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46.ソレしかできなかった
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ラースは夜明け近くに目を覚ました。
外から送られてくる気配は嫉妬塗れのどす黒い……。
静かに扉が開かれる。
一応、そこに来るまで警備の者が居たはずだが……何の声も騒動もラースには聞こえなかった。 それでも、シアを守るためならラースは迷わず思った。
殺すか?
そして次の瞬間には、心の中で被りを振るった。
シアをアイツの汚い血で汚す訳にはいかない。
ラースはドロテアだと思い込んでいた。
ドロテアには 【シアと閨を共にするランディ】 に見えるだろう。 だから、例えソレが偽りの恋だと言えど、偽りに気づかないうちは、第三者ではなくドロテア自身が訪れると思い込んでいたのだ。
腐った血がシアを汚す等耐えられない。 なら、ココから遠ざけなければいけなくて、その隙にシアを狙うものが訪れるかもしれない。 そんな事を考えている間にも、聞こえぬ足音が近づいてくる。 そっとシアに気づかれぬように身体を起こしラースは低く唸り声をあげた。
「ぇ……」
そんな戸惑い交じりの女性の声。
そして……その声の相手はドロテアではなくドーラで……。 目の前にいるラースとシアを確認しボソリと呟いた。
「いない……」
はぁ? と言うのがラースの思いの全てだ。 何を言っていると問おうとした時。
「ランディは何処よ!!」
そう、甲高い声でドーラが叫んだ。
オマエが護衛していただろう!! 等と言う言葉をラースは飲み込んだ。
だが、ドーラとドロテア、声も姿も匂いも似た姉妹ではあるが、間違えるはずなんかない。 今のドロテアからは不快な匂いが漂うから、それは腐敗だけではなく、病そのものの匂いとでも言ってもいいだろう。
ランディは良く平気でいたものだと……もっと考えるべき事があるだろうにラースはそんな事を考えていて、わずかなうちに正気を取り戻し、何を言っているんだ? と、問おうとしたところに、シアが目を覚ました。
寝ぼけた眼で、幸福そうな微笑みをドーラに向け、安心と甘えの混ざった声でシアは言うのだ。
「お帰りなさい」
その瞬間、ドーラは眉間を寄せ不快に顔を潜めていた。
「気色悪い事を言うな!! ウルサイ!! 喋るな!! ゴミ屑が……全部全部オマエが、オマエが悪いんだ!! ゴミの分際で!!」
シアの顔色が悪くなり、言葉を失くした。
「ぇ……」
シアの様子に勝利を確信したのかドロテアは叫び続ける。
「私のランディを返せ!! 返せ!! 返せ!! この売女め!!」
「ドーラ? ドーラだよね。 何を言っているの?」
シアがショックで呆然とし、涙を浮かべながらも、現実を受け入れる事が出来ずにいるのだろう。 不思議そうに首を傾げこうボソリと言うのだ。
「きっとコレは夢ね」
だが、夢ではないドーラはシアを否定する。
「オマエさえ居なければ」
ボソリと呟く声は、小さな声だがシアにも聞こえた。 信じがたい言葉に……シアが硬直し、そんなシアに向かって躊躇う事無く懐から出した短刀でシアを狙い襲い掛かかる。
シアにとって、それは……共に旅した記録の1つだった。
とても良い鍛冶師に出会った。 出会って……そしてお揃いで買い、ソレは人を傷つけるためではなく、料理と言う人を幸福にするために使おうと決めたものだった。
「ドーラ……どう、したの?」
言葉が終わらぬうちに、刃がシアに届こうとしたが……それをラースが許す訳が無い。 素早く前足で刃を叩き落として、がるるるうるると唸りをあげながらドーラを睨んだ。
「ドーラ、ドーラ、どうして!! 私、何か怒らせるような事をした?! どうして!! ラースと一緒に寝ていたから怒ったの?!」
叫ぶシア。
