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1章 幼少期
13.責任の所在
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罪を明確にした。
経済的和平協議は、この世界の常識に囚われないサーシャがいるからこそ成立している。 だから、サーシャと言う存在に敬意が必要であることは、国を仕切る者であれば初日の会談で理解しているだろう。 理解出来ない程度の者が代表を務めるなら、イルモ国は協議から切り捨てても構わないとセシルは考えていた。
「このような行為を、我が国の者に仕掛けるのは止めて頂きたい。 そう、伝えておりましたよね?」
少女のような顔立ちに冷ややかな微笑みを浮かべながらも、声には怒りを含ませたセシルは、イルモ国国王を管理する者として責めた。
「私は、その者に命令を与えておらん!! 自由恋愛にまで口出しをするとは、其方はやはりツマラン男だ。 無粋な男だ。 お主モテぬだろう?」
小馬鹿に嘲笑い、そして続けた。
「それに、どうせ口だけの婚約であろう。 その娘が男の心をつかむ等出来る筈もなかろう。 いや、それどころか男女の機微すら理解していないのではないか?」
イルモ国国王の言葉に、上着とズボンを慌てて身に付けたケントは、怒りで顔を赤くしながら、セシルの後ろに隠れたように身を置くサーシャを責めた。
「そうだ!! 俺も、オマエもお互いに愛情は無いはずだ。 それとも、俺の愛情を期待していたのか? 愛されると思ったのか? 男の欲情をかき立てる事などできぬ身体でありながら、女として俺を求めていたというのか!! 汚らしい!! 謝れ!! 自分が騒ぎ立てこのような大ごとにしたことを謝れ!!」
ツバを吐きながら罵るケントの声に、セシルは呆れたように言う。
「いい加減にしなさい。 大人気が無い人ですねぇ。 貴方の方こそ自分の行為、発言が汚らしいものである事に気づいては如何ですか……8歳の子に、いえ……婚約を交わした当初は5歳の幼い子だったはず。 そんなサーシャに貴方は何を求めているのですか。 馬鹿なのですか? いえ、馬鹿なのでしょうね……。 状況を全く理解できないのですから」
溜息交じりにセシルが言えば、ケントは乱暴な様子でサーシャに手を伸ばそうとし、セシルがソレを叩き落とした。
「触れるな!! あぁ、違う……。 近寄るな。 オマエのような汚物に触れられては、この子がケガレてしまう。 一足先に国に戻りなさい。 貴方のような守るべきものを理解できないような人は騎士として相応しくない。 ましてや、護衛どころか国としての取引を危ういものにした罪は受けて貰いますからね」
「俺は、ソイツの婚約者です。 夫となる人間です。 妻となる人間のモノは全て夫のモノ、であれば殿下のその発言……不味いのではありませんか?」
セシルもサーシャも唖然とした。
「セシル殿下に(なんてことを)」
「サーシャ、ここは私に任せておいてください。 オマエはもう少し考えて発言をしなさい。 いえ、今はそんなことを話している時ではありませんね。 このような身内の話にイルモ王の時間を頂いては、失礼と言うもの。 申し訳ございませんでした。 部下の失態は我が失態でもあります。 心からお詫びさせていただきます」
そう言って頭を深く下げれば、
「ソレで許されるとお思いか? 其方たちの茶番に付き合わせ、難癖をつけおってからに、挙句、我が娘をキズモノにしてどうしてくれる!!」
「イルモ王、問題を1つにまとめないでください。 私は、初日にこのような事態が起こらぬよう配慮してくださいと言っておりましたよね? それに……もし、嫌がるカロリーネ姫に対して強引に事をなしたなら、サーシャがこのような思いをしなかったはずです」
「……幼子故に理解できなかったのかもしれないではないか」
「まさか、サーシャは何をしていたかちゃんと理解した上で、嫌悪感を抱いていますよ」
「ほほぉ、何をしておったのか言ってもらおうか?」
ニヤニヤと好色な笑いをイルモ国の者達が浮かべた。
「私に使うようにと告げた部屋で、私の前で、私を貶める発言を繰り返しながら、堂々と生殖行動に励んでいたわ。 なんなら事細かに説明しても構いませ……ごほっ、けほっ」
思い出せば気持ち悪くなったサーシャは咳き込み、そんなサーシャを庇うようにアルマはセシルの背後に身を隠すサーシャを抱きしめる。
「私は、近づけるなと先に告げておりましたよね? 幼い子供の前で、その子の悪口をいい、見せつけるように情事に耽る事を問題としているのですよ。 貴方方の当初の行動を思えば、自由恋愛だと言われても疑わしいばかりですからね」
イルモ国国王はわずかに取り乱し、その場を取り繕った。
「いや、疑ってばかりでは、これからの関係に問題が……」
「では、姫君と護衛騎士の行動は非常識であったと貴方方も認めると?」
「私とセシル殿下、お互いの管理下にある者が非常識を働いた……それで手打ちとしようではないか」
「えぇ、2人に関してはソレで構いません。 ですが、サーシャを傷つけた事に関しては別です。 この子がこのまま人を嫌ったとしたなら……、貴方達は私共の2年の働きを、戦争を失くすきっかけを、貴方方によって潰される事となるのですよ!! その責任をわかっているのですか!!」
「それも、双方の責任としてだな」
「分かりました。 そうですねぇ……彼女の疲弊した心身が回復するまで最低で1日。 明後日には、彼女に対する心理的損害賠償について語り合いましょう。 双方の責任として」
セシルはニッコリとイルモ国国王に微笑んだ後、今すぐにイルモ国王城を出て、ルンド国に戻り謹慎につくようにとケントを始めとする数人の騎士と侍女に命じ、その場は解散となった。
