【R18】利用される日々は終わりにします【完結】

迷い人

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48.勉強会と言う名の対策会議?

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 一番最初に調査を行うのは、

「北部沿岸の3領主達が、先日女子供を連れ、内陸部で塩を採掘した事への不満と、ソレに対する補償を求めてきました。 やせ細った女子供を見せつけながら……その額が余りにも非常識でして、その分析の手伝いを願いします」

 クロード様とシグルド様は、現地調査を送り込んだらしいのですが、彼等の売却する魚の販売量が減少している事は事実だと言う事しか分からなかったそうだ。



 私は適当ながら、10年を遡り、支出と収入を調べる。 この国は、売却品を一度領主が全て買い取ると言う方法をとっているため、偽装さえしなければ領地の動向を把握しやすい。

 2年前まで、収入額に大きな変化はない。

 毎月、他の領地に魚の種類・量に関わらず固定額で売却。
 一部を、一般流通させている。

 支出は5年前に食料支出が減少、4年前からは例年通り。

 これは穀物の購入資金減少。
 一部を肉、卵などの購入へと転化。

 2年前に大きな支出がある。
 船の建造、修復に利用している。

 大型船は領主が管理し、レンタル料を得て漁師に貸し出している。

「問題はココですね」

『何処だ?』

 覗き込む犬ではなくシグルド様。
 肩を抱きたくなるのをグッと堪えた。

「レンタル料が減少しているんです。 と言う事は漁に出る日数が減少していると言う事です」

『だが、5年前から、漁に出る日数は減少しているぞ?』

「ですねぇ……。 船の修繕や、建造をしていますから、船の具合が悪かったのでしょうか? ぁ、ですが、収入の減少は、船の建造と修復を始めた頃からですよ?」

 クロード様も、身を乗り出してきた。

『レンタル料の総額は増えているから、漁獲量も増えているはずなのに、収入が落ちている……南部の養殖業と魚貝類の加工に成功したのが原因と言うのは事実と言うことか?』

「いえ、南部の加工品は、庶民向けの保存食ですから、生の魚を貴族向けに販売している分には影響がないはずですよ?」

『この販売契約ってのは、魚が1匹しないなくても、支払い額は固定ってことだよな?』

「そういう事ですよ」

『なら、愛想をつかされたんじゃないのか? で、契約の更新をしなかった。 ほら、ここに契約は3年ごとに見直すってある』

「なるほど、契約の更新がなされず、慌ててお得感をだそうと海に出る日を増やし、魚の単価を下げてみたが、加工したものだが南部から魚を仕入れる事が出来るから、不義理をした領地から購入は控えたいと考えたのかもしれませんね」

『事実は分からないが、契約相手から話を聞いて見る必要があるな』

「結局、私が口出しする必要等ありませんでしたね」

 元々シグルド様は良い生徒だった。
 私が苦笑していれば。

『……褒美が欲しいぞ』

 あざとい犬のごとくシグルド様が媚びてくるから、おいおいとなった。

「協力をしているだけでなく、まだ、私から何かを奪おうとされるのですか?」

『ぇっ……ちがっ、名前を……読んで欲しいだけだ……後は、名前を教えて欲しいとか……』

 分かりやすく尻尾と耳が下がれば、罪悪感を覚えてしまいそうでヤバイ。

「まぁ、いいですわ。 クロード様、興味本位ではありますが、今後どうされるのですか?」

「そうですねぇ……。 領主の責任ってことで対応する事になるでしょう」

『コホン、それより……改革に直接関係なくても大きな影響が出るんだな』

「穀物の収穫量が増えれば、価格が低下しますからね。 国の食糧支出は減少するものです。 ソレをどう活かすかが課題と言うところでしょうか?」

「ソレは、各領主の裁量でやって欲しいところですねぇ……」

 クロード様がソファに深く座り込み呟いた。

 そして、私達は、他にも数件解析を続けていく。

 彼等は良い生徒で、勉強は楽しかった……が、少し疲れた、そして……。

「お腹すいたぁ~!!」

 私が声を上げれば、そばにいた犬がビクッと背筋を正し、背中にひっそり回されていた尻尾が、ピンッと立ち上がった。
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