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28.踏み込めない魔王
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凄いスピードで飛び去るラフィと、それを必死で追う小鳥魔物達。 ラフィは守るべき存在なのだと、魔物全体に意識付けされているのもあるため追っているようだが、既にラフィは小型魔物の力を超えているため、スピード特化の者達だけが、必死について言っている状態だ。
「想像しいですが、何があったんでしょうか?」
ザレアは顔を上げて窓の外へと視線を向けた。 彼は廃棄者としての変化が進み、今では首からも白い鱗が見えているが、既にソレを気にする必要もないと放置している。
カラフルな小鳥たちが数十羽横切っていく。
『さて……、なんだろうな』
そう答えた魔王は、同時に小物達の1羽に問いかけていた。
『ラフィが一人飛んでいったと? 黒姫はどうした』
『呼んだ?』
魔王の影から黒姫の声が聞こえた。
『ラフィの守りはどうした』
『え~~~、アンタが追いなさいよ。 今はそう忙しくもないでしょうが、会いたがってるんだから、会ってあげなよ。 ココで平和に暮らせるのは、あの子と言う存在があるからこそって分かってない訳ではないでしょうが』
『あの子は子供だ』
『そりゃぁ、私達の基準では子供よ。 でも、人の基準では大人。 まぁ……多少は幼いところもあるけれど、ならソレはソレでちゃんと愛情もって正面から向き合うべきでしょうが、卵を孵すだけ孵して、刷り込みで好意を持たせて放置って質が悪すぎ~~~』
『だから、フォローは任せたんじゃないか!』
『本当にソレでいいのね』
魔王ルシェの気配が殺気立ち、ザレアは慌てて間に入った。 と言っても、黒姫に関しては影から声が聞こえるだけで、姿は見えないのだけど。
「申し訳ありません。 ラフィには言い聞かせますから、お二方とも引いていただけませんか?」
『ザレアは気にしなくていいよ。 ココの魔物は……というか、特に私や魔王は、本当にあの子がいてこそなんだから』
「ですが、あの子のせいでお二人が喧嘩をなさるのも、あの子は嫌がると思うんです」
『平気平気、こんなの喧嘩の内に入らないわよ。 私達の喧嘩は本当凄いんだから』
そう告げる声は笑っている。
『本当にいいのね。 良いんだったら……僕があの子を貰うから』
途中から黒姫の声の高さが変化した。 青年めいた口調は何処か飄々とした軽薄にすら感じる。
「ぇ?」
『黒姫!!』
ルシェは声を荒げて、影の中に手を突っ込み引き上げれば、美貌の青年が首根っこを掴まれ出てきた。
『乱暴だなぁ』
『何をするつもりだ黒姫』
『魔王が、あの子を愛せないと言うなら、僕が代わりにあの子の欲しいものを全部あげよう。 そう思っただけ。 あの子のことは好きだし、あの子も僕が好きだ。 なら何の問題もないでしょう? 魔物にとってあの子はなくてはならない存在だからね。 大事にしないと』
『子供相手に何を考えて居る』
『君が躊躇っているような事?』
クスクスと意地悪くいう。
「すみません。 あの……黒姫様なのですか?」
ザレアが唖然とし、呟くように聞けば、軽くそうそうと頷く黒衣の青年。
『僕程になると、姿形も性別も余り関係がないからね』
ふふんっと得意そうに言ってみせれば、声に重なるように魔王は溜息をつく。
『オマエは、あんなに幼い子相手に何を考えて居るんだ!!』
『えぇ~、でもさ、魔王だって時々は考えちゃうよね? 僕たちがアンナ匂いをかがせられて、欲情しない訳ないんだからさ。 それに、マーキングしておかないと奪われかねないし』
『そう、思うなら。 ちゃんと守ってろ!!』
イライラした様子で、魔王は結局ラフィを追う事にしたらしく窓枠に足をかけた瞬間、黒姫が魔王の影に飛び込んだ。
