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前編
09
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アンジェに振り回され買い物をしている最中も、マーティンを交えて話し合いましょうと幾度も伝えたが、分かっているわと言いながら、彼女は家とは全く関係の無い場所へと向かっていたらしい。
そこは、怪しい華やかさがある区画。
甘い香りが漂い、緩やかな音色の音楽が響く。
性的な印象を与える衣服に身を包んだ美しい女性達。
酒と雰囲気に酔った男性達。
時折、アンジェが声をかけられていたが、しっしっと小さな虫を払うように追い払っていた。
「ちょっと……何処に連れて来たのよ」
来た事は無いが色街、花街、色んな呼び方があるが、性を売る場所だと分かった。
まさか?!
そこまでするとは……。
私が邪魔ならそう言えば良いでしょう!!
声をあげなかったのは、責めるよりも逃げる事を優先したから。
幾ら方向音痴でも、来た道を真っすぐ戻り走って行くぐらいはできる。
無言で、来た道を走り出せば背後からアンジェの甲高い声が聞こえた。
「誰か!! 彼女を捕まえて!!」
花街から人が逃げ出すと言う事は、良くある事なのだろう。 ジェシカが捕まるまで一瞬の事だった。
「やめて!! 離してよ、人攫い!! 私はここの住民ではないのよ!! 家の者を呼んでよ!!」
そうやって叫び暴れていると、アンジェは顔を顰めて耳を塞いだ。
「本当、ウルサイわねぇ……。 口を塞いで、運んできてくれます? おねが~い、お兄さん」
甘え媚びたアンジェが私を捕らえた大男に訴えれば、側にいた男が口を塞いだ。
連れてこられた先は一際大きな店だった。
アンジェは先に店の者と話、そして戻ってきた時には両手用の拘束具と、両足を繋ぐ短な鎖付きの拘束具を手にしていた。
大男の肩の上で暴れてはみたがあんまり意味はなさない。 呆気なく両手両足が拘束され、口を塞いでいた布が外された。
「一体何を考えて居るのよ!!」
「あら、最高の思いをさせてあげるって、私言ったわよね? あれ? 言ってなかったかしら? まぁ、いいわ」
惚けた様子に苛立ちを感じ、離しなさいと暴れていれば、また口が塞がれた。 そして……連れていかれた先で私は……。
そして、私達は……
温泉に入り、マッサージを受ける事になったのだ。
「疲れが……癒える……」
「でしょ?」
程よい力加減のマッサージを受けていれば、奇妙にリラックスしてしまい、マーティンとの言い合いに反省をしてしまうのだ。
「ねぇ、アンジェ……マーティンが騎士として一人前になるなら、ソレはソレでいいじゃない。 彼と一緒に生きていきなさいよ。 あぁ、そうじゃない……なんで。 ……どうして……マーティンと付き合ってないなんて嘘を言い続けたのよ」
「だって付き合ってないもの。 あの人が私の面倒を見ていたのは、亡くなった母親のせいね……。 私が……現侯爵の弟、マーティンの伯父様を誘惑して侯爵家を追い出された時」
「そんな話聞いてないわ」
「そりゃ、そうよ。 言ってないもの。 で、私の人格に問題があるのは、親である母さんが仕事で側にいられなかったから親の愛情に飢えたんだ。って、母さんがねぇ……。 私の側にいて教育出来なかったから馬鹿になったんだ。 って、そうやって全部、マーティンを育てるために時間を費やしたせいだって、マーティンを責めたのよ。 黙っていればオジサマのロリコン問題で終わったのに、そうやって騒ぐから夫人に追い出されたのよねぇ~。 まぁ……そのまま、母は死ぬまでマーティンを恨んで、付きまとった訳よ。 マーティンの行動は全部、そう全部が罪悪感からなのよ。 それで、私達の関係が上手くいくと思う?」
「なら……マーティンが面倒を見ようとするのを、拒絶すれば良かったでしょう?」
「え~~。 だって、都合よく後始末してくれるのよ? なんで、拒否するのよ~~。 本当、そういう真面目なところ嫌いじゃないけど、損するわよ?」
「私の事はどうでもいいのよ……。 今後、あなたと、あなたの子をどうするかよ。 ちゃんとマーティンと向かい合って」
「あ~~。 私、彼の事は嫌いではないけど……あぁ言う真面目な人って、苦手なのよねぇ……。 それに、あぁ言う人と結婚しちゃうと、この自由を許してもらえなくなるでしょう。 私はね……この子をジェシカに育ててもらいたいの。 別にあなたに任せっぱなしにするつもりはないわ!! ねっ!! 私も手伝うから!! ほら、あなたの子として育てて、私が乳母をする。 完璧だと思わない?!」
「思う訳ないでしょう!! あなたの子とマーティンの子なんでしょう!! 言っている事、めちゃくちゃなの分かっている? 本当、いい加減にしてよ……頭がおかしくなりそう!!」
「真面目に考え過ぎなのよ。 何が私達にとって一番良いか考えないとね?」
