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26.未来の宰相閣下の調査報告
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「何をしている」
「ソレは、コッチのセリフですよシグルド。 何をしているんですか?」
コミュニケーションとは重要だとクロードは問いかける。
理由など、側に居るのだから容易に想像がつく。
イライラした日々。
ままならぬ感情の激流。
そんな感情から、侍女や護衛騎士に辛く語る日々が増えていた。
ゼーマン公爵家のスパイだから良いと言う問題ではない。
むしろ、それが余計に苛立たせる。
いや……昔の彼女達の支配的態度への反抗心もあるのかもしれない。
とは言え、彼女達も貴族の一員であり、下手に傷つけてしまう訳にはいかない。
そこはわきまえているのだろうシグルドは、記憶にない午前と言う時間を騎士訓練に参加するようになっていた。 全く運動をしていなかった人間が普通に動けるのは血筋としか言いようがないだろう。
クロードは、シグルドの身体能力についてこれずボロボロゴロゴロと転がっている騎士達を眺めながら言葉を付け加えた。
「改革の次は戦争でも始めるつもりですか?」
「俺一人が、訓練して意味があるのか?」
「ありそうですが……」
「騎士は女性に人気だと聞いたが、大した事ないな」
「引きこもりが、女性の視線を気にするなんて!! お年頃ですね」
「オマエ、一度勝負しておくか?」
「いえ、勘弁してください」
「ところで、オマエは何をしているんだ?」
「何って……ここ1年、君が午前中何をしていたのかを探っているんだよ」
クロードが言えば、シグルドは眉間をよせ不機嫌そうな表情を浮かべたから、クロードはヤバッと声に出す。 だがシグルド自身は不機嫌も無意識だったらしく……。
「なんだ、何かヤバイものでも見つかったのか?」
「人に聞いた限りは見つかっては居ませんね。 そして死体も見つかってません」
「何を考えている」
「君が人を殺したんじゃないかってね」
「……殺し等するか!! たぶん……」
視線を背けられる
「そこは、はっきり宣言してください。 まぁ、君が殺しなんてすれば、第二皇妃の子供達が鬼の首をとったようにはしゃぎだすんだろうから、ソレはないだろうね」
「で、何か見つかったのか?」
「それはコッチのセリフです。 何も思い出せないのですか?」
何も見つからない、覚えていないでは、正直ピンチと言って良い。 貴族が求める救済に対して、以前のような丁寧な助言をする事がないのだ。 コレでは開きかけた未来が閉ざされかねない。
「誰か一緒にいたような気がするが……誰も覚えていないのだろう?」
「えぇ、不思議にも図書館の司書も、出入りしていたであろう人も、誰も覚えていない人間が確かにいたことはわかりました」
だが、タイミングが良いとも考えられる。
今になって第二皇妃の生家と深い関係のある貴族が助言を求めにきているのだから。 ソレを無下にあしらったとしても、当然と判断されるだろう。
「誰かは?」
「残念ながら、そこまでは……。 だけど誰かがいたのは確実だろうと思う。 綺麗に記憶の空間があるなんてこと、ありえないだろう?! 君は3か月の間何処で食事をしていたんだ?」
「……覚えていない」
「全く頼りにならないなぁ……。 何も出てきていない。 だが、ちょうど1年前に図書館の使用許可証が発行され、そして最近返されている。 確実に何かはあるんだ」
「誰が……使っていたんだ?」
「誰が使っていたかは分からないが、ソレを発行した相手はルイーズ様だ」
「……なら、俺には関係ないだろう。 もう、それ以上調べるな」
一気に冷めたと言わんばかりの視線を向けられ、クロードはたじろいだ。 このまま終わってなるものか!! と……。
「だからってねぇ。 これは明らかに神による記憶の抹消だ。 君は、いや……ルイーズ様が誰かと誓約を交わし抹消している。 君はソレに覚えはないのか!!」
「なんで、そんなに真剣になる」
「そんなの、私の未来のためだよ!!」
イラっとした気分がピークに達したシグルドは、汗を拭いた後のタオルが勢いよくクロードに投げつける。
「この馬鹿力、あと、臭いんだよ!!」
追加とばかりにシグルドは、汗に濡れ絞ったあとの服を投げつけ、慌ててクロードは避けるが、その隙を狙い強烈なデコピンをされクロードは30分ほど無意味な時間を過ごすこととなる。
