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改革
16.王家は色々面倒臭い 01
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「今日の予定は、王妃との茶会。 その後、地域の税務担当者、土地改良課課長、魔法課課長との合同会議となっております」
髪を梳いてもらいながら私は爽やかな紅茶を片手に今日の予定に耳を傾けていた。 背後にあるクローゼットの前では、溢れかえっているドレスと侍女が戦っている。
今までは『惨めな娼婦の娘』と呼ばれているのを利用し、ドレスではなくドレスを模したワンピースで通してきた。
成長期に馬鹿みたいに高価なドレスを購入する理由がわからなかったし、使用人達のようにもう少し可愛らしい恰好をしてはどうですか? なんて事をディック様が言うことはなかったから。 好きなようにしていた。
だけど、王太子殿下の婚約者となれば別ならしく、王国の威信に関わる等と言われ、侍女達は楽しそうに私を着飾ろうとしていた。
「ですからぁ~。 ドレス、着ましょうね」
「なんか、ヤダ」
「それで笑われるのは貴方ではなく、この国なのですから」
「そんな面倒臭い事、話に聞いていなかったし」
「カワイイ恰好をするのも仕事の一環ですよ。 なによりせっかく可愛らしいのにオシャレをしないのが勿体ないですよ」
そんな事を言われながら私の髪は編まれ綺麗に纏められていく。 その手は、宥めるように、愛おしむように優しくて、起きたばかりなのに眠くなる。
「でも、どうして、殿下が私の世話をしているのかなぁ? 後、なんでそんなに器用なんですか? 王太子殿下ですよね? 次期国王ですよね?」
「お褒めに預かり光栄です」
そう言いながら彼は私の言葉をノラリクラリと微笑みと共に避けていく。 次期国王陛下のはずの彼はどんな人生を歩めばこんな器用な事ができるのか? 気にならないではないけれど。 そういうのは暇なときに聞くことにした。
幼少期から自分の世話は自分でしていたし、むしろ身体が不自由な曾祖母の面倒を見て来たけれど、おしゃれ等は私の人生には不必要だったから、私には出来ない芸当、頼るしかない。 だけど、殿下にしてもらうのはどうなの?
殿下は、私が陛下の国の民のために尽くす限り、私の奴隷だと余り面白くない状態をいうが、奴隷とまではいかないが、甘すぎる秘書か、もはや乳母レベルな気がする……。
「はい、出来ました。 流石、私です。 カワイイですよ。 それでドレスですが、ベージュのグラデーションに白の模様で縁取りは金糸のものを。 装飾品は金ベースに白い花等どうでしょう」
「そんな堅苦しい恰好、思考の邪魔」
「大丈夫です。 軽い素材で大き目に作ってありますし、ボタンで簡単に着脱できますから、下に薄地のワンピースを着ておけば問題はないでしょう。 必要のないところでは楽にしていても構いません。」
そこまで準備されれば、私が折れるしかない。
朝食の準備が出来たとやってきたのは侍女ではなく、何故か料理長で私ではなく殿下の方へと話しかける。 何事?
