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物語
21.漂う毒のように 03
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「こんなの、良く無いわ」
ティアの見つめる瞳も声も、拒絶しているとは思えない。
「そうか……」
アルファの同意の言葉には納得なんて見られない。
切なげに見つめ、
甘く微笑みかけるだけ、
見つめあい動かないティアの唇をアルファは、人に良く慣らされたペットのように甘えるように舐め挙げ、優しく噛みつき行為は自体には止まる様子は無い。
ティアの言葉は無視されていた。 だが、優しく触れる唇はまるでティアの願いを叶えているように甘やかす。 湯舟に満たされていく湯によって浴室は温められていく。
頭がボーとするのは……気温のせい。
ティアは、自分の欲望を必死に否定していた。
それでも甘く唇を舐めるアルファの舌先は、この行為は決して間違いはないとでも言うように、頬に触れ、撫で、髪に指を通し抱き寄せ、深く深く唇を重ね口内へとアルファの舌先は、ティアの口内へと進められた。
熱のこもったアルファの舌は、ヌルリとティアの舌に絡められ、くすぐるように舐め、深く深く喰らうように唇を重ね舌先をチュッと吸い上げ甘く噛む。
ティアの頭はボンヤリと甘く思考が奪われ支配され、大切な事が霞に掻き消え、自分が特別の存在になったような気になってくる。
脳内に恍惚とし、懇願し、泣き啜りすがるイザベルが思い浮かんでは……自分のコレは恋心なのだから、彼女の行為とは違うのだと無意識の中でティア自身を納得させようとしていた。
「んっ、ぁ、あぁ……」
甘い声と共にティアの身体が震える。
抵抗とも言えない身じろぎ。
体裁だけの逃避。
柔らかく食む唇同士がユックリと離れる。
切ない瞳が見つめあう。
アルファは薄く笑い……試すように抱きしめる手の力を抜き、その背を指先で擽るように撫でおろしてくびれた腰を抱き寄せる。 頬を舐め耳元を舐め低く掠れる声で呟くのだ。
「好きだ」
甘いアルファの声が、ティアの脳裏をくすぐり切ない気持ちを促され、縋りつくようにティアはアルファの背にしがみ付き、水と血に濡れたティアの身体がアルファの服を濡らしていく。
「カワイイ……俺の特別」
否定も、喜びも示さず、甘い言葉でティアは誤魔化す。
「ジェフロアなんかに渡す気はない」
「ぁ、っん、ふぅっ……」
イヤイヤと首を振れば、アルファの片手がティアの頬に触れて熱く見つめる。
繰り返される口づけに、
交わされる唾液に、
いつの間にかアルファの瞳が赤から金色へと変化していた。
「俺がそんなに嫌か? 俺は、初めて会った時……ティアと共に生きたいと願うほどに……惚れたのに」
顔と顔が間近で、ソレ自体が口づけのようだった。
「そんなの、ジェフロアと一緒じゃない……。 女のために自分の一生を台無しにする。 馬鹿なの……」
泣きそうな瞳が、後悔のように、懺悔をするかのように苦し気にアルファを見つめる。
「台無しだなんて思わない。 思う訳が無い。 ジェフロアなんかと同じにするな、俺の人生を馬鹿にするな」
甘い声色で語り、もう1度口づけがされた。
「そんな……つもりは……」
アルファがティアの元に来たのは、もう5……6年前になるだろうか? 今でこそアルファは護衛に徹しているが、大公邸に来てからはティアが貴族社会に馴染めるよう教育係も行っていた。
ずっとティアはアルファを見つめていた。
ずっとアルファはティアを見守っていた。
庇護欲。
独占欲。
愛情。
同情。
アルファは、自分の思いがその全てだと言う事を自覚している。
甘く切なく見つめる瞳が向けられきた事を知っている。
その瞳に自己嫌悪が混ざるのも知っていたから気づかないふりをしてきた。
自分の気持ちが分からないほどに、色んな関わりを築いてきた。
だからアルファは想像が出来た。
イザベルに抱いているだろう恐怖。
ジェフロアに対する嫌悪の減少、同情の増加。
「ティア……」
敬称を省けば2人の距離感は本来のものと近づいていく。
「アルファ、これは不貞だわ……良く無い」
強い光を湛えたアルファの瞳は燃える欲情のように炎のように赤く燃え、沸き起こる興奮の意味を知らないティアは戸惑ってはいるが、心の何処かで望んでいた。
「必死なんでね。 好きでもないのに、こんな事をするほど酔狂じゃない」
白い腕にうっすらとついた傷。 何れも致命傷となるような傷はないが、それでもその数は多く血もジワジワと滲むように溢れ白い肌を染めていた。
アルファがティアの腕を取り口づけられれば、鈍い痛みにティアは眉間を寄せる。
「んっ……」
ティアの苦しそうなうめき声は、決して痛みに対するものだけでなく甘さが混ざっていた。
アルファは小さく意地悪く笑う。
ティアはアルファを自分のモノとして側に置くためのルールを決めていた。
彼を知ってはいけない。
本当の意味の特別にしてはいけない。
だからこそ……余計に特別になっていった。
侵害してはいけない特別な人。
アルファは何時だってティアを守ってくれたし、何よりも重視してくれている。 ソレは自分の一族の保護を代償に尽くしている者達と違う。 何もなくまっさらな状態でティアだけを守ってくれる存在。 それだけで十分だと、十分な愛情を得ているのだと……男女の間柄等考えないように、触れないようにしてきた。
嬉しい……
でも、コレは不貞だ。
いけない事だ……。
立場がある。
満たされない恋心。
気づく事さえ禁じ、誤魔化した。
だから余計にティアは、ジェフロアの女性関係に苛立った。
なぜ、アナタばかり自由なの?!
