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60.変化に安堵し恐怖する 03
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美しい花々が咲き乱れる庭を眺めるテラスで、貴族夫人たちはお茶をしていた。
「お待たせしました」
「あら、今日もとても素敵なドレスを着ておいですわね」
ゆっくりと粘りのある声は、深く甘く、巻きつくようだった。
「そのドレスは、どのような仕組みになっておりますの?」
「その髪飾りに使われている花は、宮殿で飾られている物のように美しいですわ。 でも、花はすぐに衰えるでしょう? どのように維持されているのかしら?」
「十分な支度をできる間もなく、田舎者らしい恰好をお見せした事ご容赦くださいませ。 お見苦しいでしょう? ごめんなさい」
私は、スカートを掴み、膝を少しだけ曲げて礼とした。
彼女達の着ているドレスは豊かな胸を大きく開き、柔らかなウエストをコルセットで引き締めつけ、スカートは骨組みで大きく広げ重たそうだ。 それは、豊かさであり美の象徴。
作業には不向きそうだなぁっと思った。
「いえ、とても可愛らしいですわ。 私ももう少し若ければ、是非、着てみたいですわ」
「そうですわねぇ。 皆様でしたら、胸元をもう少しセクシーにしてスカートの骨組みを無くし、ウエストから腰、足のラインを綺麗に見せた方が良いと思いますわ」
「それは、とても……奇抜ですわね……」
「うふふ、貴方方は、新しい物を求めていらっしゃるのでしょう? でも、そうやって新しいものを受け入れる事も出来ない方が、新しい物を受け入れ、時代を変える事ができるのかしら? 私達の会話は余り有意義ではないようですわね」
空腹の私は少しばかり攻撃的だったかもしれない。
言えば、ざわりと人々は騒めいた。
「あらあら、そんな事をきになさっているの」
曖昧なウフフと言う笑いを浮かべるのは客人3人。
「とても面白くて、参考になるはなしですわ」
でも動揺はない。
「もっと、お話を聞かせていただけないかしら? 私達には貴方が必要よ。
嘘だ!! 早く帰って!! と言う脳内妄想を排除し、微笑みに微笑みで返した。
「こちら、お返しいたしますわ」
そっとテーブルの上に置かれたのは、シルバーのブレスレットに美しい模様が描かれたもの。 美しさを作っているのは、色づき形作るように磨かれたガラス。
「そちらは、お持ちください。 もし、興味があればですが」
「そう言えば、ルドリュ伯爵家令嬢は、今の宮殿、王家の事を聞きたいと望んでいられると伺いました。 私達、令嬢のためにお教えする事ができましてよ?」
「いえ、もう結構ですわ。 私も都合がありますの」
「そうおっしゃらないで、私達は、貴方と仲良くなりたいの。 だから、貴方にお話しをするわ。 この国は選択の時が来ておりますの。 皇子達は戦を見据え、日々己を磨いておいでですわ」
「ソレは、どの皇子かしら?」
「全ての皇子が、です」
「まさか……」
昨日の事を無かったことにするつもりなのかしら?
薬漬けで、なんの鍛錬なのだろうか?
「自らの騎士団を作り、人の上に立つ決意をなさっておいでです。 そして、その力は日々力を増しておいでです。 どうか、その目で判断してください。 私共は、皇子の名の元に、可能性を持つ若者を集めたいのです。」
「私は、静かに平和な日々を送りたいの」
「そう、でしたら、貴方が貴方の望む世を皇子に伝え、導いて頂けるようお願いをするべきではないかしら?」
「ここで、安穏と生活していても、この国はいずれ割れるでしょう。 そうならないために私達は語り合い、心を一つにしなければなりませんの」
「ぇっ?」
頭の中がぐらぐらとし、身体が斜めに倒れていく。
気持ち悪い……。
頭が痛い……。
これは何?
