57 / 75
06
56.欠如した常識 01
しおりを挟む
一体、どっち……なのかしら?
条件的に考えればシグルド様に間違いはない。
何より姿が同じなのだから、疑う必要もないはず。
な、の、に!! 私が悩まなければいけないのは、彼が人間の言葉を話さないから。
昨日図書館で調べた内容には【獣化によって理性を失う】そうあった事を思い出せば、早い段階で、クロード様の元に連れて行って相談したほうが良いだろうと思う訳だ。
理性を失い、昨日の夜から散歩を続けているなら、とても心配されている事でしょう。 もう宮殿には行きたくはないのだけど、こればかりは仕方がないと言うものです。
「あぁあああ!! もう!!」
思わず湯舟の中で叫べば、部屋の方から騒々しい音が聞こえだす。
ばたばたと歩き。
がるうぅぅぅがるるるううるる。
退きなさい!! と言うランバールの怒声。
そして、家具が投げられ、生物が壁にぶつかり、倒れ込む。
そんな音。
喧嘩? 喧嘩かしら? これは、ユックリと風呂入って考え事をしている余裕なんて無いわね。
「いい加減にしなさい!!」
私は、室内でバトルを行っている1人と1匹に声を大きく止めた。
既に、ランバールは床に腰を落とし、犬が足でソファを蹴飛ばしランバールに向かって飛ばしながら、鏡台の椅子にかけられているガウンへと向かい、振り向きざまに私にガウンを投げて来た。
ぶっ!!
痛くはいなけど、顔面にヒット。
「何するのよ!!」
がうがうがうがうぐあぐあう。
なんだか、凄く怒られた。 だが、ここで終わりではなかった。
「わ、わかります!! 私!!」
声を上げたのは、最近侍女として雇われたと言う、成人を迎えたばかり(15歳)の少女ホリー。 ホリーの大きな声と、向けられる同意、犬はビクッと驚き、説教を止め一瞬侍女へと視線を向け、そして戸惑っていた。
侍女は犬から距離を取るようにしながらも、壁伝いに私の側まで来て、私が手に持ったままのガウンを奪い、私に着せようと袖を通させた。
「ねぇ、そんな事より、分かるって、この子の言っている言葉が分かりますの?!」
「いえ、わんちゃんの言葉は分かりませんよぉ~。 ただ、あぁ~、きっとこう言いたいんだろうなぁ~って」
「これ、およしなさい!! ホリー」
屋敷内で最年長の侍女が声を荒げた。 年配の侍女であるが、ここに来るまで面識のなかった侍女。
「でも、お嬢様が知りたがっていますし、他所で同じ事をすると大変だと思うんですけど? お嬢様だって、他所で恥をかきたくはないですよね?」
「それは、そうですけど……何が問題ですの?」
「お嬢様は、余り他所の方々と関わった事がないでしょうし、貴族としてお世話を受ける事が当たり前になっているのでご存じないのでしょうが……」
「お嬢様に対して、なんて口をきいているの!!」
「ですが、お嬢様だって知っておくべき事です!! 一般的には、例え幼い頃から世話役をしているとは言っても、その方が将来を誓った方であっても。 いえ、誓いあった方であればこそ、そんな堂々とした佇まいで全裸を見せるものではありません!!」
「ぇ?!」
年配の侍女を見れば、はぁ……と溜息と共に視線を逸らされた。
えぇええええええ。
「でも、でも、子供の頃からそうですし」
「子供の頃から、同じように繰り返されていると言うのが問題なんですよ。 お嬢様、ランバール様との関係に何か進展がございましたか?! お嬢様がこんなにも美しい肢体を露わにしていると言うのに、その瞳に揺らぎ一つないのですよ?!」
「進展って言うと、エッチな事とか? そ、そういうのは、結婚もしていないんだから、する訳ないじゃない!!」
「普通は結婚していなくても、良い雰囲気になれば、何か変化って言うのがあるものですよ」
ずいっと顔が寄せられた。
「まだ幼い無邪気さを持ちつつも、美しくて……触れて……見たくなるものですわ」
壁に追い込まれた私の頬に指先が伸ばされれば、混乱と共に私は後ずさった。
条件的に考えればシグルド様に間違いはない。