シアの声等全く意に介せず、ドーラは短刀を取り戻そうと手を伸ばしていた。 ラースが短刀を前足で蹴り滑らせながら、シアとドーラの間を位置取り睨みながらも、ラースは思わず突っ込みを入れた。
「いや、ダメと言われても、俺は許諾しない」
「ぇ……?」
ドーラの動きが止まった。
ラースの声はランディと似ている。
不愛想なら不愛想なりに。
甘く囁くなら甘いなりに。
「ふざけるな!! なんで、なんで、私のランディが獣になっているんだ!!」
ここまでくれば確信だ。
ラースは確信した。
シアは……泣いているだけ。
ラースはドーラの器をしたドロテアを睨む。
それがラースが出した答え。
「忘れたのか? 俺達は、生まれた時から獣だ……」
ラースは曖昧な言葉で時間稼ぎをし観察をする。
自分が正しい事を確かめるように。
ラースは苦く笑っていた。
ある意味、ドロテア自身を相手にするよりも問題があった。 肉体的にはドーラは人の意志を持たぬ状態のランディの世話係に抜擢されるほどの身体能力を持っていたのだ。
力を偽っていた、誤魔化していた、ドロテアとは違う。
ドーラは頭を押さえ、顔をしかめながらしゃがみこんでいた。 呻くようにドーラが唸る。 だから……ドロテアに支配されたドーラが肉体を取り戻そうとしたのだとラースも思った。
頑張れ……ラースは祈ったが……。
ドーラの中にドロテアが入っている等と考えてもいないシアは、母に姉に捨てられたかのように泣きじゃくりながら、ドーラの名を呼び続けていた。
「ドーラ、ドーラ!!」
「おい!! こんなに泣かせて平気なのか!!」
今にもドーラに抱き着こうとするシアを身体でとめながら、ラースは叫んだ。
「ぁ……」
ドーラは頭を抱えたまま呻いている。
「大丈夫ドーラ?」
恐る恐る警戒と共に近寄ったつもりだった。
「あぁあああああああ、ははっははははっは、死ね、死ね、死ね!! オマエのせいでランディは狂った、狂った。 私の人生も狂わせておいて、オマエは、オマエだけは許さない!!」
ドーラの手がシアの首に伸ばされそうになる。
「ドーラ、ドーラ、ごめん、ごめんなさい……」
親に捨てられた子のようにシアは泣き続ける。
「泣くなシア!! オマエと一緒に過ごしたドーラは、そういうことを言う奴だったか?!」
えぐえぐと嗚咽と涙と混ぜながら、ち、がう……と声にならない声でシアは言う。
「なら、どういう事か分かるだろう!! 捕えてくれ……俺がかかれば傷つけてしまう」
傷つけてしまうぐらいにはドーラは強い。
王が安心してシアを任せるぐらい強い。
まさか……ドロテアの同調が、ドーラそのものを支配する等考えなかった。 そんな事例聞いた事もない。 いや、今厄介なのはドーラが強いと言う事だ!!
「わ、分かった。 や、闇よ、眠りよ。 安らかなれ、穏やかなれ、その心と体を守り一時の休息をもたら……」
全てを言い切る前に……ドロテア……だろう魂はドーラの肉体と共に逃げて行った。
「ドーラぁあああああああ!!」
シアは喉が裂けるのではと言う声で叫んだ……。
振り返ったドーラの瞳は、ほんの僅かな時間、ドーラのもので……立ち止まり、涙を流し、シアに手を伸ばそうとし凄い速さでひっこめシアを睨み、次の瞬間には駆け去って行った。
ラースは……追う事は出来ない。
周囲100m範囲には四方八方に分かれ、獣達がシアを狙っている気配がしたから。
今日は、負けだ……。
泣き叫ぶシアを抱きしめるため、ラースは人の姿に戻り……そして……かつてジルがラースにしてくれたようにシアを抱きしめ、優しく子守歌を歌いだす。
今はソレしかできなかったから……。
外から送られてくる気配は嫉妬塗れのどす黒い……。
静かに扉が開かれる。
一応、そこに来るまで警備の者が居たはずだが……何の声も騒動もラースには聞こえなかった。 それでも、シアを守るためならラースは迷わず思った。
殺すか?
