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13.要求ばかりを告げる者達
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領主は、屋敷にある金目のものは全て馬車に詰め込むつもりだろう。
それだけで足らず、ラフィを寄越せと言った。
許せる訳がない。
廃棄者等の単純さは本当に可愛らしい……そう思えるほどに、血の繋がりある親兄弟を獣のような頭だと、ザレアは苦悩に顔をしかめた。
彼等が逃げると言えば、身一つで逃げる訳ではない。 現に妻である女の家族は、先んじて妻を送り込み、居場所を作り、ものすごい量の財産と共に居場所を確保した。 きっと親父たちは彼等と同じ事をするのだろう。
「本当に魔王が訪れるのかもわからず……逃げてしまえば、二度と戻る事はかないませんよ」
「そんなものどうだと言うのだ。 あの娘がいれば、何処に行こうと巨万の富が築けるだろう」
「アレは人ですよ。 嫌だと思えば宝を与えてはくれません」
「聖女であるなら、人に尽くして当然だろう」
ずっと、聖人と言うレッテルをつけられ、同じ事を言われ続けたのを思い出せば腹がたった。 手のひらを爪先でひっかきながら、冷静さを保つ。
「聖女と言うのは他人が勝手につけるレッテル。 嫌な思いをすれば、アレは逃げ出し、時に自死すら望むかもしれない。 アレは人です」
「はぁ?! オカシな事を言う。 アレは聖女と名付けられた獣だろうが、人間がなぜ遠慮せねばならない。 きっと、アレは魔王の到来から我らを救い出すために作られた存在に違いない」
「そのように思うのは勝手ですが、状況を見極めなければ損をしますよ。 城、家具、溜め込んだ酒、ドレス、その他にもアナタが長年作り上げたものの全てを持っていくのですか? ここの門をくぐるまえに襲われて終わりですよ」
「廃棄者に護衛をするように言え!!」
「なぜ、これから逃げ出し自分達に影響を与えなくなるアナタ達のためにそのような事を? 逃げると言うことはそういう事ですよ……。 考えてください、妻の親族たちは、魔王も魔物も見る事無く逃げ出して、故郷が魔王に滅ぼされたかも見ていない。 何故ですか?」
「……ここで上手くやっている以上、見る必要がないからだろう」
「いいえ、違いますよ。 彼等が民から搾取した税と共に逃げたからです。 もし、魔王が訪れるとも、残された者達は凄惨な生活が待っているのですから、私なら……見つけた瞬間殺しますよ。 あぁ、むしろ、今、殺してしまった方が問題が少ないですね」
面倒になってきた。
頭の中を、生存本能が駆け巡り『ヤレ、ヤッテシマエ』と、告げてくる。
「では、領主代理の権限をオマエにやろう。 金銀装飾品、金品に直ぐに帰れる香辛料等以外は全部オマエに預けておこう。 大事に保管しておけよ!!」
そうして逃げて……逃げているのを見つけた者達が話を広め、混乱を起こし荷物の大半を置いていった事から、
「父達は、身を呈して魔物の調査に出向いたのです」
そう言い訳をして、騒めく人々を収めた。
言い訳ばかりが上手くなる自分に嫌になる。
だけれど、言い訳で済まないのが……魔物調査だ。
魔王は本当に存在するのか?
