4 / 22
03.それは夢、愛されたいと願う私の夢……なのだろう
しおりを挟む
そこはとても暖かく居心地の良い場所だった。
母の胎内とは、こういうものかもしれない。
守られていると言う安心感があった。
痛みもない。
恐怖もない。
それでも……心は冷え冷えとしていた。
どうして助けにきてくれなかったの……父さま。 それは淡い希望だと知っていた。 父は母が一目惚れをした旅の冒険者、1夜ばかりの夢を見させてと願い、私を授かったのだと言う。
それが幸福か不幸化と言えば、母にとっては幸福だったのだろうと思う。
『アナタは私の宝物よ……アナタはアノ人に似てとても綺麗な子だわ。 あぁ、素敵、大好き』
私を見ながら、私の中の父を見ていた母を……あまり好きにはなれなかった。 私は、私を愛して欲しかったの!!
私は夢を見る。
『凄いわ姉様。 私と年が変わらないのに、魔法を使えるなんて。 将来は魔導士になられるの? 素敵だわ、お姉様。 私にも魔法を教えて?』
母が侯爵家に売られる前、ダイアナとの関係はそう険悪でなかったと記憶している。 そして、邪魔と言われ、無駄飯食いと呼ばれる以前があったこと、本当に屋敷のことを何もしていなかったにも関わらず、幼い頃の祖父はその本質を捻じ曲げるほどに優しく、叔父とその妻も、使用人達もよくしてくれていたを、忘れていた。
『余り、意識をして使ったことが無いの……、私にはどうすればできるのか、なんとなくわかるから、人に教えるのは難しいわ』
そう告げた時のダイアナの顔は、幼くも醜く歪んでいて……、そのあと、そのあとは……。
頭痛と共に思いうかぶ曖昧な記憶、それは血の赤と母の叫び、あの日から母は……いえ、全てが私に冷たくなった……。
どうして、忘れていたのでしょう。
忘れた記憶を思い出しても、私の孤独は深まるばかり……。
寂しい……。
お願い、誰か私を愛して。
祈りながら、私の意識は魔力に溶ける。
「早く出ておいで、待っているよ」
声が聞こえた。
甘く囁く男性の声。
優しい声が、孤独で震える私にぬくもりを与えてくれるような予感。
「とても綺麗だ。 君はどんな子なんだろうか」
ウットリとする声と口づけの音。 愛されているかのような幸福感に包まれ、私は考えるのを辞めた。
声が聞こえた。
それは夢の中のように甘く、愛される予感。
「可愛い子、美しい君はどんな姿をしているんだろうな」
「また、どこで拾ってきたんですか」
少しだけキツイ声が加わる。
だけど、そこには信頼があった。
甘い響きの声は言う。
「可愛いだろう? 貰ったんだ」
「はいはい、夕食時にはオムレツでも作らせましょう」
私の事をいっているのでしょうか?
「酷い奴だな」
「酷いのは誰ですか……うちは、幻獣店ではないんですよ」
「失礼な……俺はいつアイツ等を売ろうとした」
「卵を孵すだけ孵して、世話は他の者に任せきりの癖によくいいますよ」
「仕方あるまい、俺は忙しいんだ。 ソレにアイツ等だって酷いと思うぞ、俺が愛情込めて孵化させたのに、今では別の奴が一番だと言う……フィンだってそうじゃないか……俺よりお前に懐いて、今では俺を背に乗せようとすらしない」
「当然ですよ、私が懇切丁寧に面倒を見てきたんですから」
「もし、ソレを孵化させると言うなら、人に任せず自分で面倒を見て下さいね。 あぁ、後、魔物と判断した場合には、即処分しますから」
「幼い頃から手懐ければ、幻獣以上に良く働くかも……」
「そういって、怪我人を出した事を忘れたのですか……」
「やれやれ、怖いママだ……。 ほら早く出てこないと料理人に渡されてしまうぞ?」
そんな言葉すらユッタリと甘く囁いて見せる。
「誰がママですか!!」
「冗談だ。 オマエと夫婦になる気はない」
「本当シャレになりませんから、無暗に外で近寄らないでくださいよ。 世間では、どんな噂がたてられているかご存じですか?」
「あぁ、知っているさ。 ディルク・クラインは、ロイス・マクレガンを愛している。 まぁ、鬱陶しく娘を勧めてくる馬鹿ども達を避けるのには、ちょうどいい噂だ」
「勘弁してくださいこの変態野郎。 私は普通に人間の女性が好きなんですから。 アナタのような人間の女性より、幻獣が好きという変態とは違うのですよ」
「失礼だな。 オマエだってあの子達の美しさは知っているだろう」
そんな声を聞いて、私はショックだった。 なんだ……また、私は誰かの特別になることはできないのか、愛されることはないのかと。
母の胎内とは、こういうものかもしれない。
守られていると言う安心感があった。
痛みもない。
恐怖もない。
それでも……心は冷え冷えとしていた。
どうして助けにきてくれなかったの……父さま。 それは淡い希望だと知っていた。 父は母が一目惚れをした旅の冒険者、1夜ばかりの夢を見させてと願い、私を授かったのだと言う。
それが幸福か不幸化と言えば、母にとっては幸福だったのだろうと思う。
『アナタは私の宝物よ……アナタはアノ人に似てとても綺麗な子だわ。 あぁ、素敵、大好き』
私を見ながら、私の中の父を見ていた母を……あまり好きにはなれなかった。 私は、私を愛して欲しかったの!!
