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53.犬は喜び駆け回る
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「んっ……、昨日なかなか寝付けなかったから、もう少し眠らせて」
布団の中に潜り、手だけを出して、ヒラヒラすれば、冷たく濡れた感触が手に触れてビクッとした。
「な、何?」
布団の中から、そっと覗けば、大きな犬がニッコリ笑っているかのような表情でコチラを見ていた。
「ぇ?」
いや……流石に、殿下が早朝からいるって事はないよね?
「えっと……シグルド様?」
「わん!!」
尻尾をブンブン振っているが、わんってアンタ……逆に判断しづらいわ!! 普通に考えるなら、仕事を放棄して朝っぱらからここに居るとは思えないし、だからって、2階にある部屋に入り込んでくる犬なんて……。
部屋の外では、ばたばたと妙に忙しそうに騒いでいた。
「お嬢様、失礼します!!」
ランバールが扉を勢い良く開けて、部屋に入ってくれば。
う~~等と唸り声をあげて犬が威嚇していた。 少し悩んだ末に私は言う。 ここで何かあっても私は悪くない!!
「カール、威嚇はダメよ」
きゅ~んと鼻を鳴らしたあと、ソファに向かいそして帰ってくる。 銜えてもっていたのは朝露に濡れた赤い薔薇の花が1輪。 季節外れではあるけれど、宮殿には毎日各地から花が届けられるのだから無理と言う訳でもないのかもしれない。
「ありがとう。 コレを今日の髪飾りに使うから、準備をしておいてもらえるかしら? あと、貴方は脚をあらってもらってきて。 私はもう少し寝ます」
「ちょ、お嬢様!!」
侍女を始めランバールまでもが、小さな悲鳴のように叫んでいた。
「何よウルサイわね。 犬ぐらいでガタガタ言わないの」
「いえ、犬ではないですよね!? 姿は狼に近いですし、それに通常よりも大きいですよ!!」
妙に声を荒げるランバールがらしくなく、なるほどきっとこれは夢なのだろうと考えた。
「襲うつもりなら、もうみんな噛み殺されているわよ。 仕方がないわね。 私が洗うから来なさい」
大きな欠伸と共にベッドから出れば、犬が慌てたようにガウンをもってきて放り投げて来たから、投げ返す。
「こんなのを着たら、濡れるでしょ」
がうっ!!
「何? 自分で洗うから問題ない?」
別に言葉が通じている訳ではなく不満そうだったから、そんな感じかなぁ~って。 まぁ、それならソレでいいんだけど……。 私は欠伸と共にもう一度ベッドへと戻って行った。
わんっ!!
「ウルサイ、アンタも付き合って寝なさい」
ベッドの脇をポムポムと叩き、私はまた眠りに落ちる。 むしろずっと意識は眠っていて……目を覚まして、正気を取り戻して、頭を抱える事になるのだった。
布団の中に潜り、手だけを出して、ヒラヒラすれば、冷たく濡れた感触が手に触れてビクッとした。
「な、何?」
布団の中から、そっと覗けば、大きな犬がニッコリ笑っているかのような表情でコチラを見ていた。
「ぇ?」
いや……流石に、殿下が早朝からいるって事はないよね?
「えっと……シグルド様?」
「わん!!」
尻尾をブンブン振っているが、わんってアンタ……逆に判断しづらいわ!! 普通に考えるなら、仕事を放棄して朝っぱらからここに居るとは思えないし、だからって、2階にある部屋に入り込んでくる犬なんて……。
部屋の外では、ばたばたと妙に忙しそうに騒いでいた。
「お嬢様、失礼します!!」
ランバールが扉を勢い良く開けて、部屋に入ってくれば。
う~~等と唸り声をあげて犬が威嚇していた。 少し悩んだ末に私は言う。 ここで何かあっても私は悪くない!!
「カール、威嚇はダメよ」
きゅ~んと鼻を鳴らしたあと、ソファに向かいそして帰ってくる。 銜えてもっていたのは朝露に濡れた赤い薔薇の花が1輪。 季節外れではあるけれど、宮殿には毎日各地から花が届けられるのだから無理と言う訳でもないのかもしれない。
「ありがとう。 コレを今日の髪飾りに使うから、準備をしておいてもらえるかしら? あと、貴方は脚をあらってもらってきて。 私はもう少し寝ます」
「ちょ、お嬢様!!」
侍女を始めランバールまでもが、小さな悲鳴のように叫んでいた。
「何よウルサイわね。 犬ぐらいでガタガタ言わないの」
「いえ、犬ではないですよね!? 姿は狼に近いですし、それに通常よりも大きいですよ!!」
妙に声を荒げるランバールがらしくなく、なるほどきっとこれは夢なのだろうと考えた。
「襲うつもりなら、もうみんな噛み殺されているわよ。 仕方がないわね。 私が洗うから来なさい」
大きな欠伸と共にベッドから出れば、犬が慌てたようにガウンをもってきて放り投げて来たから、投げ返す。
「こんなのを着たら、濡れるでしょ」
がうっ!!
「何? 自分で洗うから問題ない?」
別に言葉が通じている訳ではなく不満そうだったから、そんな感じかなぁ~って。 まぁ、それならソレでいいんだけど……。 私は欠伸と共にもう一度ベッドへと戻って行った。
わんっ!!
「ウルサイ、アンタも付き合って寝なさい」
ベッドの脇をポムポムと叩き、私はまた眠りに落ちる。 むしろずっと意識は眠っていて……目を覚まして、正気を取り戻して、頭を抱える事になるのだった。
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