「殿下、こちらでよろしいでしょうか?」
焼いたリンゴと甘いパンの匂い。 切り分けられた、ケーキをフォークで切って殿下が私の口元に持ってくる。
「あ~ん」
馬鹿馬鹿しいと言いたいけれど、美味しそうな匂いが……、私は口を開ければケーキが入れられる。 薄切りリンゴが層のようになりながらきめ細かなパンが繋ぎとなりながらも、甘く似たリンゴの味がしみ込んでいる。 そして表面は砂糖が焼かれキャラメル状になっていて、ほろ苦くて、ぱりぱりの触感が面白い。
「美味しい……」
「では、私も味見を」
殿下も一口食べて、うんうんと頷いて見せる。
「良い料理人を使っているのですね」
そう言ってチラリと私を見るから、何? と、私は首を傾げる。
「いいえ。 これは、リーリヤが王妃と出会う際に謝罪として進呈するものです。 嫌でしょうけど、少しだけ我慢して可愛らしくごめんなさいしましょうね」
髪を梳いてもらいながら私は爽やかな紅茶を片手に今日の予定に耳を傾けていた。 背後にあるクローゼットの前では、溢れかえっているドレスと侍女が戦っている。
今までは『惨めな娼婦の娘』と呼ばれているのを利用し、ドレスではなくドレスを模したワンピースで通してきた。
成長期に馬鹿みたいに高価なドレスを購入する理由がわからなかったし、使用人達のようにもう少し可愛らしい恰好をしてはどうですか? なんて事をディック様が言うことはなかったから。 好きなようにしていた。
だけど、王太子殿下の婚約者となれば別ならしく、王国の威信に関わる等と言われ、侍女達は楽しそうに私を着飾ろうとしていた。
「ですからぁ~。 ドレス、着ましょうね」
「なんか、ヤダ」
「それで笑われるのは貴方ではなく、この国なのですから」
「そんな面倒臭い事、話に聞いていなかったし」
「カワイイ恰好をするのも仕事の一環ですよ。 なによりせっかく可愛らしいのにオシャレをしないのが勿体ないですよ」
そんな事を言われながら私の髪は編まれ綺麗に纏められていく。 その手は、宥めるように、愛おしむように優しくて、起きたばかりなのに眠くなる。
「でも、どうして、殿下が私の世話をしているのかなぁ? 後、なんでそんなに器用なんですか? 王太子殿下ですよね? 次期国王ですよね?」
「お褒めに預かり光栄です」
そう言いながら彼は私の言葉をノラリクラリと微笑みと共に避けていく。 次期国王陛下のはずの彼はどんな人生を歩めばこんな器用な事ができるのか? 気にならないではないけれど。 そういうのは暇なときに聞くことにした。
幼少期から自分の世話は自分でしていたし、むしろ身体が不自由な曾祖母の面倒を見て来たけれど、おしゃれ等は私の人生には不必要だったから、私には出来ない芸当、頼るしかない。 だけど、殿下にしてもらうのはどうなの?
殿下は、私が陛下の国の民のために尽くす限り、私の奴隷だと余り面白くない状態をいうが、奴隷とまではいかないが、甘すぎる秘書か、もはや乳母レベルな気がする……。
「はい、出来ました。 流石、私です。 カワイイですよ。 それでドレスですが、ベージュのグラデーションに白の模様で縁取りは金糸のものを。 装飾品は金ベースに白い花等どうでしょう」
「そんな堅苦しい恰好、思考の邪魔」
「大丈夫です。 軽い素材で大き目に作ってありますし、ボタンで簡単に着脱できますから、下に薄地のワンピースを着ておけば問題はないでしょう。 必要のないところでは楽にしていても構いません。」
そこまで準備されれば、私が折れるしかない。
朝食の準備が出来たとやってきたのは侍女ではなく、何故か料理長で私ではなく殿下の方へと話しかける。 何事?
「殿下、こちらでよろしいでしょうか?」
焼いたリンゴと甘いパンの匂い。 切り分けられた、ケーキをフォークで切って殿下が私の口元に持ってくる。
「あ~ん」
馬鹿馬鹿しいと言いたいけれど、美味しそうな匂いが……、私は口を開ければケーキが入れられる。 薄切りリンゴが層のようになりながらきめ細かなパンが繋ぎとなりながらも、甘く似たリンゴの味がしみ込んでいる。 そして表面は砂糖が焼かれキャラメル状になっていて、ほろ苦くて、ぱりぱりの触感が面白い。
「美味しい……」
「では、私も味見を」
殿下も一口食べて、うんうんと頷いて見せる。
「良い料理人を使っているのですね」
そう言ってチラリと私を見るから、何? と、私は首を傾げる。
「いいえ。 これは、リーリヤが王妃と出会う際に謝罪として進呈するものです。 嫌でしょうけど、少しだけ我慢して可愛らしくごめんなさいしましょうね」
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