私は夢を見る。
『凄いわ姉様。 私と年が変わらないのに、魔法を使えるなんて。 将来は魔導士になられるの? 素敵だわ、お姉様。 私にも魔法を教えて?』
母が侯爵家に売られる前、ダイアナとの関係はそう険悪でなかったと記憶している。 そして、邪魔と言われ、無駄飯食いと呼ばれる以前があったこと、本当に屋敷のことを何もしていなかったにも関わらず、幼い頃の祖父はその本質を捻じ曲げるほどに優しく、叔父とその妻も、使用人達もよくしてくれていたを、忘れていた。
『余り、意識をして使ったことが無いの……、私にはどうすればできるのか、なんとなくわかるから、人に教えるのは難しいわ』
そう告げた時のダイアナの顔は、幼くも醜く歪んでいて……、そのあと、そのあとは……。
頭痛と共に思いうかぶ曖昧な記憶、それは血の赤と母の叫び、あの日から母は……いえ、全てが私に冷たくなった……。
どうして、忘れていたのでしょう。
忘れた記憶を思い出しても、私の孤独は深まるばかり……。
寂しい……。
お願い、誰か私を愛して。
祈りながら、私の意識は魔力に溶ける。
「早く出ておいで、待っているよ」
声が聞こえた。
甘く囁く男性の声。
優しい声が、孤独で震える私にぬくもりを与えてくれるような予感。
「とても綺麗だ。 君はどんな子なんだろうか」
ウットリとする声と口づけの音。 愛されているかのような幸福感に包まれ、私は考えるのを辞めた。
声が聞こえた。
それは夢の中のように甘く、愛される予感。
「可愛い子、美しい君はどんな姿をしているんだろうな」
「また、どこで拾ってきたんですか」
少しだけキツイ声が加わる。
だけど、そこには信頼があった。
甘い響きの声は言う。
「可愛いだろう? 貰ったんだ」
「はいはい、夕食時にはオムレツでも作らせましょう」
私の事をいっているのでしょうか?
「酷い奴だな」
「酷いのは誰ですか……うちは、幻獣店ではないんですよ」
「失礼な……俺はいつアイツ等を売ろうとした」
「卵を孵すだけ孵して、世話は他の者に任せきりの癖によくいいますよ」
「仕方あるまい、俺は忙しいんだ。 ソレにアイツ等だって酷いと思うぞ、俺が愛情込めて孵化させたのに、今では別の奴が一番だと言う……フィンだってそうじゃないか……俺よりお前に懐いて、今では俺を背に乗せようとすらしない」
「当然ですよ、私が懇切丁寧に面倒を見てきたんですから」
「もし、ソレを孵化させると言うなら、人に任せず自分で面倒を見て下さいね。 あぁ、後、魔物と判断した場合には、即処分しますから」
「幼い頃から手懐ければ、幻獣以上に良く働くかも……」
「そういって、怪我人を出した事を忘れたのですか……」
「やれやれ、怖いママだ……。 ほら早く出てこないと料理人に渡されてしまうぞ?」
そんな言葉すらユッタリと甘く囁いて見せる。
「誰がママですか!!」
「冗談だ。 オマエと夫婦になる気はない」
「本当シャレになりませんから、無暗に外で近寄らないでくださいよ。 世間では、どんな噂がたてられているかご存じですか?」
「あぁ、知っているさ。 ディルク・クラインは、ロイス・マクレガンを愛している。 まぁ、鬱陶しく娘を勧めてくる馬鹿ども達を避けるのには、ちょうどいい噂だ」
「勘弁してくださいこの変態野郎。 私は普通に人間の女性が好きなんですから。 アナタのような人間の女性より、幻獣が好きという変態とは違うのですよ」
「失礼だな。 オマエだってあの子達の美しさは知っているだろう」
そんな声を聞いて、私はショックだった。 なんだ……また、私は誰かの特別になることはできないのか、愛されることはないのかと。
1
お気に入りに追加
1,332
あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる