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70.困った時の聖女召喚、聖女様は子供に弱い(大きい子供だが)

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「かくかくしかじかなことがありまして」

「そうか……」

 沈黙。

「かくかくしかじかで、わかるか!!」

「伸びる伸びる」

 頬がつままれたままふにふにされているだけで、引っ張られている訳ではないけれど、まぁお約束と言う事で。 冗談はさておき、私は自分が見てきた事、そして闇神様の側での間借りであっても、今よりはマシであろうと本人が望んだのだろうと説明した。

「そうは、言うが、前例がない」

「全ての事は、前例を作るものがいて、初めて前例が生まれるのです!」

 ビシッ!!

「リエル……疲れているなら休め、今日、様子がオカシイ」

 まぁ、実際なんだか熱っぽいけど、

「流石に、あの状態のゼルと神様を放置できないよ」

 よしよしと王様に頭を撫でられ、チュッと頬に口づけられ膝にあげられたから、私は王様の胸にもたれかかって少し目を閉じた。 王様の体温がぬくくて眠くなる。 寝ている暇などないのにね……声が近いのに遠くで聞こえて、王様が宰相さんを呼んでいる。

「俺が行って話をつけるのは?」

「却下です。 場所が場所、敵国表明していない国であれば、まだしも、本当であればリエル様が行くのもお停めしたいところなのですから」

「オマエが行くか?」

 脅しではなく、今回の件において決定権を持って対応できるものと言うと、限られてくると言うだけのこと。

「人間相手であれば、私で十分でしょうが……」

「だよなぁ……。 ババァはシバラクは各国を巡ると言っていたし……いや、だが、これは、事後報告は、ヤバイか?」

 王様が唸っている。

「私も、報告は必要だと思います」

 宰相さんも、メイド長アニーも同意していた。

「報告しておかないと逆に面倒になるか」

 シバラク考え込んだ王様は、聖女様を呼び出すことにしたようで、神使ハースを通じて先に闇の大神から転移の許可を得た後に、通信具を使って聖女様へと王様は連絡していた。

「ババァ、非常事態、いや、相談か? 後、リエルが少しばかり体調が悪くもある。悪いが用事があっても来てくれ」

 お願いごとでもババァってのは、如何なものなのでしょうか? と、なんだか突っ込みどころ満載の呼びだしに、数分待たずに聖女様が、王様の斜め前方1メートル、高さ1メートル上あたりに出現し、王様にかかと落としを決めようとして、腕の中にいる私と目があいモーションキャンセル。

「どうしたんだい、だるそうな顔をして」

 額に手が当てられ、熱を測られる。

「少しだるくて眠いだけ~」

 まぁ、多分料理に張り切り過ぎたせいでしょうね。

「ふむ、ちなみに……」

 聖女様は王様へと視線を向ける。

「もし、子が出来ていたら、どっちの子として育てるんだい?」

 まぁ、やる事やってんだから可能性はあるのだけど……。

「……俺?」

「そこはハッキリ答えんか!!」

 ペシンとなぜかハリセンモドキで聖女様が王様の頭を殴っていた。 どこで覚えた、どこから出した? うん、やっぱり思考とノリがオカシイ……。

「まぁ、いい。 そこは一度確認しとかんと。 と、思っただけだ。 これは単なる寝不足だろうて」

「そうか……、でだ、本題に入っていいか?」

 見事に殴られた事をスルーしているあたり、手加減をしているのか? 防御力の問題か? 流石に王様は「かくかくしかじか」はやらずに説明を行えば、全てを言い終えていないにも関わらず、聖女様はご立腹モードへ突入。

「うん、まず、依頼を受けて脅しに行くところまでは理解できた。 だが、他所の国の神殿に乗り込んで神使作ろうってところがもはやオカシイから!! そんな事をされてみろ、神殿としての威信が崩れるわ!!」

 え~~~、いい考えだと思ったのに~~~。

「あうあうあうあう」

 王様と同じように聖女様も、王様の腕の中にいる私の頬をつまんでふにふにする。

「いや、残念ながらコレで終わりじゃない」

 そして相談が続く。

 流石に、口を大きくあけて外見美少女、中身年齢不詳の女性が呆けていた。

「まてまてまて」

「それでた、リエルがこの調子だから準備をしたのちに、神との対話に出向いてもらえないだろうか? 母上」

「……オマエは……それは卑怯だぞ」

 顔を隠して照れだす聖女様は、ソファへと座り込む。

「正直……チビッ子の代わりは無理、せいぜい万が一のフォローについていく程度だね」

「何故です?」

「そもそも全てが異例。 だけど1つ確実なのは、神は人を選ぶ。 長生きしている分、面識もあるけど多分話は拗れるね。 例えばだ、最初から私がリエルの代わりに料理を持っていったら? 豊穣の大神は国を捨てよう等と変えなかった。 そう思わないかい」

