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03.お節介な婚約者は、公爵令嬢が正義
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公爵令嬢の名前は、メアリー・ラングレー。
私よりも1つ年上で、セザールと同じ年。
私達の出会いは、チビッ子お茶会デビュー。
セザールは昔は、とても紳士だった。
そして、豊かでない領地を理解し、幼い頃から騎士を目指していた。
『私のお姫様、一生守るよ』
なんて言ってた頃は可愛かったんだよなぁ~~。
ぁ……メアリーの事、忘れてた。
なんでセザールを思い出したかというと、メアリーがセザールに執心しているから。
よよよっと倒れたメアリーを、側にいた男子生徒は慌てて支えようとしたが、それを避けるようにクルリと身体を開店させ、そこからふらりと倒れるように座り込んだ。
思わず拍手をしそうになった。
してもいいかな?
しちゃえ
「流石、公爵令嬢! 倒れる時もお美しいですわ。 私には到底真似できません」
ぱちぱちぱちぱち。
視線が集まるが気にしないと言うか、いっそめっちゃ集まればいい。
息も絶え絶えそんな呼吸を演じ、うっすら涙ぐんだ様子で私を睨み彼女は言う。
「酷いわ……私がこんなツライ思いをしているのに……つくづくあなたって縁起の悪い魔女、いいえ……死神だわ……、こんなところで何をしているの…… 誰を連れて行くのか品定めでもしているのかしら……貴方がこんなところに顔を出して許されると思っているの……」
「そりゃぁ、生徒ですから」
正規の成績は彼女よりもかなり良い。 そもそも彼女の成績が余りにも悪かったため、不正だと騒ぎ立てたのが、私のテストが減点されるようになった原因だ。 職業科でそれを知らない者はいない……本気の私は礼儀作法だってなかなかやるのだ。
クイクイと私の服が引っ張られた。
レイナが笑うのを堪え、苦笑いを浮かべている。
「程々にしてあげなさいよ」
「ぁ、何? コレ、イジメたってやられる奴? でもさ、勝手に倒れた訳だし、それもかなり美しく……イジメ、イジメになるのかな? ねぇ? どう思う?? イジメって言われたら困るなぁ~」
不意に周囲で見物を決めかかっている人に声をかけた。
「どう思います?」
「ぇ、いや……どうだろう?」
目が泳いでいる通りすがりの人。
「私断罪されちゃうかしら?」
「私、早く行かないと」
「そ、そうね……先着で新作菓子がついてくるのよ」
「あぁ、急がないと」
公爵令嬢を庇い喧嘩を売ろうと言う人は居ない。
魔力を排斥し過ぎた結果、魔力不足による奇病が流行っている事もあり、世間は私を無下に出来ない。 それに加えて私の背後に隠れるように立っているレイナ・ベルリー、彼女の実家は他国からの輸入品を多く取り扱っている商人でその影響力を考えれば、喧嘩を売るのは躊躇われる人である。
マジ感謝だ、親友よ!!
今度なんか魔道具を贈らせてもらう!
「そこで何をしているんです!!」
少しずつ人は散っていったものの、それでも今はまだ人だかりがある状態。 大抵の人は人事としているが、世の中には見て見ぬふりをできない人も要る訳だ……。
とは言え、どう説明していいのか誰もが困る状況が繰り広げられていた。
私はまだ姿は見えなくても、あげられる声に肩を竦めた。
「おやおや、ダーリンのお出ましじゃん。 おじゃまかなぁ~~」
嫌な顔をさせたくて言っているのだから、レイナのソレは大成功と言えるだろう。 ニヤニヤとしながら腰を折り、低い姿勢で私の顔を見上げて来て、私はいやぁ~~な顔をする。
「ぜひ、この茶番に付き合っていってちょうだい……」
メアリー公爵令嬢とは滅多に顔を合わせる事はないが、それでも飽き飽きするほどにこんな茶番は繰り返されている。
「大丈夫ですか?!」
セザールがドレスの汚れも気にせず倒れ込んでいるメアリーを気にかけ、黒ずくめでスッゴイ目立っているはずの私を無視して、装飾品で何キロも重さマシマシになっているメアリーに駆け寄った。
「メアリー様、大丈夫ですか?」
メアリーは弱々しくセザールに助けを求めるように手を伸ばし、セザールはその手をとって、手元は流れるように恋人繋ぎとなり、セザールの反対の手はメアリーの背に回された。
「メアリー様は身体が弱いのですから、気を付けないと」
