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物語
14.収集された情報
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油断ならない……。
いえ、薬のせいとは言えそういう状況を招いたのは私自身……。
「手、止まってるぞ?」
なんて、素知らぬ風にアルファに言われ、ティアはぎろりと睨む。
「ガンマを呼んできて」
「ティア様を一人にするわけにはいかないだろう? 魔道具で済ませてくれ」
そう言って通信用魔道具を渡された。
少し何処かに行っていて欲しかったのになぁ~。 チラリとアルファを覗き見れば、アルファはニヤリと笑って見せるのだ。
「なに? 気になる?」
「気になりません!!」
ティアは正気の中で、アルファを始めて意識するのだった。
その日、ティアは諜報を専門とする隠れ魔導師ガンマとその部下である諜報部隊に情報を収集するよう命じるのだった。
それから10日後。
ティアの疑問に答えるべき、調査書類が次々と届き始めた。
大厄災のせいで、この国の庶民は信仰が高い。
庶民は!
大厄災の中でも神に祈る必要のない地位にある者達は、神殿の主張と拝金主義を嫌っていた。 しかし、王家と大公家の対立が噂となり、貴族が勝手には罰を作り始めた。
「こちらが今回命じられ集めた情報となります」
サラリとした銀色の髪を長く伸ばした紳士風男性、それがガンマだ。 彼は他の3人と違い大公である義父様よりも、パパ……実父の方に深く頭を下げる人であり、パパの実子である私にとっても良く尽くしてくれる。 彼の部下ともども。
「どうか、なさいましたか?」
ついジッと顔を見てしまえば、不愛想な顔に優美な微笑みが宿った。
「相変わらず、見た目だけはいいなぁ~って思ったのよ」
ぶっきらぼうに言えば、クスクスと笑いガンマは言う。
「それは、お褒め頂きありがとうございます」
「ちょっと待て!! 人が色々アピールしているのを無視しておいて、なぜ、他所の男を褒めるんだ?! そう言う、男を誑かす行為は良く無いと思うぞ?」
なんてアルファがぶつぶつと不満そうに言いながら、書類の束から顔を上げた。
「ぇ、まぁ……なんとなく身内的な気安さ? かしら」
「俺の方が、ティア様について長いよな!!」
「でも、彼、パパの知り合いですし」
「えぇ、私はティア様の幼少期にもお世話もさせて頂いております」
ニッコリ微笑むガンマとガルガル唸っているアルファが視線を交わし合う。
あぁ、日常だ……と安堵しているティアを見てデルタはクスクスと笑い。 ベータは酷い人だと肩を竦めていた。
だって……やっぱり急には……どう答えればいいのか分からなくて、ちょっと、難しいと言うか、どうしていいのか分からないんだもの。
「それは横に置きましょう」
「何が横に置かれたのか分からないが、一旦戻して一度ちゃんと話し合おうか?」
と言うアルファがガンマに首根っこ掴まれ、ソファに抑え込まれた。 ガンマの細身の体の何処にそんな力があるのかと言えば、そういう魔術を組み込んだ魔道具を装備しているのだ。
調査結果。
王宮内では現在中毒症状を持つ魔法薬が多く利用されている。
文官、武官、司法官、大臣……様々な地位にある者達が薬漬けになっている状態で、その薬は聖女の朝の祈りの後に薬が渡されている。
そして継続的に薬をしている人は、奇妙な幸福感を覚え聖女により信仰と愛を向ける。
運悪く、薬を服用してしまった者もいる。
単発による薬の服用は、薬が抜ける際に地の底に落ちるような不安感に苛まれ、同時に常識を超えた怪力が発揮され、狂気的な言動と共に破壊行為を行うそうだ。
それは、誰が見ても正常ではない。
それでも一族の当主となれば秘密のうちに何とかしたいと誰もが考えるだろう……そのため他家との情報交換など行われる事なく
“神の意志に背いたため獣に堕とされた”
等と言う神殿の語りを信じ、神殿や聖女に助けを求める。 だが、助けには対価が必要とされる。 それは金品であったり、権力的な援助であったり。 それが提供できない場合、当主を殺害し、或いは無事に中毒症状を乗りきって元に戻っているらしい。
「そう言えば、聖女派の人間にオカシな死が続いているって言っていたよな」
そう言いながらアルファがティアの横に座れば、ティアはヒョイとガンマにもちあげられ別の席に移動させられた。 もう、なんだか余計な事を考えずに済んで楽だから、コレでいいわ等と思うティアと……ストレスを増していくアルファの姿に、デルタは声を殺して笑うが気にしたら負けである。
「そういえば、そんな事、言っていましたね……」
「ソレに関係する書類は、コチラではないでしょうか?」
聖女派の中枢とされる人が死ぬ。
それは聖女派にとって損害でしかない。
そう思っていた。
だから、我が家が、私が罪を着せられ不利となるため、対策が必要だと考えていた。 だけれど、私に不利になる事をジェフロアやイザベルが語るだろうか?
