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12.未だ覚悟はできないままに 01

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 私の心の中の叫びは虚しく心の中をぐるぐる廻る。

 良識人である自分が悲しい。

 およそ……7年ぶりでしょうか? 王宮の陛下の寝室に訪れるのは……。 護衛と言われたはずなのに……前回の茶番(クジには私の名前しかなかったこと)の種明かしをされた挙句、キッチリと風呂で身体を磨かれ、美しくも肌触りの良い夜着とガウンを着せられ、まるで護送でもされているかのように、前後を侍女に囲まれ歩けば、不安しかない……。

 無理やりは、ちょっと……急のことに覚悟が……。

 陛下の扉の前。

「お嬢様、検討を祈ります」

 自分付きの侍女が恭しく頭を下げれば、なんだか裏切られたかのような気分になったが、自分以外の全員が陛下の好意を知っていたのだと聞けば、責めるのはお門違いなのだと、鈍い自分の方が問題だったのだと思わずにいられない。

 私は……今日、陛下との間に新しい関係の構築をしなければいけない。 まぁ、別にソレはどうでもよいのですけどね……問題は関係が行きつく先です。

 既に、数度、私は私の中で陛下との関係性を変えてきた。

 初めて会った時。
 前国王夫婦が亡くなられた時。
 彼が国王の座に就いた時。
 夜の王宮に出入りしなくなった時。

 陛下の中の私が、どう変化をしていたかは分からないけれど、私はその都度陛下を大切だと守り支えるべき相手なのだと、それだけを思いながら立場を変えてきたのだから。

 だけど今回は、どこまでも想定外で……。

「確かに検討が必要ね」

 私はうつむき、気づけば自嘲的に口元を歪ませ笑っていた。

「お嬢様、お嬢様が陛下のお部屋にお入りになった後、御用聞きに2人の侍女と護衛が扉の前に残ります。 何かあれば、その者達に申し付けください」

 私は軽くうなずいてみせ、そして部屋の扉をノックした。 その瞬間に、通信用の魔法陣が扉に出現し、ソレを見た侍女達は数歩下がる。

「ヨミか?」
「はい」
「入りたまえ」
「失礼します」

 部屋に入ると同時に、私の腕をつかんだ陛下は私を抱き寄せようとした。 反射的に投げ飛ばしそうになるのを耐え、私は陛下の腕の中に納まる。

「陛下、これは……」

 どういうことなのかと聞こうとする前に、熱く耳元でささやかれた。

「愛しているよ」

 陛下からの愛の言葉に耳から首筋まで、ゾクゾクとした感触が走る。

「やっ……陛下……」

 何を言えばいいのか分からなかった。

 おやめください?
 何を考えておいでなのですか?
 どうしてこのようなことを?

 どれも違う……。 良い言葉が思い浮かばなかった。

「陛下……」

 私はユックリと振り返れば、

「そんな顔をしないで」

 目元に口づけられ私は硬直した。
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