ふらっと意識を失うかのような動きで視線を逸らせば、髪が頬を流れ、セザールは頬にかかる髪を長い指で退かした。
「セザール……」
うっとりとした様子。
甘く熱っぽい吐息で名を呼ぶメアリーは、セザールの胸元に倒れ込んだ。
「メアリー様、大丈夫ですか?!」
フルフルと震えた様子でセザールの胸の中に縋りつきながらメアリーが言う言葉はこうだ。
「あの女の不吉な気配に私……耐えられなくて」
「それは申し訳ない事をしてしまいました。 今日は彼女と出かけるため、遅くなる私を待ってもらっていたのです。 身体の弱いメアリー様には、濃厚なララの魔力がキツイのですね。 なんて……」
少し考えて続けた。
「お可愛らしい方だ」
礼儀正しく、何処までも優雅にセザールは笑みを向け、メアリーの手をとり口づけた。
それを私の影に隠れて見ていたレイナはヒッソリと言うのだ。
「一周回って馬鹿にしてない?」
だから私もボソリと返す訳だ。
「お花畑には、幸せな言葉に聞こえるのでしょう」
そして私は、セザールへと言葉を向けた。
「私が側にいると、メアリー様の体調が良くないようですから、先に失礼させて頂きますわ。 どうかセザール様はメアリー様を送って差し上げてくださいませ」
1台しかないうちの馬車は、私が使うか? セザールが使うか? セザールが使うならレイナがいるうちに帰りたいものだ。 この茶番的な嫌がらせで生まれる悩み等この程度のものである。
「いえ待ってください。 ララの魔力で体調を損ねられたと言うのだから、ララはその責任を取るべきですよ。 魔力除去を差し上げて当然ではありませんか?」
「え~~」
私は顔をしかめた。
「そう言う言葉遣いは止めなさいと言っているでしょう。 貴方は私の婚約者なのですよ。 そう言う子供っぽい態度も止めて下さい見苦しい、侮られますよ。 それに私まで同類と思われてしまいます」
見苦しいのはアンタだぁああああ!!
というのは心の声、表の声では
「(魔力除去して)いいんですか?」
いや、マジで聞いている訳よ。 だって、メアリーの魔力は多くない。 魔力奪うの??奪うと……本当に眩暈と吐き気と熱としばらく動けなくなるだろう。 ということは……別の魔法をつかったほうがよくない?
ありだな。
「えぇ、わかりました!!」
嬉々として了承したとも。
「嫌よ、死神の魔法なんて」
「そんな風に言わないで下さい、ララは優秀な魔導師なのですよ。 虚弱なメアリー様にとっては恐ろしく感じるかもしれませんが、ララの治療は一流です」
「私がこうしてセザール様を独占している事に嫉妬しているあの女が……ちゃんと治療するなんて思えませんわ!」
「……」
シーンって感じになる私。
「ぇ……そう、なのですか?」
嬉しそうにするセザール。
「あの魔女の性悪な姿をセザールは知るべきだわ。 貴方の前で良い子を演じているかもしれませんが、私には……酷い事をしてきますのよ。 なのにどうして、そうしてセザールはそんな恐ろしい事を言うの? その女に騙されているのね。 可哀そうな人」
よよよよっと泣き出してしまった。
「ララは口が悪くて素行も悪い、だから誤解を受けやすいだけで優秀な人なんだ。 どうか、信じてくれ。 彼女が信じられないなら……私を信じてください。 ほら、ララ……君の日頃の態度がこういう結果を招くんですよ。 反省してください」
「はいはい、ごめんなさい」
「もっと誠実に……そのような態度が悪いと言っているんですよ!!」
「セザール様!! あぁあああ、セザール様!! 今も彼女が攻撃をしかけてきて、ツライ、ツライの……恐ろしい魔女よ……怖い……怖いわ。 だって、彼女は手をふれずとも私を痛めつける事が出来るのだから……お願いよ……私を守って!! お願い……」
「ララは、そんな事、絶対しませんよ。 大丈夫です。 私が保証します!! そうやって真実と向かい合わないからこそ、メアリー様は健康になれないのですよ。 そうだ、今度から早朝練習に少しだけでいいので参加しませんか?」
レイナが笑っている。
私は……うんざりだよ。
疲れたよ……。
家に帰って魔力絞り出す方がマシってもんだよ。
ここまで言われれば、性欲マシマシ強化魔法なんて使えないじゃない。
使ってもムキムキ強化魔法程度だよね~
なんて、私の脳内一人劇場を他所に、メアリー様は早朝練習を拒否していた。
「わ、私は……セザール様に送っていただければ、それでいいの……」
そう言って弱々しくメアリーはセザールに微笑みかけるのだ。