そして次の瞬間には、心の中で被りを振るった。
シアをアイツの汚い血で汚す訳にはいかない。
ラースはドロテアだと思い込んでいた。
ドロテアには 【シアと閨を共にするランディ】 に見えるだろう。 だから、例えソレが偽りの恋だと言えど、偽りに気づかないうちは、第三者ではなくドロテア自身が訪れると思い込んでいたのだ。
腐った血がシアを汚す等耐えられない。 なら、ココから遠ざけなければいけなくて、その隙にシアを狙うものが訪れるかもしれない。 そんな事を考えている間にも、聞こえぬ足音が近づいてくる。 そっとシアに気づかれぬように身体を起こしラースは低く唸り声をあげた。
「ぇ……」
そんな戸惑い交じりの女性の声。
そして……その声の相手はドロテアではなくドーラで……。 目の前にいるラースとシアを確認しボソリと呟いた。
「いない……」
はぁ? と言うのがラースの思いの全てだ。 何を言っていると問おうとした時。
「ランディは何処よ!!」
そう、甲高い声でドーラが叫んだ。
オマエが護衛していただろう!! 等と言う言葉をラースは飲み込んだ。
だが、ドーラとドロテア、声も姿も匂いも似た姉妹ではあるが、間違えるはずなんかない。 今のドロテアからは不快な匂いが漂うから、それは腐敗だけではなく、病そのものの匂いとでも言ってもいいだろう。
ランディは良く平気でいたものだと……もっと考えるべき事があるだろうにラースはそんな事を考えていて、わずかなうちに正気を取り戻し、何を言っているんだ? と、問おうとしたところに、シアが目を覚ました。
寝ぼけた眼で、幸福そうな微笑みをドーラに向け、安心と甘えの混ざった声でシアは言うのだ。
「お帰りなさい」
その瞬間、ドーラは眉間を寄せ不快に顔を潜めていた。
「気色悪い事を言うな!! ウルサイ!! 喋るな!! ゴミ屑が……全部全部オマエが、オマエが悪いんだ!! ゴミの分際で!!」
シアの顔色が悪くなり、言葉を失くした。
「ぇ……」
シアの様子に勝利を確信したのかドロテアは叫び続ける。
「私のランディを返せ!! 返せ!! 返せ!! この売女め!!」
「ドーラ? ドーラだよね。 何を言っているの?」
シアがショックで呆然とし、涙を浮かべながらも、現実を受け入れる事が出来ずにいるのだろう。 不思議そうに首を傾げこうボソリと言うのだ。
「きっとコレは夢ね」
だが、夢ではないドーラはシアを否定する。
「オマエさえ居なければ」
ボソリと呟く声は、小さな声だがシアにも聞こえた。 信じがたい言葉に……シアが硬直し、そんなシアに向かって躊躇う事無く懐から出した短刀でシアを狙い襲い掛かかる。
シアにとって、それは……共に旅した記録の1つだった。
とても良い鍛冶師に出会った。 出会って……そしてお揃いで買い、ソレは人を傷つけるためではなく、料理と言う人を幸福にするために使おうと決めたものだった。
「ドーラ……どう、したの?」
言葉が終わらぬうちに、刃がシアに届こうとしたが……それをラースが許す訳が無い。 素早く前足で刃を叩き落として、がるるるうるると唸りをあげながらドーラを睨んだ。
「ドーラ、ドーラ、どうして!! 私、何か怒らせるような事をした?! どうして!! ラースと一緒に寝ていたから怒ったの?!」
叫ぶシア。
シアの声等全く意に介せず、ドーラは短刀を取り戻そうと手を伸ばしていた。 ラースが短刀を前足で蹴り滑らせながら、シアとドーラの間を位置取り睨みながらも、ラースは思わず突っ込みを入れた。
「いや、ダメと言われても、俺は許諾しない」
「ぇ……?」
ドーラの動きが止まった。
ラースの声はランディと似ている。
不愛想なら不愛想なりに。
甘く囁くなら甘いなりに。
