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35.拗ねる自分は嫌いだけど
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護衛として宮殿について来てもらうため、ミランダの服を購入しに町に出た。
「なんだか……」
途中で放棄したとは言え、シグルド様の改革案はユックリとだが確実に進んでいると、旅の商人達から聞いた。 なら、町はもっと活気があっても良いのでは? と、思えるのに……なんだか、煤けた薄暗い雰囲気に思える。
「どうかなさいましたか? お嬢様」
「町が、思ったより発展していないなって」
「そうですか?」
ランが不思議そうに首を傾げる。
「店の品ぞろえを考えれば、もっと人が多くても良いかもしれませんわね」
そう言ったのはミランダの方で、
「そ、そうよね?」
と、不本意ながら私はミランダの反応に安堵する。
貴族ご用達の洋裁店に向かったが、明日にはフルオーダーで作るには時間がなく、男性用のタキシード、鮮やかな青をカスタムしてもらう事で済ませる。
「私は、この格好で構いませんが?」
分厚い肌着、革製の胸当て、上から羽織る半袖のシャツ。 短いパンツに、ロングブーツ。 マントを腰にまいたような恰好が、ミラのスタイルらしい。
「私が!! 構うんです。 痴女を連れ歩いて行くなんて思われたくありませんもの」
「痴女だなんて、無駄が無いと言うのは、とても動きやすいのですよ? お嬢様もどうです?」
「イヤ!! それに、その恰好で宮殿に行けば、騎士に囲まれてしまいますよ」
「あら、私が騎士ごときに負けると思いまして?」
「勝っても問題になるの!!」
なんてやっているうちに調整をしてもらう。 人目を気にせず着替えだす様子に、ランバードを慌ててその場から追い出した。
「あら、別に構いませんのに」
脳内の私は、犬のようにガルガルする。
「ふむ、こんな感じなのね」
着替えたミラが鏡の前に立てば、クルリとまわって見せ、腕の回転を確かめるように動かしていた。
「まぁ……お嬢様の護衛程度なら大丈夫でしょう」
そうよ、ここは戦場でも、魔物の森でもありませんからね。 と、心の中で言えば、お針子の女性達は賛美の声をミランダに向けた。
「とても、お似合いでございます」
「うんうん」
外に追い出されたランバードを、ミランダ自身が呼び寄せ。 どうかしら? とクルリとまわって見せた。
「よく、似合っていますよ」
ランバードが笑みを向けていえば、ふふふ~んとばかりにミランダが微笑みながら聞く言葉に、ヴェルディはソッポを向く。
「セクシー?」
「えぇ、貴方はどんな格好をしていてもセクシーです」
「ふっふふふ、何も着ないのが一番セクシーだとは言ってくれないのね」
ピキッ……。
「疲れたから帰るわよ」
拗ねた私は食事作りを放棄し、ミランダが庭先で豪快にイノシシを解体し、焼きはじめた匂いに、使用人達の心をつかみ、玉ねぎ、キノコ、芋等が一緒に焼かれ、スープが作られ、賑やかそうにされれば……疎外感に……私は拗ねて、ベッドでうつ伏せになり上から布団をかぶり隠れた。
自分でもイヤになってはいる。 ランバールが機嫌取りに来るだろう事を予想しての行動なわけだから。
「お嬢様、明日は宮殿に行かれるのでしょう? しっかりと食事を食べ英気を養わなければ負けますよ?」
そういって上掛けごとひっぺがえされ、ベッドの縁に座らされた。
「可愛らしい寝巻ですね」
「ふんっだ。 別に勝負をしに出掛ける訳でもなし、気負うような事は無いもの。 えぇ、そうだわ、今の社交界がどんな感じか調べに行くだけ。 放っておいて頂戴」
放っておかないで。と言うのが心の声。
「ですが、ソレは食事を抜く理由になりませんよ。 ほら、スープだけでも食べませんか?」
スプーンでよそったスープが差し出され、私は大きく口を開ける。 何時もならもう少しごねるところだけど、本当にどこかに……いかれたら嫌だからおりた……。
「仕方のない方ですね」
ランバールは笑いながら、口元にスプーンを寄せる。
う~ん……別にミランダに嫉妬してとか、そういうのではなく、匂いがキツく、味の主体性が薄い、ようするに塩、臭みを消すための香草が足りていない。 ……いえ……料理に人間関係を持ち込まず、食べ物への感謝を+αしたうえで言うなら、野性味あふれた味でしょうか……。
うっ……、ハッキリ言おう。
「美味しくない……」
「ですよねぇ~。 なんとかなりませんか?」
ムカッ
としたので、ポカスカ叩いて置く。
とは言え、料理人に任せれば、灰汁を取り、香草入れて、塩増やして、味の調整するだろうから……多分、これはただ切っ掛けづくりって奴でしょうね。 って、わけで、気を使ってもらいながら、不機嫌を通すのも申し訳ないので……スープの直しは料理人達に任せて、私は豚の角煮を作るのだった。