まったく自由では無かったのに……。
彼ばかりが何も考えずに異性との関係を深める事に不満を覚えた。
私は我慢をしているのに……。
あんな表情で……女性を抱きしめていたなんて知らなかった。
自己嫌悪を覚え……。
そして、イザベルと自分を重ねてしまう。
ジェフロアの苦痛にアルファを重ねた。
いくらジェフロアが聖女との間に関係を築いていても、ティアまでもが同じ事をしていい訳がない。 秘密の関係なら良いだろうと甘えて良いものでもない。 もし、王妃がこの不貞を知れば……なんて言うだろうか、どう付け入るだろうか?
「止めて!!」
ティアは我に返ったように、強く拒絶をしてみせたが、アルファは力強く抱き寄せる。
「逃がすつもりはない。 俺は……覚悟を決めた……」
甘く熱い声のまま唇が重ねられそうになったティアは喉を逃すように逃れようとしたが、アルファは追いかけるように、首筋を唇で撫でるように触れ、水で濡れた喉を舐めながら追い詰め、再び唇を奪い塞ぐ。
「んっ」
触れた唇は強く押し付け、ねっとりとした様子で舌先で唇を舐め、濡れた身体を温めるようにティアを抱きしめるアルファの瞳は金色に変化していた。
【↓にはアルファをイメージしたAIイラストがあります】
ティアの見つめる瞳も声も、拒絶しているとは思えない。
「そうか……」
アルファの同意の言葉には納得なんて見られない。
切なげに見つめ、
甘く微笑みかけるだけ、
見つめあい動かないティアの唇をアルファは、人に良く慣らされたペットのように甘えるように舐め挙げ、優しく噛みつき行為は自体には止まる様子は無い。
ティアの言葉は無視されていた。 だが、優しく触れる唇はまるでティアの願いを叶えているように甘やかす。 湯舟に満たされていく湯によって浴室は温められていく。
頭がボーとするのは……気温のせい。
ティアは、自分の欲望を必死に否定していた。
それでも甘く唇を舐めるアルファの舌先は、この行為は決して間違いはないとでも言うように、頬に触れ、撫で、髪に指を通し抱き寄せ、深く深く唇を重ね口内へとアルファの舌先は、ティアの口内へと進められた。
熱のこもったアルファの舌は、ヌルリとティアの舌に絡められ、くすぐるように舐め、深く深く喰らうように唇を重ね舌先をチュッと吸い上げ甘く噛む。
ティアの頭はボンヤリと甘く思考が奪われ支配され、大切な事が霞に掻き消え、自分が特別の存在になったような気になってくる。
脳内に恍惚とし、懇願し、泣き啜りすがるイザベルが思い浮かんでは……自分のコレは恋心なのだから、彼女の行為とは違うのだと無意識の中でティア自身を納得させようとしていた。
「んっ、ぁ、あぁ……」
甘い声と共にティアの身体が震える。
抵抗とも言えない身じろぎ。
体裁だけの逃避。
柔らかく食む唇同士がユックリと離れる。
切ない瞳が見つめあう。
アルファは薄く笑い……試すように抱きしめる手の力を抜き、その背を指先で擽るように撫でおろしてくびれた腰を抱き寄せる。 頬を舐め耳元を舐め低く掠れる声で呟くのだ。
「好きだ」
甘いアルファの声が、ティアの脳裏をくすぐり切ない気持ちを促され、縋りつくようにティアはアルファの背にしがみ付き、水と血に濡れたティアの身体がアルファの服を濡らしていく。
「カワイイ……俺の特別」
否定も、喜びも示さず、甘い言葉でティアは誤魔化す。
「ジェフロアなんかに渡す気はない」
「ぁ、っん、ふぅっ……」
イヤイヤと首を振れば、アルファの片手がティアの頬に触れて熱く見つめる。
繰り返される口づけに、
交わされる唾液に、
いつの間にかアルファの瞳が赤から金色へと変化していた。
「俺がそんなに嫌か? 俺は、初めて会った時……ティアと共に生きたいと願うほどに……惚れたのに」
顔と顔が間近で、ソレ自体が口づけのようだった。
「そんなの、ジェフロアと一緒じゃない……。 女のために自分の一生を台無しにする。 馬鹿なの……」
泣きそうな瞳が、後悔のように、懺悔をするかのように苦し気にアルファを見つめる。
