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21.調子に乗ったようです
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袋のような面を脱ぐ陛下。
その中身は、腐った肉の塊のようで、巨大で無数のイボを持つ蛙の背が首から上に無数に張り付いているかのようだった。 頭部のボコりとした肉の隙間から白い毛が跳ねているのが奇妙な愛嬌をかもしだして……いるか!!
いや、流石にコレは心臓に悪い。
とはいえ、今更引けるようなものでもない。 顔面の蛙、いや肉が腐り落ちれば赤ん坊のような肌が覗き見えた。 繰り返される再生と腐敗。 陛下のぼこぼことした肉の塊としかいいようのない手が足に伸ばされる。 濃い生命エネルギーを含んだ私の黄金の血に腐敗した肉の塊が触れれば、腐敗した肉が急激な乾燥と共に粉となり消えていった。 そして黄金の血は、赤い血へ……ごく一般的な血の色へと変化する。
ポタリと一滴の血が流れ落ちそうになる。
「陛下……、小鳥ちゃんの力、1滴たりとも無駄にしちゃだめよ」
そう告げるナルサスの声は、掠れ苦しそうにすら聞こえる。 どう考えてもこの状況で最も苦しいのは私だと思うのだけれど、モイラは泣いていた。 何が悲しいのだろうか?
陛下はエネルギーが失われた赤い血をブニブニとした手ですくいとれば、わずかに煙が昇り消えた。 赤い血がエネルギーとして枯渇した血というわけではなく、あくまでも一般的な量のエネルギーしか備えてないと言うに過ぎない。
手ですくいとった血を舐めようと顔に近づければ、分厚い腐敗した肉が邪魔をして口を開くことすらできないらしい。 笑ってはいけないのに笑ってしまいそうで危険だ。
「うっうっ、うっ、ううっ……」
陛下は奇妙な音をたてながら、顔をかきむしりだす。 腐敗した肉を剥いでいるのだ。 剥き出しになる顔の筋と骨。
流石に引くわぁ……。
当然そんな感情のままに、思わずテーブルの上を後ずさった。
言い訳させてもらうなら、その外見に引いたのではなく、その行為に引いたのだと正確に伝えたいが、足を掴まれ引っ張られれば、流石にギョッとし逃げたくなるのも仕方ないだろう。
「へ、陛下?!」
いや、もうここまで来ると、ナルサスとモイラが、これが陛下だと言っているだけで、化け物を眼前に置き、嫌がる私を楽しんでいるのでは? 等とすら疑いたくなる。
これが、この国で一番偉い人??
軽々と片足が持ち上げられ、口であろう場所が私に触れる。 ブニブニとした濡れたものが足を舐めているのが分かった。 流石に怖いしキモチワルイんだけど!! いや、直接舐めるまでは想像していた。 大地の民と共に生きた私にとって舐めるとか舐められるとか、それほど難易度の高い行為ではない。 まぁ、獣性が少ない者は抵抗を感じるようだが、私はソレに抵抗を感じたことは無かった。 今までは……。
これは、ちょっと別だろう?
「ぇ、ちょ、ま、まって、ま、マルス!!」
思わず、反射的に元婚約者の名を呼んだ、その瞬間、太ももに牙が食い込む。
「っ、あぁああぁっぁっぁぁあ」
私は慌てて口元を塞いだ。
最初から痛みはなかった。
皮膚を食い破られた衝撃に驚いたに過ぎない。
そして、ザワリとした皮膚の感触から、奇妙な感覚が込み上げてきた。 下腹部に感じる痺れと、ジワリと濡れる下着の感触がわかった。
この年でおもらししてしまうなんて!!