妻の身内はいると言っているが、実際に見ている者はいないし、逃げた後に故郷に戻っている訳でもない。 なら、分かる訳などないじゃないか……。 そんな訳で、要塞に住まう廃棄者から人材を借りれないかと交渉に出向いた。
だが……話になりはしなかった。
「我らの宝を返せ」
そう言って引かない。
宝にしたのは私であり、腕力も脚力も防御力もなく体力もない、アレを見下していたのは自分達だろうが……。 まぁ……私も……捨てられて自棄になっていたのでなければ、ラフィの力に気づく事はなかったでしょうが……。
「アレは私のものですよ。 アナタ方がアレに対してどんな態度をとっていたのか、私は覚えていますし、彼女も覚えているでしょう。 そんな彼女が、アナタ達に力を貸すでしょうかねぇ?」
それでも、何も分からない子供の頃は楽しかったのだと言っていた。 だが、それは聞かなかったことにして私は話を進めた。
結局……調査は、最近都市に入ってきた余所者の廃棄者集団に任せる事にした。 居場所を見つける事が出来なかった者と言う意味で、警戒をもって交渉にあたったが、この都市で生まれた廃棄者達よりも知恵があり、仕事を頼みやすいと言う特徴があった。
それだけで足らず、ラフィを寄越せと言った。
許せる訳がない。
廃棄者等の単純さは本当に可愛らしい……そう思えるほどに、血の繋がりある親兄弟を獣のような頭だと、ザレアは苦悩に顔をしかめた。
彼等が逃げると言えば、身一つで逃げる訳ではない。 現に妻である女の家族は、先んじて妻を送り込み、居場所を作り、ものすごい量の財産と共に居場所を確保した。 きっと親父たちは彼等と同じ事をするのだろう。
「本当に魔王が訪れるのかもわからず……逃げてしまえば、二度と戻る事はかないませんよ」
「そんなものどうだと言うのだ。 あの娘がいれば、何処に行こうと巨万の富が築けるだろう」
「アレは人ですよ。 嫌だと思えば宝を与えてはくれません」
「聖女であるなら、人に尽くして当然だろう」
ずっと、聖人と言うレッテルをつけられ、同じ事を言われ続けたのを思い出せば腹がたった。 手のひらを爪先でひっかきながら、冷静さを保つ。
「聖女と言うのは他人が勝手につけるレッテル。 嫌な思いをすれば、アレは逃げ出し、時に自死すら望むかもしれない。 アレは人です」
「はぁ?! オカシな事を言う。 アレは聖女と名付けられた獣だろうが、人間がなぜ遠慮せねばならない。 きっと、アレは魔王の到来から我らを救い出すために作られた存在に違いない」
「そのように思うのは勝手ですが、状況を見極めなければ損をしますよ。 城、家具、溜め込んだ酒、ドレス、その他にもアナタが長年作り上げたものの全てを持っていくのですか? ここの門をくぐるまえに襲われて終わりですよ」
「廃棄者に護衛をするように言え!!」
「なぜ、これから逃げ出し自分達に影響を与えなくなるアナタ達のためにそのような事を? 逃げると言うことはそういう事ですよ……。 考えてください、妻の親族たちは、魔王も魔物も見る事無く逃げ出して、故郷が魔王に滅ぼされたかも見ていない。 何故ですか?」
「……ここで上手くやっている以上、見る必要がないからだろう」
「いいえ、違いますよ。 彼等が民から搾取した税と共に逃げたからです。 もし、魔王が訪れるとも、残された者達は凄惨な生活が待っているのですから、私なら……見つけた瞬間殺しますよ。 あぁ、むしろ、今、殺してしまった方が問題が少ないですね」
面倒になってきた。
頭の中を、生存本能が駆け巡り『ヤレ、ヤッテシマエ』と、告げてくる。
「では、領主代理の権限をオマエにやろう。 金銀装飾品、金品に直ぐに帰れる香辛料等以外は全部オマエに預けておこう。 大事に保管しておけよ!!」
そうして逃げて……逃げているのを見つけた者達が話を広め、混乱を起こし荷物の大半を置いていった事から、
「父達は、身を呈して魔物の調査に出向いたのです」
そう言い訳をして、騒めく人々を収めた。
言い訳ばかりが上手くなる自分に嫌になる。
だけれど、言い訳で済まないのが……魔物調査だ。
魔王は本当に存在するのか?
妻の身内はいると言っているが、実際に見ている者はいないし、逃げた後に故郷に戻っている訳でもない。 なら、分かる訳などないじゃないか……。 そんな訳で、要塞に住まう廃棄者から人材を借りれないかと交渉に出向いた。
だが……話になりはしなかった。
「我らの宝を返せ」
そう言って引かない。
宝にしたのは私であり、腕力も脚力も防御力もなく体力もない、アレを見下していたのは自分達だろうが……。 まぁ……私も……捨てられて自棄になっていたのでなければ、ラフィの力に気づく事はなかったでしょうが……。
「アレは私のものですよ。 アナタ方がアレに対してどんな態度をとっていたのか、私は覚えていますし、彼女も覚えているでしょう。 そんな彼女が、アナタ達に力を貸すでしょうかねぇ?」
それでも、何も分からない子供の頃は楽しかったのだと言っていた。 だが、それは聞かなかったことにして私は話を進めた。
結局……調査は、最近都市に入ってきた余所者の廃棄者集団に任せる事にした。 居場所を見つける事が出来なかった者と言う意味で、警戒をもって交渉にあたったが、この都市で生まれた廃棄者達よりも知恵があり、仕事を頼みやすいと言う特徴があった。
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