ガンマに渡される書類を見れば、理由が分かった。
遺産の全てをイザベルに渡すと書かれていた。
「コレは無効よね? 遺産を、イザベルに渡すと遺言されていたとしても、貴族の財産は家名について回るのですから」
「だな……。 個人所有の装飾品に至るまで、次期当主のものだ。 ソレを踏まえて聖女に財産をやりたいと言うなら、生きているうちにしないと難しいだろう。 まぁ、他の国はしらないけど」
とアルファが、他の3人を見た。
「僕の所は、遺言書優先でした」
「私の所は、魔導師の子弟間での相続優先ですね」
「私の所も、この国と同様の仕組みをとっておりましたわ」
と言う反応に、私はアルファを見た。
「ぇ? あぁ、俺のところもこの国と一緒だな。 まぁ、それは兎も角、魔法薬の認可はされやすいだろうが……。 この状況での認可は状況を悪化させるんじゃないのか?」
「そうですねぇ……。 でも、やはり、一度認可させるのが良いと思います。 現行法では中和剤を服用させる事も罪になりますから」
「難しい問題ですね」
「一度、大公に伺う方が良いでしょう」
「そうですね……。 コレは私達だけで判断していい事ではありません」
「では、1度義父様に伺いましょう」
【↓にはガンマをイメージしたAIイラストがあります】
いえ、薬のせいとは言えそういう状況を招いたのは私自身……。
「手、止まってるぞ?」
なんて、素知らぬ風にアルファに言われ、ティアはぎろりと睨む。
「ガンマを呼んできて」
「ティア様を一人にするわけにはいかないだろう? 魔道具で済ませてくれ」
そう言って通信用魔道具を渡された。
少し何処かに行っていて欲しかったのになぁ~。 チラリとアルファを覗き見れば、アルファはニヤリと笑って見せるのだ。
「なに? 気になる?」
「気になりません!!」
ティアは正気の中で、アルファを始めて意識するのだった。
その日、ティアは諜報を専門とする隠れ魔導師ガンマとその部下である諜報部隊に情報を収集するよう命じるのだった。
それから10日後。
ティアの疑問に答えるべき、調査書類が次々と届き始めた。
大厄災のせいで、この国の庶民は信仰が高い。
庶民は!