ボロボロと泣き出してしまった。
「も、もぅいやぁあああ」
視線を向けて助けを求めれば、茫然と見つめていた2人は慌てて陛下を止めようと駆け寄る。
「陛下、もうお辞めになってください!」
顔の皮膚が再生され、服の中では腐った肉がはがれ落ちて服の中に落ちており、閉ざされた場所でブニブニと動いているようだった。 ソレにイラついたのだろう陛下は服を脱ぎ、体からはがれた肉を床の上に落としていく。
「エリス様、大丈夫です。 殿下は意味もなく人を傷つけることはしません」
いや、それは救いの言葉になっていない! 今は、エネルギー摂取と言う意味を持っているんだから!! 違う、そうじゃない。 そうじゃないんだ。
「モイラ、モイラ、おもらしした!! お風呂入りたい、下着替えたい」
「……」
「分かっているわよ! この年でっていうんでしょ。 でも、ビックリしたんだから仕方がないじゃない!」
「い、いえ……」
モイラは顔を背けるが、私はと言えば助けを求めるようにズリズリと這い、モイラのいるテーブルの端の方まで移動していた。 だが、未だテーブルの上にいた私は、足を引っ張られ軽く引き戻されてしまう。 長い舌が私の足を這う。 流れ肌を伝う血を丁寧に舐められ、その舌は自ら傷つけた傷へと直接舌を這わせようとしたのだろう。 停止していた。
私の高い治癒力はいつまでも傷つくことを許容することはなく、そう時間を立たずに回復してしまうのだ。
「身体は久しぶりに人の形を取り戻しましたが……臭い食事ばかりをとってきたせいでしょうかねぇ。 この香しさに我慢できません」
陛下はどこか言い訳? 説明のような口調と同時に私の足を掴み持ち上げようとしてきた。 私はテーブルの端を抱え必死に抵抗をする訳だが、スカートが腰の部分までめくれ上げられる。
「ひゃぁ、ちょ、ま、待って!! 待ってよ!!」
「気にする必要等ありませんよ」
ショーツの上から舌が這ったかと思えば、僅かに下着がずらされジュルリと口内で唾液が音を立てていた。
陛下の背後に真顔で立つナルサスが、凄い勢いで、重たいサイドテーブルを振り下ろせば、がたっと音を立て陛下は倒れた。
ナルサスは笑う。
「陛下は寛容で、お優しい方ですから」
その中身は、腐った肉の塊のようで、巨大で無数のイボを持つ蛙の背が首から上に無数に張り付いているかのようだった。 頭部のボコりとした肉の隙間から白い毛が跳ねているのが奇妙な愛嬌をかもしだして……いるか!!
いや、流石にコレは心臓に悪い。
とはいえ、今更引けるようなものでもない。 顔面の蛙、いや肉が腐り落ちれば赤ん坊のような肌が覗き見えた。 繰り返される再生と腐敗。 陛下のぼこぼことした肉の塊としかいいようのない手が足に伸ばされる。 濃い生命エネルギーを含んだ私の黄金の血に腐敗した肉の塊が触れれば、腐敗した肉が急激な乾燥と共に粉となり消えていった。 そして黄金の血は、赤い血へ……ごく一般的な血の色へと変化する。
ポタリと一滴の血が流れ落ちそうになる。
「陛下……、小鳥ちゃんの力、1滴たりとも無駄にしちゃだめよ」
そう告げるナルサスの声は、掠れ苦しそうにすら聞こえる。 どう考えてもこの状況で最も苦しいのは私だと思うのだけれど、モイラは泣いていた。 何が悲しいのだろうか?
陛下はエネルギーが失われた赤い血をブニブニとした手ですくいとれば、わずかに煙が昇り消えた。 赤い血がエネルギーとして枯渇した血というわけではなく、あくまでも一般的な量のエネルギーしか備えてないと言うに過ぎない。
手ですくいとった血を舐めようと顔に近づければ、分厚い腐敗した肉が邪魔をして口を開くことすらできないらしい。 笑ってはいけないのに笑ってしまいそうで危険だ。
「うっうっ、うっ、ううっ……」
陛下は奇妙な音をたてながら、顔をかきむしりだす。 腐敗した肉を剥いでいるのだ。 剥き出しになる顔の筋と骨。
流石に引くわぁ……。
当然そんな感情のままに、思わずテーブルの上を後ずさった。
言い訳させてもらうなら、その外見に引いたのではなく、その行為に引いたのだと正確に伝えたいが、足を掴まれ引っ張られれば、流石にギョッとし逃げたくなるのも仕方ないだろう。
「へ、陛下?!」
いや、もうここまで来ると、ナルサスとモイラが、これが陛下だと言っているだけで、化け物を眼前に置き、嫌がる私を楽しんでいるのでは? 等とすら疑いたくなる。
これが、この国で一番偉い人??
