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3章 貴族
10.お披露目
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「この子が私の跡継ぎ、ランドール侯爵家の次期女当主だ」
「父上!! なぜ?! そんなどこから連れて来たとも分からない娘を!!」
「黙れ、静かにしろ」
「お義父様!! モラン様がどれほど次期当主となるよう努力なさって来たのか、弱体するばかりのランドール家を盛り上げようと尽力されていたことを、ご存じでしょう!! なぜ、そのような嫌がらせをなさるのですか!!」
「お母様からも何か言って下さい!! モランがどれほどの働きをしているか!!」
「貴方……」
震える女性は、さっきから黙り込んだお爺様と視線を合わせる事はなく、お爺様もまた妻である女性に視線を向ける事は無かった。
「お義父様、考え直してください。 モラン様は立派な方です。 そのような子供を次期当主にするなど正気を失われたと世間から思われてしまいますわ」
妻であるケイトは、取り乱しながらも必死に夫の働き、努力、結果を必死に当主に語り説得しようとした。
「その女を黙らせなさい。 モラン、まさかお前は王命に背くこと等ないだろうな」
お爺様が眉間を寄せて、モラン伯父様に告げた。
「わ、分かっております父上」
強く拳を握り、怒りを必死に押さえ込んでいるのだと、子供の私にも分かるぐらいなのだから……当然、お爺様にも分かっていた訳で、お爺様は深い溜息をつきこう言ったのだ。
「話しをする必要があるみたいだな。 エクス、この子を頼む」
そう言って腕に乗せていた私をエクスへと手渡し、執事長に集まった親族たちに食事を提供するように述べ、息子と二人広間を去って行った。
「私達も戻りましょう。 お披露目の役目は終えました」
「でも、」
「どうかなさいましたか?」
「ご飯……」
「部屋まで持ってきて貰います」
「ここだと選べる」
ビッシュ式に色んな食べ物が提供されている。 ソレに向かって人々は飢えた獣のように食事に向かい、荒々しい言いあいは喧嘩寸前まで。
「ぁ、うん……戻ろう」
皆が食事に集中する中、主役であるはずのノーラが席を外しても誰も気にかける者はいなかった。
「どうして……? 貴族なのに、食べ物に意地汚すぎるんじゃないかなぁ?」
「仕方がありません。 食料が無いんです」
「貴族なのに?」
「農家の方が飢えていないかもしれませんね」
私は首を傾げる。
「(貴族の方が)偉いのに?」
「自分が飢えるのを分かっていながら、食料を差し出す事はないでしょう。 なんとかして隠して食料を確保するでしょう」
「それはそうだけど、そんなにうまく隠せるものなの?」
「隠せる人もいるものなのですよ。 何しろ、贅沢を控えよと酒を禁じても、食料危機が目に見えていても、酒を作り、隠れて酒を提供する場があるくらいですからね。 食料を理由に、貴族と農民の立場が逆転し始めている地域が生まれ始めている所もあるぐらいですから」
「まさか……」
信じられなかった。 小さな身体には厳しい労働を強いられはしたけれど、飢えるような事はなかったから。
「本当ですよ」
それでも、部屋に戻った私やエクス。 そして、窓の外で様子を見守っていたお兄ちゃんのために肉や魚には長い時間煮込んだ美味しいソースをタップリかけ、スープ、パン、野菜にチーズをかけて焼いたものが準備されていた。
そして私は、食事をしながらエクスから現在の食事事情、食料難に対する国の見解、この食料難を解決しない事には国の統治権が神殿に移るのでは? 等と言われている事の説明を受け……折角の食事に胃もたれしそうになるのだった。
「父上!! なぜ?! そんなどこから連れて来たとも分からない娘を!!」
「黙れ、静かにしろ」
「お義父様!! モラン様がどれほど次期当主となるよう努力なさって来たのか、弱体するばかりのランドール家を盛り上げようと尽力されていたことを、ご存じでしょう!! なぜ、そのような嫌がらせをなさるのですか!!」
「お母様からも何か言って下さい!! モランがどれほどの働きをしているか!!」
「貴方……」
震える女性は、さっきから黙り込んだお爺様と視線を合わせる事はなく、お爺様もまた妻である女性に視線を向ける事は無かった。
「お義父様、考え直してください。 モラン様は立派な方です。 そのような子供を次期当主にするなど正気を失われたと世間から思われてしまいますわ」
妻であるケイトは、取り乱しながらも必死に夫の働き、努力、結果を必死に当主に語り説得しようとした。
「その女を黙らせなさい。 モラン、まさかお前は王命に背くこと等ないだろうな」
お爺様が眉間を寄せて、モラン伯父様に告げた。
「わ、分かっております父上」
強く拳を握り、怒りを必死に押さえ込んでいるのだと、子供の私にも分かるぐらいなのだから……当然、お爺様にも分かっていた訳で、お爺様は深い溜息をつきこう言ったのだ。
「話しをする必要があるみたいだな。 エクス、この子を頼む」
そう言って腕に乗せていた私をエクスへと手渡し、執事長に集まった親族たちに食事を提供するように述べ、息子と二人広間を去って行った。
「私達も戻りましょう。 お披露目の役目は終えました」
「でも、」
「どうかなさいましたか?」
「ご飯……」
「部屋まで持ってきて貰います」
「ここだと選べる」
ビッシュ式に色んな食べ物が提供されている。 ソレに向かって人々は飢えた獣のように食事に向かい、荒々しい言いあいは喧嘩寸前まで。
「ぁ、うん……戻ろう」
皆が食事に集中する中、主役であるはずのノーラが席を外しても誰も気にかける者はいなかった。
「どうして……? 貴族なのに、食べ物に意地汚すぎるんじゃないかなぁ?」
「仕方がありません。 食料が無いんです」
「貴族なのに?」
「農家の方が飢えていないかもしれませんね」
私は首を傾げる。
「(貴族の方が)偉いのに?」
「自分が飢えるのを分かっていながら、食料を差し出す事はないでしょう。 なんとかして隠して食料を確保するでしょう」
「それはそうだけど、そんなにうまく隠せるものなの?」
「隠せる人もいるものなのですよ。 何しろ、贅沢を控えよと酒を禁じても、食料危機が目に見えていても、酒を作り、隠れて酒を提供する場があるくらいですからね。 食料を理由に、貴族と農民の立場が逆転し始めている地域が生まれ始めている所もあるぐらいですから」
「まさか……」
信じられなかった。 小さな身体には厳しい労働を強いられはしたけれど、飢えるような事はなかったから。
「本当ですよ」
それでも、部屋に戻った私やエクス。 そして、窓の外で様子を見守っていたお兄ちゃんのために肉や魚には長い時間煮込んだ美味しいソースをタップリかけ、スープ、パン、野菜にチーズをかけて焼いたものが準備されていた。
そして私は、食事をしながらエクスから現在の食事事情、食料難に対する国の見解、この食料難を解決しない事には国の統治権が神殿に移るのでは? 等と言われている事の説明を受け……折角の食事に胃もたれしそうになるのだった。
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