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10.獣の国の三兄弟 01
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人獣と呼ばれる者達は自らを獣に堕とす事で超常的な力を発揮する事ができる。
理性は失ってしまうが、彼等を痛みも感じることもなく無敵だ。
問題は、使ったは最後命が無い事……。
自爆技ではあるが、最下級の戦士が最上級の戦士の足止めに仕えるのだから、人獣同士の戦場は何時だって危険に満ちている。
今、ギルモア国の国境沿いで睨み合う相手は、人獣を要する国。
ギルモアが築いた文明を奪おうとする人獣達からの侵略行為。
【早急に3王子達は王都に戻れ】
王からの絶対的命令に王子達は荒れた。
「父上は戦場と言うものを分かってない!!」
「昔と今は違うのだと言う事を理解していただかない事には、困ると言うのに……」
「先日、ランディ兄さんが帰還しなかった事を根に持っているのか?」
彼等にとって、何よりも重視すべきは戦場だったが……それでも王命にはそむく事はできず、シアの離婚宣言から5日後にはギルモア王家会食の間で、食事会が開かれる事となった。
「人獣同士の戦争の最中に、我ら三兄弟を呼び出すとは、何事ですか!」
声高に不満を述べたのは三兄弟の長男『ヴィズ』
濃い灰色の髪、黒色の瞳、褐色の肌、細身で女性的とも言える美しい容姿をしている。 戦闘はそれほど得意ではないが、饒舌で人を使うのが上手く、これからの人獣にとって重要な才能だと言われている。
次男『ランディ』 三男『セグ』は無言で長男の後に続く。
次男三男は、一族の特徴を色濃く残しており、大柄で、黒髪、金目、褐色肌、顔立ちは整いよく似た顔立ちだ。 ただランディは無口で無骨な印象が強く、セグは末っ子特有の甘えた表情が多い。
不機嫌そうな長男ヴィズに、濃い赤褐色の髪が美しい大柄な女性が声をかけてきた。 貴族の末端である彼女の色味は王族とは全く違うが、自らの色にコンプレックスを抱くヴィズにとって癒しとなっている女性である。
「ご無沙汰しておりますヴィズ様。 御活躍はお伺いしておりますものの、お会いできない日々……とても寂しゅうございました。 今日は御馳走に美味しいお酒が準備されております。 日々の疲れを存分に癒してくださいませ」
だが、彼女が準備したわけではない。
美しい婚約者に言われれば、ヴィズの目じりが下がり「そうだな」と女性の横に座った。 すぐにグラスに酒が注がれ、まずはと一杯飲み干す。
大テーブルにはいくつもの席があり、料理は中央にドンっと牛、豚、鳥と肉料理が並び、国内で生産しはじめた酒もまた置かれていた。
三男のセグも長男と同様に、婚約者の姿を見つけ婚約者の横に座り、声を潜めて話し出す。 セグの婚約者は、ヴィズの婚約者に比べズイブンと小柄な女性ではあるが、セグと共に戦場を駆け巡る戦士である。
「君も呼ばれていたなんて。 なら、一緒に来れば良かった」
「セグはいいけれど、他の王子達の前では緊張するもの」
「確かに、移動の間中、兄の愚痴を聞かされ正直辛かったよ。一緒しなかったのは正解だ」
視線を合わせ小声でクスクス笑いあった。
第一、第三王子たちの婚約者は、彼等が誇りとする一族から何処か欠けていた。 王族は獣としての因子が強くなりすぎては魔獣となると伝説に残されているためである。
兄弟が婚約者たちと語らう中、次男ランディは顏を動かさないまま視線だけで周囲を見回していた。 匂いが無いのでいないのは分かっていたが、それでもランディは妻となったシアを探していたのだ。
兄や弟の婚約者が待っているなら、自身の妻が待っていて当然だと考えたから。
何時までも席に座らぬ次男ランディに王妃は言う。
「オマエの座る席はココじゃ」
すすめられた席の隣には、ドーラとよく似た顔立ちでありながら色香を抜き猛々しさを加えた女性の姿があった。 ランディの幼馴染であるドロテアである。 戦場で共にいた彼女が、先に席についていた事に驚きはしたもののランディは、ドロテアに声をかけることなく視線だけで挨拶を済ませ、王妃と幼馴染の間の席に座った。