「分かりました……ララ、私はメアリー様を馬車まで送り届けてきます。 馬車で待っていてください」
思っていたのと違っていたのだろう。
メアリーは不機嫌そうに私を睨むが、セザールに見せる顔は見事に微笑みかけていた。
「わかったわ」
メアリー様を公爵邸まで送ってあげてください。 そう言う風に言えば、きっと私が拗ねているんだと言われ、それはそれで面倒な事になりかねないのは、過去の経験からわかっている。
セザールと合流するまで、余り時間を必要としなかった。
余程急いで戻ってきたのだろう、額にじんわりと汗がにじんでいた。 そして……頬にピンク色の口紅の跡が……。
「ソレで走ってきたの?」
呆れたと言う顔を露わにする。
「何を言っているのか分からないが、そんな顔を人に見せる者ではありませんよ」
私は鏡を見せつけた。
顔面に押しつけた。
別に嫉妬じゃないけどね……イラっとしただけで……。
「近すぎて見えませんよ。 ただ、鏡を持っていたのはポイントが高い。 君はそういうのを気にしない人だと思っていました」
嬉しそうに言われても複雑でしかない。
流石に口紅の跡を見れば、セザールも焦ると言うものだ。
「これは他意はない。 そう、メアリー様は私の行動に報いられた。 褒美を与えられたのですよ。 上のものはそう言う気づかいが大切ですからね」
「上級貴族は下々の苦労にそうするものなの?」
「えぇ」
「それってさ……セザール様が何時もおっしゃっている、痴女と何が違うの?」
「尊い方がなさる行為は正しい。 下級貴族にとってそれが全てなんですよ。 メアリー様を痴女等と……女性がそのような言葉を使うなんて嘆かわしい……」
いや……私は、アンタが嘆かわしいよ。
あははっははははっは、おほほほほほほほ 脳みそお花畑な二人(↓AIイラスト)
私よりも1つ年上で、セザールと同じ年。
私達の出会いは、チビッ子お茶会デビュー。
セザールは昔は、とても紳士だった。
そして、豊かでない領地を理解し、幼い頃から騎士を目指していた。
『私のお姫様、一生守るよ』
なんて言ってた頃は可愛かったんだよなぁ~~。
ぁ……メアリーの事、忘れてた。
なんでセザールを思い出したかというと、メアリーがセザールに執心しているから。
よよよっと倒れたメアリーを、側にいた男子生徒は慌てて支えようとしたが、それを避けるようにクルリと身体を開店させ、そこからふらりと倒れるように座り込んだ。
思わず拍手をしそうになった。
してもいいかな?
しちゃえ
「流石、公爵令嬢! 倒れる時もお美しいですわ。 私には到底真似できません」
ぱちぱちぱちぱち。
視線が集まるが気にしないと言うか、いっそめっちゃ集まればいい。
息も絶え絶えそんな呼吸を演じ、うっすら涙ぐんだ様子で私を睨み彼女は言う。
「酷いわ……私がこんなツライ思いをしているのに……つくづくあなたって縁起の悪い魔女、いいえ……死神だわ……、こんなところで何をしているの…… 誰を連れて行くのか品定めでもしているのかしら……貴方がこんなところに顔を出して許されると思っているの……」
「そりゃぁ、生徒ですから」
正規の成績は彼女よりもかなり良い。 そもそも彼女の成績が余りにも悪かったため、不正だと騒ぎ立てたのが、私のテストが減点されるようになった原因だ。 職業科でそれを知らない者はいない……本気の私は礼儀作法だってなかなかやるのだ。
クイクイと私の服が引っ張られた。
レイナが笑うのを堪え、苦笑いを浮かべている。
「程々にしてあげなさいよ」
「ぁ、何? コレ、イジメたってやられる奴? でもさ、勝手に倒れた訳だし、それもかなり美しく……イジメ、イジメになるのかな? ねぇ? どう思う?? イジメって言われたら困るなぁ~」
不意に周囲で見物を決めかかっている人に声をかけた。
「どう思います?」
「ぇ、いや……どうだろう?」
目が泳いでいる通りすがりの人。
「私断罪されちゃうかしら?」
「私、早く行かないと」
「そ、そうね……先着で新作菓子がついてくるのよ」
「あぁ、急がないと」
公爵令嬢を庇い喧嘩を売ろうと言う人は居ない。
魔力を排斥し過ぎた結果、魔力不足による奇病が流行っている事もあり、世間は私を無下に出来ない。 それに加えて私の背後に隠れるように立っているレイナ・ベルリー、彼女の実家は他国からの輸入品を多く取り扱っている商人でその影響力を考えれば、喧嘩を売るのは躊躇われる人である。
マジ感謝だ、親友よ!!
