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4章

50.王宮での彼 07

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 コウは兵士達へと視線を向ける。

「おい」

「な、んで……ございましょうか?」

「コイツらを街の中に放り出せ」

 布一つ、まとわぬ精霊使いを侮蔑の視線でながめながら言えば、

「このまま……で、ですか?」

「身を立て直す機会は与えていた。 それを活用しなかったのはこいつらだ。 挙句の果てにこの事態、お前は情状酌量の余地があると考えるのか? あぁそうだな……このまま放り出されるのが気の毒だと思うなら、オマエ等が今ここで殺してやるといい」

 ニヤリと笑う彼は、まさに魔のようだと兵士は思った。 それでも周囲の者達が気を失わない程度に力も感情をコウは抑えている。 その程度には正気だった。



 世間一般での精霊使いへの評価は低い、それは決してコウがリリアに恨みを持ち捜索しているという噂が広がったため、と言う訳ではない。 低評価の理由だが、

 1つ目は、精霊使いの存在自体の知名度が低い
 2つ目は、精霊を使う際の色彩変化をケガレと誤解される
 3つ目が、彼女達の性格にある。

 彼女達は生まれた時から、精霊を配下に置き、清い心を持つ幼児期に最も大きな力を発揮し、やがて成長と共に精霊を支配するようになり、ソレに嫌気をさした精霊が彼女達を避けだし、十分な能力を発揮できなくなる。 幼児期に身に着けた傲慢により、都市で生まれた者はスラムに追いやられ、村で生まれたなら蔑まれて片隅で生きる事になる。

 彼女達を発見した当初は、白い毛は抜け落ち、骨に皮膚が張り付き、なんとか生存している状態であることが多かった。 そんな相手を好んで抱くほど、コウは女性にも金にも不便な訳ではない。 ただ、彼は半魔として暴走した際に、犠牲とした精霊使い達への贖罪をもって、保護していたに過ぎないのだ。

 リリアが彼女達と同様な生き方にならなかったのは、恵まれた貴族で生まれたということもあるが、前世の控えめで努力家と言う性格・性質が強く影響していたと言えるだろう。



「殿下!!! 愛しております」

 5名の女性が口々に告げる。

「どうか、御慈悲を……」

「連れ出せ」

 兵士が5人の精霊使いを引きずるように、戸口へと向かう。

 精霊使い達5名はお互いの顔を見合わせた。 今やらなければ……彼女達5名は愛の歌を歌いだす。 それはコウに対する思いを紡ぐ歌ではなく、精霊に力を発揮させるための歌。 個々の力は小さくとも5人も寄れば相応の力となる。 そして、今彼女達が発揮しようとする力は、コウが集めた文献で知った『魅了』の力を持つ精霊であった。

 魅了の精霊は、精神を司る精霊であり混乱を好む。
 他の精霊が見向きもしない精霊使いであっても、力を貸す。

 精霊使い達の髪の色が変化しようとしたとき、コウは精霊使い達の首を切り落とした。 その技は誰にも見えず、気付けば辺りを血に染め上げた。

「始末をしておけ……いや……そうだな……
 30分以外に宮の中にいる連中全員を追い出せ」

「追放……ですか?」

「いや……、妻に迎えたい女がいる。 宮を新しくしろ」

 長老と大臣に向かい言えば、まるで何事も無かったかのように彼等は深く頭を下げた。
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