58 / 60
58.新しい生活 02
しおりを挟む
ドロテアの起こした問題は、多くの人の命を奪ったが……多くの忠誠をシアに誓わせる事が出来た。 だが、誓いを得るのと、実際に新たな生活に馴染めるかは別と言うものだ。
各一族の元当主、現当主が集まっていた。
シアは次期王と名高いラースと……そして獣姿のランディを側に従えて、他の王子と婚約者、現王、ジルも、共に参加していた。
会議は始まる前から王族に属するモノ達は、警戒を向けていた。
信頼が無い。
招かれた各一族の者達は、緊張している。
疑われ、警戒されているのが辛い、そんな思いをセグは読み取っており、クスクスとカラカウようにラースの耳元に囁いていた。
怯えるようにラースに寄り添い、ランディの影に隠れ姿を見せないシアを見る目も変わっていた。 彼等は、力が獣性だけではないのだと、シアの姿を見て、シアの働きを見て……もう、理解しつつあった。
「そう、警戒しないでくれ。 俺達だって恩人に仇で返すつもりはない」
「なぜ、そう簡単に趣旨替えをした? 怖いからか? 命が惜しいからか?」
ラースは軽蔑を込めていう。
「確かにソレもある……だがなぁ……。 俺達は恩を大切にする生物だ。 命をプライドを守ってくれた。 人知れず病を治してくれた……感謝しているんだ」
「だが、獣性を未だ優先している者達の身勝手な行動は耳に入っているんだが?」
「そりゃぁ、街の奴等は姫さんとは違う。 弱い奴等が偉そうにすれば腹が立つと言うものだ」
当たり前だと言うように言われれば、王族達はそろって溜息をついた。
ドロテアに傾く事の無かった元当主は、焦りながら告げた。
「どうしても、信頼が出来ない、文明に馴染めない、害をなす危険があると思う者がいるなら、わしが他の部族で預かってくれるよう話をつけよう」
「まぁ、それもありだな……」
そうラースが言えば、セグは生意気な口調で言うのだ。
「でも、難しいと思うよ?」
未だセグは諜報を中心に働いている。
「何がだ?」
「彼等が、他の部族に預けるって言う奴」
あくまでもドロテアが行っていたのは、存在する感情の増幅であり、全く存在しない感情のままに動かしていた訳では無いと言う事。 だから、馴染めないなら仕方がない……と考えた先のセグの言葉だ。
「どういう事だ?」
「だって、街に害をなしている奴等のほとんどが、力を振りかざしながら文明を搾取しているんだからね。 とんでもないろくでなしだ」
「なら、そういう奴等だと言う事を含めて、条件を付けて預ければいいだけだ」
「流石ラース兄様!! そこまで考えていたんだ」
ラースとセグの言葉に、焦る当主達。
そして当主の一人が声を上げた。
「うち若い者は、存外うまくやっておる。 モノづくりにも興味を持ち、庶民に弟子入りする者もいる。 だが、全てではない……、そういうものだ。 全員が今までの価値と一転しろと言うのが無理な話だ!! 力を持つ者を蔑ろにすれば、決して不満は無くならない。 ドロテアの行った行為は、間違いではない……全ての始まりとも言えるだろう。 どうするつもりだ?」
ソレはむしろ脅すような声。
ガルガルと喉の奥から警戒音をランディはならし、シアを背にする。
「だから、そういう者は出て行けばいいと言っている」
「今までの貢献を無視すると言うのか!!」
怒鳴りあいが行われそうになり、今まで傍観者を決め込んでいた王が一言告げた。
「黙りなさい。 天使殿、何か言いたそうですが?」
「ぇ、うん……簡単よ……ね?」
シアがアズへと視線を向けて問いかければ、アズは美しい笑みで返すのだ。
「その通りでございます。 シア様」
その瞬間、前のめりになるのは文明派の者達。
「姫様、何か良い考えでも?」
シアの賛同者である当主達は、覚えを少しでも良くしようと、怖らせまいと”にこぉおおお”と頑張って笑顔と言うものを作ろうとした。
ランディがスッと立ち上がり、シアの視界を塞ぐように立ち上がる。
「な、なんだね」
「シアが怖がらせないでよねぇ」
無口なランディは口を開くようになれば、弟らしい甘えた口調だった。 それでも力だけはあるのだから、反論もしにくい……とは言え。
「いやいや、決してそんな気などないとも」
「そうだ、俺達だって、小さな姫君と仲良くしない」
「これでも、怯えさせないように気遣っているんだが」
「ぇえええ、ダメだよ……そんなんじゃ、鏡の前でもっと練習するといいよ」
何気に饒舌に軽口をたたくランディだった。
ドロテアがいなければ、こういう性格だったらしい。
ふんふんっと鼻を鳴らし、褒めて褒めてと尻尾を振ってシアを見る獣……。 シアの誉め言葉を欲しているのを知ってラースはニッコリと笑って見せた。
「よ~しよしよし、偉いぞ~~!! 流石俺の片割れだぁあ!」
ガッツリと抱きしめ、頭をがっしがしと撫でるラース。 不満そうな顔をみせるのも一瞬ランディはこれも悪くないと納得するのだ。
各一族の元当主、現当主が集まっていた。