『黒姫!!』
『ゴメン、急ぐ!』
舌打ちをした魔王が、窓からでかけた。
「暇になったと言っても、面会依頼があるんですけどねぇ……」
ザレアがボソリと呟いた。
「想像しいですが、何があったんでしょうか?」
ザレアは顔を上げて窓の外へと視線を向けた。 彼は廃棄者としての変化が進み、今では首からも白い鱗が見えているが、既にソレを気にする必要もないと放置している。
カラフルな小鳥たちが数十羽横切っていく。
『さて……、なんだろうな』
そう答えた魔王は、同時に小物達の1羽に問いかけていた。
『ラフィが一人飛んでいったと? 黒姫はどうした』
『呼んだ?』
魔王の影から黒姫の声が聞こえた。
『ラフィの守りはどうした』
『え~~~、アンタが追いなさいよ。 今はそう忙しくもないでしょうが、会いたがってるんだから、会ってあげなよ。 ココで平和に暮らせるのは、あの子と言う存在があるからこそって分かってない訳ではないでしょうが』
『あの子は子供だ』
『そりゃぁ、私達の基準では子供よ。 でも、人の基準では大人。 まぁ……多少は幼いところもあるけれど、ならソレはソレでちゃんと愛情もって正面から向き合うべきでしょうが、卵を孵すだけ孵して、刷り込みで好意を持たせて放置って質が悪すぎ~~~』
『だから、フォローは任せたんじゃないか!』
『本当にソレでいいのね』
魔王ルシェの気配が殺気立ち、ザレアは慌てて間に入った。 と言っても、黒姫に関しては影から声が聞こえるだけで、姿は見えないのだけど。
「申し訳ありません。 ラフィには言い聞かせますから、お二方とも引いていただけませんか?」
『ザレアは気にしなくていいよ。 ココの魔物は……というか、特に私や魔王は、本当にあの子がいてこそなんだから』
「ですが、あの子のせいでお二人が喧嘩をなさるのも、あの子は嫌がると思うんです」
『平気平気、こんなの喧嘩の内に入らないわよ。 私達の喧嘩は本当凄いんだから』
そう告げる声は笑っている。
『本当にいいのね。 良いんだったら……僕があの子を貰うから』
途中から黒姫の声の高さが変化した。 青年めいた口調は何処か飄々とした軽薄にすら感じる。
「ぇ?」
『黒姫!!』
ルシェは声を荒げて、影の中に手を突っ込み引き上げれば、美貌の青年が首根っこを掴まれ出てきた。
『乱暴だなぁ』
『何をするつもりだ黒姫』
『魔王が、あの子を愛せないと言うなら、僕が代わりにあの子の欲しいものを全部あげよう。 そう思っただけ。 あの子のことは好きだし、あの子も僕が好きだ。 なら何の問題もないでしょう? 魔物にとってあの子はなくてはならない存在だからね。 大事にしないと』
『子供相手に何を考えて居る』
『君が躊躇っているような事?』
クスクスと意地悪くいう。
「すみません。 あの……黒姫様なのですか?」
ザレアが唖然とし、呟くように聞けば、軽くそうそうと頷く黒衣の青年。
『僕程になると、姿形も性別も余り関係がないからね』
ふふんっと得意そうに言ってみせれば、声に重なるように魔王は溜息をつく。
『オマエは、あんなに幼い子相手に何を考えて居るんだ!!』
『えぇ~、でもさ、魔王だって時々は考えちゃうよね? 僕たちがアンナ匂いをかがせられて、欲情しない訳ないんだからさ。 それに、マーキングしておかないと奪われかねないし』
『そう、思うなら。 ちゃんと守ってろ!!』
イライラした様子で、魔王は結局ラフィを追う事にしたらしく窓枠に足をかけた瞬間、黒姫が魔王の影に飛び込んだ。
『黒姫!!』
『ゴメン、急ぐ!』
舌打ちをした魔王が、窓からでかけた。
「暇になったと言っても、面会依頼があるんですけどねぇ……」
ザレアがボソリと呟いた。
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