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後編
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月明りが唯一の明かりである部屋の中。
ジェシカに伸ばされた手が、ジェシカの身体を引き寄せた。
そして、抱きしめる。
ホッとした……。
優しい温もりに身を委ね甘える。
触れる唇を、甘く開いた唇で受け止める。
「何をしているんだ!! 気持ち悪い!!」
叫んだのはマーティン。
マーティンの視線の先には、ソファに座る兄であるマーティスの姿。 そして、その膝の上に座り抱きしめられているジェシカの姿。
「言葉が乱れていますよ。 権力を持つ侯爵家の者が常に威圧的でどうするのですか」
それは丁寧で優しく甘い口調だった。
「なぜ、兄さんが……。 いえ……ジェシカ……こちらに来なさい。 君は、治療師なのでしょう!! そんな顔で患者の信頼を得られると思って、いる……のですか」
マーティンの声に、ジェシカの身体が強張る。
だけれど……マーティンは怯えた。 怯えだした。
暗闇の中、月明りに光るティスの瞳が肉食の獣のようにマーティンを睨んでいたから。
マーティンの問いかけに対してジェシカの唇がわずかに開く。 だけど、ティスの人差し指がジェシカの唇に触れ塞ぎ、唇を撫で、顎へと滑り、上向かせ、軽く口づけた。
「な、にをするんだ!! ジェシカは俺の!「言葉遣い」」
言いたい事を言わせてもらえないマーティンはイライラを募らせながらも、月明りの光の中でジッと見つめて来るティスの瞳を怯えていた。
「兄さん!! なぜ、あなたがここにいるんだ!!」
乱れるマーティンの言葉にティスはただ溜息をつき、宝物を隠す子供のようにジェシカを腕の中に抱きしめる。
「それは私の言葉ですよ。 なぜ、あなたが彼女に与えられた部屋にいるんですか?」
どこか、馬鹿にしたようなティスの声。
マーティンが嫌がるティスの視線は、伏せられ……ジェシカを見つめる。 視線が合えば、ジェシカが躊躇いながらも甘えた視線を向け、ティスはその目元に口付けを落とす。
「気持ち悪いんだよ、雌の顔をしやがって……」
マーティン自身は威圧的に冷ややかに、ジェシカの行為を非難しているつもりだったが……、実際にはその声は震え怯えていた。
「あなたその下品な言葉遣いを……いえ、私の婚約者を馬鹿にするのはおやめなさい」
「なっ、ジェシカは俺の!!」
「私の婚約者ですよ」
「やっぱり、浮気をしていたのか!!」
「あなたと一緒にしないでください。 疑うならアンジェに聞けばよいでしょう。 彼女がジェシカの不貞など許すはずないのですから」
「それも、そうだな……」
「それで、ですね……。 あなたは納得したかもしれませんが、私は納得していません。 あなたの言葉、行動、全てが許されるものではありません」
ジェシカを抱き上げたティスは、失礼と囁きながらソファに残し頭を撫でる。
ジェシカを背にティスはマーティンと向かいあう。
「あなたは、当主になる気はないようですね」
「なる気が無い訳では……。 ジェシカを!! ジェシカを返してくれ!! お、私には彼女が必要なんだ!!」
「お断りします。 私は彼女を愛していますから。 あなたが彼女を幸せにすると思えば、見守り助力もしておりましたが。 彼女を愛する事も幸せにする様子もないようですから、私が彼女を愛し幸せにします。 なので……あなたは邪魔です。 彼女を利用しようとし、あまつさえ危害を加えようとした。 終わりです」
「どうして……おまえばかりが!!」
叫ぶマーティンの声をティスは静かに聞いていた。
その瞳は、穏やかに見据えているかのようだった。
「全部、全部がおまえのものだ!! 先に生まれたと言うだけで、当主の座もソレに連なる財産も名声も地位も何もかもがおまえのものだった!! なのに、まだ、俺から奪おうと言うのか!!」
「私はあなたから何も奪ってなどいませんよ。 今までは……。 全てが積み重ねていた努力のたまもの。 当主のチャンスを与えながら2か月も努力出来なかった」
「母さんが!! 母さんが、俺を貶めるために馬鹿な教師しか雇わなかったのが悪い。 母さんは兄さんだけが大切なんだ!!」
「あ……」
あなたの学び方には問題がある。
その事実をジェシカは口にしようとしたが、振り返ったティスはシーと人差し指を口に当てて言葉を止めた。
ジェシカがマーティンの勉強を見る以前、教科書を前にしヒステリックに暴れるマーティンの教師をしていたのがティスだった。 マーティンの覚えの悪さの理由をよく理解していた。
「教師が悪い訳ではありません。 あなたは相手に求めるばかりではなく、自らのルールを知り、そして伝え、願う必要があった。 そうすれば……可能性はあったのですよ」
「何を言ってるんだ!!」
