前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人

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58.新しい生活 02

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 ドロテアの起こした問題は、多くの人の命を奪ったが……多くの忠誠をシアに誓わせる事が出来た。 だが、誓いを得るのと、実際に新たな生活に馴染めるかは別と言うものだ。

 各一族の元当主、現当主が集まっていた。

 シアは次期王と名高いラースと……そして獣姿のランディを側に従えて、他の王子と婚約者、現王、ジルも、共に参加していた。

 会議は始まる前から王族に属するモノ達は、警戒を向けていた。



 信頼が無い。
 招かれた各一族の者達は、緊張している。

 疑われ、警戒されているのが辛い、そんな思いをセグは読み取っており、クスクスとカラカウようにラースの耳元に囁いていた。

 怯えるようにラースに寄り添い、ランディの影に隠れ姿を見せないシアを見る目も変わっていた。 彼等は、力が獣性だけではないのだと、シアの姿を見て、シアの働きを見て……もう、理解しつつあった。

「そう、警戒しないでくれ。 俺達だって恩人に仇で返すつもりはない」

「なぜ、そう簡単に趣旨替えをした? 怖いからか? 命が惜しいからか?」

 ラースは軽蔑を込めていう。

「確かにソレもある……だがなぁ……。 俺達は恩を大切にする生物だ。 命をプライドを守ってくれた。 人知れず病を治してくれた……感謝しているんだ」

「だが、獣性を未だ優先している者達の身勝手な行動は耳に入っているんだが?」

「そりゃぁ、街の奴等は姫さんとは違う。 弱い奴等が偉そうにすれば腹が立つと言うものだ」

 当たり前だと言うように言われれば、王族達はそろって溜息をついた。

 ドロテアに傾く事の無かった元当主は、焦りながら告げた。

「どうしても、信頼が出来ない、文明に馴染めない、害をなす危険があると思う者がいるなら、わしが他の部族で預かってくれるよう話をつけよう」

「まぁ、それもありだな……」

 そうラースが言えば、セグは生意気な口調で言うのだ。

「でも、難しいと思うよ?」

 未だセグは諜報を中心に働いている。

「何がだ?」

「彼等が、他の部族に預けるって言う奴」

 あくまでもドロテアが行っていたのは、存在する感情の増幅であり、全く存在しない感情のままに動かしていた訳では無いと言う事。 だから、馴染めないなら仕方がない……と考えた先のセグの言葉だ。

「どういう事だ?」

「だって、街に害をなしている奴等のほとんどが、力を振りかざしながら文明を搾取しているんだからね。 とんでもないろくでなしだ」

「なら、そういう奴等だと言う事を含めて、条件を付けて預ければいいだけだ」

「流石ラース兄様!! そこまで考えていたんだ」

 ラースとセグの言葉に、焦る当主達。
 そして当主の一人が声を上げた。

「うち若い者は、存外うまくやっておる。 モノづくりにも興味を持ち、庶民に弟子入りする者もいる。 だが、全てではない……、そういうものだ。 全員が今までの価値と一転しろと言うのが無理な話だ!! 力を持つ者を蔑ろにすれば、決して不満は無くならない。 ドロテアの行った行為は、間違いではない……全ての始まりとも言えるだろう。 どうするつもりだ?」

 ソレはむしろ脅すような声。

 ガルガルと喉の奥から警戒音をランディはならし、シアを背にする。

「だから、そういう者は出て行けばいいと言っている」

「今までの貢献を無視すると言うのか!!」

 怒鳴りあいが行われそうになり、今まで傍観者を決め込んでいた王が一言告げた。

「黙りなさい。 天使殿、何か言いたそうですが?」

「ぇ、うん……簡単よ……ね?」

 シアがアズへと視線を向けて問いかければ、アズは美しい笑みで返すのだ。

「その通りでございます。 シア様」

 その瞬間、前のめりになるのは文明派の者達。

「姫様、何か良い考えでも?」

 シアの賛同者である当主達は、覚えを少しでも良くしようと、怖らせまいと”にこぉおおお”と頑張って笑顔と言うものを作ろうとした。

 ランディがスッと立ち上がり、シアの視界を塞ぐように立ち上がる。

「な、なんだね」

「シアが怖がらせないでよねぇ」

 無口なランディは口を開くようになれば、弟らしい甘えた口調だった。 それでも力だけはあるのだから、反論もしにくい……とは言え。

「いやいや、決してそんな気などないとも」
「そうだ、俺達だって、小さな姫君と仲良くしない」
「これでも、怯えさせないように気遣っているんだが」

「ぇえええ、ダメだよ……そんなんじゃ、鏡の前でもっと練習するといいよ」

 何気に饒舌に軽口をたたくランディだった。
 ドロテアがいなければ、こういう性格だったらしい。

 ふんふんっと鼻を鳴らし、褒めて褒めてと尻尾を振ってシアを見る獣……。 シアの誉め言葉を欲しているのを知ってラースはニッコリと笑って見せた。

「よ~しよしよし、偉いぞ~~!! 流石俺の片割れだぁあ!」

 ガッツリと抱きしめ、頭をがっしがしと撫でるラース。 不満そうな顔をみせるのも一瞬ランディはこれも悪くないと納得するのだ。
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AIイラストを、裏設定付きで『作品のオマケ』へと移動しました。キャラ紹介として、絵も増えています。お暇な方、AIイラストが苦手で無い方は、お立ち寄りくださるとうれしいです。
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