シアは次期王と名高いラースと……そして獣姿のランディを側に従えて、他の王子と婚約者、現王、ジルも、共に参加していた。
会議は始まる前から王族に属するモノ達は、警戒を向けていた。
信頼が無い。
招かれた各一族の者達は、緊張している。
疑われ、警戒されているのが辛い、そんな思いをセグは読み取っており、クスクスとカラカウようにラースの耳元に囁いていた。
怯えるようにラースに寄り添い、ランディの影に隠れ姿を見せないシアを見る目も変わっていた。 彼等は、力が獣性だけではないのだと、シアの姿を見て、シアの働きを見て……もう、理解しつつあった。
「そう、警戒しないでくれ。 俺達だって恩人に仇で返すつもりはない」
「なぜ、そう簡単に趣旨替えをした? 怖いからか? 命が惜しいからか?」
ラースは軽蔑を込めていう。
「確かにソレもある……だがなぁ……。 俺達は恩を大切にする生物だ。 命をプライドを守ってくれた。 人知れず病を治してくれた……感謝しているんだ」
「だが、獣性を未だ優先している者達の身勝手な行動は耳に入っているんだが?」
「そりゃぁ、街の奴等は姫さんとは違う。 弱い奴等が偉そうにすれば腹が立つと言うものだ」
当たり前だと言うように言われれば、王族達はそろって溜息をついた。
ドロテアに傾く事の無かった元当主は、焦りながら告げた。
「どうしても、信頼が出来ない、文明に馴染めない、害をなす危険があると思う者がいるなら、わしが他の部族で預かってくれるよう話をつけよう」
「まぁ、それもありだな……」
そうラースが言えば、セグは生意気な口調で言うのだ。
「でも、難しいと思うよ?」
未だセグは諜報を中心に働いている。
「何がだ?」
「彼等が、他の部族に預けるって言う奴」
あくまでもドロテアが行っていたのは、存在する感情の増幅であり、全く存在しない感情のままに動かしていた訳では無いと言う事。 だから、馴染めないなら仕方がない……と考えた先のセグの言葉だ。
「どういう事だ?」
「だって、街に害をなしている奴等のほとんどが、力を振りかざしながら文明を搾取しているんだからね。 とんでもないろくでなしだ」
「なら、そういう奴等だと言う事を含めて、条件を付けて預ければいいだけだ」
「流石ラース兄様!! そこまで考えていたんだ」
ラースとセグの言葉に、焦る当主達。
そして当主の一人が声を上げた。
「うち若い者は、存外うまくやっておる。 モノづくりにも興味を持ち、庶民に弟子入りする者もいる。 だが、全てではない……、そういうものだ。 全員が今までの価値と一転しろと言うのが無理な話だ!! 力を持つ者を蔑ろにすれば、決して不満は無くならない。 ドロテアの行った行為は、間違いではない……全ての始まりとも言えるだろう。 どうするつもりだ?」
ソレはむしろ脅すような声。
ガルガルと喉の奥から警戒音をランディはならし、シアを背にする。
「だから、そういう者は出て行けばいいと言っている」
「今までの貢献を無視すると言うのか!!」
怒鳴りあいが行われそうになり、今まで傍観者を決め込んでいた王が一言告げた。
「黙りなさい。 天使殿、何か言いたそうですが?」
「ぇ、うん……簡単よ……ね?」
シアがアズへと視線を向けて問いかければ、アズは美しい笑みで返すのだ。
「その通りでございます。 シア様」
その瞬間、前のめりになるのは文明派の者達。
「姫様、何か良い考えでも?」
シアの賛同者である当主達は、覚えを少しでも良くしようと、怖らせまいと”にこぉおおお”と頑張って笑顔と言うものを作ろうとした。
ランディがスッと立ち上がり、シアの視界を塞ぐように立ち上がる。
「な、なんだね」
「シアが怖がらせないでよねぇ」
無口なランディは口を開くようになれば、弟らしい甘えた口調だった。 それでも力だけはあるのだから、反論もしにくい……とは言え。
「いやいや、決してそんな気などないとも」
「そうだ、俺達だって、小さな姫君と仲良くしない」
「これでも、怯えさせないように気遣っているんだが」
「ぇえええ、ダメだよ……そんなんじゃ、鏡の前でもっと練習するといいよ」
何気に饒舌に軽口をたたくランディだった。
ドロテアがいなければ、こういう性格だったらしい。
ふんふんっと鼻を鳴らし、褒めて褒めてと尻尾を振ってシアを見る獣……。 シアの誉め言葉を欲しているのを知ってラースはニッコリと笑って見せた。
「よ~しよしよし、偉いぞ~~!! 流石俺の片割れだぁあ!」
ガッツリと抱きしめ、頭をがっしがしと撫でるラース。 不満そうな顔をみせるのも一瞬ランディはこれも悪くないと納得するのだ。
14
AIイラストを、裏設定付きで『作品のオマケ』へと移動しました。キャラ紹介として、絵も増えています。お暇な方、AIイラストが苦手で無い方は、お立ち寄りくださるとうれしいです。
お気に入りに追加
2,350
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる