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03.それは夢、愛されたいと願う私の夢……なのだろう
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そこはとても暖かく居心地の良い場所だった。
母の胎内とは、こういうものかもしれない。
守られていると言う安心感があった。
痛みもない。
恐怖もない。
それでも……心は冷え冷えとしていた。
どうして助けにきてくれなかったの……父さま。 それは淡い希望だと知っていた。 父は母が一目惚れをした旅の冒険者、1夜ばかりの夢を見させてと願い、私を授かったのだと言う。
それが幸福か不幸化と言えば、母にとっては幸福だったのだろうと思う。
『アナタは私の宝物よ……アナタはアノ人に似てとても綺麗な子だわ。 あぁ、素敵、大好き』
私を見ながら、私の中の父を見ていた母を……あまり好きにはなれなかった。 私は、私を愛して欲しかったの!!
私は夢を見る。
『凄いわ姉様。 私と年が変わらないのに、魔法を使えるなんて。 将来は魔導士になられるの? 素敵だわ、お姉様。 私にも魔法を教えて?』
母が侯爵家に売られる前、ダイアナとの関係はそう険悪でなかったと記憶している。 そして、邪魔と言われ、無駄飯食いと呼ばれる以前があったこと、本当に屋敷のことを何もしていなかったにも関わらず、幼い頃の祖父はその本質を捻じ曲げるほどに優しく、叔父とその妻も、使用人達もよくしてくれていたを、忘れていた。
『余り、意識をして使ったことが無いの……、私にはどうすればできるのか、なんとなくわかるから、人に教えるのは難しいわ』
そう告げた時のダイアナの顔は、幼くも醜く歪んでいて……、そのあと、そのあとは……。
頭痛と共に思いうかぶ曖昧な記憶、それは血の赤と母の叫び、あの日から母は……いえ、全てが私に冷たくなった……。
どうして、忘れていたのでしょう。
忘れた記憶を思い出しても、私の孤独は深まるばかり……。
寂しい……。
お願い、誰か私を愛して。
祈りながら、私の意識は魔力に溶ける。
「早く出ておいで、待っているよ」
声が聞こえた。
甘く囁く男性の声。
優しい声が、孤独で震える私にぬくもりを与えてくれるような予感。
「とても綺麗だ。 君はどんな子なんだろうか」
ウットリとする声と口づけの音。 愛されているかのような幸福感に包まれ、私は考えるのを辞めた。
声が聞こえた。
それは夢の中のように甘く、愛される予感。
「可愛い子、美しい君はどんな姿をしているんだろうな」
「また、どこで拾ってきたんですか」
少しだけキツイ声が加わる。
だけど、そこには信頼があった。
甘い響きの声は言う。
「可愛いだろう? 貰ったんだ」
「はいはい、夕食時にはオムレツでも作らせましょう」
私の事をいっているのでしょうか?
「酷い奴だな」
「酷いのは誰ですか……うちは、幻獣店ではないんですよ」
「失礼な……俺はいつアイツ等を売ろうとした」
「卵を孵すだけ孵して、世話は他の者に任せきりの癖によくいいますよ」
「仕方あるまい、俺は忙しいんだ。 ソレにアイツ等だって酷いと思うぞ、俺が愛情込めて孵化させたのに、今では別の奴が一番だと言う……フィンだってそうじゃないか……俺よりお前に懐いて、今では俺を背に乗せようとすらしない」
「当然ですよ、私が懇切丁寧に面倒を見てきたんですから」
「もし、ソレを孵化させると言うなら、人に任せず自分で面倒を見て下さいね。 あぁ、後、魔物と判断した場合には、即処分しますから」
「幼い頃から手懐ければ、幻獣以上に良く働くかも……」
「そういって、怪我人を出した事を忘れたのですか……」
「やれやれ、怖いママだ……。 ほら早く出てこないと料理人に渡されてしまうぞ?」
そんな言葉すらユッタリと甘く囁いて見せる。
「誰がママですか!!」
「冗談だ。 オマエと夫婦になる気はない」
「本当シャレになりませんから、無暗に外で近寄らないでくださいよ。 世間では、どんな噂がたてられているかご存じですか?」
「あぁ、知っているさ。 ディルク・クラインは、ロイス・マクレガンを愛している。 まぁ、鬱陶しく娘を勧めてくる馬鹿ども達を避けるのには、ちょうどいい噂だ」
「勘弁してくださいこの変態野郎。 私は普通に人間の女性が好きなんですから。 アナタのような人間の女性より、幻獣が好きという変態とは違うのですよ」
「失礼だな。 オマエだってあの子達の美しさは知っているだろう」
そんな声を聞いて、私はショックだった。 なんだ……また、私は誰かの特別になることはできないのか、愛されることはないのかと。
母の胎内とは、こういうものかもしれない。
守られていると言う安心感があった。
痛みもない。
恐怖もない。
それでも……心は冷え冷えとしていた。
どうして助けにきてくれなかったの……父さま。 それは淡い希望だと知っていた。 父は母が一目惚れをした旅の冒険者、1夜ばかりの夢を見させてと願い、私を授かったのだと言う。
それが幸福か不幸化と言えば、母にとっては幸福だったのだろうと思う。
『アナタは私の宝物よ……アナタはアノ人に似てとても綺麗な子だわ。 あぁ、素敵、大好き』
私を見ながら、私の中の父を見ていた母を……あまり好きにはなれなかった。 私は、私を愛して欲しかったの!!