人によっては彼女の奔放さを無邪気と言うのかもしれない。 でも、正直……地獄に落ちろ……と、思う……時々。
「その、私達の中に、私を含めないでよ……」
「……ねぇ……これからも、仲良くしましょうよ。 これからは絶対にマーティンとそう言う関係にならないって誓うから。 それで、納めてよ」
基本的に馴れ合いのような付き合いが続いているのは、私が彼女を憎み切れないでいるから……。 それでも、今回のは違う。 何より、私達だけの問題ではない。
「やめてよ……馬鹿にし過ぎているわ」
「別に、そんなつもりは……」
「なら、ちゃんと考えてよ!!、何時までも若い訳ではないのよ? それに、子供だっているんでしょう?」
そう言えば、妊婦にマッサージってどうなのかしら? と思ったが、僅かに触れるだけのマッサージだし……。 って、今はそういう事より……。
「ちゃんと考えた結果だわ……」
「本当……やめて、気が狂いそうだわ……」
「ジェシカ……怒っているの?」
「なんで、怒らないと思ったのよ。 あなた……まだ……マーティンに言ってないんでしょう? わざわざ、私を納得させるために、マーティンが部屋に来ているとか言ったんでしょう。 そうやって訳の分からない嘘をつくとこも、信頼できないのよ!!」
「責任取って、ジェシカと別れて、私と結婚するなんて言われたら最悪だもの。 だから……私達だけで先に話し合いたかったの」
「でも、子供の問題は……私ではなく、アンジェ、あなたとマーティンの問題でしょう。 私を……巻き込まないで……」
今までは……こうマッタリとした雰囲気を作られ許してきたし、流されてきた。 それでも、子供がいるなら別だ。 はっきりとしないといけない。
多分、彼女と……マーティンが嫌がるだろう方法を持って。
「どうして!! どうして、そんなに冷たい事を言うの!! 私達は友達でしょう!!」
突然に起き上がれば、マッサージをしていた女性がビクッとして、私に救いの視線を求めた。 そんな事を全く気に留める事無く、アンジェは自分の思いをぶつけ、そして……叫び続けた。
「私が、こんなに、頼んでいるのに!! なんで、ダメなのよ!! あなたが、仕事をしている間。 ちゃんと子供の面倒も見る、家の事だってするわ!! 料理だって掃除だって、あなたが教えてくれた通りちゃんとするから!!」
気持ち悪い……。
ほぼ下着姿の状態で、私に抱き着こうとしたその時……。 遠くから騒々しく騒ぎ立てていた音が、すぐそばまでたどり着き、そして……叫んだ。
「ジェシカさん!!」
「ジェシカ!!」
そこは、怪しい華やかさがある区画。
甘い香りが漂い、緩やかな音色の音楽が響く。
性的な印象を与える衣服に身を包んだ美しい女性達。
酒と雰囲気に酔った男性達。
時折、アンジェが声をかけられていたが、しっしっと小さな虫を払うように追い払っていた。
「ちょっと……何処に連れて来たのよ」
来た事は無いが色街、花街、色んな呼び方があるが、性を売る場所だと分かった。
まさか?!
そこまでするとは……。
私が邪魔ならそう言えば良いでしょう!!
声をあげなかったのは、責めるよりも逃げる事を優先したから。
幾ら方向音痴でも、来た道を真っすぐ戻り走って行くぐらいはできる。
無言で、来た道を走り出せば背後からアンジェの甲高い声が聞こえた。
「誰か!! 彼女を捕まえて!!」
花街から人が逃げ出すと言う事は、良くある事なのだろう。 ジェシカが捕まるまで一瞬の事だった。
「やめて!! 離してよ、人攫い!! 私はここの住民ではないのよ!! 家の者を呼んでよ!!」
そうやって叫び暴れていると、アンジェは顔を顰めて耳を塞いだ。
「本当、ウルサイわねぇ……。 口を塞いで、運んできてくれます? おねが~い、お兄さん」
甘え媚びたアンジェが私を捕らえた大男に訴えれば、側にいた男が口を塞いだ。
連れてこられた先は一際大きな店だった。
アンジェは先に店の者と話、そして戻ってきた時には両手用の拘束具と、両足を繋ぐ短な鎖付きの拘束具を手にしていた。
大男の肩の上で暴れてはみたがあんまり意味はなさない。 呆気なく両手両足が拘束され、口を塞いでいた布が外された。
「一体何を考えて居るのよ!!」
「あら、最高の思いをさせてあげるって、私言ったわよね? あれ? 言ってなかったかしら? まぁ、いいわ」
惚けた様子に苛立ちを感じ、離しなさいと暴れていれば、また口が塞がれた。 そして……連れていかれた先で私は……。
そして、私達は……
温泉に入り、マッサージを受ける事になったのだ。
「疲れが……癒える……」
「でしょ?」
程よい力加減のマッサージを受けていれば、奇妙にリラックスしてしまい、マーティンとの言い合いに反省をしてしまうのだ。
「ねぇ、アンジェ……マーティンが騎士として一人前になるなら、ソレはソレでいいじゃない。 彼と一緒に生きていきなさいよ。 あぁ、そうじゃない……なんで。 ……どうして……マーティンと付き合ってないなんて嘘を言い続けたのよ」
