【R18】聖女は生贄として魔王に捧げられました。 勝手に救われた気になっていますが大丈夫ですか？

12.機能不全家族

　イライラとしながら、寄せられる報告書にザレアは目を通す。

　獣の印をザレアに見つけた彼の両親は、あっけなく彼を捨てた。　そして、今度は民を見捨て、都市を見捨て、逃げ出そうとしている。

　大量の馬車を準備し、荷物を詰め込んでいた。

「住民が不安がります。　おやめください」

　訴えてみたが、相手にされるはずもない。

「住民の不安を抑えるのが、聖人と呼ばれるオマエの仕事だろう」

　嫌味たらしく言うのは、父に従順な兄弟達である。

「まぁ、その聖人も人の威を借りていたに過ぎないらしいがな。　この能無し」

「父上を騙して屋敷に戻り、デカい態度をとっていたんだし？　アンタが都市に対して責任を取ればいいじゃない」

「それより、塔を開けろ。　アレさえあれば大金を生み出す。　どこででもやり直しができる。　アレを寄越せ」

「開けてもよろしいですが、噛みつかれて殺されますよ。　ずっと塔に閉じ込めていましたからねぇ。　さぞ、恨みも溜まっていましょう」

「閉じ込めたのはオマエだろう！！」

「廃棄者は、仲間意識が強いですからね」

　そうザレアは笑って隠してあった腕の鱗を見せつければ、小さな悲鳴と共に兄弟たちは逃げ出してしまった。　



　ザレアの父、貿易都市ビアスの領主を務める男には多くの愛人をいた。　そしてザレアには多くの兄弟がいた。　それだけ子煩悩な父だから……という訳ではない。

　廃棄者と分かればその瞬間捨てられ、美貌が分かれば近隣との友好関係に使われた。　近隣に送られる子に、かける金はないと幼く無学のまま送り出されるのだから、幸福である等という話を聞くことは稀である。　それが嫌で、父親の食事に子を作れぬように薬を盛り、不幸な子供達は……

　ラフィを最後に終わった。

　ザレアは、兄弟たちの中でも知能が高く、幼い頃から商売を叩きこまれていたが、獣の印が出たのを知れば次の瞬間には追い出される事となった。

　私の努力は！！　と、両親や兄達を恨んだが……

「この都市をまとめる領主の子でありながら、なんともなさけない！！　オマエは領主の地位や権力、金を羨む者達に誘拐されて殺されたとする。　2度と顔を見せるな、我が家の汚名になる！！」

　家族は、家族に絶望をもたらせた、私の方が薄情者であり、役立たず、そして許しがたい裏切り行為だと責めたのだ。

だから……どうだと言うんだ。

　印が消えたからと言って、手離しに受け入れるとは思わなかった。　きっと小賢しい真似をして薄汚いと怒っただろう。　特に、両親の愛情を奪われたと思っている兄達はなおのこと、絶対に受け入れない。

　だが、神が味方をした。

　強欲なあの人の事だ、利益を見せれば手のひらは変える。

　そこにラフィの力の欠片を見せつけ上手く付け入り、領主の子と言う立場に戻り自分の立ち位置を固めた。