私は夢を見る。
『凄いわ姉様。 私と年が変わらないのに、魔法を使えるなんて。 将来は魔導士になられるの? 素敵だわ、お姉様。 私にも魔法を教えて?』
母が侯爵家に売られる前、ダイアナとの関係はそう険悪でなかったと記憶している。 そして、邪魔と言われ、無駄飯食いと呼ばれる以前があったこと、本当に屋敷のことを何もしていなかったにも関わらず、幼い頃の祖父はその本質を捻じ曲げるほどに優しく、叔父とその妻も、使用人達もよくしてくれていたを、忘れていた。
『余り、意識をして使ったことが無いの……、私にはどうすればできるのか、なんとなくわかるから、人に教えるのは難しいわ』
そう告げた時のダイアナの顔は、幼くも醜く歪んでいて……、そのあと、そのあとは……。
頭痛と共に思いうかぶ曖昧な記憶、それは血の赤と母の叫び、あの日から母は……いえ、全てが私に冷たくなった……。
どうして、忘れていたのでしょう。
忘れた記憶を思い出しても、私の孤独は深まるばかり……。
寂しい……。
お願い、誰か私を愛して。
祈りながら、私の意識は魔力に溶ける。
「早く出ておいで、待っているよ」
声が聞こえた。
甘く囁く男性の声。
優しい声が、孤独で震える私にぬくもりを与えてくれるような予感。
「とても綺麗だ。 君はどんな子なんだろうか」
ウットリとする声と口づけの音。 愛されているかのような幸福感に包まれ、私は考えるのを辞めた。
声が聞こえた。
それは夢の中のように甘く、愛される予感。
「可愛い子、美しい君はどんな姿をしているんだろうな」
「また、どこで拾ってきたんですか」
少しだけキツイ声が加わる。
だけど、そこには信頼があった。
甘い響きの声は言う。
「可愛いだろう? 貰ったんだ」
「はいはい、夕食時にはオムレツでも作らせましょう」
私の事をいっているのでしょうか?
「酷い奴だな」
「酷いのは誰ですか……うちは、幻獣店ではないんですよ」
「失礼な……俺はいつアイツ等を売ろうとした」
「卵を孵すだけ孵して、世話は他の者に任せきりの癖によくいいますよ」
「仕方あるまい、俺は忙しいんだ。 ソレにアイツ等だって酷いと思うぞ、俺が愛情込めて孵化させたのに、今では別の奴が一番だと言う……フィンだってそうじゃないか……俺よりお前に懐いて、今では俺を背に乗せようとすらしない」
「当然ですよ、私が懇切丁寧に面倒を見てきたんですから」
「もし、ソレを孵化させると言うなら、人に任せず自分で面倒を見て下さいね。 あぁ、後、魔物と判断した場合には、即処分しますから」
「幼い頃から手懐ければ、幻獣以上に良く働くかも……」
「そういって、怪我人を出した事を忘れたのですか……」
「やれやれ、怖いママだ……。 ほら早く出てこないと料理人に渡されてしまうぞ?」
そんな言葉すらユッタリと甘く囁いて見せる。
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「冗談だ。 オマエと夫婦になる気はない」
「本当シャレになりませんから、無暗に外で近寄らないでくださいよ。 世間では、どんな噂がたてられているかご存じですか?」
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「勘弁してくださいこの変態野郎。 私は普通に人間の女性が好きなんですから。 アナタのような人間の女性より、幻獣が好きという変態とは違うのですよ」
「失礼だな。 オマエだってあの子達の美しさは知っているだろう」
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