「そして、思い通りにヒステリックに怒鳴り散らし、暴れ、暴力を振るい、破壊をする。 それでは、例え勉強を克服したとしても、無理です。 あなたを見る周囲の者は、もう、侯爵にはふさわしくないと判断しました。 貴方が求める敬意は、既に失われたのですよ」
「……そうやって、そうやって、俺を追い詰める!! おまえは!! 俺の事を何も理解していない!!」
「そうでしょうか? あなた以上に理解していますよ。 そして……あなたこそ私を理解していない。 私は、あなたにジェシカへの恋心を告げ……出会う機会を求めた。 あなたは自らの恋心を理由に、ソレを断った……。 それでも、私は……いえ、過去の事はもういいです。 問題は今」
今は肉体が少々衰えたとは言え、騎士をやめてそう日も経っていないマーティンが、ティスに一気に詰め寄られそして床に押し倒された。
力は殆ど使われていない。
だけど倒れ、そして抑え込まれた。
「いけない子だ……マーティン。 あなたはしてはいけない事をしました。 ここまでの事をするつもりはなかった……。 なんて、愚かで可哀そうな……」
ティスは優しい声で嘆いていた。
ジェシカに背を向け……。
ティスは顎を掴み、力づくで口を開けさせ、薬を流し込んだ。
「なっ、何を!!」
「世の中には、色んな欲望を持つ人がいましてね……。 気まぐれに作った薬です。 流石に実験をする事は出来ませんでした。 もし、何かあったら、すみません」
叫び、呻き、床の上で身体が軋み解体され構築される様に苦しむマーティン。
「さぁ、行きましょう。 ジェシカ」
「いいのですか?」
「えぇ……。 マーティン、あなたの処分は後日あらためて」
苦しみに身体を縮ませ、悶え苦しむマーティンをチラリとジェシカは見た。 その視線を塞ぐようにティスはジェシカを抱き上げ、彼の部屋へと連れ帰った。
マーティン自身にも語っていたが、彼は勉強への苛立ちでヒステリーを起こし、そして暴れ、人にケガをさせた。 その暴れようは、彼を愛する母親自身がもう嫌だと嘆き、マーティンを騎士団に戻して欲しいとティスに願うほどに。
「私の手には負えません……お願いです。 あの子を相応しい場に戻してください」
それも方法の一つだった。
ティスは母の嘆きを聞きマーティンを閉じ込めた監禁部屋の鍵を開き自由を与えた。
その結果、マーティンはティスを怒らせた。
ジェシカの部屋に来なければ、
ただ謝罪だけをしていれば、
襲おうとしなければ、
許しはあった……かも、知れない。
マーティンは全て裏切った。
だから、ティスは……弟マーティンを……女に変えた。
ティスは与えるばかりの弟から初めて奪った。
その性別を……。
ジェシカに伸ばされた手が、ジェシカの身体を引き寄せた。
そして、抱きしめる。
ホッとした……。
優しい温もりに身を委ね甘える。
触れる唇を、甘く開いた唇で受け止める。
「何をしているんだ!! 気持ち悪い!!」
叫んだのはマーティン。
マーティンの視線の先には、ソファに座る兄であるマーティスの姿。 そして、その膝の上に座り抱きしめられているジェシカの姿。
「言葉が乱れていますよ。 権力を持つ侯爵家の者が常に威圧的でどうするのですか」
それは丁寧で優しく甘い口調だった。
「なぜ、兄さんが……。 いえ……ジェシカ……こちらに来なさい。 君は、治療師なのでしょう!! そんな顔で患者の信頼を得られると思って、いる……のですか」
マーティンの声に、ジェシカの身体が強張る。
だけれど……マーティンは怯えた。 怯えだした。
暗闇の中、月明りに光るティスの瞳が肉食の獣のようにマーティンを睨んでいたから。
マーティンの問いかけに対してジェシカの唇がわずかに開く。 だけど、ティスの人差し指がジェシカの唇に触れ塞ぎ、唇を撫で、顎へと滑り、上向かせ、軽く口づけた。
「な、にをするんだ!! ジェシカは俺の!「言葉遣い」」
言いたい事を言わせてもらえないマーティンはイライラを募らせながらも、月明りの光の中でジッと見つめて来るティスの瞳を怯えていた。
「兄さん!! なぜ、あなたがここにいるんだ!!」
乱れるマーティンの言葉にティスはただ溜息をつき、宝物を隠す子供のようにジェシカを腕の中に抱きしめる。
「それは私の言葉ですよ。 なぜ、あなたが彼女に与えられた部屋にいるんですか?」
どこか、馬鹿にしたようなティスの声。
マーティンが嫌がるティスの視線は、伏せられ……ジェシカを見つめる。 視線が合えば、ジェシカが躊躇いながらも甘えた視線を向け、ティスはその目元に口付けを落とす。
「気持ち悪いんだよ、雌の顔をしやがって……」
マーティン自身は威圧的に冷ややかに、ジェシカの行為を非難しているつもりだったが……、実際にはその声は震え怯えていた。
「あなたその下品な言葉遣いを……いえ、私の婚約者を馬鹿にするのはおやめなさい」
「なっ、ジェシカは俺の!!」
「私の婚約者ですよ」
「やっぱり、浮気をしていたのか!!」
「あなたと一緒にしないでください。 疑うならアンジェに聞けばよいでしょう。 彼女がジェシカの不貞など許すはずないのですから」
