【R18】利用される日々は終わりにします【完結】

迷い人

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35.拗ねる自分は嫌いだけど

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 護衛として宮殿について来てもらうため、ミランダの服を購入しに町に出た。

「なんだか……」

 途中で放棄したとは言え、シグルド様の改革案はユックリとだが確実に進んでいると、旅の商人達から聞いた。 なら、町はもっと活気があっても良いのでは? と、思えるのに……なんだか、煤けた薄暗い雰囲気に思える。

「どうかなさいましたか? お嬢様」

「町が、思ったより発展していないなって」

「そうですか?」

 ランが不思議そうに首を傾げる。

「店の品ぞろえを考えれば、もっと人が多くても良いかもしれませんわね」

 そう言ったのはミランダの方で、

「そ、そうよね?」

 と、不本意ながら私はミランダの反応に安堵する。



 貴族ご用達の洋裁店に向かったが、明日にはフルオーダーで作るには時間がなく、男性用のタキシード、鮮やかな青をカスタムしてもらう事で済ませる。

「私は、この格好で構いませんが?」

 分厚い肌着、革製の胸当て、上から羽織る半袖のシャツ。 短いパンツに、ロングブーツ。 マントを腰にまいたような恰好が、ミラのスタイルらしい。

「私が!! 構うんです。 痴女を連れ歩いて行くなんて思われたくありませんもの」

「痴女だなんて、無駄が無いと言うのは、とても動きやすいのですよ? お嬢様もどうです?」

「イヤ!! それに、その恰好で宮殿に行けば、騎士に囲まれてしまいますよ」

「あら、私が騎士ごときに負けると思いまして?」

「勝っても問題になるの!!」

 なんてやっているうちに調整をしてもらう。 人目を気にせず着替えだす様子に、ランバードを慌ててその場から追い出した。

「あら、別に構いませんのに」

 脳内の私は、犬のようにガルガルする。

「ふむ、こんな感じなのね」

 着替えたミラが鏡の前に立てば、クルリとまわって見せ、腕の回転を確かめるように動かしていた。

「まぁ……お嬢様の護衛程度なら大丈夫でしょう」

 そうよ、ここは戦場でも、魔物の森でもありませんからね。 と、心の中で言えば、お針子の女性達は賛美の声をミランダに向けた。

「とても、お似合いでございます」

「うんうん」

 外に追い出されたランバードを、ミランダ自身が呼び寄せ。 どうかしら? とクルリとまわって見せた。

「よく、似合っていますよ」

 ランバードが笑みを向けていえば、ふふふ~んとばかりにミランダが微笑みながら聞く言葉に、ヴェルディはソッポを向く。

「セクシー?」

「えぇ、貴方はどんな格好をしていてもセクシーです」

「ふっふふふ、何も着ないのが一番セクシーだとは言ってくれないのね」

 ピキッ……。

「疲れたから帰るわよ」

 拗ねた私は食事作りを放棄し、ミランダが庭先で豪快にイノシシを解体し、焼きはじめた匂いに、使用人達の心をつかみ、玉ねぎ、キノコ、芋等が一緒に焼かれ、スープが作られ、賑やかそうにされれば……疎外感に……私は拗ねて、ベッドでうつ伏せになり上から布団をかぶり隠れた。

 自分でもイヤになってはいる。 ランバールが機嫌取りに来るだろう事を予想しての行動なわけだから。

「お嬢様、明日は宮殿に行かれるのでしょう? しっかりと食事を食べ英気を養わなければ負けますよ?」

 そういって上掛けごとひっぺがえされ、ベッドの縁に座らされた。

「可愛らしい寝巻ですね」

「ふんっだ。 別に勝負をしに出掛ける訳でもなし、気負うような事は無いもの。 えぇ、そうだわ、今の社交界がどんな感じか調べに行くだけ。 放っておいて頂戴」

 放っておかないで。と言うのが心の声。

「ですが、ソレは食事を抜く理由になりませんよ。 ほら、スープだけでも食べませんか?」

 スプーンでよそったスープが差し出され、私は大きく口を開ける。 何時もならもう少しごねるところだけど、本当にどこかに……いかれたら嫌だからおりた……。

「仕方のない方ですね」

 ランバールは笑いながら、口元にスプーンを寄せる。

 う~ん……別にミランダに嫉妬してとか、そういうのではなく、匂いがキツく、味の主体性が薄い、ようするに塩、臭みを消すための香草が足りていない。 ……いえ……料理に人間関係を持ち込まず、食べ物への感謝を+αしたうえで言うなら、野性味あふれた味でしょうか……。

 うっ……、ハッキリ言おう。

「美味しくない……」

「ですよねぇ~。 なんとかなりませんか?」

 ムカッ

 としたので、ポカスカ叩いて置く。

 とは言え、料理人に任せれば、灰汁を取り、香草入れて、塩増やして、味の調整するだろうから……多分、これはただ切っ掛けづくりって奴でしょうね。 って、わけで、気を使ってもらいながら、不機嫌を通すのも申し訳ないので……スープの直しは料理人達に任せて、私は豚の角煮を作るのだった。
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