今度なんか魔道具を贈らせてもらう!
「そこで何をしているんです!!」
少しずつ人は散っていったものの、それでも今はまだ人だかりがある状態。 大抵の人は人事としているが、世の中には見て見ぬふりをできない人も要る訳だ……。
とは言え、どう説明していいのか誰もが困る状況が繰り広げられていた。
私はまだ姿は見えなくても、あげられる声に肩を竦めた。
「おやおや、ダーリンのお出ましじゃん。 おじゃまかなぁ~~」
嫌な顔をさせたくて言っているのだから、レイナのソレは大成功と言えるだろう。 ニヤニヤとしながら腰を折り、低い姿勢で私の顔を見上げて来て、私はいやぁ~~な顔をする。
「ぜひ、この茶番に付き合っていってちょうだい……」
メアリー公爵令嬢とは滅多に顔を合わせる事はないが、それでも飽き飽きするほどにこんな茶番は繰り返されている。
「大丈夫ですか?!」
セザールがドレスの汚れも気にせず倒れ込んでいるメアリーを気にかけ、黒ずくめでスッゴイ目立っているはずの私を無視して、装飾品で何キロも重さマシマシになっているメアリーに駆け寄った。
「メアリー様、大丈夫ですか?」
メアリーは弱々しくセザールに助けを求めるように手を伸ばし、セザールはその手をとって、手元は流れるように恋人繋ぎとなり、セザールの反対の手はメアリーの背に回された。
「メアリー様は身体が弱いのですから、気を付けないと」
ふらっと意識を失うかのような動きで視線を逸らせば、髪が頬を流れ、セザールは頬にかかる髪を長い指で退かした。
「セザール……」
うっとりとした様子。
甘く熱っぽい吐息で名を呼ぶメアリーは、セザールの胸元に倒れ込んだ。
「メアリー様、大丈夫ですか?!」
フルフルと震えた様子でセザールの胸の中に縋りつきながらメアリーが言う言葉はこうだ。
「あの女の不吉な気配に私……耐えられなくて」
「それは申し訳ない事をしてしまいました。 今日は彼女と出かけるため、遅くなる私を待ってもらっていたのです。 身体の弱いメアリー様には、濃厚なララの魔力がキツイのですね。 なんて……」
少し考えて続けた。
「お可愛らしい方だ」
礼儀正しく、何処までも優雅にセザールは笑みを向け、メアリーの手をとり口づけた。
それを私の影に隠れて見ていたレイナはヒッソリと言うのだ。
「一周回って馬鹿にしてない?」
だから私もボソリと返す訳だ。
「お花畑には、幸せな言葉に聞こえるのでしょう」
そして私は、セザールへと言葉を向けた。
「私が側にいると、メアリー様の体調が良くないようですから、先に失礼させて頂きますわ。 どうかセザール様はメアリー様を送って差し上げてくださいませ」
1台しかないうちの馬車は、私が使うか? セザールが使うか? セザールが使うならレイナがいるうちに帰りたいものだ。 この茶番的な嫌がらせで生まれる悩み等この程度のものである。
「いえ待ってください。 ララの魔力で体調を損ねられたと言うのだから、ララはその責任を取るべきですよ。 魔力除去を差し上げて当然ではありませんか?」
「え~~」
私は顔をしかめた。
「そう言う言葉遣いは止めなさいと言っているでしょう。 貴方は私の婚約者なのですよ。 そう言う子供っぽい態度も止めて下さい見苦しい、侮られますよ。 それに私まで同類と思われてしまいます」
見苦しいのはアンタだぁああああ!!
