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09.流石に……公爵様は見るもオゾマシイ方なのですか? とは、聞けなかった
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思わず尻尾を見るのは、禿げたネズミの尻尾が苦手だから。 ウサギのような尻尾にホッとして手を差し出した。
余りにも濃い闇のような色をしているので、彼……そのネズミ自身が影なのかと思いましたが、触れてみればシッカリと毛並みもあるネズミです。 一応、魔術師の中には獣と主従契約を交わし、知性と魔力を与え使い魔にしているものもいますし……そういう類の生き物なのでしょうか?
「今回の依頼主さんの御遣いでしょうか?」
「まぁ、そんなものだな」
なんだか偉そうなネズミだと思ったけれど、それでも人でない事にホッとした。
人は私を苦手だから、私も人が苦手。
動物なら、依頼者の遣いであっても人間の機嫌を取らなければと言う気遣いに神経をすり減らす事もありません。 ネズミの表情は元から分かりませんし、感情の音も聞こえません。 それでも会話をするのですから、慣れない状況に不安を覚えない訳ではありませんが、それでも初対面の相手を疑うように、表情と感情の差異に胃を痛くする必要が無いと言うのが幸いと言うものです。
「よろしくお願いします」
指先を差し出せば、チョンと小さな指が触れてきた。
「あぁ、よろしく」
ネズミ相手に余計な緊張はしないけれど、だからと言って何を話せばいいのか想像もつかなかった。 沈黙を破ったのはネズミの人の方でした。
「何も心配しなくていい。 身の危険はないように守る。 ただ、伯爵の望む令嬢像を演じてくれればソレでいい。 調査はコッチで勝手にする。 いや……違うな。 手伝ってもらえると嬉しい」
「その、伯爵が望む令嬢とはどのようなものでしょうか? 私は貴族としてはふさわしい娘とは言えませんが」
「今、伯爵家は存続の危機を迎えている。 事情はいくつかある」
ネズミは語る。
「金銭的援助元であり、あらゆる後ろ盾であったフィーア、君の母と、伯爵が正式に離縁をしたのは、君が売り払われた後。 君を連れていこうとはしなかった母君だったが、君が売られた事が彼女にとって全ての終わりだったようで、伯爵家から全ての支援を引き払ったんだ」
お腹の奥が冷たくなり、私は黙った。
「言いたい事があるなら言ってくれ、これから協力しあう関係を築く以上、禍根は残したくない」
「私の私情ですから」
「何、愚痴でもかまわんよ。 何しろ俺はネズミだ。 気軽に接してくれ」
「魔力の多い私を上手く使えば、血統魔力にコダワル上級貴族に上手く取り入る事ができる。 私は父に残された母の愛情の1つであり、ソレを理解しなかったことに絶望したのだと……母は手紙を寄越しました。 抑えきれない激情のまま送ったのでしょうね。 それから、シバラクして、塔に対し、私に会いたい、返して欲しいと、母から訴えがありましたが、それは認められませんでした。 私がイヤだったからなんですけどね。 嫌だったのよ!!」
感情的に、頭にある言葉を全て言い放った。 そこに何か脈絡があるかと言えばないのだが、ネズミは静かに私の激情を聞き流してくれたのだ。
優しい……ネズミさんだわ……。
「そうか……、君にとっては魔術師の塔に売られた事は幸いだったんだと言うことはよくわかったよ。 確かに……魔力を破壊に使う魔術師であれば恐怖の対象となるが、魔力が強いだけの美女であれば、貴族達はこぞって欲しがる。 今回も、フィーアが呼び戻されたのは、まぁ、そういうことだ」
「ネズミの癖に御世辞が上手ね」
「俺は紳士だからな」
「わかりました……。 道具として私を必要としていると言うなら私も割り切る事ができます」
「勘違いするな。 元はフィーアの姉フリーダが交わしていた婚約だ。 最初から君を道具として使おうとしていた訳じゃない」
「慰めはいりませんよ」
「そうじゃない!!」
「公爵の婚約者であったフリーダは、公爵の婚約者の名を使いサロンを開き、男も女も集め乱交の場とした。 公爵の側近として取り上げられたフレッグは戦場で公爵に襲い掛かった」
「なぜ、そんなことを……」
「さて、俺にはわからんよ」
流石に重罪過ぎる。
「ただ、事実だけを述べるなら、魔力の強いフリーダと公爵との間に婚姻の約束を交わし、様々な援助を約束したんだ。 次代であるフレッグはその……フリーダほどの知恵も魔力もない、さして出世は期待できなかったからな。 言い方は悪いがノルダン伯爵は、フレッグの将来のために公爵家に娘を差し出した訳だ」
「姉はともかく、兄は納得していなかったのでしょうか……公爵に襲いかかるなどと言う馬鹿な事が自分の利益にならない等、どんな愚かな者でもわかるはずですわ。 その、公爵との婚姻が嫌だとフリーダ様が思い、兄が哀れむほどに、その……公爵様は、目立った方だったのかしら?」
公爵様は、雇い主である。
言い方には気を付けなければいけない。
いえ……今の言い方が正しかったとも言えませんけど……。
私はネズミの返事を待ちました。
余りにも濃い闇のような色をしているので、彼……そのネズミ自身が影なのかと思いましたが、触れてみればシッカリと毛並みもあるネズミです。 一応、魔術師の中には獣と主従契約を交わし、知性と魔力を与え使い魔にしているものもいますし……そういう類の生き物なのでしょうか?
