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1章 幼少期
25.第二王子の親衛隊 01
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酒臭さに顔を歪めていれば、私は外に連れ出される。
寒いのに……。
「それで、私に何の用があるのかしら?」
くちゅん。
幼女に対して、この気遣いのなさ。
「貴方、モテないでしょう」
「あぁ? モテるとも、なんせ騎士様だからなぁ!!」
ムキになるところを見れば、モテないらしい。
筋肉量が多すぎて寒さが理解できないのか?
脳の内部まで筋肉で、気遣いが出来ないのか?
やれやれ。
レンガを積み上げ作られた植物の無い花壇の縁に、私は登り立った。 それでも、第二王子親衛隊の人達の胸元にも背丈は追いつかず、私は親衛隊の人達を見上げて睨む。 向こうは向こうで腰を落とすことなく、腰を曲げ、顔を寄せてきた。
あぁ?? なんて言いながら人の顔を見てくる。
ヤンキー?
「ふむ、いや、違うな……」
男は少し考えながら、つぶやいていた。
「用は、用は、そうだなぁ……うむぅ……」
「無いなら、帰るわ」
「いや、どうだろうなぁ?」
目の前の男性が、ニヤニヤとした視線で他の騎士を呼びよせる。 嫌な予感しかないのは……最初からだった。
「なんだぁ?」
騎士服を着崩した男が、フラフラと寄ってくれば、最初の男は聞いた。
「よぉ、どう思う。 俺はなぁ、違うって思うんだが」
違うと言うのに何気に嬉しそう……もしや!! ロリコン?かぁ? ルンド国の性質から見れば、強い異性程魅力的に感じると言う傾向があるのだけど……変態は何処にでもいると言うもの。 危険だな。 なんて脳内でふざけながらも逃走シミュレーションを立てる。
孤児院の坊や達は、状況を読むことが出来ないのか? 騎士に対する憧れが強すぎるのか? ワクワクニコニコだ。
あぁ、孤児院って環境は、ズイブンと平和なようだ。
「あぁ、確かに……なんだっけ?」
「白銀で、紫の瞳、チビで、まぁ、ここまではな」
「えっと、続きはこう、ブスのチンチクリン。 不愛想、生意気、男を立てない、空気を読まない。 ペッタンコで色気なし癖に男狂い」
歌うように言えば、他の騎士が笑いだす。
「ぷっ……こんなチビが、色気があって男狂いしていたら怖いわなぁ」
ひゃはっはははと笑いだす酔っ払い達。
それに関しては私も同意するわ。
とにかく、彼等の口から零れる罵倒は、凄く凄く聞きなれたもので、誰が私を探しているのか、分かりやすかった。
ケント・ルンデル
何のようがあって探しているのかは知らないけれど、セシル殿下に親衛隊を首にされて、第二王子に泣きついたくらいは、容易に想像できたが、それを第二王子がハイハイと受け入れたと言うのが納得できない。
「まぁ、違うなら違うでいい。 こりゃぁ稀に見る美形だ。 欲しがる人も多いだろうさ。 売ろう。 こいつ等は孤児だ。 孤児共が連れて来たなら、孤児だ。 きっとそうに違いない。 売り払っても怒る親もいない」
そして第二王子親衛隊たちは、不愉快な笑いをあげる。
さて、私は体力がある訳じゃないし、魔力も多い方じゃないから、手の打ちようはない。 魔法は覚えたけれど、人を殺すだけの覚悟もなければ、殺せるだけの魔力もない。
となると……チラリと様子を見た孤児院少年達。 彼等はようやく状況を理解してきたのか顔色が悪くなっていた。 私は花壇から降りる動作に紛れて、花壇の中に転がる小石を拾った。
「ねぇ」
私は少年達に歩み寄る。
「な、なんだ」
少年達は、なぜか私に怯えて数歩下がった。
「この人達は、人身売買をしようとしているらしいんだけど?」
「僕たちは、悪くない!!」
少年達が叫べば、反射的に騎士達が動いた。
「責任を持って、私を持って走りなさい」
「ぇ、あ、なんで? 騎士だろう?」
「世の中には、いろんな人がいるって事ですよ」
私に向って、脅かすようにニヤニヤと手を伸ばしてくる騎士の手を、かいくぐり私は自分をここに連れて来た少年の元へと走る。 トンっと軽くぶつかれば、
「運べ!!」
そう命じた。
反射的に少年は私を抱き上げ走り出し、他の2人もついて走る。 が、完成された騎士の体力に敵う訳がない。 私は、さっき拾った石を紙で包み、並走する少年に言う。
「コレに魔力を込めて、投げなさい」
「ぇ」
「これは?」
「説明は後、自分のやった事に責任とりなさいよね!」
「は、はい!!」
代々この土地で生き、王宮支援の神殿で育った少年達。 彼等が食べていたのはこの土地の食べ物、なら、魔力は十分に持っている。 彼等が、将来何者にも成り得なかった場合、司祭として使う事を想定し、魔法の訓練がなされている。 はずだ!!
何しろ15歳、後がない。
そして、彼等は予想通りの働きをした。
紙に、魔法石(風)を粉末にし水で溶いたインクで書いた魔法術式で石を包み、重さを増した。 魔力を込めて投げれば魔法弾となる。
投げた先で竜巻が起こった。
投げた本人も、騎士達も悲鳴が上がる。
周辺を壊すが、後始末はセシル殿下に任せようと言うか……、
早く助けに来てよね!!