何より姿が同じなのだから、疑う必要もないはず。
な、の、に!! 私が悩まなければいけないのは、彼が人間の言葉を話さないから。
昨日図書館で調べた内容には【獣化によって理性を失う】そうあった事を思い出せば、早い段階で、クロード様の元に連れて行って相談したほうが良いだろうと思う訳だ。
理性を失い、昨日の夜から散歩を続けているなら、とても心配されている事でしょう。 もう宮殿には行きたくはないのだけど、こればかりは仕方がないと言うものです。
「あぁあああ!! もう!!」
思わず湯舟の中で叫べば、部屋の方から騒々しい音が聞こえだす。
ばたばたと歩き。
がるうぅぅぅがるるるううるる。
退きなさい!! と言うランバールの怒声。
そして、家具が投げられ、生物が壁にぶつかり、倒れ込む。
そんな音。
喧嘩? 喧嘩かしら? これは、ユックリと風呂入って考え事をしている余裕なんて無いわね。
「いい加減にしなさい!!」
私は、室内でバトルを行っている1人と1匹に声を大きく止めた。
既に、ランバールは床に腰を落とし、犬が足でソファを蹴飛ばしランバールに向かって飛ばしながら、鏡台の椅子にかけられているガウンへと向かい、振り向きざまに私にガウンを投げて来た。
ぶっ!!
痛くはいなけど、顔面にヒット。
「何するのよ!!」
がうがうがうがうぐあぐあう。
なんだか、凄く怒られた。 だが、ここで終わりではなかった。
「わ、わかります!! 私!!」
声を上げたのは、最近侍女として雇われたと言う、成人を迎えたばかり(15歳)の少女ホリー。 ホリーの大きな声と、向けられる同意、犬はビクッと驚き、説教を止め一瞬侍女へと視線を向け、そして戸惑っていた。
侍女は犬から距離を取るようにしながらも、壁伝いに私の側まで来て、私が手に持ったままのガウンを奪い、私に着せようと袖を通させた。
「ねぇ、そんな事より、分かるって、この子の言っている言葉が分かりますの?!」
「いえ、わんちゃんの言葉は分かりませんよぉ~。 ただ、あぁ~、きっとこう言いたいんだろうなぁ~って」
「これ、およしなさい!! ホリー」
屋敷内で最年長の侍女が声を荒げた。 年配の侍女であるが、ここに来るまで面識のなかった侍女。
「でも、お嬢様が知りたがっていますし、他所で同じ事をすると大変だと思うんですけど? お嬢様だって、他所で恥をかきたくはないですよね?」
「それは、そうですけど……何が問題ですの?」
「お嬢様は、余り他所の方々と関わった事がないでしょうし、貴族としてお世話を受ける事が当たり前になっているのでご存じないのでしょうが……」
「お嬢様に対して、なんて口をきいているの!!」
「ですが、お嬢様だって知っておくべき事です!! 一般的には、例え幼い頃から世話役をしているとは言っても、その方が将来を誓った方であっても。 いえ、誓いあった方であればこそ、そんな堂々とした佇まいで全裸を見せるものではありません!!」
「ぇ?!」
年配の侍女を見れば、はぁ……と溜息と共に視線を逸らされた。
えぇええええええ。
「でも、でも、子供の頃からそうですし」
「子供の頃から、同じように繰り返されていると言うのが問題なんですよ。 お嬢様、ランバール様との関係に何か進展がございましたか?! お嬢様がこんなにも美しい肢体を露わにしていると言うのに、その瞳に揺らぎ一つないのですよ?!」
「進展って言うと、エッチな事とか? そ、そういうのは、結婚もしていないんだから、する訳ないじゃない!!」
「普通は結婚していなくても、良い雰囲気になれば、何か変化って言うのがあるものですよ」
ずいっと顔が寄せられた。
「まだ幼い無邪気さを持ちつつも、美しくて……触れて……見たくなるものですわ」
壁に追い込まれた私の頬に指先が伸ばされれば、混乱と共に私は後ずさった。
0
お気に入りに追加
457
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる