49 / 75
05
48.勉強会と言う名の対策会議?
しおりを挟む
一番最初に調査を行うのは、
「北部沿岸の3領主達が、先日女子供を連れ、内陸部で塩を採掘した事への不満と、ソレに対する補償を求めてきました。 やせ細った女子供を見せつけながら……その額が余りにも非常識でして、その分析の手伝いを願いします」
クロード様とシグルド様は、現地調査を送り込んだらしいのですが、彼等の売却する魚の販売量が減少している事は事実だと言う事しか分からなかったそうだ。
私は適当ながら、10年を遡り、支出と収入を調べる。 この国は、売却品を一度領主が全て買い取ると言う方法をとっているため、偽装さえしなければ領地の動向を把握しやすい。
2年前まで、収入額に大きな変化はない。
毎月、他の領地に魚の種類・量に関わらず固定額で売却。
一部を、一般流通させている。
支出は5年前に食料支出が減少、4年前からは例年通り。
これは穀物の購入資金減少。
一部を肉、卵などの購入へと転化。
2年前に大きな支出がある。
船の建造、修復に利用している。
大型船は領主が管理し、レンタル料を得て漁師に貸し出している。
「問題はココですね」
『何処だ?』
覗き込む犬ではなくシグルド様。
肩を抱きたくなるのをグッと堪えた。
「レンタル料が減少しているんです。 と言う事は漁に出る日数が減少していると言う事です」
『だが、5年前から、漁に出る日数は減少しているぞ?』
「ですねぇ……。 船の修繕や、建造をしていますから、船の具合が悪かったのでしょうか? ぁ、ですが、収入の減少は、船の建造と修復を始めた頃からですよ?」
クロード様も、身を乗り出してきた。
『レンタル料の総額は増えているから、漁獲量も増えているはずなのに、収入が落ちている……南部の養殖業と魚貝類の加工に成功したのが原因と言うのは事実と言うことか?』
「いえ、南部の加工品は、庶民向けの保存食ですから、生の魚を貴族向けに販売している分には影響がないはずですよ?」
『この販売契約ってのは、魚が1匹しないなくても、支払い額は固定ってことだよな?』
「そういう事ですよ」
『なら、愛想をつかされたんじゃないのか? で、契約の更新をしなかった。 ほら、ここに契約は3年ごとに見直すってある』
「なるほど、契約の更新がなされず、慌ててお得感をだそうと海に出る日を増やし、魚の単価を下げてみたが、加工したものだが南部から魚を仕入れる事が出来るから、不義理をした領地から購入は控えたいと考えたのかもしれませんね」
『事実は分からないが、契約相手から話を聞いて見る必要があるな』
「結局、私が口出しする必要等ありませんでしたね」
元々シグルド様は良い生徒だった。
私が苦笑していれば。
『……褒美が欲しいぞ』
あざとい犬のごとくシグルド様が媚びてくるから、おいおいとなった。
「協力をしているだけでなく、まだ、私から何かを奪おうとされるのですか?」
『ぇっ……ちがっ、名前を……読んで欲しいだけだ……後は、名前を教えて欲しいとか……』
分かりやすく尻尾と耳が下がれば、罪悪感を覚えてしまいそうでヤバイ。
「まぁ、いいですわ。 クロード様、興味本位ではありますが、今後どうされるのですか?」
「そうですねぇ……。 領主の責任ってことで対応する事になるでしょう」
『コホン、それより……改革に直接関係なくても大きな影響が出るんだな』
「穀物の収穫量が増えれば、価格が低下しますからね。 国の食糧支出は減少するものです。 ソレをどう活かすかが課題と言うところでしょうか?」
「ソレは、各領主の裁量でやって欲しいところですねぇ……」
クロード様がソファに深く座り込み呟いた。
そして、私達は、他にも数件解析を続けていく。
彼等は良い生徒で、勉強は楽しかった……が、少し疲れた、そして……。
「お腹すいたぁ~!!」
私が声を上げれば、そばにいた犬がビクッと背筋を正し、背中にひっそり回されていた尻尾が、ピンッと立ち上がった。