というのは心の声、表の声では
「(魔力除去して)いいんですか?」
いや、マジで聞いている訳よ。 だって、メアリーの魔力は多くない。 魔力奪うの??奪うと……本当に眩暈と吐き気と熱としばらく動けなくなるだろう。 ということは……別の魔法をつかったほうがよくない?
ありだな。
「えぇ、わかりました!!」
嬉々として了承したとも。
「嫌よ、死神の魔法なんて」
「そんな風に言わないで下さい、ララは優秀な魔導師なのですよ。 虚弱なメアリー様にとっては恐ろしく感じるかもしれませんが、ララの治療は一流です」
「私がこうしてセザール様を独占している事に嫉妬しているあの女が……ちゃんと治療するなんて思えませんわ!」
「……」
シーンって感じになる私。
「ぇ……そう、なのですか?」
嬉しそうにするセザール。
「あの魔女の性悪な姿をセザールは知るべきだわ。 貴方の前で良い子を演じているかもしれませんが、私には……酷い事をしてきますのよ。 なのにどうして、そうしてセザールはそんな恐ろしい事を言うの? その女に騙されているのね。 可哀そうな人」
よよよよっと泣き出してしまった。
「ララは口が悪くて素行も悪い、だから誤解を受けやすいだけで優秀な人なんだ。 どうか、信じてくれ。 彼女が信じられないなら……私を信じてください。 ほら、ララ……君の日頃の態度がこういう結果を招くんですよ。 反省してください」
「はいはい、ごめんなさい」
「もっと誠実に……そのような態度が悪いと言っているんですよ!!」
「セザール様!! あぁあああ、セザール様!! 今も彼女が攻撃をしかけてきて、ツライ、ツライの……恐ろしい魔女よ……怖い……怖いわ。 だって、彼女は手をふれずとも私を痛めつける事が出来るのだから……お願いよ……私を守って!! お願い……」
「ララは、そんな事、絶対しませんよ。 大丈夫です。 私が保証します!! そうやって真実と向かい合わないからこそ、メアリー様は健康になれないのですよ。 そうだ、今度から早朝練習に少しだけでいいので参加しませんか?」
レイナが笑っている。
私は……うんざりだよ。
疲れたよ……。
家に帰って魔力絞り出す方がマシってもんだよ。
ここまで言われれば、性欲マシマシ強化魔法なんて使えないじゃない。
使ってもムキムキ強化魔法程度だよね~
なんて、私の脳内一人劇場を他所に、メアリー様は早朝練習を拒否していた。
「わ、私は……セザール様に送っていただければ、それでいいの……」
そう言って弱々しくメアリーはセザールに微笑みかけるのだ。
「分かりました……ララ、私はメアリー様を馬車まで送り届けてきます。 馬車で待っていてください」
思っていたのと違っていたのだろう。
メアリーは不機嫌そうに私を睨むが、セザールに見せる顔は見事に微笑みかけていた。
「わかったわ」
メアリー様を公爵邸まで送ってあげてください。 そう言う風に言えば、きっと私が拗ねているんだと言われ、それはそれで面倒な事になりかねないのは、過去の経験からわかっている。
セザールと合流するまで、余り時間を必要としなかった。
余程急いで戻ってきたのだろう、額にじんわりと汗がにじんでいた。 そして……頬にピンク色の口紅の跡が……。
「ソレで走ってきたの?」
呆れたと言う顔を露わにする。
「何を言っているのか分からないが、そんな顔を人に見せる者ではありませんよ」
私は鏡を見せつけた。
顔面に押しつけた。
別に嫉妬じゃないけどね……イラっとしただけで……。
「近すぎて見えませんよ。 ただ、鏡を持っていたのはポイントが高い。 君はそういうのを気にしない人だと思っていました」
嬉しそうに言われても複雑でしかない。
流石に口紅の跡を見れば、セザールも焦ると言うものだ。
「これは他意はない。 そう、メアリー様は私の行動に報いられた。 褒美を与えられたのですよ。 上のものはそう言う気づかいが大切ですからね」
「上級貴族は下々の苦労にそうするものなの?」
「えぇ」
「それってさ……セザール様が何時もおっしゃっている、痴女と何が違うの?」
「尊い方がなさる行為は正しい。 下級貴族にとってそれが全てなんですよ。 メアリー様を痴女等と……女性がそのような言葉を使うなんて嘆かわしい……」
いや……私は、アンタが嘆かわしいよ。
あははっははははっは、おほほほほほほほ 脳みそお花畑な二人(↓AIイラスト)
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