軽々と片足が持ち上げられ、口であろう場所が私に触れる。 ブニブニとした濡れたものが足を舐めているのが分かった。 流石に怖いしキモチワルイんだけど!! いや、直接舐めるまでは想像していた。 大地の民と共に生きた私にとって舐めるとか舐められるとか、それほど難易度の高い行為ではない。 まぁ、獣性が少ない者は抵抗を感じるようだが、私はソレに抵抗を感じたことは無かった。 今までは……。
これは、ちょっと別だろう?
「ぇ、ちょ、ま、まって、ま、マルス!!」
思わず、反射的に元婚約者の名を呼んだ、その瞬間、太ももに牙が食い込む。
「っ、あぁああぁっぁっぁぁあ」
私は慌てて口元を塞いだ。
最初から痛みはなかった。
皮膚を食い破られた衝撃に驚いたに過ぎない。
そして、ザワリとした皮膚の感触から、奇妙な感覚が込み上げてきた。 下腹部に感じる痺れと、ジワリと濡れる下着の感触がわかった。
この年でおもらししてしまうなんて!!
ボロボロと泣き出してしまった。
「も、もぅいやぁあああ」
視線を向けて助けを求めれば、茫然と見つめていた2人は慌てて陛下を止めようと駆け寄る。
「陛下、もうお辞めになってください!」
顔の皮膚が再生され、服の中では腐った肉がはがれ落ちて服の中に落ちており、閉ざされた場所でブニブニと動いているようだった。 ソレにイラついたのだろう陛下は服を脱ぎ、体からはがれた肉を床の上に落としていく。
「エリス様、大丈夫です。 殿下は意味もなく人を傷つけることはしません」
いや、それは救いの言葉になっていない! 今は、エネルギー摂取と言う意味を持っているんだから!! 違う、そうじゃない。 そうじゃないんだ。
「モイラ、モイラ、おもらしした!! お風呂入りたい、下着替えたい」
「……」
「分かっているわよ! この年でっていうんでしょ。 でも、ビックリしたんだから仕方がないじゃない!」
「い、いえ……」
モイラは顔を背けるが、私はと言えば助けを求めるようにズリズリと這い、モイラのいるテーブルの端の方まで移動していた。 だが、未だテーブルの上にいた私は、足を引っ張られ軽く引き戻されてしまう。 長い舌が私の足を這う。 流れ肌を伝う血を丁寧に舐められ、その舌は自ら傷つけた傷へと直接舌を這わせようとしたのだろう。 停止していた。
私の高い治癒力はいつまでも傷つくことを許容することはなく、そう時間を立たずに回復してしまうのだ。
「身体は久しぶりに人の形を取り戻しましたが……臭い食事ばかりをとってきたせいでしょうかねぇ。 この香しさに我慢できません」
陛下はどこか言い訳? 説明のような口調と同時に私の足を掴み持ち上げようとしてきた。 私はテーブルの端を抱え必死に抵抗をする訳だが、スカートが腰の部分までめくれ上げられる。
「ひゃぁ、ちょ、ま、待って!! 待ってよ!!」
「気にする必要等ありませんよ」
ショーツの上から舌が這ったかと思えば、僅かに下着がずらされジュルリと口内で唾液が音を立てていた。
陛下の背後に真顔で立つナルサスが、凄い勢いで、重たいサイドテーブルを振り下ろせば、がたっと音を立て陛下は倒れた。
ナルサスは笑う。
「陛下は寛容で、お優しい方ですから」
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