寒いのに……。
「それで、私に何の用があるのかしら?」
くちゅん。
幼女に対して、この気遣いのなさ。
「貴方、モテないでしょう」
「あぁ? モテるとも、なんせ騎士様だからなぁ!!」
ムキになるところを見れば、モテないらしい。
筋肉量が多すぎて寒さが理解できないのか?
脳の内部まで筋肉で、気遣いが出来ないのか?
やれやれ。
レンガを積み上げ作られた植物の無い花壇の縁に、私は登り立った。 それでも、第二王子親衛隊の人達の胸元にも背丈は追いつかず、私は親衛隊の人達を見上げて睨む。 向こうは向こうで腰を落とすことなく、腰を曲げ、顔を寄せてきた。
あぁ?? なんて言いながら人の顔を見てくる。
ヤンキー?
「ふむ、いや、違うな……」
男は少し考えながら、つぶやいていた。
「用は、用は、そうだなぁ……うむぅ……」
「無いなら、帰るわ」
「いや、どうだろうなぁ?」
目の前の男性が、ニヤニヤとした視線で他の騎士を呼びよせる。 嫌な予感しかないのは……最初からだった。
「なんだぁ?」
騎士服を着崩した男が、フラフラと寄ってくれば、最初の男は聞いた。
「よぉ、どう思う。 俺はなぁ、違うって思うんだが」
違うと言うのに何気に嬉しそう……もしや!! ロリコン?かぁ? ルンド国の性質から見れば、強い異性程魅力的に感じると言う傾向があるのだけど……変態は何処にでもいると言うもの。 危険だな。 なんて脳内でふざけながらも逃走シミュレーションを立てる。
孤児院の坊や達は、状況を読むことが出来ないのか? 騎士に対する憧れが強すぎるのか? ワクワクニコニコだ。
あぁ、孤児院って環境は、ズイブンと平和なようだ。
「あぁ、確かに……なんだっけ?」
「白銀で、紫の瞳、チビで、まぁ、ここまではな」
「えっと、続きはこう、ブスのチンチクリン。 不愛想、生意気、男を立てない、空気を読まない。 ペッタンコで色気なし癖に男狂い」
歌うように言えば、他の騎士が笑いだす。
「ぷっ……こんなチビが、色気があって男狂いしていたら怖いわなぁ」
ひゃはっはははと笑いだす酔っ払い達。
それに関しては私も同意するわ。
とにかく、彼等の口から零れる罵倒は、凄く凄く聞きなれたもので、誰が私を探しているのか、分かりやすかった。
ケント・ルンデル
何のようがあって探しているのかは知らないけれど、セシル殿下に親衛隊を首にされて、第二王子に泣きついたくらいは、容易に想像できたが、それを第二王子がハイハイと受け入れたと言うのが納得できない。
「まぁ、違うなら違うでいい。 こりゃぁ稀に見る美形だ。 欲しがる人も多いだろうさ。 売ろう。 こいつ等は孤児だ。 孤児共が連れて来たなら、孤児だ。 きっとそうに違いない。 売り払っても怒る親もいない」
そして第二王子親衛隊たちは、不愉快な笑いをあげる。
さて、私は体力がある訳じゃないし、魔力も多い方じゃないから、手の打ちようはない。 魔法は覚えたけれど、人を殺すだけの覚悟もなければ、殺せるだけの魔力もない。
となると……チラリと様子を見た孤児院少年達。 彼等はようやく状況を理解してきたのか顔色が悪くなっていた。 私は花壇から降りる動作に紛れて、花壇の中に転がる小石を拾った。
「ねぇ」
私は少年達に歩み寄る。
「な、なんだ」
少年達は、なぜか私に怯えて数歩下がった。
「この人達は、人身売買をしようとしているらしいんだけど?」
「僕たちは、悪くない!!」
少年達が叫べば、反射的に騎士達が動いた。
「責任を持って、私を持って走りなさい」
「ぇ、あ、なんで? 騎士だろう?」
「世の中には、いろんな人がいるって事ですよ」
私に向って、脅かすようにニヤニヤと手を伸ばしてくる騎士の手を、かいくぐり私は自分をここに連れて来た少年の元へと走る。 トンっと軽くぶつかれば、
「運べ!!」
そう命じた。
反射的に少年は私を抱き上げ走り出し、他の2人もついて走る。 が、完成された騎士の体力に敵う訳がない。 私は、さっき拾った石を紙で包み、並走する少年に言う。
「コレに魔力を込めて、投げなさい」
「ぇ」
「これは?」
「説明は後、自分のやった事に責任とりなさいよね!」
「は、はい!!」
代々この土地で生き、王宮支援の神殿で育った少年達。 彼等が食べていたのはこの土地の食べ物、なら、魔力は十分に持っている。 彼等が、将来何者にも成り得なかった場合、司祭として使う事を想定し、魔法の訓練がなされている。 はずだ!!
何しろ15歳、後がない。
そして、彼等は予想通りの働きをした。
紙に、魔法石(風)を粉末にし水で溶いたインクで書いた魔法術式で石を包み、重さを増した。 魔力を込めて投げれば魔法弾となる。
投げた先で竜巻が起こった。
投げた本人も、騎士達も悲鳴が上がる。
周辺を壊すが、後始末はセシル殿下に任せようと言うか……、
早く助けに来てよね!!
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