「台無しだなんて思わない。 思う訳が無い。 ジェフロアなんかと同じにするな、俺の人生を馬鹿にするな」
甘い声色で語り、もう1度口づけがされた。
「そんな……つもりは……」
アルファがティアの元に来たのは、もう5……6年前になるだろうか? 今でこそアルファは護衛に徹しているが、大公邸に来てからはティアが貴族社会に馴染めるよう教育係も行っていた。
ずっとティアはアルファを見つめていた。
ずっとアルファはティアを見守っていた。
庇護欲。
独占欲。
愛情。
同情。
アルファは、自分の思いがその全てだと言う事を自覚している。
甘く切なく見つめる瞳が向けられきた事を知っている。
その瞳に自己嫌悪が混ざるのも知っていたから気づかないふりをしてきた。
自分の気持ちが分からないほどに、色んな関わりを築いてきた。
だからアルファは想像が出来た。
イザベルに抱いているだろう恐怖。
ジェフロアに対する嫌悪の減少、同情の増加。
「ティア……」
敬称を省けば2人の距離感は本来のものと近づいていく。
「アルファ、これは不貞だわ……良く無い」
強い光を湛えたアルファの瞳は燃える欲情のように炎のように赤く燃え、沸き起こる興奮の意味を知らないティアは戸惑ってはいるが、心の何処かで望んでいた。
「必死なんでね。 好きでもないのに、こんな事をするほど酔狂じゃない」
白い腕にうっすらとついた傷。 何れも致命傷となるような傷はないが、それでもその数は多く血もジワジワと滲むように溢れ白い肌を染めていた。
アルファがティアの腕を取り口づけられれば、鈍い痛みにティアは眉間を寄せる。
「んっ……」
ティアの苦しそうなうめき声は、決して痛みに対するものだけでなく甘さが混ざっていた。
アルファは小さく意地悪く笑う。
ティアはアルファを自分のモノとして側に置くためのルールを決めていた。
彼を知ってはいけない。
本当の意味の特別にしてはいけない。
だからこそ……余計に特別になっていった。
侵害してはいけない特別な人。
アルファは何時だってティアを守ってくれたし、何よりも重視してくれている。 ソレは自分の一族の保護を代償に尽くしている者達と違う。 何もなくまっさらな状態でティアだけを守ってくれる存在。 それだけで十分だと、十分な愛情を得ているのだと……男女の間柄等考えないように、触れないようにしてきた。
嬉しい……
でも、コレは不貞だ。
いけない事だ……。
立場がある。
満たされない恋心。
気づく事さえ禁じ、誤魔化した。
だから余計にティアは、ジェフロアの女性関係に苛立った。
なぜ、アナタばかり自由なの?!
まったく自由では無かったのに……。
彼ばかりが何も考えずに異性との関係を深める事に不満を覚えた。
私は我慢をしているのに……。
あんな表情で……女性を抱きしめていたなんて知らなかった。
自己嫌悪を覚え……。
そして、イザベルと自分を重ねてしまう。
ジェフロアの苦痛にアルファを重ねた。
いくらジェフロアが聖女との間に関係を築いていても、ティアまでもが同じ事をしていい訳がない。 秘密の関係なら良いだろうと甘えて良いものでもない。 もし、王妃がこの不貞を知れば……なんて言うだろうか、どう付け入るだろうか?
「止めて!!」
ティアは我に返ったように、強く拒絶をしてみせたが、アルファは力強く抱き寄せる。
「逃がすつもりはない。 俺は……覚悟を決めた……」
甘く熱い声のまま唇が重ねられそうになったティアは喉を逃すように逃れようとしたが、アルファは追いかけるように、首筋を唇で撫でるように触れ、水で濡れた喉を舐めながら追い詰め、再び唇を奪い塞ぐ。
「んっ」
触れた唇は強く押し付け、ねっとりとした様子で舌先で唇を舐め、濡れた身体を温めるようにティアを抱きしめるアルファの瞳は金色に変化していた。
【↓にはアルファをイメージしたAIイラストがあります】
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