呪われた狼皇子と出来損ないの侯爵令嬢

迷い人

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07.

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「アイシャ?」

 腕の中で力を失い意識を閉ざしたアイシャの胸に耳を押し当て、鼓動の音に安堵し大きく息をついたマキシは、アイシャに楽な態勢をとらせベッドに眠らせ、そして眠りの邪魔をするかのように抱きしめた。

 そうやって触れるだけで、むくむくと雄が欲望をもたげる。 流石に余り丈夫ではない子にこれ以上無理をさせるわけにもいかず。

 身体が触れあっていれば、そのまま襲ってしまいそうで、溜息と共に部屋を後にすることを決意した。 万が一を考え、彼のガウンが置かれていたのは、彼の呪いを知るものの全ての願いと言えただろう。

「……無茶をさせてしまった。 身を整えさせ、必要だったら医師を呼んでやってくれ」

 そう扉を開けば、護衛を務めている彼の部下と、乳母である女は涙を流しだす。

「殿下!!」

「騒ぐな、起きる!」





 目を覚ませば、側に感じるモフモフがなく、数日ぶりに一人だけの朝を迎えてアイシャは寂しいと思った。

「おはようございます。 アイシャ様」

 なんだかご機嫌な様子のノーラに、一人が寂しいのだと不安そうな顔を向ければ、ノーラの表情は一気に暗くなっていく。 どうかしたのかと思っていたが、アイシャにとって優先すべきはモフモフで、

「狼さんは? 狼さんがいませんの」

「ぇ、あぁ、殿下は……これ以上アイシャ様に無理をさせてはいけないと、別の部屋でお休みになられております」

「無理?」

 朝食の時間だと立ち上がれば、身体のアチコチが痛かった。 そして薄手のガウンから覗き見える身体のアチコチに情事の跡が残されていた。

「ぇ、ぁ……」

 悲鳴にならない、悲鳴と共に布団の中に戻って行けば、そのまま寝込むことになる。 恥ずかしい……。 寝込みたかった。 寝て起きればコレは? アレは? 夢だったことにならないだろうかと。

 喉が渇き目を覚ます。

「何か、食べる事ができるか?」

 ユッタリとしたシャツに身を包んだ体格の良い黒髪の男性。 に、首を傾げる。 手を伸ばせば、抱き上げられ、抱きしめられた。

「しようか?」

「ぇ? ゃぁああああ!!」

「よし、しよう」

 ベッドの上に押し倒され、大笑いされた。

「狼さんは意地悪だ」

「狼さんは、優しいぞ」

 頬を長く太い指がくすぐるように触れ撫でてくる。 その指に口づければ、狼さんの眉間が寄せられた。 指先が唇を撫でてきて、緩く開いた唇の中に指が入って来て、舌を撫でてくる。

「んっ、ふっ」

 チュッと頬に口づけられる。

「狼さんは、狼さんにもうならないの?」

「狼さんは、愛する人と結ばれたことで呪いがとけましたとさ」



 それから3日の後、アイシャの熱が下がったのを確認したのを見計らい、皇帝陛下に第三皇子が人間に戻った事が報告された。 報告と共に祝いだと、大きな花束と菓子を持ち、皇帝陛下は夕食の席にやって来た。

「おめでとう!! 我が息子よ!!」

 陛下は自分に良く似た息子を抱きしめ、抱きしめた途端、第三皇子マキシは狼に戻った。



「……アイシャ君、息子のために側にいてくれないだろうか?」

 シュンとする陛下は、狼さんと似ているなぁ~と思った。 人の姿でも寄り添い、ことあるごとに愛していると告げ続けた狼さん。 卑下する暇もないほどに愛を告げた狼さん。

 だから、私は躊躇いなく返事をした。

「はい!!」



 おわり
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