「ソレは、コッチのセリフですよシグルド。 何をしているんですか?」
コミュニケーションとは重要だとクロードは問いかける。
理由など、側に居るのだから容易に想像がつく。
イライラした日々。
ままならぬ感情の激流。
そんな感情から、侍女や護衛騎士に辛く語る日々が増えていた。
ゼーマン公爵家のスパイだから良いと言う問題ではない。
むしろ、それが余計に苛立たせる。
いや……昔の彼女達の支配的態度への反抗心もあるのかもしれない。
とは言え、彼女達も貴族の一員であり、下手に傷つけてしまう訳にはいかない。
そこはわきまえているのだろうシグルドは、記憶にない午前と言う時間を騎士訓練に参加するようになっていた。 全く運動をしていなかった人間が普通に動けるのは血筋としか言いようがないだろう。
クロードは、シグルドの身体能力についてこれずボロボロゴロゴロと転がっている騎士達を眺めながら言葉を付け加えた。
「改革の次は戦争でも始めるつもりですか?」
「俺一人が、訓練して意味があるのか?」
「ありそうですが……」
「騎士は女性に人気だと聞いたが、大した事ないな」
「引きこもりが、女性の視線を気にするなんて!! お年頃ですね」
「オマエ、一度勝負しておくか?」
「いえ、勘弁してください」
「ところで、オマエは何をしているんだ?」
「何って……ここ1年、君が午前中何をしていたのかを探っているんだよ」
クロードが言えば、シグルドは眉間をよせ不機嫌そうな表情を浮かべたから、クロードはヤバッと声に出す。 だがシグルド自身は不機嫌も無意識だったらしく……。
「なんだ、何かヤバイものでも見つかったのか?」
「人に聞いた限りは見つかっては居ませんね。 そして死体も見つかってません」
「何を考えている」
「君が人を殺したんじゃないかってね」
「……殺し等するか!! たぶん……」
視線を背けられる
「そこは、はっきり宣言してください。 まぁ、君が殺しなんてすれば、第二皇妃の子供達が鬼の首をとったようにはしゃぎだすんだろうから、ソレはないだろうね」
「で、何か見つかったのか?」
「それはコッチのセリフです。 何も思い出せないのですか?」
何も見つからない、覚えていないでは、正直ピンチと言って良い。 貴族が求める救済に対して、以前のような丁寧な助言をする事がないのだ。 コレでは開きかけた未来が閉ざされかねない。
「誰か一緒にいたような気がするが……誰も覚えていないのだろう?」
「えぇ、不思議にも図書館の司書も、出入りしていたであろう人も、誰も覚えていない人間が確かにいたことはわかりました」
だが、タイミングが良いとも考えられる。
今になって第二皇妃の生家と深い関係のある貴族が助言を求めにきているのだから。 ソレを無下にあしらったとしても、当然と判断されるだろう。
「誰かは?」
「残念ながら、そこまでは……。 だけど誰かがいたのは確実だろうと思う。 綺麗に記憶の空間があるなんてこと、ありえないだろう?! 君は3か月の間何処で食事をしていたんだ?」
「……覚えていない」
「全く頼りにならないなぁ……。 何も出てきていない。 だが、ちょうど1年前に図書館の使用許可証が発行され、そして最近返されている。 確実に何かはあるんだ」
「誰が……使っていたんだ?」
「誰が使っていたかは分からないが、ソレを発行した相手はルイーズ様だ」
「……なら、俺には関係ないだろう。 もう、それ以上調べるな」
一気に冷めたと言わんばかりの視線を向けられ、クロードはたじろいだ。 このまま終わってなるものか!! と……。
「だからってねぇ。 これは明らかに神による記憶の抹消だ。 君は、いや……ルイーズ様が誰かと誓約を交わし抹消している。 君はソレに覚えはないのか!!」
「なんで、そんなに真剣になる」
「そんなの、私の未来のためだよ!!」
イラっとした気分がピークに達したシグルドは、汗を拭いた後のタオルが勢いよくクロードに投げつける。
「この馬鹿力、あと、臭いんだよ!!」
追加とばかりにシグルドは、汗に濡れ絞ったあとの服を投げつけ、慌ててクロードは避けるが、その隙を狙い強烈なデコピンをされクロードは30分ほど無意味な時間を過ごすこととなる。
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