「なんだか……」
途中で放棄したとは言え、シグルド様の改革案はユックリとだが確実に進んでいると、旅の商人達から聞いた。 なら、町はもっと活気があっても良いのでは? と、思えるのに……なんだか、煤けた薄暗い雰囲気に思える。
「どうかなさいましたか? お嬢様」
「町が、思ったより発展していないなって」
「そうですか?」
ランが不思議そうに首を傾げる。
「店の品ぞろえを考えれば、もっと人が多くても良いかもしれませんわね」
そう言ったのはミランダの方で、
「そ、そうよね?」
と、不本意ながら私はミランダの反応に安堵する。
貴族ご用達の洋裁店に向かったが、明日にはフルオーダーで作るには時間がなく、男性用のタキシード、鮮やかな青をカスタムしてもらう事で済ませる。
「私は、この格好で構いませんが?」
分厚い肌着、革製の胸当て、上から羽織る半袖のシャツ。 短いパンツに、ロングブーツ。 マントを腰にまいたような恰好が、ミラのスタイルらしい。
「私が!! 構うんです。 痴女を連れ歩いて行くなんて思われたくありませんもの」
「痴女だなんて、無駄が無いと言うのは、とても動きやすいのですよ? お嬢様もどうです?」
「イヤ!! それに、その恰好で宮殿に行けば、騎士に囲まれてしまいますよ」
「あら、私が騎士ごときに負けると思いまして?」
「勝っても問題になるの!!」
なんてやっているうちに調整をしてもらう。 人目を気にせず着替えだす様子に、ランバードを慌ててその場から追い出した。
「あら、別に構いませんのに」
脳内の私は、犬のようにガルガルする。
「ふむ、こんな感じなのね」
着替えたミラが鏡の前に立てば、クルリとまわって見せ、腕の回転を確かめるように動かしていた。
「まぁ……お嬢様の護衛程度なら大丈夫でしょう」
そうよ、ここは戦場でも、魔物の森でもありませんからね。 と、心の中で言えば、お針子の女性達は賛美の声をミランダに向けた。
「とても、お似合いでございます」
「うんうん」
外に追い出されたランバードを、ミランダ自身が呼び寄せ。 どうかしら? とクルリとまわって見せた。
「よく、似合っていますよ」
ランバードが笑みを向けていえば、ふふふ~んとばかりにミランダが微笑みながら聞く言葉に、ヴェルディはソッポを向く。
「セクシー?」
「えぇ、貴方はどんな格好をしていてもセクシーです」
「ふっふふふ、何も着ないのが一番セクシーだとは言ってくれないのね」
ピキッ……。
「疲れたから帰るわよ」
拗ねた私は食事作りを放棄し、ミランダが庭先で豪快にイノシシを解体し、焼きはじめた匂いに、使用人達の心をつかみ、玉ねぎ、キノコ、芋等が一緒に焼かれ、スープが作られ、賑やかそうにされれば……疎外感に……私は拗ねて、ベッドでうつ伏せになり上から布団をかぶり隠れた。
自分でもイヤになってはいる。 ランバールが機嫌取りに来るだろう事を予想しての行動なわけだから。
「お嬢様、明日は宮殿に行かれるのでしょう? しっかりと食事を食べ英気を養わなければ負けますよ?」
そういって上掛けごとひっぺがえされ、ベッドの縁に座らされた。
「可愛らしい寝巻ですね」
「ふんっだ。 別に勝負をしに出掛ける訳でもなし、気負うような事は無いもの。 えぇ、そうだわ、今の社交界がどんな感じか調べに行くだけ。 放っておいて頂戴」
放っておかないで。と言うのが心の声。
「ですが、ソレは食事を抜く理由になりませんよ。 ほら、スープだけでも食べませんか?」
スプーンでよそったスープが差し出され、私は大きく口を開ける。 何時もならもう少しごねるところだけど、本当にどこかに……いかれたら嫌だからおりた……。
「仕方のない方ですね」
ランバールは笑いながら、口元にスプーンを寄せる。
う~ん……別にミランダに嫉妬してとか、そういうのではなく、匂いがキツく、味の主体性が薄い、ようするに塩、臭みを消すための香草が足りていない。 ……いえ……料理に人間関係を持ち込まず、食べ物への感謝を+αしたうえで言うなら、野性味あふれた味でしょうか……。
うっ……、ハッキリ言おう。
「美味しくない……」
「ですよねぇ~。 なんとかなりませんか?」
ムカッ
としたので、ポカスカ叩いて置く。
とは言え、料理人に任せれば、灰汁を取り、香草入れて、塩増やして、味の調整するだろうから……多分、これはただ切っ掛けづくりって奴でしょうね。 って、わけで、気を使ってもらいながら、不機嫌を通すのも申し訳ないので……スープの直しは料理人達に任せて、私は豚の角煮を作るのだった。
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