「それも、そうだな……」
「それで、ですね……。 あなたは納得したかもしれませんが、私は納得していません。 あなたの言葉、行動、全てが許されるものではありません」
ジェシカを抱き上げたティスは、失礼と囁きながらソファに残し頭を撫でる。
ジェシカを背にティスはマーティンと向かいあう。
「あなたは、当主になる気はないようですね」
「なる気が無い訳では……。 ジェシカを!! ジェシカを返してくれ!! お、私には彼女が必要なんだ!!」
「お断りします。 私は彼女を愛していますから。 あなたが彼女を幸せにすると思えば、見守り助力もしておりましたが。 彼女を愛する事も幸せにする様子もないようですから、私が彼女を愛し幸せにします。 なので……あなたは邪魔です。 彼女を利用しようとし、あまつさえ危害を加えようとした。 終わりです」
「どうして……おまえばかりが!!」
叫ぶマーティンの声をティスは静かに聞いていた。
その瞳は、穏やかに見据えているかのようだった。
「全部、全部がおまえのものだ!! 先に生まれたと言うだけで、当主の座もソレに連なる財産も名声も地位も何もかもがおまえのものだった!! なのに、まだ、俺から奪おうと言うのか!!」
「私はあなたから何も奪ってなどいませんよ。 今までは……。 全てが積み重ねていた努力のたまもの。 当主のチャンスを与えながら2か月も努力出来なかった」
「母さんが!! 母さんが、俺を貶めるために馬鹿な教師しか雇わなかったのが悪い。 母さんは兄さんだけが大切なんだ!!」
「あ……」
あなたの学び方には問題がある。
その事実をジェシカは口にしようとしたが、振り返ったティスはシーと人差し指を口に当てて言葉を止めた。
ジェシカがマーティンの勉強を見る以前、教科書を前にしヒステリックに暴れるマーティンの教師をしていたのがティスだった。 マーティンの覚えの悪さの理由をよく理解していた。
「教師が悪い訳ではありません。 あなたは相手に求めるばかりではなく、自らのルールを知り、そして伝え、願う必要があった。 そうすれば……可能性はあったのですよ」
「何を言ってるんだ!!」
「そして、思い通りにヒステリックに怒鳴り散らし、暴れ、暴力を振るい、破壊をする。 それでは、例え勉強を克服したとしても、無理です。 あなたを見る周囲の者は、もう、侯爵にはふさわしくないと判断しました。 貴方が求める敬意は、既に失われたのですよ」
「……そうやって、そうやって、俺を追い詰める!! おまえは!! 俺の事を何も理解していない!!」
「そうでしょうか? あなた以上に理解していますよ。 そして……あなたこそ私を理解していない。 私は、あなたにジェシカへの恋心を告げ……出会う機会を求めた。 あなたは自らの恋心を理由に、ソレを断った……。 それでも、私は……いえ、過去の事はもういいです。 問題は今」
今は肉体が少々衰えたとは言え、騎士をやめてそう日も経っていないマーティンが、ティスに一気に詰め寄られそして床に押し倒された。
力は殆ど使われていない。
だけど倒れ、そして抑え込まれた。
「いけない子だ……マーティン。 あなたはしてはいけない事をしました。 ここまでの事をするつもりはなかった……。 なんて、愚かで可哀そうな……」
ティスは優しい声で嘆いていた。
ジェシカに背を向け……。
ティスは顎を掴み、力づくで口を開けさせ、薬を流し込んだ。
「なっ、何を!!」
「世の中には、色んな欲望を持つ人がいましてね……。 気まぐれに作った薬です。 流石に実験をする事は出来ませんでした。 もし、何かあったら、すみません」
叫び、呻き、床の上で身体が軋み解体され構築される様に苦しむマーティン。
「さぁ、行きましょう。 ジェシカ」
「いいのですか?」
「えぇ……。 マーティン、あなたの処分は後日あらためて」
苦しみに身体を縮ませ、悶え苦しむマーティンをチラリとジェシカは見た。 その視線を塞ぐようにティスはジェシカを抱き上げ、彼の部屋へと連れ帰った。
マーティン自身にも語っていたが、彼は勉強への苛立ちでヒステリーを起こし、そして暴れ、人にケガをさせた。 その暴れようは、彼を愛する母親自身がもう嫌だと嘆き、マーティンを騎士団に戻して欲しいとティスに願うほどに。
「私の手には負えません……お願いです。 あの子を相応しい場に戻してください」
それも方法の一つだった。
ティスは母の嘆きを聞きマーティンを閉じ込めた監禁部屋の鍵を開き自由を与えた。
その結果、マーティンはティスを怒らせた。
ジェシカの部屋に来なければ、
ただ謝罪だけをしていれば、
襲おうとしなければ、
許しはあった……かも、知れない。
マーティンは全て裏切った。
だから、ティスは……弟マーティンを……女に変えた。
ティスは与えるばかりの弟から初めて奪った。
その性別を……。
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