「ふざけるな!! なんで、なんで、私のランディが獣になっているんだ!!」
ここまでくれば確信だ。
ラースは確信した。
シアは……泣いているだけ。
ラースはドーラの器をしたドロテアを睨む。
それがラースが出した答え。
「忘れたのか? 俺達は、生まれた時から獣だ……」
ラースは曖昧な言葉で時間稼ぎをし観察をする。
自分が正しい事を確かめるように。
ラースは苦く笑っていた。
ある意味、ドロテア自身を相手にするよりも問題があった。 肉体的にはドーラは人の意志を持たぬ状態のランディの世話係に抜擢されるほどの身体能力を持っていたのだ。
力を偽っていた、誤魔化していた、ドロテアとは違う。
ドーラは頭を押さえ、顔をしかめながらしゃがみこんでいた。 呻くようにドーラが唸る。 だから……ドロテアに支配されたドーラが肉体を取り戻そうとしたのだとラースも思った。
頑張れ……ラースは祈ったが……。
ドーラの中にドロテアが入っている等と考えてもいないシアは、母に姉に捨てられたかのように泣きじゃくりながら、ドーラの名を呼び続けていた。
「ドーラ、ドーラ!!」
「おい!! こんなに泣かせて平気なのか!!」
今にもドーラに抱き着こうとするシアを身体でとめながら、ラースは叫んだ。
「ぁ……」
ドーラは頭を抱えたまま呻いている。
「大丈夫ドーラ?」
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「あぁあああああああ、ははっははははっは、死ね、死ね、死ね!! オマエのせいでランディは狂った、狂った。 私の人生も狂わせておいて、オマエは、オマエだけは許さない!!」
ドーラの手がシアの首に伸ばされそうになる。
「ドーラ、ドーラ、ごめん、ごめんなさい……」
親に捨てられた子のようにシアは泣き続ける。
「泣くなシア!! オマエと一緒に過ごしたドーラは、そういうことを言う奴だったか?!」
えぐえぐと嗚咽と涙と混ぜながら、ち、がう……と声にならない声でシアは言う。
「なら、どういう事か分かるだろう!! 捕えてくれ……俺がかかれば傷つけてしまう」
傷つけてしまうぐらいにはドーラは強い。
王が安心してシアを任せるぐらい強い。
まさか……ドロテアの同調が、ドーラそのものを支配する等考えなかった。 そんな事例聞いた事もない。 いや、今厄介なのはドーラが強いと言う事だ!!
「わ、分かった。 や、闇よ、眠りよ。 安らかなれ、穏やかなれ、その心と体を守り一時の休息をもたら……」
全てを言い切る前に……ドロテア……だろう魂はドーラの肉体と共に逃げて行った。
「ドーラぁあああああああ!!」
シアは喉が裂けるのではと言う声で叫んだ……。
振り返ったドーラの瞳は、ほんの僅かな時間、ドーラのもので……立ち止まり、涙を流し、シアに手を伸ばそうとし凄い速さでひっこめシアを睨み、次の瞬間には駆け去って行った。
ラースは……追う事は出来ない。
周囲100m範囲には四方八方に分かれ、獣達がシアを狙っている気配がしたから。
今日は、負けだ……。
泣き叫ぶシアを抱きしめるため、ラースは人の姿に戻り……そして……かつてジルがラースにしてくれたようにシアを抱きしめ、優しく子守歌を歌いだす。
今はソレしかできなかったから……。
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AIイラストを、裏設定付きで『作品のオマケ』へと移動しました。キャラ紹介として、絵も増えています。お暇な方、AIイラストが苦手で無い方は、お立ち寄りくださるとうれしいです。
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