「あぁ、まぁ、それは、そうかもしれません」

 聖女様は国であり、光の神の代行者として人の世も、神の世でもまかり通っている。

「力が弱まれ、異例づくめの決断を迫れていたとしても、原因であり理由である者を除外して話が進むはずはない。 チビッ子、体調不良の原因に心当たりは?」

「……寝不足と疲労?」

「はいはい、なら魔術でドーピングね」

 そんなことを言いながら、まぁ……色々してくれた訳ですよ。 その瞬間、副作用でカーーーと熱があがり、汗をかいたので、飲み物飲んで、汗を拭き、着替えて、再度お出かけ準備。

「それで、チビッ子はどうするわけよ?」

「ん~~~。 神様のために一国獲ってくれるっていっていたから、ソレで調整?」

「……それは冗談だ……」

 王様が、デスクの腕に両肘を置き頭を抱えた。

「それなら、わざわざ国を取らずとも、神不在の国があろう。 空白期までに時間があるようなら、あの国に突っ込んでやるよう調整してやるのもよかろうて」

 あの国とは、アクアースのことだろう。

「なるほど……ところで、空白期はどれぐらいで開始されるのですか?」

「さて、私が知っておるだけでも、国によって大きく違う。 世界中の神々が撤退するまで2~10年。 もっとかかることもあれば、短いこともある。 ふむ……これは、そうだな……あぁ、うむ」

「とうとう、ボケ」

「煩いわ!! クソガキが!! アクアースの救済の話はなし!! 神が国を捨てると言う事実は、ここだけの話とする。 今から連れてくるのは豊穣の大神の神使と言うことに決定」

「どういう?」

「神が逃亡をはかった。 と言って、通用すると思うかな?」

「しないでしょうね。 そんな前例を聞いたこともない」

 王様が肩をすくめた。

「まぁ、実際には前例がないだけで、そう思った神がいるのかもしれない。 が、まぁ、それは横に置いておく。 国を出たいと言うは神の都合だけど、実際に他国に移動したら、人はどう思う?」

「はい!!」

「はい、チビちゃん」

「神様が盗まれた!!」

「そう、そういうこと。 神が奪われないよう警戒をするのは良いが、神を奪うために戦……いや、今回のゼルのように、悪意を持つ人間が城内を積極的に歩きまわると言うのは面白くはない」

「……では、今回、ゼルが受けた依頼はどうしましょう?」

「あ~~~、宣戦布告を受けた国への脅しなぁ……、それは細工はしてあるで、放っておけでいいんじゃないの? どうせ、神が消えてしまえば、戦争どころじゃないだろうし。 まぁ、それは人間世界の事で、アンタの仕事だ。 それで、チビっ子。 どう、神を迎えるつもりでいるのかな?」

「えっと、先日城下の子供達と豊穣の祭りを行ったんです」

「……闇の国でか?」

「恵みに感謝して悪いってことはないですよね? 闇神様だって、美味しいもの食べられて喜んでいましたし。 ちゃんと強くて、寛大で慈悲深い闇神様の宣伝もしましたよ!」

 私がぷりぷりしながら言えば、聖女様は目を細めて笑った。

「はいはい、ごめんごめん、話しを勧めて」

「うん、で、その時、作物で人形を作ったんです。 豊穣を祈って。 ソレを1つ貰ってこようかな? と」

「豊穣を願って作物で人形? 食べ物でか? 罰当たりじゃないのか?」

「うち、豊穣神の国じゃないので」

 私は適当言って舌を出せば、王様と聖女様は顔を会わせて苦笑交じりで肩をすくめた。



 まぁ、そんなこんななやり取りあと、王様と聖女様と一緒に街におり、豊穣祝いにと作った子供達の人形を眺めながら、感謝の祈りが強く、見た目が好みのものを分けてもらった。

 因みに選んだのは、色んなカボチャを組みたてて作った狐人形。

 日本では豊穣の女神に宇迦之御魂神うかのみたまのかみと言う神様がいる。 彼女に仕える神使が狐なので、それにちなんで。 農作物を荒らすネズミやモグラを退治してくれるからね狐、偉いよ狐。

 そんな事で、私は聖女様に付き添われ、心配そうにする王様に手をふり再び豊穣の大国カトスへと戻った。
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