経済的和平協議は、この世界の常識に囚われないサーシャがいるからこそ成立している。 だから、サーシャと言う存在に敬意が必要であることは、国を仕切る者であれば初日の会談で理解しているだろう。 理解出来ない程度の者が代表を務めるなら、イルモ国は協議から切り捨てても構わないとセシルは考えていた。
「このような行為を、我が国の者に仕掛けるのは止めて頂きたい。 そう、伝えておりましたよね?」
少女のような顔立ちに冷ややかな微笑みを浮かべながらも、声には怒りを含ませたセシルは、イルモ国国王を管理する者として責めた。
「私は、その者に命令を与えておらん!! 自由恋愛にまで口出しをするとは、其方はやはりツマラン男だ。 無粋な男だ。 お主モテぬだろう?」
小馬鹿に嘲笑い、そして続けた。
「それに、どうせ口だけの婚約であろう。 その娘が男の心をつかむ等出来る筈もなかろう。 いや、それどころか男女の機微すら理解していないのではないか?」
イルモ国国王の言葉に、上着とズボンを慌てて身に付けたケントは、怒りで顔を赤くしながら、セシルの後ろに隠れたように身を置くサーシャを責めた。
「そうだ!! 俺も、オマエもお互いに愛情は無いはずだ。 それとも、俺の愛情を期待していたのか? 愛されると思ったのか? 男の欲情をかき立てる事などできぬ身体でありながら、女として俺を求めていたというのか!! 汚らしい!! 謝れ!! 自分が騒ぎ立てこのような大ごとにしたことを謝れ!!」
ツバを吐きながら罵るケントの声に、セシルは呆れたように言う。
「いい加減にしなさい。 大人気が無い人ですねぇ。 貴方の方こそ自分の行為、発言が汚らしいものである事に気づいては如何ですか……8歳の子に、いえ……婚約を交わした当初は5歳の幼い子だったはず。 そんなサーシャに貴方は何を求めているのですか。 馬鹿なのですか? いえ、馬鹿なのでしょうね……。 状況を全く理解できないのですから」
溜息交じりにセシルが言えば、ケントは乱暴な様子でサーシャに手を伸ばそうとし、セシルがソレを叩き落とした。
「触れるな!! あぁ、違う……。 近寄るな。 オマエのような汚物に触れられては、この子がケガレてしまう。 一足先に国に戻りなさい。 貴方のような守るべきものを理解できないような人は騎士として相応しくない。 ましてや、護衛どころか国としての取引を危ういものにした罪は受けて貰いますからね」
「俺は、ソイツの婚約者です。 夫となる人間です。 妻となる人間のモノは全て夫のモノ、であれば殿下のその発言……不味いのではありませんか?」
セシルもサーシャも唖然とした。
「セシル殿下に(なんてことを)」
「サーシャ、ここは私に任せておいてください。 オマエはもう少し考えて発言をしなさい。 いえ、今はそんなことを話している時ではありませんね。 このような身内の話にイルモ王の時間を頂いては、失礼と言うもの。 申し訳ございませんでした。 部下の失態は我が失態でもあります。 心からお詫びさせていただきます」
そう言って頭を深く下げれば、
「ソレで許されるとお思いか? 其方たちの茶番に付き合わせ、難癖をつけおってからに、挙句、我が娘をキズモノにしてどうしてくれる!!」
「イルモ王、問題を1つにまとめないでください。 私は、初日にこのような事態が起こらぬよう配慮してくださいと言っておりましたよね? それに……もし、嫌がるカロリーネ姫に対して強引に事をなしたなら、サーシャがこのような思いをしなかったはずです」
「……幼子故に理解できなかったのかもしれないではないか」
「まさか、サーシャは何をしていたかちゃんと理解した上で、嫌悪感を抱いていますよ」
「ほほぉ、何をしておったのか言ってもらおうか?」
ニヤニヤと好色な笑いをイルモ国の者達が浮かべた。
「私に使うようにと告げた部屋で、私の前で、私を貶める発言を繰り返しながら、堂々と生殖行動に励んでいたわ。 なんなら事細かに説明しても構いませ……ごほっ、けほっ」
思い出せば気持ち悪くなったサーシャは咳き込み、そんなサーシャを庇うようにアルマはセシルの背後に身を隠すサーシャを抱きしめる。
「私は、近づけるなと先に告げておりましたよね? 幼い子供の前で、その子の悪口をいい、見せつけるように情事に耽る事を問題としているのですよ。 貴方方の当初の行動を思えば、自由恋愛だと言われても疑わしいばかりですからね」
イルモ国国王はわずかに取り乱し、その場を取り繕った。
「いや、疑ってばかりでは、これからの関係に問題が……」
「では、姫君と護衛騎士の行動は非常識であったと貴方方も認めると?」
「私とセシル殿下、お互いの管理下にある者が非常識を働いた……それで手打ちとしようではないか」
「えぇ、2人に関してはソレで構いません。 ですが、サーシャを傷つけた事に関しては別です。 この子がこのまま人を嫌ったとしたなら……、貴方達は私共の2年の働きを、戦争を失くすきっかけを、貴方方によって潰される事となるのですよ!! その責任をわかっているのですか!!」
「それも、双方の責任としてだな」
「分かりました。 そうですねぇ……彼女の疲弊した心身が回復するまで最低で1日。 明後日には、彼女に対する心理的損害賠償について語り合いましょう。 双方の責任として」
セシルはニッコリとイルモ国国王に微笑んだ後、今すぐにイルモ国王城を出て、ルンド国に戻り謹慎につくようにとケントを始めとする数人の騎士と侍女に命じ、その場は解散となった。
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