理性は失ってしまうが、彼等を痛みも感じることもなく無敵だ。
問題は、使ったは最後命が無い事……。
自爆技ではあるが、最下級の戦士が最上級の戦士の足止めに仕えるのだから、人獣同士の戦場は何時だって危険に満ちている。
今、ギルモア国の国境沿いで睨み合う相手は、人獣を要する国。
ギルモアが築いた文明を奪おうとする人獣達からの侵略行為。
【早急に3王子達は王都に戻れ】
王からの絶対的命令に王子達は荒れた。
「父上は戦場と言うものを分かってない!!」
「昔と今は違うのだと言う事を理解していただかない事には、困ると言うのに……」
「先日、ランディ兄さんが帰還しなかった事を根に持っているのか?」
彼等にとって、何よりも重視すべきは戦場だったが……それでも王命にはそむく事はできず、シアの離婚宣言から5日後にはギルモア王家会食の間で、食事会が開かれる事となった。
「人獣同士の戦争の最中に、我ら三兄弟を呼び出すとは、何事ですか!」
声高に不満を述べたのは三兄弟の長男『ヴィズ』
濃い灰色の髪、黒色の瞳、褐色の肌、細身で女性的とも言える美しい容姿をしている。 戦闘はそれほど得意ではないが、饒舌で人を使うのが上手く、これからの人獣にとって重要な才能だと言われている。
次男『ランディ』 三男『セグ』は無言で長男の後に続く。
次男三男は、一族の特徴を色濃く残しており、大柄で、黒髪、金目、褐色肌、顔立ちは整いよく似た顔立ちだ。 ただランディは無口で無骨な印象が強く、セグは末っ子特有の甘えた表情が多い。
不機嫌そうな長男ヴィズに、濃い赤褐色の髪が美しい大柄な女性が声をかけてきた。 貴族の末端である彼女の色味は王族とは全く違うが、自らの色にコンプレックスを抱くヴィズにとって癒しとなっている女性である。
「ご無沙汰しておりますヴィズ様。 御活躍はお伺いしておりますものの、お会いできない日々……とても寂しゅうございました。 今日は御馳走に美味しいお酒が準備されております。 日々の疲れを存分に癒してくださいませ」
だが、彼女が準備したわけではない。
美しい婚約者に言われれば、ヴィズの目じりが下がり「そうだな」と女性の横に座った。 すぐにグラスに酒が注がれ、まずはと一杯飲み干す。
大テーブルにはいくつもの席があり、料理は中央にドンっと牛、豚、鳥と肉料理が並び、国内で生産しはじめた酒もまた置かれていた。
三男のセグも長男と同様に、婚約者の姿を見つけ婚約者の横に座り、声を潜めて話し出す。 セグの婚約者は、ヴィズの婚約者に比べズイブンと小柄な女性ではあるが、セグと共に戦場を駆け巡る戦士である。
「君も呼ばれていたなんて。 なら、一緒に来れば良かった」
「セグはいいけれど、他の王子達の前では緊張するもの」
「確かに、移動の間中、兄の愚痴を聞かされ正直辛かったよ。一緒しなかったのは正解だ」
視線を合わせ小声でクスクス笑いあった。
第一、第三王子たちの婚約者は、彼等が誇りとする一族から何処か欠けていた。 王族は獣としての因子が強くなりすぎては魔獣となると伝説に残されているためである。
兄弟が婚約者たちと語らう中、次男ランディは顏を動かさないまま視線だけで周囲を見回していた。 匂いが無いのでいないのは分かっていたが、それでもランディは妻となったシアを探していたのだ。
兄や弟の婚約者が待っているなら、自身の妻が待っていて当然だと考えたから。
何時までも席に座らぬ次男ランディに王妃は言う。
「オマエの座る席はココじゃ」
すすめられた席の隣には、ドーラとよく似た顔立ちでありながら色香を抜き猛々しさを加えた女性の姿があった。 ランディの幼馴染であるドロテアである。 戦場で共にいた彼女が、先に席についていた事に驚きはしたもののランディは、ドロテアに声をかけることなく視線だけで挨拶を済ませ、王妃と幼馴染の間の席に座った。
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