「北部沿岸の3領主達が、先日女子供を連れ、内陸部で塩を採掘した事への不満と、ソレに対する補償を求めてきました。 やせ細った女子供を見せつけながら……その額が余りにも非常識でして、その分析の手伝いを願いします」
クロード様とシグルド様は、現地調査を送り込んだらしいのですが、彼等の売却する魚の販売量が減少している事は事実だと言う事しか分からなかったそうだ。
私は適当ながら、10年を遡り、支出と収入を調べる。 この国は、売却品を一度領主が全て買い取ると言う方法をとっているため、偽装さえしなければ領地の動向を把握しやすい。
2年前まで、収入額に大きな変化はない。
毎月、他の領地に魚の種類・量に関わらず固定額で売却。
一部を、一般流通させている。
支出は5年前に食料支出が減少、4年前からは例年通り。
これは穀物の購入資金減少。
一部を肉、卵などの購入へと転化。
2年前に大きな支出がある。
船の建造、修復に利用している。
大型船は領主が管理し、レンタル料を得て漁師に貸し出している。
「問題はココですね」
『何処だ?』
覗き込む犬ではなくシグルド様。
肩を抱きたくなるのをグッと堪えた。
「レンタル料が減少しているんです。 と言う事は漁に出る日数が減少していると言う事です」
『だが、5年前から、漁に出る日数は減少しているぞ?』
「ですねぇ……。 船の修繕や、建造をしていますから、船の具合が悪かったのでしょうか? ぁ、ですが、収入の減少は、船の建造と修復を始めた頃からですよ?」
クロード様も、身を乗り出してきた。
『レンタル料の総額は増えているから、漁獲量も増えているはずなのに、収入が落ちている……南部の養殖業と魚貝類の加工に成功したのが原因と言うのは事実と言うことか?』
「いえ、南部の加工品は、庶民向けの保存食ですから、生の魚を貴族向けに販売している分には影響がないはずですよ?」
『この販売契約ってのは、魚が1匹しないなくても、支払い額は固定ってことだよな?』
「そういう事ですよ」
『なら、愛想をつかされたんじゃないのか? で、契約の更新をしなかった。 ほら、ここに契約は3年ごとに見直すってある』
「なるほど、契約の更新がなされず、慌ててお得感をだそうと海に出る日を増やし、魚の単価を下げてみたが、加工したものだが南部から魚を仕入れる事が出来るから、不義理をした領地から購入は控えたいと考えたのかもしれませんね」
『事実は分からないが、契約相手から話を聞いて見る必要があるな』
「結局、私が口出しする必要等ありませんでしたね」
元々シグルド様は良い生徒だった。
私が苦笑していれば。
『……褒美が欲しいぞ』
あざとい犬のごとくシグルド様が媚びてくるから、おいおいとなった。
「協力をしているだけでなく、まだ、私から何かを奪おうとされるのですか?」
『ぇっ……ちがっ、名前を……読んで欲しいだけだ……後は、名前を教えて欲しいとか……』
分かりやすく尻尾と耳が下がれば、罪悪感を覚えてしまいそうでヤバイ。
「まぁ、いいですわ。 クロード様、興味本位ではありますが、今後どうされるのですか?」
「そうですねぇ……。 領主の責任ってことで対応する事になるでしょう」
『コホン、それより……改革に直接関係なくても大きな影響が出るんだな』
「穀物の収穫量が増えれば、価格が低下しますからね。 国の食糧支出は減少するものです。 ソレをどう活かすかが課題と言うところでしょうか?」
「ソレは、各領主の裁量でやって欲しいところですねぇ……」
クロード様がソファに深く座り込み呟いた。
そして、私達は、他にも数件解析を続けていく。
彼等は良い生徒で、勉強は楽しかった……が、少し疲れた、そして……。
「お腹すいたぁ~!!」
私が声を上げれば、そばにいた犬がビクッと背筋を正し、背中にひっそり回されていた尻尾が、ピンッと立ち上がった。
0
お気に入りに追加
456
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる