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27.失恋の仕方

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「習慣を持つってダメねぇ……」

 溜息交じりに言うのはヴェルディ・ルドリュ伯爵家令嬢。

「習慣が駄目ってことは無いと思いますが?」

 そう返してくるのはヴェルディの側仕えであるランバール。

 魔法で牛乳を撹拌しながらボンヤリと語るヴェルディと違い、出来上がった生クリームと牛乳と卵を混ぜながら弱火で温めるランバールはご機嫌だ。

「ふっ……貴方に相談した私が間違っていたわ」

「相談だったんですか? ですが、ほら、日々の実験によって美味しいものが生まれると考えるのなら、決して習慣も無駄ではありませんとも!!」

 分かって言っているだろうと軽く睨みつけるヴェルディと、意に介さないランバール。

「……もっと何か集中できるものがあればいいんだけど」

 気分が落ち込んだ時は美味しいものを食べるべきだと言われ、連日、精神の図書館から引っ張りだした新しいレシピを実験してはいるが、これと言った気晴らしに放ってくれない。

「はい、混ざりましたよ。 冷やしてください」

 メモ書きを見て言われ、ヴェルディは鍋の中で混ざったアイスの元を冷やし、ランバールがソレをかき混ぜ続けていた。 滑らかなアイスを作るため幾度も繰り返されているが、どうにも理想のものができあがらない。

 そしてヴェルディは溜息をつく。

 溜息をついた口に、スプーンですくったアイスが入れられる。

「アイス、もういいんじゃない? それなりに美味しいいし」

「まぁ、失恋なんてのは、時間が解決するものですよ」

 会話がかみ合っていないが気にしたら負けだ。

「何よ偉そうに、貴方の恋愛経歴等聞いた事がないわ。 ずっと私と一緒にいた癖に」

「おや、私はずっとお嬢様に振られ続けていますよ」

「貴方……、変わっているわよね」

「そうですか?」

 2人で並んで味見をしながら語りあう会話。 横にいる男を見上げれば、にっこり笑ってコッチを見ていた。 ……なんか……うん、まぁ、いいかな? とか思えてくる。

「まぁ、いいわ。 私の人生はまだ長い訳だし、領地に戻って畑を耕すのも悪くないかも……。 付き合ないなさい」

「まぁ、構いませんが、その場合、畑を耕すのは私ですよね?」

「そうなるわね……。 細かい事を気にしない方が、人生楽しいわよ」



 そして私達は領地へ戻り……でも良かったのだけど、私は、あと1度だけ宮殿に行きたいと願った。



 未練ね……。
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