴメンナサイと謝りあった。 当たり前のように愛情を受けて育った私と王子は、それなりに素直だったのだ。

「自分より小さな子は初めてみたし、その可愛くて……どうすればよいか分からなかったんだ」

 後に王子は、はにかんだ笑みで私に言い訳をした。

「可愛いって言葉だけで十分ですわ。 さて、今日は何を話し合いましょうか?」

 そうして私は王子と友達になった。
 勉強も遊びも悪戯もお昼寝もオヤツも一緒。

 2人で巨大な図書館を見回し、何を勉強するかを決める。 学ぶべきことは一応、大人に決められてはいたが、1日3時間だけは自分達が好きな勉強を許された。

「地理がいいな」

 王子は、なぜか地図にロマンを感じる男だった。

「そうね……なら、地図を集めましょう。 各地域の特産物をかきだして、会計報告書は見せてもらう?」
「それは、また今度にしようよ」
「そう言って、何時も地図だけを眺めておわるんだから」
「そうでもないよ。 一応、戦略をね色々と考えるんだ。 結構楽しいんだけどなぁ……」

 一応、屋敷には戻るから、本当の本当にずっと一緒という訳ではなかったし、男女と言う性別の違いや、適正の違いから、違う時間を過ごすことも日増しに増えていた。

 それでも、王子がパーティに出ると言えば、横にいたのは必ず自分だったし、自分の横には王子がいた。



 だから、当然のように自分は王子の婚約者なのだと思っていた。



「ぇ?」

「王宮に出入りをするのを控えるように」

 ある日父である公爵に呼び出されて言われた言葉だ。
 私15歳、王子17歳。

「何か王宮であるんですか?」

「王子の結婚が決まった」

 私は、何の迷いもなく自分だと思い込んでいた。

「そんな、急に言われましても!! まだ、私達は若く学ぶべき事は多く、婚姻によって増える責務に耐えられるほどの知恵も度量ももちあわせて」

「何を勘違いしている! 結婚するのは王子と聖女様だ! お若い方だ、オマエが今まで通りお傍にいる事に、心乱されることもあるだろう。 だから、王宮に出入りしないように」

「ぇ?」

 寝耳に水とは、きっとこんなことを言うのだろうと思う。

「私は、私はずっと、自分が王子の妻となるものだと思っていました!!」

 公爵である父のデスクをドンと叩く。

「そう言うところがいけない。 未来の妃殿下……聖女様を怯えさせてしまうだろう」

 誰かと比べられ、似た年頃の娘と比較し下にみられると言うのは初めてのことだった。

 私は言葉を失くしたが、ギュッと握りこぶしを握り、私は父に向って叫んだ。

「わかりましたよ!!」



 全然成長してない……。

 私は、王子がいなければ幼い子供のままなのだ。



 私は15歳で、公爵家を出た。

 とは言っても、一人で生きるようなそんな生き方をしていない。 むしろ7歳の頃には自分は王妃になるだろうと考えていたのだ。 それから8年の間、私が王妃となったならば、王となった王子と共に生きるならば、そんな時のために必死に学んで来た。

 国のために出来る事はないか?
 民のために出来る事はないか?
 王のために出来る事はないか?

 そんなことばかりを考えて生きてきた。

 元々癇癪なところはあったと思う。

 だけど、それは自分の中では、筋が通っていた訳で……、良い王とは? 王妃とは? 責任をもって正しく人を導くために、命令をくだすこととは? そんな事を王子と二人で真剣に語って生きてきた……。

 そんな、わ、た、し、が!! 一人で生きられるはずもなく、結局、公爵領に引きこもるにとどまる事となる訳だ。



 平和に引きこもりな日々を送っていたはずだった。
 国王陛下となった王子から、私宛に書簡が届くまでは……。
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