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3章 罪、罰、お仕置き、そして恩賞

80.完結

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 ゼノンは選択する余地なく庶民に降下し、そうなれば彼に付き従うと言っていた者達の殆どがいなくなっていたそうだ。

 そんなゼノンは、私が箱庭に戻る少し前に私に会いに来ていた。

『国を出てセシルが何かを得たなら、俺だって……なぁ……帰って来た時、もしセシルに飽きてたら、俺と一緒に旅に出ないか? アンタがソレを望むなら、俺はアンタを連れて逃げるからさ』

 なんて私に言って国を出た。

 その後、何年も国に戻りもせず、便りもなく、行方も知れず……どこかで妻を持ち幸せに暮らしているか? どこかで野垂れ死んでいるか? はたまた、その武勇を持って英雄に返り咲いているかと、様々な憶測がされる事となる。

「セシルは噂とか知らないの?」

 なんて聞いた事があるのだけれど、

「きっと、苦労から解放されて幸福を享受しておりますよ」

 という返事だった。
 その時の笑顔が、ちょっと、アレで……。

 気にしたら負けだ。





 さて、話しは少し戻り。 ゼノンの話が割とノンキな感じで語られるようになったのは、セシルのせいだと私は思っていたりする。

 何しろ10年に渡ってセシルが築き上げたグループ企業、財産、母親がセシルに残した人材を除き、全てが王家の所有となされた。

 とは言え、ソレは決して罰ではない。
 むしろ、堕落した王族達への罰?

 最初の忠誠の誓いには苦労したものの、後は悠々自適とばかりに過ごしていたまだまだ働き盛りの王族が結構いたりするわけで、そんな人達が総動員され、元赤銅グループの運営にてんやわんや状態である。

 第三王子に至っては

「なぜ? どうして?! 忠誠の誓いを達成すれば、仕事をしていなくても許されると兄上は言っていませんでしたか!!」

「ごめんねぇ~。 うち、ただ飯食わせる程裕福じゃないからさぁ~」

 国王陛下としての言葉としてはどうなのだろうか?

 まぁ、とにかく王族は今まで暇を享受していた分、追い込まれていた。



 そして、ソレ等を押し付けたセシルと言えば、箱庭のルールを捻じ曲げ、

 ・監察者であれば出入り自由
 ・監察者と同伴であれば、模範虜囚は外出可能
 ・箱庭の機密を保持できるなら、婚姻を許す
 ・機密保持の契約が破られた場合、その情報を所有した者全てを殺害する

 等のルールを箱庭に付け加え、サーシャと共に引きこもり生活を享受していた。 彼が赤銅の一族と定めた者達には、十分な恩賞金を与え自由を満喫するように伝えてある。

 実際には、セシルが帰るべき屋敷を守り、彼の生活を守るために常に情報収集に駆け回っている。 そんな風にするから外に出る時、セシルはサーシャを伴い、自分を待っている彼等の元に帰ってしまう。 それは、セシルとサーシャが出会った頃より、より穏やかで優しい日々と言えるだろう。



 ルール変更のおかげで、神官騎士の何名かが虜囚である者と婚姻を交わし、合同結婚式が行われた。

 ご馳走は、外では味わう事が許されない贅沢料理の数々が並び、国王陛下とその妃が積極的に給仕を務めている……。

 そしてぞろぞろと現れる老人方。

「長老達が全員そろって祝福に来られるとは思ってもいませんでしたよ。 まさか……ソロソロあの世からのお迎えが……。 お体大事にしてくださいね」

 ニッコリと出迎えるセシルに長老達はブイブイと文句を言う。 王族の大仕事は彼等の日常にも影響を与えたのだから文句を言われても仕方がない。

「オマエは、もう少し遠慮と言うものを思い出せ」
「そうじゃ、流石にコツコツ積み上げてきたものを全て放り出すばかりか、各国に離縁状を送る等と脅すとは、無責任にもほどがあるわ」

 矢継ぎ早に文句を言われセシルは言う。

「私が仕切っていては、世界の進化が早くなりすぎてしまうでしょう?」

「オマエは、自己の過大評価もほどほどにせい!!」
「可愛げのない奴め、サーちゃんに怒られちまえ」
「分かっていれば、王位交代等に協力しなかったものを」
「とっとと現場に戻ってこい」

 巻き込まれたついでに私は長老達とセシルの間に割って入った。

「でも、お爺様? 流石に先王の密輸は無視できませんよ? コッチが一生懸命燃料問題を考えているのに、湯水のごとく運ばれていたんですから」

「まぁ、それもそうじゃが……して、燃料問題の方はどうじゃ?」

「燃料を入れる窯、暖炉自体に、燃焼持続の術式を組み込む方法ですが……」

火を燃やす際に自然消費される魔力量と、術式の魔力消費量の差異を計測中。 同時に調整を行った術式を複数開発しており、ソレの継続実験も行っている事を伝えた。 当然、1人では無理なので各専門家の協力を得た共同開発である。

「ほらほら、仕事の話はそこまでにしましょう。 折角の祝いの席だもの」

 花嫁衣裳を作ったオリィさんが、私を急かした。

「ねぇねぇ、サーちゃんは外に出れるのよね? 私の好みの男性がいたら、ツバつけておいてくれないかしら? ぁ、あはははっはあはっはは、冗談、冗談だってばぁ~~」

 気づけば背後にセシルが立っていた。

「まったく油断も隙もありませんね。 アナタはお仕置きが大好きなんだから」

 耳元に囁かれて、私は無言で怒る訳だ。



 色々未熟な世界だけど。
 私は、それなりに快適な日々を送っています。
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