「だって付き合ってないもの。 あの人が私の面倒を見ていたのは、亡くなった母親のせいね……。 私が……現侯爵の弟、マーティンの伯父様を誘惑して侯爵家を追い出された時」
「そんな話聞いてないわ」
「そりゃ、そうよ。 言ってないもの。 で、私の人格に問題があるのは、親である母さんが仕事で側にいられなかったから親の愛情に飢えたんだ。って、母さんがねぇ……。 私の側にいて教育出来なかったから馬鹿になったんだ。 って、そうやって全部、マーティンを育てるために時間を費やしたせいだって、マーティンを責めたのよ。 黙っていればオジサマのロリコン問題で終わったのに、そうやって騒ぐから夫人に追い出されたのよねぇ~。 まぁ……そのまま、母は死ぬまでマーティンを恨んで、付きまとった訳よ。 マーティンの行動は全部、そう全部が罪悪感からなのよ。 それで、私達の関係が上手くいくと思う?」
「なら……マーティンが面倒を見ようとするのを、拒絶すれば良かったでしょう?」
「え~~。 だって、都合よく後始末してくれるのよ? なんで、拒否するのよ~~。 本当、そういう真面目なところ嫌いじゃないけど、損するわよ?」
「私の事はどうでもいいのよ……。 今後、あなたと、あなたの子をどうするかよ。 ちゃんとマーティンと向かい合って」
「あ~~。 私、彼の事は嫌いではないけど……あぁ言う真面目な人って、苦手なのよねぇ……。 それに、あぁ言う人と結婚しちゃうと、この自由を許してもらえなくなるでしょう。 私はね……この子をジェシカに育ててもらいたいの。 別にあなたに任せっぱなしにするつもりはないわ!! ねっ!! 私も手伝うから!! ほら、あなたの子として育てて、私が乳母をする。 完璧だと思わない?!」
「思う訳ないでしょう!! あなたの子とマーティンの子なんでしょう!! 言っている事、めちゃくちゃなの分かっている? 本当、いい加減にしてよ……頭がおかしくなりそう!!」
「真面目に考え過ぎなのよ。 何が私達にとって一番良いか考えないとね?」
人によっては彼女の奔放さを無邪気と言うのかもしれない。 でも、正直……地獄に落ちろ……と、思う……時々。
「その、私達の中に、私を含めないでよ……」
「……ねぇ……これからも、仲良くしましょうよ。 これからは絶対にマーティンとそう言う関係にならないって誓うから。 それで、納めてよ」
基本的に馴れ合いのような付き合いが続いているのは、私が彼女を憎み切れないでいるから……。 それでも、今回のは違う。 何より、私達だけの問題ではない。
「やめてよ……馬鹿にし過ぎているわ」
「別に、そんなつもりは……」
「なら、ちゃんと考えてよ!!、何時までも若い訳ではないのよ? それに、子供だっているんでしょう?」
そう言えば、妊婦にマッサージってどうなのかしら? と思ったが、僅かに触れるだけのマッサージだし……。 って、今はそういう事より……。
「ちゃんと考えた結果だわ……」
「本当……やめて、気が狂いそうだわ……」
「ジェシカ……怒っているの?」
「なんで、怒らないと思ったのよ。 あなた……まだ……マーティンに言ってないんでしょう? わざわざ、私を納得させるために、マーティンが部屋に来ているとか言ったんでしょう。 そうやって訳の分からない嘘をつくとこも、信頼できないのよ!!」
「責任取って、ジェシカと別れて、私と結婚するなんて言われたら最悪だもの。 だから……私達だけで先に話し合いたかったの」
「でも、子供の問題は……私ではなく、アンジェ、あなたとマーティンの問題でしょう。 私を……巻き込まないで……」
今までは……こうマッタリとした雰囲気を作られ許してきたし、流されてきた。 それでも、子供がいるなら別だ。 はっきりとしないといけない。
多分、彼女と……マーティンが嫌がるだろう方法を持って。
「どうして!! どうして、そんなに冷たい事を言うの!! 私達は友達でしょう!!」
突然に起き上がれば、マッサージをしていた女性がビクッとして、私に救いの視線を求めた。 そんな事を全く気に留める事無く、アンジェは自分の思いをぶつけ、そして……叫び続けた。
「私が、こんなに、頼んでいるのに!! なんで、ダメなのよ!! あなたが、仕事をしている間。 ちゃんと子供の面倒も見る、家の事だってするわ!! 料理だって掃除だって、あなたが教えてくれた通りちゃんとするから!!」
気持ち悪い……。
ほぼ下着姿の状態で、私に抱き着こうとしたその時……。 遠くから騒々しく騒ぎ立てていた音が、すぐそばまでたどり着き、そして……叫んだ。
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「ジェシカ!!」
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