「今回の依頼主さんの御遣いでしょうか?」
「まぁ、そんなものだな」
なんだか偉そうなネズミだと思ったけれど、それでも人でない事にホッとした。
人は私を苦手だから、私も人が苦手。
動物なら、依頼者の遣いであっても人間の機嫌を取らなければと言う気遣いに神経をすり減らす事もありません。 ネズミの表情は元から分かりませんし、感情の音も聞こえません。 それでも会話をするのですから、慣れない状況に不安を覚えない訳ではありませんが、それでも初対面の相手を疑うように、表情と感情の差異に胃を痛くする必要が無いと言うのが幸いと言うものです。
「よろしくお願いします」
指先を差し出せば、チョンと小さな指が触れてきた。
「あぁ、よろしく」
ネズミ相手に余計な緊張はしないけれど、だからと言って何を話せばいいのか想像もつかなかった。 沈黙を破ったのはネズミの人の方でした。
「何も心配しなくていい。 身の危険はないように守る。 ただ、伯爵の望む令嬢像を演じてくれればソレでいい。 調査はコッチで勝手にする。 いや……違うな。 手伝ってもらえると嬉しい」
「その、伯爵が望む令嬢とはどのようなものでしょうか? 私は貴族としてはふさわしい娘とは言えませんが」
「今、伯爵家は存続の危機を迎えている。 事情はいくつかある」
ネズミは語る。
「金銭的援助元であり、あらゆる後ろ盾であったフィーア、君の母と、伯爵が正式に離縁をしたのは、君が売り払われた後。 君を連れていこうとはしなかった母君だったが、君が売られた事が彼女にとって全ての終わりだったようで、伯爵家から全ての支援を引き払ったんだ」
お腹の奥が冷たくなり、私は黙った。
「言いたい事があるなら言ってくれ、これから協力しあう関係を築く以上、禍根は残したくない」
「私の私情ですから」
「何、愚痴でもかまわんよ。 何しろ俺はネズミだ。 気軽に接してくれ」
「魔力の多い私を上手く使えば、血統魔力にコダワル上級貴族に上手く取り入る事ができる。 私は父に残された母の愛情の1つであり、ソレを理解しなかったことに絶望したのだと……母は手紙を寄越しました。 抑えきれない激情のまま送ったのでしょうね。 それから、シバラクして、塔に対し、私に会いたい、返して欲しいと、母から訴えがありましたが、それは認められませんでした。 私がイヤだったからなんですけどね。 嫌だったのよ!!」
感情的に、頭にある言葉を全て言い放った。 そこに何か脈絡があるかと言えばないのだが、ネズミは静かに私の激情を聞き流してくれたのだ。
優しい……ネズミさんだわ……。
「そうか……、君にとっては魔術師の塔に売られた事は幸いだったんだと言うことはよくわかったよ。 確かに……魔力を破壊に使う魔術師であれば恐怖の対象となるが、魔力が強いだけの美女であれば、貴族達はこぞって欲しがる。 今回も、フィーアが呼び戻されたのは、まぁ、そういうことだ」
「ネズミの癖に御世辞が上手ね」
「俺は紳士だからな」
「わかりました……。 道具として私を必要としていると言うなら私も割り切る事ができます」
「勘違いするな。 元はフィーアの姉フリーダが交わしていた婚約だ。 最初から君を道具として使おうとしていた訳じゃない」
「慰めはいりませんよ」
「そうじゃない!!」
「公爵の婚約者であったフリーダは、公爵の婚約者の名を使いサロンを開き、男も女も集め乱交の場とした。 公爵の側近として取り上げられたフレッグは戦場で公爵に襲い掛かった」
「なぜ、そんなことを……」
「さて、俺にはわからんよ」
流石に重罪過ぎる。
「ただ、事実だけを述べるなら、魔力の強いフリーダと公爵との間に婚姻の約束を交わし、様々な援助を約束したんだ。 次代であるフレッグはその……フリーダほどの知恵も魔力もない、さして出世は期待できなかったからな。 言い方は悪いがノルダン伯爵は、フレッグの将来のために公爵家に娘を差し出した訳だ」
「姉はともかく、兄は納得していなかったのでしょうか……公爵に襲いかかるなどと言う馬鹿な事が自分の利益にならない等、どんな愚かな者でもわかるはずですわ。 その、公爵との婚姻が嫌だとフリーダ様が思い、兄が哀れむほどに、その……公爵様は、目立った方だったのかしら?」
公爵様は、雇い主である。
言い方には気を付けなければいけない。
いえ……今の言い方が正しかったとも言えませんけど……。
私はネズミの返事を待ちました。
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