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23.ちょっと過去、領主屋敷に来た当初の小型魔物と人 01

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 この都市にいる魔物は、人間のように生きたいと願う者の集まりではあるのだけど、ここに来た当初にその思いの強さから失敗をしていた。

 だから、より慎重になっているのかな? とか思ったりする。

 魔物達が領主館を拠点にして日も浅かった頃。
 まだ使用人が多く屋敷に残っていた頃。

 小さな者達は本当に、純粋に喜んでいた。
 小さな者達は無邪気に、懐こうとした。

『理想郷』
『ここなら普通になれる』
『人間のように生きられる』

 そう思ったらしい。
 まぁ、魔物達の普通が何かは分からないけど。

 爛々と赤く光る眼をした小動物たちがニヤリと口元を笑わせ、牙をチロリと見せながら使用人の脳裏にこう直接語り掛けたのだそうだ。

『遊ぼ』
『お話しよう』

 悪気なんてない事は、私は知っている。

 だけど、使用人達は発狂し、攻撃し、殺意を魔物達に向け、そして食いつかれ、殺されかけた。 もし小型の魔物等が、今現在子供達と仲良くしているように、そんな期間がその当時に少しでもあったなら、微笑ましい交流となったかもしれない。 希望論ですけど。

 実際は?

 魔物とは、肉の器が無いゆえに、多くの魔力を持つ呪われた祝福された者達を言う。

 性質的に子を作れないのは廃棄者と一緒だけど、魔物は死ななければ何処までも生き続け、成長し続ける可能性を持っている存在。 魔物達の生きた年月は、力であり、知性である。 50年100年生きたとしても小さな者は 余程の経験をしない限りは幼子程度の知性しかないのだそうだ。

 拒絶、敵意、殺意、ソレらを向けられたショックと絶望で、小型魔物達は使用人に襲い掛かった。

 黒姫は小型魔物達を止め。
 私は使用人達の命を繋いだ。

 だけど、芽生えた恐怖は消えるものではない。

 正直……領主屋敷に住まう人間にソレほどの情はなかったけれど、あの怯えようは気の毒に思った。 そして、落ち込む小さな魔物達が可哀そうだった。 だから私はルシェに聞いたのだ。

「彼等の記憶を消すことは出来ないのかしら?」

『それは、やらない』

 魔王ルシェは言う。
 そしてザレアは説明する。

「屋敷で起こる事の全ては、塀の外に情報がもたらされた場合のテストケースです。 だから、いま改善をもたらそうとするなら、ラフィ……君が人々の前で、人間のために魔王殿に懇願してください。 その命をもって慈悲を乞い人々に見せつけた場合、人間はどうするか? ソレを見せてください。 聖女の犠牲に報いる事ができるか? 魔物たちへの警戒を解くのか? 上手くできたなら、そのうち魔王殿に彼等の恐怖に繋がる記憶を消してもらえるよう私も共に頼みましょう」

 今まで、何も事情を聞かされず振り回されていた時と比べれば、事情説明があるだけマシなのかも……だけど……。

「命をもって?」

 不安そうにすればルシェが苦笑交じりに口を開いたのです。

『そう不安そうにするな。 ラフィには傷一つつける気はない。 だから、その魔力を血に偽装し、結晶化するだけの技術を身につけるんだ。 俺にラフィを傷つけさせないために』

 それは余り難しい事ではなかった。 ズイブン前からルシェは私の身体を慣らしていたからね。
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