大厄災の中でも神に祈る必要のない地位にある者達は、神殿の主張と拝金主義を嫌っていた。 しかし、王家と大公家の対立が噂となり、貴族が勝手には罰を作り始めた。
「こちらが今回命じられ集めた情報となります」
サラリとした銀色の髪を長く伸ばした紳士風男性、それがガンマだ。 彼は他の3人と違い大公である義父様よりも、パパ……実父の方に深く頭を下げる人であり、パパの実子である私にとっても良く尽くしてくれる。 彼の部下ともども。
「どうか、なさいましたか?」
ついジッと顔を見てしまえば、不愛想な顔に優美な微笑みが宿った。
「相変わらず、見た目だけはいいなぁ~って思ったのよ」
ぶっきらぼうに言えば、クスクスと笑いガンマは言う。
「それは、お褒め頂きありがとうございます」
「ちょっと待て!! 人が色々アピールしているのを無視しておいて、なぜ、他所の男を褒めるんだ?! そう言う、男を誑かす行為は良く無いと思うぞ?」
なんてアルファがぶつぶつと不満そうに言いながら、書類の束から顔を上げた。
「ぇ、まぁ……なんとなく身内的な気安さ? かしら」
「俺の方が、ティア様について長いよな!!」
「でも、彼、パパの知り合いですし」
「えぇ、私はティア様の幼少期にもお世話もさせて頂いております」
ニッコリ微笑むガンマとガルガル唸っているアルファが視線を交わし合う。
あぁ、日常だ……と安堵しているティアを見てデルタはクスクスと笑い。 ベータは酷い人だと肩を竦めていた。
だって……やっぱり急には……どう答えればいいのか分からなくて、ちょっと、難しいと言うか、どうしていいのか分からないんだもの。
「それは横に置きましょう」
「何が横に置かれたのか分からないが、一旦戻して一度ちゃんと話し合おうか?」
と言うアルファがガンマに首根っこ掴まれ、ソファに抑え込まれた。 ガンマの細身の体の何処にそんな力があるのかと言えば、そういう魔術を組み込んだ魔道具を装備しているのだ。
調査結果。
王宮内では現在中毒症状を持つ魔法薬が多く利用されている。
文官、武官、司法官、大臣……様々な地位にある者達が薬漬けになっている状態で、その薬は聖女の朝の祈りの後に薬が渡されている。
そして継続的に薬をしている人は、奇妙な幸福感を覚え聖女により信仰と愛を向ける。
運悪く、薬を服用してしまった者もいる。
単発による薬の服用は、薬が抜ける際に地の底に落ちるような不安感に苛まれ、同時に常識を超えた怪力が発揮され、狂気的な言動と共に破壊行為を行うそうだ。
それは、誰が見ても正常ではない。
それでも一族の当主となれば秘密のうちに何とかしたいと誰もが考えるだろう……そのため他家との情報交換など行われる事なく
“神の意志に背いたため獣に堕とされた”
等と言う神殿の語りを信じ、神殿や聖女に助けを求める。 だが、助けには対価が必要とされる。 それは金品であったり、権力的な援助であったり。 それが提供できない場合、当主を殺害し、或いは無事に中毒症状を乗りきって元に戻っているらしい。
「そう言えば、聖女派の人間にオカシな死が続いているって言っていたよな」
そう言いながらアルファがティアの横に座れば、ティアはヒョイとガンマにもちあげられ別の席に移動させられた。 もう、なんだか余計な事を考えずに済んで楽だから、コレでいいわ等と思うティアと……ストレスを増していくアルファの姿に、デルタは声を殺して笑うが気にしたら負けである。
「そういえば、そんな事、言っていましたね……」
「ソレに関係する書類は、コチラではないでしょうか?」
聖女派の中枢とされる人が死ぬ。
それは聖女派にとって損害でしかない。
そう思っていた。
だから、我が家が、私が罪を着せられ不利となるため、対策が必要だと考えていた。 だけれど、私に不利になる事をジェフロアやイザベルが語るだろうか?
ガンマに渡される書類を見れば、理由が分かった。
遺産の全てをイザベルに渡すと書かれていた。
「コレは無効よね? 遺産を、イザベルに渡すと遺言されていたとしても、貴族の財産は家名について回るのですから」
「だな……。 個人所有の装飾品に至るまで、次期当主のものだ。 ソレを踏まえて聖女に財産をやりたいと言うなら、生きているうちにしないと難しいだろう。 まぁ、他の国はしらないけど」
とアルファが、他の3人を見た。
「僕の所は、遺言書優先でした」
「私の所は、魔導師の子弟間での相続優先ですね」
「私の所も、この国と同様の仕組みをとっておりましたわ」
と言う反応に、私はアルファを見た。
「ぇ? あぁ、俺のところもこの国と一緒だな。 まぁ、それは兎も角、魔法薬の認可はされやすいだろうが……。 この状況での認可は状況を悪化させるんじゃないのか?」
「そうですねぇ……。 でも、やはり、一度認可させるのが良いと思います。 現行法では中和剤を服用させる事も罪になりますから」
「難しい問題ですね」
「一度、大公に伺う方が良いでしょう」
「そうですね……。 コレは私達だけで判断していい事ではありません」
「では、1度義父様に伺いましょう」
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