66 / 75
07
65.原因は……
しおりを挟む
私達は昨日いたシグルド様の隠れ家(?)へと向かう事にした。
「隠密の魔法を使います」
血の足跡が気になるが、その移動は早く足跡を消す余裕はない。 私は竜巻を眺めて、痕跡を完全に消してしまえるように調整する。
竜巻は、雷と刃を孕ませ……あぁ、そうだ……燃やしてしまった方が……。
頭の中は朦朧としていた。 いつもであれば竜巻の範囲は限定できても、火は限定出来ないからと、入り組んだ建物で使おう等と考える事はない。
だけど、私が何かするよりも早く、既にさっきまでいた屋敷は、火を燃え上がらせていた。
蝋燭の炎を使い、薬をあぶり、吸引していた者達がいたのだから、決してオカシイものではないが……。 逃げたものがいるのではないかと心配になる。
竜巻の速さを……。 人を逃がして、シグルド様の立場を不利なものにするわけにはいかない……。
幼い頃から染みついた思考が、違和感を覚える事無く行動させていた。
【シグルド・カール・テン・ホルトを病める時も、健やかな時も、その身に襲う試練支え、寄り添い、共にある事を神前にて誓います】
神の前の誓いは、今はもう自分だけのものだけど……。
ボンヤリと、意識を失いそうになっている私に、シグルド様が声をかける。
『魔法使い?』
「そうですよ」
『若いのに術も使えるのか、頑張っているんだな』
凄く感心したように言われ、微妙な気分になる。 何しろ、この人のために私は生まれた時から、魔法を刻まれていたのだから……。
「えへっへへへへ、えっと、そう、なるのかしら?」
『治癒の魔法が使えるなら、隠密よりも自分のケガを治す事を優先しろ』
「それは、自動回復が常に施してあるので大丈夫です。 それより、コレはどういう事だったのでしょうか?」
今回、私が知らない裏で何が起きていたのか? シグルド様が語ってくれた事実はこうだった。
オークランドの民の配分は、こんな感じ。
2割の王族と貴族階級
8割の奴隷階級
そこには絶対的な力の差と差別意識と不満があったそうだ。
奴隷階級の者は、力仕事として、娯楽として、イジメの一環として獣の姿を強いられていたと言う。 何より日常生活ですら、彼等は耳と尾を出して居なければいけない。 人ではなく獣なのだからと強制されていたそうだ。 ルールを守らなければ、当然のように厳しい暴力が振るわれる。
オークランド民は、このような背景があり心理的に獣の姿を嫌うのだと言う。
そして、この差別的意識が反乱をもたらした。
後日調べて明らかになる事実が1つある。
帝都内にあるルドリュ伯爵宅で使用人として働いていた領民や森の民は、5年前の移住の際に全員領地へと移転しており、帝都屋敷の管理は人材派遣登録所に任せていた。
この留守期間を狙って、オークランドの奴隷仲間に頼られたランバールが、屋敷を勝手に拠点として使わせていたらしいのだ。
拠点を定め大量に入ってきたオークランドの民(奴)は、皇子達に接触し忠誠を誓い、彼等の騎士となり、力を振るう事を約束した。
ここで、
【第一皇子 vs 第二・第三皇子】
この、勢力図が変動したと言う話だ。
オークランドの上位階級に対して行われる反乱に、第二・第三皇子が陰ながら武器・防具・食料などを提供し反乱に知恵を貸す事で、オークランドの勢力図は変動。 第二・第三皇子の支援に対抗するため、人材がシグルド様に提供されたと言う話だった。
シグルド様の元に訪れたオークランドの民は貴族階級。 実質ハーフであるシグルド様は見下されているため余り良い関係ではないと言う話だ。 それでも利害関係を利用し、上手く使っていたが、信用はしていないと言う話だった。
だから、色々遮断機能を持つ屋敷に移り住んだそうだ。
なんか、想像していたのと、と言うか……知っていた頃よりもずっと苦労が増えているんだなぁ……とかボンヤリとする思考の中で考えていた。