そして私は意識が朦朧とする中で、矢継ぎ早に語られる言葉に苦し気に伝える。
「止めて……」
「いえ、止めません。 大切な話なのです。 聞いて下さい」
肩を掴まれ、抱きしめられ、甘ったるい匂いが鼻孔をくすぐる。
「ねぇ、私達は、知りたいの。 貴方がどんな世界を求めるのかを? 貴方が世界にどう貢献できるのかを? 我らの愛すべき皇帝と、その皇子達のために……」
そして、私の意識は途絶えていた。
「お待たせしました」
「あら、今日もとても素敵なドレスを着ておいですわね」
ゆっくりと粘りのある声は、深く甘く、巻きつくようだった。
「そのドレスは、どのような仕組みになっておりますの?」
「その髪飾りに使われている花は、宮殿で飾られている物のように美しいですわ。 でも、花はすぐに衰えるでしょう? どのように維持されているのかしら?」
「十分な支度をできる間もなく、田舎者らしい恰好をお見せした事ご容赦くださいませ。 お見苦しいでしょう? ごめんなさい」
私は、スカートを掴み、膝を少しだけ曲げて礼とした。
彼女達の着ているドレスは豊かな胸を大きく開き、柔らかなウエストをコルセットで引き締めつけ、スカートは骨組みで大きく広げ重たそうだ。 それは、豊かさであり美の象徴。
作業には不向きそうだなぁっと思った。
「いえ、とても可愛らしいですわ。 私ももう少し若ければ、是非、着てみたいですわ」
「そうですわねぇ。 皆様でしたら、胸元をもう少しセクシーにしてスカートの骨組みを無くし、ウエストから腰、足のラインを綺麗に見せた方が良いと思いますわ」
「それは、とても……奇抜ですわね……」
「うふふ、貴方方は、新しい物を求めていらっしゃるのでしょう? でも、そうやって新しいものを受け入れる事も出来ない方が、新しい物を受け入れ、時代を変える事ができるのかしら? 私達の会話は余り有意義ではないようですわね」
空腹の私は少しばかり攻撃的だったかもしれない。
言えば、ざわりと人々は騒めいた。
「あらあら、そんな事をきになさっているの」
曖昧なウフフと言う笑いを浮かべるのは客人3人。
「とても面白くて、参考になるはなしですわ」
でも動揺はない。
「もっと、お話を聞かせていただけないかしら? 私達には貴方が必要よ。
嘘だ!! 早く帰って!! と言う脳内妄想を排除し、微笑みに微笑みで返した。
「こちら、お返しいたしますわ」
そっとテーブルの上に置かれたのは、シルバーのブレスレットに美しい模様が描かれたもの。 美しさを作っているのは、色づき形作るように磨かれたガラス。
「そちらは、お持ちください。 もし、興味があればですが」
「そう言えば、ルドリュ伯爵家令嬢は、今の宮殿、王家の事を聞きたいと望んでいられると伺いました。 私達、令嬢のためにお教えする事ができましてよ?」
「いえ、もう結構ですわ。 私も都合がありますの」
「そうおっしゃらないで、私達は、貴方と仲良くなりたいの。 だから、貴方にお話しをするわ。 この国は選択の時が来ておりますの。 皇子達は戦を見据え、日々己を磨いておいでですわ」
「ソレは、どの皇子かしら?」
「全ての皇子が、です」
「まさか……」
昨日の事を無かったことにするつもりなのかしら?
薬漬けで、なんの鍛錬なのだろうか?
「自らの騎士団を作り、人の上に立つ決意をなさっておいでです。 そして、その力は日々力を増しておいでです。 どうか、その目で判断してください。 私共は、皇子の名の元に、可能性を持つ若者を集めたいのです。」
「私は、静かに平和な日々を送りたいの」
「そう、でしたら、貴方が貴方の望む世を皇子に伝え、導いて頂けるようお願いをするべきではないかしら?」
「ここで、安穏と生活していても、この国はいずれ割れるでしょう。 そうならないために私達は語り合い、心を一つにしなければなりませんの」
「ぇっ?」
頭の中がぐらぐらとし、身体が斜めに倒れていく。
気持ち悪い……。
頭が痛い……。
これは何?
そして私は意識が朦朧とする中で、矢継ぎ早に語られる言葉に苦し気に伝える。
「止めて……」
「いえ、止めません。 大切な話なのです。 聞いて下さい」
肩を掴まれ、抱きしめられ、甘ったるい匂いが鼻孔をくすぐる。
「ねぇ、私達は、知りたいの。 貴方がどんな世界を求めるのかを? 貴方が世界にどう貢献できるのかを? 我らの愛すべき皇帝と、その皇子達のために……」
そして、私の意識は途絶えていた。
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