「隠密の魔法を使います」
血の足跡が気になるが、その移動は早く足跡を消す余裕はない。 私は竜巻を眺めて、痕跡を完全に消してしまえるように調整する。
竜巻は、雷と刃を孕ませ……あぁ、そうだ……燃やしてしまった方が……。
頭の中は朦朧としていた。 いつもであれば竜巻の範囲は限定できても、火は限定出来ないからと、入り組んだ建物で使おう等と考える事はない。
だけど、私が何かするよりも早く、既にさっきまでいた屋敷は、火を燃え上がらせていた。
蝋燭の炎を使い、薬をあぶり、吸引していた者達がいたのだから、決してオカシイものではないが……。 逃げたものがいるのではないかと心配になる。
竜巻の速さを……。 人を逃がして、シグルド様の立場を不利なものにするわけにはいかない……。
幼い頃から染みついた思考が、違和感を覚える事無く行動させていた。
【シグルド・カール・テン・ホルトを病める時も、健やかな時も、その身に襲う試練支え、寄り添い、共にある事を神前にて誓います】
神の前の誓いは、今はもう自分だけのものだけど……。
ボンヤリと、意識を失いそうになっている私に、シグルド様が声をかける。
『魔法使い?』
「そうですよ」
『若いのに術も使えるのか、頑張っているんだな』
凄く感心したように言われ、微妙な気分になる。 何しろ、この人のために私は生まれた時から、魔法を刻まれていたのだから……。
「えへっへへへへ、えっと、そう、なるのかしら?」
『治癒の魔法が使えるなら、隠密よりも自分のケガを治す事を優先しろ』
「それは、自動回復が常に施してあるので大丈夫です。 それより、コレはどういう事だったのでしょうか?」
今回、私が知らない裏で何が起きていたのか? シグルド様が語ってくれた事実はこうだった。
オークランドの民の配分は、こんな感じ。
2割の王族と貴族階級
8割の奴隷階級
そこには絶対的な力の差と差別意識と不満があったそうだ。
奴隷階級の者は、力仕事として、娯楽として、イジメの一環として獣の姿を強いられていたと言う。 何より日常生活ですら、彼等は耳と尾を出して居なければいけない。 人ではなく獣なのだからと強制されていたそうだ。 ルールを守らなければ、当然のように厳しい暴力が振るわれる。
オークランド民は、このような背景があり心理的に獣の姿を嫌うのだと言う。
そして、この差別的意識が反乱をもたらした。
後日調べて明らかになる事実が1つある。
帝都内にあるルドリュ伯爵宅で使用人として働いていた領民や森の民は、5年前の移住の際に全員領地へと移転しており、帝都屋敷の管理は人材派遣登録所に任せていた。
この留守期間を狙って、オークランドの奴隷仲間に頼られたランバールが、屋敷を勝手に拠点として使わせていたらしいのだ。
拠点を定め大量に入ってきたオークランドの民(奴)は、皇子達に接触し忠誠を誓い、彼等の騎士となり、力を振るう事を約束した。
ここで、
【第一皇子 vs 第二・第三皇子】
この、勢力図が変動したと言う話だ。
オークランドの上位階級に対して行われる反乱に、第二・第三皇子が陰ながら武器・防具・食料などを提供し反乱に知恵を貸す事で、オークランドの勢力図は変動。 第二・第三皇子の支援に対抗するため、人材がシグルド様に提供されたと言う話だった。
シグルド様の元に訪れたオークランドの民は貴族階級。 実質ハーフであるシグルド様は見下されているため余り良い関係ではないと言う話だ。 それでも利害関係を利用し、上手く使っていたが、信用はしていないと言う話だった。
だから、色々遮断機能を持つ屋敷に移り住んだそうだ。
なんか、想像していたのと、と言うか……知っていた頃よりもずっと苦労が増えているんだなぁ……とかボンヤリとする思考の中で考えていた。
0
お気に入りに追加
456
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる